それは違う。

たこみ

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第一話 人が動くとき

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もれなくついてくる。

「あ、聞いてませんでした?」
祐介ゆうすけの妹、みおは二人で会うときに必ず来る。予告なしの登場に驚く私に、逆に驚いてみせる。

「ちょっとおかしくない?」
私が祐介に不満を言うと、彼は面倒くさそうに放っておけばいいよと言う。





「どこか間違ってる」
友達の明日香あすかに彼と妹のことを話すと彼女は確かにと言ってうんうんと頷いた。
 
「妹ちゃんもおかしいけど、それをよしとしてるあんたの彼の方がヤバいかも」
「・・・。だよね」

自分でも感じていたことを明日香に指摘されて落ち込む。

「大体、あの子は毎回ついてきて何の得があるの?」

イライラする気持ちを明日香にぶつけると、彼女はそれは分からないが何か思惑があってのことなんじゃない?と外国人のように肩を上げてみせた。

「あーあ。いつになったら詮索されずに済むデートができるのやら」
ぶつぶつ言う私に、明日香はそのうち飽きるでしょと適当なことを言ってそろそろ帰ろうとカフェの席を立った。





困っている他人というのはなかなか面倒くさい。
何か上手いことを言ってあげるのも簡単ではないし、アドバイスをしても大抵の人はその答えを求めていず、ただ愚痴りたいだけだったりする。

光莉ひかりも変な男に捕まったなとは思うが、そんな男別れればいいじゃんと言うとそれはちょっとという返事が返ってくるので、心の中ではあんたの好きにしてねと思っている。




スリル満点。

兄の彼女を巻き込むつもりはなかったが、理由を探りたいのだ。
彼女というものに、質よりも数を求めている兄が、どうやってその数をこなしているのかということを。

数年前から兄に対して違和感があった。
ただの会社員なのに、時々まるで自分が世界をコントロールしているような発言をする。
男性の割には身だしなみなどに気を使っているところは認める。

複数の女性を相手にする兄に、彼女たちの個人情報をちゃんと記憶しているのかと問うと、もちろん覚えているという答えが返ってきた。

「自信満々だけど、そんなこと言ってたまに名前とか呼び間違えてるんじゃない?」
意地悪でそう訊くと、兄はないと言えばウソになると苦笑した。
「ま、そんな時は寝ぼけてたとでも言っとけばいいよ」

我が兄ながらクズの発言だなと感じた。

そんな兄に、なにより大切な相手はできるのだろうかと疑問に思った。
彼の本性を知っているのに相手の女性たちに黙っているのは同罪になるのだろうか。

救世主登場♪
そんな気持ちで、私は兄のデートに着いて行くことに決めたのだ。






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