【絶対、現世に帰るんだから!!】家族みんなで異世界転生したら、父と母が武器になったけど、現世に帰ったら人間に戻れるの?女神様!?(第1部)

鳩時計

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第4章 炎の剣と宝玉の杖

第14話 邪鬼と餓鬼

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 エクシリアが地下からの階段を登りきると、そこにはジョエルと勇治が待っていた。
「エリーゼ達は無事でした。しかし、カノンはここに居ませんでした…団長、カノンの屋敷には誰か行っていますか?」

「部下3人をカノンの屋敷に行ってもらっているが…」

「今から、カノンの屋敷に行ってきます。団長はここに残って、エリーゼ達を…」
 エクシリアは地下への扉を閉めた。

「ああ…そのつもりだ。魔物には気をつけろ。まだ辺りをウロついているだろう…」

「はい……勇治、一緒に来て!」
 エクシリアは勇治に声をかけると、走って屋敷から出た。
 二人は走りながら、襲ってくる餓鬼を切っていた。邪鬼も襲ってくる。邪鬼は、餓鬼より少し大きい。
 その邪鬼も、首をはねながら更に走った。
「勇治!もう少しよ!」

 エクシリアと勇治は、カノンの屋敷の方角から、叫び声と絶叫が聞こえてきた。
「きゃーー!」
「うわぁぁぁっ!」
「ぎゃあああああああ!」

「あ~、お願い!間に合って!」
 エクシリアは、カノンの屋敷の門前に着いた。
 門は外れそうになっているも、歪んでどこかに引っ掛かっているのか開かない。
 勇治も、後ろからついてきた。
「えいっ!」
 エクシリアは、思いっきり足で門を蹴った。

「ガシャン!!」
 門が倒れる。二人は、門から屋敷に向かった。
 屋敷の前が血の海だった。血の海の中に、剣が3本落ちている。
「勇治!屋敷の中に入るわよ!」
 勇治は頷いた。

 屋敷の扉は、粉々に砕けていた。
 二人はゆっくり屋敷の中に入る。
 もう声は聞こえてこない。
「勇治!魔物に気をつけて…」
 エクシリアは、小声で勇治に伝えた。

「ギー!」
 耳障りな音が聞こえてきた。

「勇治!上だ!」
 健一が叫んだ。
 勇治は、神剣を頭上に突き上げた。

「ブシャ!」
 嫌な音がしたと思ったら、神剣に餓鬼が刺さっていた。

「まだ、安心はするな!勇治!」
 健一も小声で言った。

「あっ!」
 エクシリアは小さく叫んだ。
 人間数体に、餓鬼と邪鬼が群がって食べていた。

「やめろーー!!」
 エクシリアは、餓鬼と邪鬼に切りかかる。エクシリア自身が鬼になったように、餓鬼と邪鬼の首をはねまくった。
 餓鬼一匹だけ逃げようとしたが、勇治が止めをさした。

「………カノン…………」
 数体の死体の中に、見るも無惨なカノンの姿があった。
 エクシリアがゆっくりゆっくりカノンに近づく。
「カノン?嘘よね!?カノン!カノンッ!!」
 エクシリアの目から大粒の涙がポロポロと溢れた。
「ごめんなさい、カノン………もっと早く来ていたら……あと少し早く来ていたら……」
 エクシリアは跪き、カノンを抱き上げ片手でカノンの目を閉じた。
 カノンの目を閉じた後、エクシリアはカノンをまた抱き締め、ずっとずっと泣いていた。

「カノン…」
 勇治は、カノンを見る事が出来なかった。悲しんでいるエクシリアを見る事が出来なかった。
 勇治は、一人屋敷の外に出た。

 ディオーネと瑠依が走って来る。
 その後ろからケルベロスとゴーレムもやって来る。
「カノンは?」
 ディオーネは、血の海を見ながら勇治に聞いた。

 勇治は、黙って首を振った。

「………そう……エクシリアは?」

「中にいます…」

 ディオーネと瑠依は屋敷の中に入った。ケルベロスとゴーレムは外で待つ。
 奥から、エクシリアの泣き声が聞こえてきた。
 瑠依は、余りにも悲しげな泣き声を聞いて、胸が締め付けられた。
 エクシリアは、動かなくなったカノンを抱き締めていた。
 泣いているエクシリアを見て
「……今はそっとしておきましょう…」
 ディオーネは瑠依に静かに言った。

 瑠依は、返事をしようとディオーネの顔を見たら、ディオーネもまた涙を流していたのだった。
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