23 / 81
第3章 ディオーネとの出会い
第7話 宰相バーデン
しおりを挟む千恵の教室を後にした二人は、職員室へ向かうことにした。
「失礼します」
二人はそう言うと、辺りをキョロキョロしながら中へ入っていった。職員室に入って直ぐ側に各教員の座席表が貼ってあったので、さっそく秋山湊人という名前を探した。
秋山先生の席は、入り口から若干遠かったが、奥まで行かなくても席が見えた。
「あいつか?」
「そのようだな」
秋山先生と思われる人物はパソコンを打っている最中であった。三十代半ば程で、黒髪の真面目そうな感じの先生だ。席に座っている姿は背筋もピンとしていて、どこか堅苦しそうにも見えた。
「あの人が今日、本当に殺人なんか犯すのか?」
伊吹の言う通り、秋山という男は人を殺すような人間には見えない。けれど、黒羽が指名したのはこの男だ。ここは黒羽を信じるべきなのか…それとも…
「取りあえず、あの先生の素性について他の生徒に聞いてみよう」
二人は静かに職員室を出て行くと、ひとまず中学三年生の教室がある方へ向かった。というのも、三年生であったらこの先生についての情報もあると考えたからだ。
中学三年生に知り合いの居ない二人は、仕方ないから、適当に廊下を歩いている生徒に話しかけた。
「あの、ちょっと良いかな?」
蒼が話しかけたのは、ショートカットのさっぱりとした女子であった。いきなり話しかけられた彼女は、少し驚いた顔をした。
「何ですか?」
「あのさ、俺たち高等部二年なんだけど、君、秋山先生のことは知っているよね?」
彼女は一切曇った表情をせずに、笑顔で答えた。
「秋山先生ですか!もちろん知っていますよ!」
「あの…秋山先生ってどんな先生なのか教えてくれる?」
明るく答える彼女は、先ほどの千恵の様子と全く異なっていた。秋山先生はもしかしたらそんなに評判が悪い先生でもなさそうだ、と二人は思った。
「秋山先生は水泳部の顧問で担当は理科ですよ。三年二組の担任なんですけど正直、一組に来て欲しかったですよぉ…」
「え?秋山先生って、人気があるのか?」
彼女の口調から、秋山先生は人気者のように聞こえてきた。
「もちろんですよ。まだ三十二歳だし、先生はとても優しいんです。あの真面目で紳士的な人はこの学校には秋山先生しかいませんよ」
「……、」
二人とも想像を遥かに超えた秋山先生のイメージに言葉が出なかった。すると、後ろから三人組の女子がやって来た。
「亜紀?何やってんの?」
亜紀と呼ばれた彼女は三人に笑顔でこう言った。
「丁度良かった。今秋山先生について色々聞かれているんだけどね」
秋山先生、と聞いた彼女らは興味津々で蒼たちに近寄ってきた。
「えっ、何なにぃ?秋山先生がどうしたって?」
きゃ、きゃ、と楽しそうに聞いてくる彼女らに蒼と伊吹は思わず三歩下がった。
「いや…秋山先生って、そんなに人気があるんだぁ…」
苦笑い気味で話す伊吹にその中でも髪の長い女子が、
「そうですよ!秋山先生は女子からも男子からも安定して人気があるんです!」
彼女に続いて、そうだ、そうだ、と周りも頷き始めた。
「…秋山先生って、独身なのか?」
しかし、何となく蒼がそう聞くと、彼女たちは一斉に表情を曇らせた。
「秋山先生はとっくに結婚していますよ。確か、今年で三年目だとか何とか…」
驚く程低い声で亜紀は答えた。
「へぇ…」
「でも、先生は素晴らしい人ですっ」
そう言うと、再び彼女らは笑顔で騒ぎ出した。
その後も、何人かの生徒に秋山先生について聞いたが、やはり誰もが彼を賞賛していた。一人も秋山先生を悪く言う者は居なく、理想の教師というイメージが二人の頭に植えつけられた。
秋山湊人、真面目そうな外見をしていて、生徒達からの人気も高い。そんな彼が今日中に殺人者?そんな有り得ない話があるというのか…
二人は自分たちの教室に戻ると、蒼の席の前でコソコソと話し始めた。
「どういうことだよ、あんなに人気な先生だったなんて…」
蒼は頭を抱えて、大きくため息をついた。
「やっぱりあの鴉、嘘つきなんじゃねぇか?大体、怪しいのはあっちだろ?きっと変な魔法か何か使って、俺たちの記憶を操作したんじゃね?」
伊吹はそう言うが、蒼はその点に関しては、黒羽は嘘をついていないような気がした。
昨日見せられた記憶の数々、その全ては確かに自分が歩んできた道のりであった。自分の中にある記憶がふっと蘇った…それは真実。ただ、浄罪師の使徒をしていた頃の記憶が戻らないのは、気になる点ではある。
「それは無いと思う。伊吹だって、昨日見ただろ?あの記憶…間違えなく自分の記憶だった」
「……、確かにそうだけどよ」
「それに、真雛っていう浄罪師…あの人間離れした容姿、あれが偽物だって言うのか?」
伊吹は下を向いて、ゆっくりと首を横に振った。
「そうだな…あれは偽物とは思えない。でも、秋山先生はみんなの人気者らしいし、殺人なんて…」
「人気者だとしても、それは表面上の顔なのかもしれないだろ?」
表面上の顔、偽装されたイメージ、作られた性格…本当の自分をそのまま外に曝け出す者なんて果たしているのか?人間は動物と違って理性がある。一目を気にして、本当の自分、醜い自分は隠す習性があるのだ。
蒼は窓から外を見渡した。伊吹もそれを真似て窓際に近寄る。
外はしきりに雨が降っている。まだ十二時半過ぎだというのに、外は薄暗くなっていた。
「放課後…」
蒼は窓を睨みつけて、口を開いた。
「放課後が勝負だな」
「ああ」
伊吹は低い声で答えると、教室側へ向き直って蒼の席に座った。
「お~い、蒼ィ~、お客様がいらっしゃっていますよ~ぉ?」
と、その時。クラスメートの青島という男子から声を掛けられた。ふざけた声で呼ばれた蒼は何事かと、青島に尋ねる。
「どうしたんだよ、青島?」
「姫様がお呼びですぞぉ?あ、お、い、ど、の!」
日頃からふざけた奴だが、さすがに今回は様子がおかしかった。とうとう頭のネジが全て吹っ飛んだか?と蒼は哀れみの目で青島を見つめる。
青島は蒼の背中を押して廊下へ連れていった。蒼は訳が分からず、呆れ顔で仕方なくそのまま廊下へ向かった。
伊吹は蒼の席から、そんな二人の背中を口を開けながらポカンと見ていた。
「失礼します」
二人はそう言うと、辺りをキョロキョロしながら中へ入っていった。職員室に入って直ぐ側に各教員の座席表が貼ってあったので、さっそく秋山湊人という名前を探した。
秋山先生の席は、入り口から若干遠かったが、奥まで行かなくても席が見えた。
「あいつか?」
「そのようだな」
秋山先生と思われる人物はパソコンを打っている最中であった。三十代半ば程で、黒髪の真面目そうな感じの先生だ。席に座っている姿は背筋もピンとしていて、どこか堅苦しそうにも見えた。
「あの人が今日、本当に殺人なんか犯すのか?」
伊吹の言う通り、秋山という男は人を殺すような人間には見えない。けれど、黒羽が指名したのはこの男だ。ここは黒羽を信じるべきなのか…それとも…
「取りあえず、あの先生の素性について他の生徒に聞いてみよう」
二人は静かに職員室を出て行くと、ひとまず中学三年生の教室がある方へ向かった。というのも、三年生であったらこの先生についての情報もあると考えたからだ。
中学三年生に知り合いの居ない二人は、仕方ないから、適当に廊下を歩いている生徒に話しかけた。
「あの、ちょっと良いかな?」
蒼が話しかけたのは、ショートカットのさっぱりとした女子であった。いきなり話しかけられた彼女は、少し驚いた顔をした。
「何ですか?」
「あのさ、俺たち高等部二年なんだけど、君、秋山先生のことは知っているよね?」
彼女は一切曇った表情をせずに、笑顔で答えた。
「秋山先生ですか!もちろん知っていますよ!」
「あの…秋山先生ってどんな先生なのか教えてくれる?」
明るく答える彼女は、先ほどの千恵の様子と全く異なっていた。秋山先生はもしかしたらそんなに評判が悪い先生でもなさそうだ、と二人は思った。
「秋山先生は水泳部の顧問で担当は理科ですよ。三年二組の担任なんですけど正直、一組に来て欲しかったですよぉ…」
「え?秋山先生って、人気があるのか?」
彼女の口調から、秋山先生は人気者のように聞こえてきた。
「もちろんですよ。まだ三十二歳だし、先生はとても優しいんです。あの真面目で紳士的な人はこの学校には秋山先生しかいませんよ」
「……、」
二人とも想像を遥かに超えた秋山先生のイメージに言葉が出なかった。すると、後ろから三人組の女子がやって来た。
「亜紀?何やってんの?」
亜紀と呼ばれた彼女は三人に笑顔でこう言った。
「丁度良かった。今秋山先生について色々聞かれているんだけどね」
秋山先生、と聞いた彼女らは興味津々で蒼たちに近寄ってきた。
「えっ、何なにぃ?秋山先生がどうしたって?」
きゃ、きゃ、と楽しそうに聞いてくる彼女らに蒼と伊吹は思わず三歩下がった。
「いや…秋山先生って、そんなに人気があるんだぁ…」
苦笑い気味で話す伊吹にその中でも髪の長い女子が、
「そうですよ!秋山先生は女子からも男子からも安定して人気があるんです!」
彼女に続いて、そうだ、そうだ、と周りも頷き始めた。
「…秋山先生って、独身なのか?」
しかし、何となく蒼がそう聞くと、彼女たちは一斉に表情を曇らせた。
「秋山先生はとっくに結婚していますよ。確か、今年で三年目だとか何とか…」
驚く程低い声で亜紀は答えた。
「へぇ…」
「でも、先生は素晴らしい人ですっ」
そう言うと、再び彼女らは笑顔で騒ぎ出した。
その後も、何人かの生徒に秋山先生について聞いたが、やはり誰もが彼を賞賛していた。一人も秋山先生を悪く言う者は居なく、理想の教師というイメージが二人の頭に植えつけられた。
秋山湊人、真面目そうな外見をしていて、生徒達からの人気も高い。そんな彼が今日中に殺人者?そんな有り得ない話があるというのか…
二人は自分たちの教室に戻ると、蒼の席の前でコソコソと話し始めた。
「どういうことだよ、あんなに人気な先生だったなんて…」
蒼は頭を抱えて、大きくため息をついた。
「やっぱりあの鴉、嘘つきなんじゃねぇか?大体、怪しいのはあっちだろ?きっと変な魔法か何か使って、俺たちの記憶を操作したんじゃね?」
伊吹はそう言うが、蒼はその点に関しては、黒羽は嘘をついていないような気がした。
昨日見せられた記憶の数々、その全ては確かに自分が歩んできた道のりであった。自分の中にある記憶がふっと蘇った…それは真実。ただ、浄罪師の使徒をしていた頃の記憶が戻らないのは、気になる点ではある。
「それは無いと思う。伊吹だって、昨日見ただろ?あの記憶…間違えなく自分の記憶だった」
「……、確かにそうだけどよ」
「それに、真雛っていう浄罪師…あの人間離れした容姿、あれが偽物だって言うのか?」
伊吹は下を向いて、ゆっくりと首を横に振った。
「そうだな…あれは偽物とは思えない。でも、秋山先生はみんなの人気者らしいし、殺人なんて…」
「人気者だとしても、それは表面上の顔なのかもしれないだろ?」
表面上の顔、偽装されたイメージ、作られた性格…本当の自分をそのまま外に曝け出す者なんて果たしているのか?人間は動物と違って理性がある。一目を気にして、本当の自分、醜い自分は隠す習性があるのだ。
蒼は窓から外を見渡した。伊吹もそれを真似て窓際に近寄る。
外はしきりに雨が降っている。まだ十二時半過ぎだというのに、外は薄暗くなっていた。
「放課後…」
蒼は窓を睨みつけて、口を開いた。
「放課後が勝負だな」
「ああ」
伊吹は低い声で答えると、教室側へ向き直って蒼の席に座った。
「お~い、蒼ィ~、お客様がいらっしゃっていますよ~ぉ?」
と、その時。クラスメートの青島という男子から声を掛けられた。ふざけた声で呼ばれた蒼は何事かと、青島に尋ねる。
「どうしたんだよ、青島?」
「姫様がお呼びですぞぉ?あ、お、い、ど、の!」
日頃からふざけた奴だが、さすがに今回は様子がおかしかった。とうとう頭のネジが全て吹っ飛んだか?と蒼は哀れみの目で青島を見つめる。
青島は蒼の背中を押して廊下へ連れていった。蒼は訳が分からず、呆れ顔で仕方なくそのまま廊下へ向かった。
伊吹は蒼の席から、そんな二人の背中を口を開けながらポカンと見ていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】令嬢は愛されたかった・冬
ここ
ファンタジー
伯爵令嬢ファリナは、実母の出自から、
家族に疎んじられていた。
誰からも愛されたことのない人生。
けれど、ファリナは魔法使いの適正があった。
使い魔とともに、魔法使いに弟子入りする。そこで待っていたのはこれまでとはまったく別世界で。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ワールド・カスタマイズ・クリエーター
ヘロー天気
ファンタジー
不思議な声によって異世界に喚ばれた悠介は、その世界で邪神と呼ばれる存在だった?
歴史の停滞を打ち破り、世界に循環を促す存在として喚ばれた若者の魂は、新たな時代への潮流となる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】令嬢は愛されたかった・春
ここ
ファンタジー
魔法使いのアビゼル・クォーツの弟子になったファリナ。修業は厳しいものだったけれど、魔法を使う楽しさを感じるようになった。
まだ10歳のファリナにはわからないけれど、アビゼルはとても女性にモテるらしい。師匠と弟子はいったいどうなっていくのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる