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第1章 1度目の人生での反省点と今後の人生プラン
お兄様
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「エリー、少し外を散歩しないか?」
朝食を終え、自室に戻ろうとしていたエリーに兄であるリナリーが声をかけた。侯爵と夫人は食後の紅茶を飲んでゆったりと談笑している。
エリーはリナリーと一緒に外の庭園に足を向けた。
侯爵家の庭園は、何人ものお抱えの庭師に整えられ美しく保たれている。
みずみずしい白薔薇が朝日に輝いているのを見ながら、二人はゆっくりと歩いた。
(いつ見ても豪華な髪だな)
エリーはリナリーの髪を見て思った。キラキラとかがやく豪奢な金色の髪は朝日に反射して眩しい。
父と母、どちらも見事な金髪であり、兄のリナリーは金の髪や整った容貌から確実に二人の息子であることがわかる。反対に、エリーはと言うと黒髪黒目で一見して両親の特徴は全く受け継いでいない。
しかし、明らかに色の違う子供が生まれても周囲の人間が驚かなかったのは、"黒" という色が前世でも今世でも生まれ落ちたこの国では特別視されるからだ。
黒色の色素を持つ人間は一定数いる。彼らは両親、親族に黒髪が一人もおらずとも生まれてくるのだ。そしてそれらの人間に共通しているのが特別な能力を持っていることだ。
例えば、未来を予言する力や心を読む力。能力に大小の差はあれど、普通の人間にはできないことをする。
エリーの能力としては、抜群の記憶力だと周囲の人間は思っている。何年も前、それこそ子供の頃に読み聞かせられた絵本の内容を一文字一句違わず思い出せたり、一度読んだ本の内容を何年もずっと覚えていられることだったりと他者よりも圧倒的に記憶力が優れている。
(エンヴィの時はもっと強い力だったんだけどな。)
前世のエンヴィも黒目黒髪で特別な力を持っていた。
それは治癒力であった。
エンヴィが傷に手を当てて意識を集中させるとたちまち傷が塞がった。
歴代の”黒持ち”の中でも群を抜いて強い力だ。
エンヴィが正妃の座におさまれたのも、その黒色と能力が国の象徴である王にとって都合が良かったからである。
昔のことを思い出していると、リナリーの青い目がエリーを見つめていた。
「エリー、学園のことで悩んでいるんだろう?」
リナリーがエリーに優しい目を向ける。
(よくわかるな)
昔から、なぜか兄はエリーの考えていることがよく分かっていた。悲しくなった時、辛くなった時、ーー前世のことで苦しくなった時。エリーのそばにそっと寄り添ってくれていた。
表情が固くなったエリーを見て、リナリーは穏やかに笑った。
「おおよそお前のことだから、家の評判や私たち家族のことを考えて学園に行くべきだとでも思っているんだろう?」
穏やかな青い目がエリーを見つめている。
「そうだとしたら、そんなこと考えなくてもいいんだ。お前はお前のしたいようにすれば良い。やりたくないことはやらなくていいんだよ。」
ふわりと頭の上に置かれた手。柔らかくエリーの頭を撫で、ゆっくりと下に降りていき、両手で頬を包み込む。リナリーよりも低い目線にあわせるように屈んだその顔は思いのほか近い。
「何があっても私が守ってあげるから。お前は何も心配しなくていいんだよ。」
そう言ってリナリーはエリーを抱きしめた。
朝食を終え、自室に戻ろうとしていたエリーに兄であるリナリーが声をかけた。侯爵と夫人は食後の紅茶を飲んでゆったりと談笑している。
エリーはリナリーと一緒に外の庭園に足を向けた。
侯爵家の庭園は、何人ものお抱えの庭師に整えられ美しく保たれている。
みずみずしい白薔薇が朝日に輝いているのを見ながら、二人はゆっくりと歩いた。
(いつ見ても豪華な髪だな)
エリーはリナリーの髪を見て思った。キラキラとかがやく豪奢な金色の髪は朝日に反射して眩しい。
父と母、どちらも見事な金髪であり、兄のリナリーは金の髪や整った容貌から確実に二人の息子であることがわかる。反対に、エリーはと言うと黒髪黒目で一見して両親の特徴は全く受け継いでいない。
しかし、明らかに色の違う子供が生まれても周囲の人間が驚かなかったのは、"黒" という色が前世でも今世でも生まれ落ちたこの国では特別視されるからだ。
黒色の色素を持つ人間は一定数いる。彼らは両親、親族に黒髪が一人もおらずとも生まれてくるのだ。そしてそれらの人間に共通しているのが特別な能力を持っていることだ。
例えば、未来を予言する力や心を読む力。能力に大小の差はあれど、普通の人間にはできないことをする。
エリーの能力としては、抜群の記憶力だと周囲の人間は思っている。何年も前、それこそ子供の頃に読み聞かせられた絵本の内容を一文字一句違わず思い出せたり、一度読んだ本の内容を何年もずっと覚えていられることだったりと他者よりも圧倒的に記憶力が優れている。
(エンヴィの時はもっと強い力だったんだけどな。)
前世のエンヴィも黒目黒髪で特別な力を持っていた。
それは治癒力であった。
エンヴィが傷に手を当てて意識を集中させるとたちまち傷が塞がった。
歴代の”黒持ち”の中でも群を抜いて強い力だ。
エンヴィが正妃の座におさまれたのも、その黒色と能力が国の象徴である王にとって都合が良かったからである。
昔のことを思い出していると、リナリーの青い目がエリーを見つめていた。
「エリー、学園のことで悩んでいるんだろう?」
リナリーがエリーに優しい目を向ける。
(よくわかるな)
昔から、なぜか兄はエリーの考えていることがよく分かっていた。悲しくなった時、辛くなった時、ーー前世のことで苦しくなった時。エリーのそばにそっと寄り添ってくれていた。
表情が固くなったエリーを見て、リナリーは穏やかに笑った。
「おおよそお前のことだから、家の評判や私たち家族のことを考えて学園に行くべきだとでも思っているんだろう?」
穏やかな青い目がエリーを見つめている。
「そうだとしたら、そんなこと考えなくてもいいんだ。お前はお前のしたいようにすれば良い。やりたくないことはやらなくていいんだよ。」
ふわりと頭の上に置かれた手。柔らかくエリーの頭を撫で、ゆっくりと下に降りていき、両手で頬を包み込む。リナリーよりも低い目線にあわせるように屈んだその顔は思いのほか近い。
「何があっても私が守ってあげるから。お前は何も心配しなくていいんだよ。」
そう言ってリナリーはエリーを抱きしめた。
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