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「おやめください、ゲーゼン王太子殿下」
 女性の甲高い声がホールに響き渡った。
「うるさいな。俺を止めるな。」
怒号の後に爆発音が聞こえた。
「どうかおやめに……」

「ヒンメル殿下。ご無事ですか?」
 息が上がっているシャーフが部屋に入って来た。
「さっきの悲鳴といい一体どうなっている?」
「先ほどゲーゼン王太子殿下が殿下の離宮にやって来まして暴れております。」
「は?」
「ひとまずお逃げを」
 そう言いかけた瞬間近くから爆発音が聞こえた。
「あ、見つけた。初めまして兄上。噂通りの盲目の出来損ないだな。」
「初めまして。ゲーゼン王太子殿下。殿下にどのようなご要件を」

 シャーフが僕の近くへ来て距離をとってくれているのだろう。

「おまえには話しかけてないんだよ。母上から父上を奪った女の子供を見に来たんだよ。お前の母親は爵位が低いくせに顔だけで召し上げってよ。おかげ妹はたまに起きる母上からの癇癪に耐えるしかないんだよ。わかるかこの辛さをよ。」

「そんなのヒンメル殿下には関係無いでしょう。ゲーゼン王太子殿下お願いですからお戻りください。」
「うるさいな」

 ゲーゼンから熱した空気が感じた後シャーフが「ゔぅ」呻き声と共にどこかに打ち付けた声が聞こえた。
「シャーフ! 誰でも良いシャーフを医者に早く」
「兄上はお優しいのですね。目の見えない役立たずのくせに」
 嘲笑ったように言った。

「兄上もこないだ属性の鑑定を行ったようですね。少しは反撃をしてみてはいかがですか?」
 すぐにゲーゼンから焦げた匂いがした。
感じがことのない熱さ。

僕は思わず固唾を飲む。
だが、ここで負けてはいられない。
その瞬間頭に何かのイメージがよぎった。

「いけ」
唱えた瞬間冷気が感じた。
何が起こったのかわからず警戒をしていたがゲーゼンの焦った声が聞こえた。

「はあ?どうなっているんだ。氷の壁で俺の炎を止めただと。普通に考えればありえないだろう。」

「一体何事だ。」
「父上……」
 なんとこの暴乱が王の耳にまで聞こえたそうだ。
「ゲーゼンお前には失望したよ。ゲーゼンを部屋に戻してこい。1ヶ月の謹慎を言い渡す。」
「父上、違う。どうかお話を聞いて……」
「連れていけ。」
 ゲーゼンの泣き叫ぶ声が響き渡った。

「ヒンメル大丈夫か?」
「ええ、僕は大丈夫ですよ。僕の従者がゲーゼンの魔法に当たりました。だから良い医者に見てもらいたいです。」
「すまない。すぐに手配をしよう。ヒンメルも見てもらいなさい。」

「お父様、ゲーゼンについて少しよろしいですか?」
「ああ、なんだい。」
 それから僕の部屋に来た状況を全て報告をした。第1妃がヒステリックを起こすことも。
「分かった。妃をしばらくあの子たちから離そう。情報ありがとう」
 父は僕を立ち上がらせたあと
「ヒンメルを医者に連れて行くお前たちはこの氷の撤去を命ずる。」

 医者の所まで行くまでの道のりが遠く感じる。今まであまり話した記憶のない父と行動するのは少し気まずい。
「ヒンメル何かして欲しいことはないか?」
「……僕の従者、シャーフに給金を上げることは出来ませんか?」
「ああ、それは出来るがお前個人についてだ。」
「では、魔術の先生を呼んで頂きたいです」
「ああ、わかった。着いたぞ。」

 アルコールの匂いとシャーフの声が聞こえた。
「もう私は大丈夫ですから、殿下の所へ行かせてください。」
「ダメですよ。一日、二日安静にしててください。軽傷でしたが少し火傷をしているのですよ。」
 鈴が落ち着きもなくなっている。音の方へ僕は走って行った。
「シャーフ大丈夫なの?怪我の具合は?」
「殿下ご無事でしたか?」
 シャーフが質問を質問で返してくる。
「医師よ、ヒンメルを頼む。私は戻らなくては行けないから。ヒンメル、またな。」
「ありがとうございました。」
「「御意」」

 その後、診察をしてもらったがかすり傷のみだったので少し治療してもらって終わった。
 シャーフは腕を火傷したみたいでしばらくは安静にしてもらいたい。しかし、シャーフは僕が心配だから帰ると言うので、そんなに心配ならば僕がここにいてても良いと言われたのでしばらく医務室にいてることにした。
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