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「はじめまして、ヒンメル殿下。モーント公爵が娘シュティーアと申します。」
と言い少女は優しい声色で僕に話しかけた。
この日、僕の人生で最愛の人に出会った。
僕はグレンツェン王国の王子の長男として生まれた。
だが、先天性の盲目だった。それでも、僕を産んでくれた母は僕を愛し育ててくれた。
しかし、母は第2妃だったため疎まれ第1妃から陰湿ないじめを受けていた。
ある時、母が僕と歳の近い女子を連れて来た。
その少女がシュティーアだった。
彼女はいつも来るたびにたくさんのことを教えてくれた。
空は太陽と月というものが交互に入れ替わって1日を巡っていることや僕が今立っている地よりはるか上を飛ぶ動物のことを教えてくれた。
「そうだ。私が絶対殿下に私が好きな夜空を見せてあげます。」
そう宣言した彼女の声は弾んでいた。
「楽しみに待っているよ。」
「はい。待ててくださいね。」
そうして彼女はしばらく僕の元へ訪れなくなった。
季節が2つ巡ろうとしている時に彼女は姿を現した。
ドタバタと普段は静かな廊下を走って息を切らしながら弾んだ声でシュティーアが話しかけて来た。
「殿下やっと完成しました。」
「なんのこと?」
「ふふん。まあちょっと座ってみてください。」
そういうと彼女は両手を繋ぎ僕の額に彼女の額をくっつけて何かを言っていた。
「殿下、目隠しを取ってみてください。」
「……うん。」
そこには今までにみたことがない美しく浮かぶ光があった。
そして、そこに佇む1人の美しい髪の色と空に浮かぶ光を宿した瞳の少女がいた。
「驚きましたか? これは夜空というものなのですよ。私がこの世で一番好きな景色なんですよ。」
「これがよぞら……」
「殿下にこれを見せたくて田舎にある領地で毎夜空を見上げて研究を重ねたのですよ。すごいでしょう。」
と胸を張って自慢げに話していた。
「そういえば殿下私の顔を見るのは初めてでしたよね。想像と違って可愛くないでしょ」
「そんなことはない。この世の何よりも美しいと僕は思う。」
するとシュティーアは顔をみるみる赤くしてそっぽへ向いてしまった。
「ごほん。さて気を取り直してここを案内しますね。ここの空間は私が作った別の次元だと考えてもらいますね。殿下は目に魔力が宿ってない状態で生まれて来ましたよね?それで私の魔力を使って一時的に目が見える状態となっております。」
と照れているのかいつもより早口で彼女ここの説明をしていく。
僕の目が見えないのは病気ではない。
この国の住民は少なからず魔力を持って生まれている。
魔力は血液と同じ働きをして体の中を巡っているがなんらかの原因で滞ってしまうとそこの機能が停止してしまう。
僕の場合、目だった。
シュティーアが僕の手を引っ張って走り始めた。今まで転けたら危ないと周りから止められていたが走るのがこんなに楽しいとは思ってもみなかった。
「殿下、私これを作るのに挫折しかけた時もあったのですが殿下の笑顔を見れてとても嬉しいです。」
満面の笑みを浮かべたシュティーアはやはりこの世何よりも美しいと思う。
「さあ着きましたよ。私が領地であきるぐらい見た小池です。周りの花はオシロイソウと夜にしか咲かない月下美人です。小舟も作ってみたので乗りましょうよ。」
彼女が先に乗り僕をエスコートした。
「本当なら僕の役目なのに……。」
と頬を膨らませたら、彼女はお腹を抱えて笑った。
「次の機会にぜひしてください。」
と言いもう一回僕に手を差し出した。素直に手を取りバランスを取るのに難しい船に乗った。左右に大きく揺れる感覚が不思議でたまらなかった。
そして、シュティーアは船を動かし始めた。
「いったいどうやって動いているの?」
「ここは私が作った世界なので魔力で動かしたり花を咲かせたりしているのですよ。さてこの位置でいいかな。」
と言うと池の真ん中で船を停止された。
次の瞬間周りに生えていた木々が一斉に満開の花を咲かせた。
「うわぁ。きれいだ。」
「でしょう。もっと褒めてくださってもいいんですよ。」
「本当に凄いや。シュティーアは魔法の才能に長けているんだね。」
僕がそういうと彼女は少し間を置いてから困ったように笑っている。
「私の家では代々魔法に長けている人を輩出するのですが、私は姉や兄の歳になっても出来ないことが多かったんですよ。でも、初めて殿下とお会いしてからどんなことをお話ししても喜んで聞いてくれる殿下に絶対私が一時的にでも世界を見せてあげたいと思ったんですよ。」
「そのことがきっかけに魔法を勉強したの?」
と尋ねるとシュティーアは首をこくりと動かした。
少し周りを見渡してから手をぱんと鳴らして
「さて、あと何か私に質問ありますか?」
「はい。」
「はい、ヒンメル殿下」
「シュティーアの髪の色はなんと言う色ですか?」
「私の髪の色はネイビーですね。夜空と同じ色です。」
「……ねいびー。よし、覚えたぞ。」
僕はこの色を一生忘れないだろう。
しばらく僕たちは船の上で質問大会をしていた。
空に浮かぶ光や草木のことや他愛のない会話をした。
夢のような時間はあっという間に過ぎ去っていった。
その後、シュティーアと僕は元の僕の部屋に帰った。
僕の目は見えずになっていたが、脳裏に焼きついた夜空とシュティーアの姿が鮮明に思い出せた。
と言い少女は優しい声色で僕に話しかけた。
この日、僕の人生で最愛の人に出会った。
僕はグレンツェン王国の王子の長男として生まれた。
だが、先天性の盲目だった。それでも、僕を産んでくれた母は僕を愛し育ててくれた。
しかし、母は第2妃だったため疎まれ第1妃から陰湿ないじめを受けていた。
ある時、母が僕と歳の近い女子を連れて来た。
その少女がシュティーアだった。
彼女はいつも来るたびにたくさんのことを教えてくれた。
空は太陽と月というものが交互に入れ替わって1日を巡っていることや僕が今立っている地よりはるか上を飛ぶ動物のことを教えてくれた。
「そうだ。私が絶対殿下に私が好きな夜空を見せてあげます。」
そう宣言した彼女の声は弾んでいた。
「楽しみに待っているよ。」
「はい。待ててくださいね。」
そうして彼女はしばらく僕の元へ訪れなくなった。
季節が2つ巡ろうとしている時に彼女は姿を現した。
ドタバタと普段は静かな廊下を走って息を切らしながら弾んだ声でシュティーアが話しかけて来た。
「殿下やっと完成しました。」
「なんのこと?」
「ふふん。まあちょっと座ってみてください。」
そういうと彼女は両手を繋ぎ僕の額に彼女の額をくっつけて何かを言っていた。
「殿下、目隠しを取ってみてください。」
「……うん。」
そこには今までにみたことがない美しく浮かぶ光があった。
そして、そこに佇む1人の美しい髪の色と空に浮かぶ光を宿した瞳の少女がいた。
「驚きましたか? これは夜空というものなのですよ。私がこの世で一番好きな景色なんですよ。」
「これがよぞら……」
「殿下にこれを見せたくて田舎にある領地で毎夜空を見上げて研究を重ねたのですよ。すごいでしょう。」
と胸を張って自慢げに話していた。
「そういえば殿下私の顔を見るのは初めてでしたよね。想像と違って可愛くないでしょ」
「そんなことはない。この世の何よりも美しいと僕は思う。」
するとシュティーアは顔をみるみる赤くしてそっぽへ向いてしまった。
「ごほん。さて気を取り直してここを案内しますね。ここの空間は私が作った別の次元だと考えてもらいますね。殿下は目に魔力が宿ってない状態で生まれて来ましたよね?それで私の魔力を使って一時的に目が見える状態となっております。」
と照れているのかいつもより早口で彼女ここの説明をしていく。
僕の目が見えないのは病気ではない。
この国の住民は少なからず魔力を持って生まれている。
魔力は血液と同じ働きをして体の中を巡っているがなんらかの原因で滞ってしまうとそこの機能が停止してしまう。
僕の場合、目だった。
シュティーアが僕の手を引っ張って走り始めた。今まで転けたら危ないと周りから止められていたが走るのがこんなに楽しいとは思ってもみなかった。
「殿下、私これを作るのに挫折しかけた時もあったのですが殿下の笑顔を見れてとても嬉しいです。」
満面の笑みを浮かべたシュティーアはやはりこの世何よりも美しいと思う。
「さあ着きましたよ。私が領地であきるぐらい見た小池です。周りの花はオシロイソウと夜にしか咲かない月下美人です。小舟も作ってみたので乗りましょうよ。」
彼女が先に乗り僕をエスコートした。
「本当なら僕の役目なのに……。」
と頬を膨らませたら、彼女はお腹を抱えて笑った。
「次の機会にぜひしてください。」
と言いもう一回僕に手を差し出した。素直に手を取りバランスを取るのに難しい船に乗った。左右に大きく揺れる感覚が不思議でたまらなかった。
そして、シュティーアは船を動かし始めた。
「いったいどうやって動いているの?」
「ここは私が作った世界なので魔力で動かしたり花を咲かせたりしているのですよ。さてこの位置でいいかな。」
と言うと池の真ん中で船を停止された。
次の瞬間周りに生えていた木々が一斉に満開の花を咲かせた。
「うわぁ。きれいだ。」
「でしょう。もっと褒めてくださってもいいんですよ。」
「本当に凄いや。シュティーアは魔法の才能に長けているんだね。」
僕がそういうと彼女は少し間を置いてから困ったように笑っている。
「私の家では代々魔法に長けている人を輩出するのですが、私は姉や兄の歳になっても出来ないことが多かったんですよ。でも、初めて殿下とお会いしてからどんなことをお話ししても喜んで聞いてくれる殿下に絶対私が一時的にでも世界を見せてあげたいと思ったんですよ。」
「そのことがきっかけに魔法を勉強したの?」
と尋ねるとシュティーアは首をこくりと動かした。
少し周りを見渡してから手をぱんと鳴らして
「さて、あと何か私に質問ありますか?」
「はい。」
「はい、ヒンメル殿下」
「シュティーアの髪の色はなんと言う色ですか?」
「私の髪の色はネイビーですね。夜空と同じ色です。」
「……ねいびー。よし、覚えたぞ。」
僕はこの色を一生忘れないだろう。
しばらく僕たちは船の上で質問大会をしていた。
空に浮かぶ光や草木のことや他愛のない会話をした。
夢のような時間はあっという間に過ぎ去っていった。
その後、シュティーアと僕は元の僕の部屋に帰った。
僕の目は見えずになっていたが、脳裏に焼きついた夜空とシュティーアの姿が鮮明に思い出せた。
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