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第33話 ルイス様劇場
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昼頃には顔色を悪くした義姉たちも学園に来ていて、隅の方でおとなしく食事をしていた。
私は横目で義姉たちを見ながら、あれからどうなったのかしらと考えていた。だが、ちょうどその時、食堂の入り口がザワザワしたかと思うと、ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様が、足音も荒々しく入ってきた。
私は、例の高貴なお友達と四人で食事をしていた。
「あら。何かしら。騒がしいわ」
アーネスティン様は落ち着いてそちらを見た。
「ヘイスティング侯爵令嬢!」
ルテイン家のルイス様がツカツカと、隅っこの方に小さくなっているアンとステラに向かって怒鳴った。
「あなたとは婚約していない」
その声は、かなり離れた席に座っていた私たちにまで届いた。食堂にいた全員がクルリとルイス様の方を向いた。
アーネスティン様とマチルダ様は、私の顔を見た。
「婚約していません」
何かを聞かれたような気がして、私は解説した。
「婚約者ヅラするのはやめてもらおうか」
ルイス様の声が響く。今度はおおおっと言うようなどよめきが会場に広がった。
「大きな声ですこと」
アーネスティン様が顔をわずかにしかめた。
私は顔をしかめるくらいでは済まなくて、驚きでうっかりスプーンをお皿に落としてしまった。
婚約者ヅラとは? 義姉たちは何をしたのかしら? ルイス様の声はまだ続いた。
「父がお宅を訪問した」
アーネスティン様とマチルダ様が、また、私の顔を見た。
「来られてました」
何かを聞かれたような気がして、私は小さな声で返事した。
ルイス様の詰問に義姉たちがどう答えているのかは全然聞こえないが、ルイス様の声はよく通った。彼は続けた。
「いわれのない不名誉な噂を広げるのは止めてもらおう」
あー。なるほど。あの話か。
あれはルイス様がどんなに怒っても無理はないわ。
「本当かと思っていましたわ」
それまで黙っていたローズマリー様がこっそり言った。アーネスティン様とマチルダ様がまつ毛一本動かさないところを見ると、きっとどんな噂か知っているに違いない。
全食堂が注目する中、ルイス様の独演会は続いた。
「なぜ私があなた達に婚約の申し込みをしたことになっているのだ。私が婚約申し込みしたのは、エレクトラ嬢だ」
アーネスティン様とマチルダ様が、私の顔を見た。
「私は知りませんわ。私に婚約申し込みなさったのは、モートン様だけです」
これはダメだ。否定しなくちゃ。どこでどうしてそうなった? 私は焦った。
スッとアーネスティン様が立ち上がった。そして言った。
「あのようなお話、はしたないですわ。ここを出ましょう」
マチルダ様とローズマリー様も申し合わせたようにスッと立ち上がり、私もなんとなく一緒に立ち上がった。
「このような場面は、私たちが見るようなものではありません」
アーネスティン様は傲然と言い放った。ウチの義母の傲然とした様とは種類が違う。
義母が傲然としていると、何か固いものを持ってきて殴りたくなるが、アーネスティン様が傲然としているとひれ伏したくなる。
なんだか堂々としなくてはいけないような雰囲気を感じ取ったので、私は三人と一緒に堂々と部屋を出て行った。
私たち四人が退場していく様は、ルイス様以上に人目を引いた。
「ものすごっく、かっこよかったです」
翌日、経営学の教室で会った、例の富豪の娘だけれど貴族ではない、義姉たちの被害者の会のアイリス嬢は両手を握り締めて大絶賛した。
私は横目で義姉たちを見ながら、あれからどうなったのかしらと考えていた。だが、ちょうどその時、食堂の入り口がザワザワしたかと思うと、ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様が、足音も荒々しく入ってきた。
私は、例の高貴なお友達と四人で食事をしていた。
「あら。何かしら。騒がしいわ」
アーネスティン様は落ち着いてそちらを見た。
「ヘイスティング侯爵令嬢!」
ルテイン家のルイス様がツカツカと、隅っこの方に小さくなっているアンとステラに向かって怒鳴った。
「あなたとは婚約していない」
その声は、かなり離れた席に座っていた私たちにまで届いた。食堂にいた全員がクルリとルイス様の方を向いた。
アーネスティン様とマチルダ様は、私の顔を見た。
「婚約していません」
何かを聞かれたような気がして、私は解説した。
「婚約者ヅラするのはやめてもらおうか」
ルイス様の声が響く。今度はおおおっと言うようなどよめきが会場に広がった。
「大きな声ですこと」
アーネスティン様が顔をわずかにしかめた。
私は顔をしかめるくらいでは済まなくて、驚きでうっかりスプーンをお皿に落としてしまった。
婚約者ヅラとは? 義姉たちは何をしたのかしら? ルイス様の声はまだ続いた。
「父がお宅を訪問した」
アーネスティン様とマチルダ様が、また、私の顔を見た。
「来られてました」
何かを聞かれたような気がして、私は小さな声で返事した。
ルイス様の詰問に義姉たちがどう答えているのかは全然聞こえないが、ルイス様の声はよく通った。彼は続けた。
「いわれのない不名誉な噂を広げるのは止めてもらおう」
あー。なるほど。あの話か。
あれはルイス様がどんなに怒っても無理はないわ。
「本当かと思っていましたわ」
それまで黙っていたローズマリー様がこっそり言った。アーネスティン様とマチルダ様がまつ毛一本動かさないところを見ると、きっとどんな噂か知っているに違いない。
全食堂が注目する中、ルイス様の独演会は続いた。
「なぜ私があなた達に婚約の申し込みをしたことになっているのだ。私が婚約申し込みしたのは、エレクトラ嬢だ」
アーネスティン様とマチルダ様が、私の顔を見た。
「私は知りませんわ。私に婚約申し込みなさったのは、モートン様だけです」
これはダメだ。否定しなくちゃ。どこでどうしてそうなった? 私は焦った。
スッとアーネスティン様が立ち上がった。そして言った。
「あのようなお話、はしたないですわ。ここを出ましょう」
マチルダ様とローズマリー様も申し合わせたようにスッと立ち上がり、私もなんとなく一緒に立ち上がった。
「このような場面は、私たちが見るようなものではありません」
アーネスティン様は傲然と言い放った。ウチの義母の傲然とした様とは種類が違う。
義母が傲然としていると、何か固いものを持ってきて殴りたくなるが、アーネスティン様が傲然としているとひれ伏したくなる。
なんだか堂々としなくてはいけないような雰囲気を感じ取ったので、私は三人と一緒に堂々と部屋を出て行った。
私たち四人が退場していく様は、ルイス様以上に人目を引いた。
「ものすごっく、かっこよかったです」
翌日、経営学の教室で会った、例の富豪の娘だけれど貴族ではない、義姉たちの被害者の会のアイリス嬢は両手を握り締めて大絶賛した。
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