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第13話 愛する人のために
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「返事を待っているよ」
最初の頃のみすぼらしい痩せ騎士はもういなくなっていて、そうかといってふくふくに太らず、イアンはたくましい猟師?に化けていた。
彼が肩を翻して出ていくと、風がその後ろを舞っているようだった。
大きな人。
私は、彼との会話がとても楽しかった。
彼は博識で、私が知らないようなこともよく知っていた。
そして、彼の出身は彼自身が言っていたように、貴族、それもかなり高位の貴族だった。
国内外のいろいろな事情に通じていて、自分の見解を持っていた。
地政学や、歴史、はっきりと口にはしなかったけれど、今の政治状況もしっかり頭に入っていた。
どこが猟師なのよ。
ウサギを持って帰ってきた時は、仰天したけど、だんだん慣れてきて、彼の猟の獲物が楽しみになってきた。
肉好きが幸いして、食料品の減りっぷりも歯止めがかかった。
それに買う予定だった薪は、全部イアンが森から持ってきてくれた。
明るくてたくましくて頼りになって、嫌味で余計なことにも頭が周り、目先が利く上に、手先も器用だ。
たまに街の食料品屋に猟の獲物を売りに行くと、大抵驚かれた。
「こりゃいい。処理もきれいだし、よく上等の鹿肉だなっ」
「腕のいい猟師だねえ」
おかみさんも褒めてくれた。
腕のいい猟師だと本人は一度も言った事がない。
だけど、きっと彼は優秀なのだ。猟の腕前は大した問題じゃないのだ。
最初に雪が降りだした時、イアンはそろそろ覚悟を決めてくれないかと言いだした。
「これから長い冬が始まる。ここに閉じ込められてしまう。僕はあなたが好きだ。このまま、ここで暮らしたい。ずっと一緒に」
それは……
イアンはうなずいた。もうすっかり筋肉隆々とした一人前の男だった。へろへろの痩せ騎士ではない。
見ほれるようないい男だった。
「あなたみたいな若い女性と二人きりは不自然だ。ちゃんと教会に行って、そして認められたい」
イアンの目に欲が浮かんだ。
「僕のものだと」
イアンは続けた。
「平凡で貧しい生活しかできないと思うけど、幸せに暮らせると思う……あなたが好きだ」
こう言われた時、私は嫌というほど気が付いた。
私は彼のことが好きだった。
だけど……もったいない。
これほどまでに、雪深い田舎に埋もれさせておくべきじゃない人物を私は知らない。
この人を、ここに閉じ込めておくことは正しいことなのだろうか。
連れてきたのは私なのだ。
もったいないと思う。人材の無駄遣い。
何よりも、後で彼は後悔しないだろうか。
「元の場所に戻してあげないと……」
私は思った。
「あと、ちょっとのお金があれば、きっと帰れる」
お金儲けは難しい。
私は悩んだ。私にできることと言えばジュースを作って売るくらいだ。
でも、冬の最中、いくらマグリナが暖かい地方にあると言っても、冷たいジュースは売れないと思う。
暖かいものの方が売れるわよね。
私は庭に山ほどあったドングリを思い出した。
あれをあったかくして、袋に詰めて売ったらどうだろう。
ドングリがほんのり燃えていく。人肌よりも少し暖かい温度で。
持って歩けば暖かい、不思議な袋。
数時間すれば、ドングリは燃え尽きて無くなってしまうが、ゴミにならない。
もちろん、ちょっとした魔法が必要だけど、袋に入れる時に掛ければいい。
それから、あったかいレモネードとホットジンジャー。
いいことがありますように。
そう祈って作ろう。
「何してるの?」
袋を作っていると、イアンが声をかけてきた。
「この家には端切れがいっぱいあったから、袋を作ろうと思って」
「何のために?」
妙なところに鋭いのはイアンの特長だ。
この頃は、雪が本格的になる前に、行けるだけ猟に出るって言ってたくせに。
「リナ。そろそろ返事を聞かせてよ」
「でも……」
「でもじゃないでしょ? 簡単なことだよ」
イアンはじれてきていた。
彼は私の前に座った。
「君は僕のこと、大好きでしょ?」
大好きです。
とても好き。
あなたのことを思うと、心があたたかくなる。嬉しくなる。
だけど、好きすぎて、私はあなたが今のままではダメなのじゃないかと思う。
私は平民じゃなかった。だから、貴族界で彼がどんな立ち位置を占めうるか、簡単に想像がつく。
「あなたは貴族なのに、私は平民だし……」
「そんなこと問題にならないよ。だって、僕も今はただの猟師だ」
あなたが、本当に、粗野で何の教養もないただの平民だったら……食事のたびに洗練された所作に驚かされなかったら……私は、私の魔法で隔離されたこの地にあなたが埋もれてしまっても、気にしないだろう。
だけど、若くて、知性あふれる最高の貴族が、ここで何をするというのだろう。
「それに婚約者もいたのでしょう? その人のこと、嫌いではなかったのでしょ?」
イアンはこの話になると、ちょっと黙る。
「でも、婚約は解消されている」
いつだったか、街でジュースを売っていた時、隣の食料品屋の奥さんが言っていた言葉を思い出す。
どこかの国では、王位を狙う勢力が、王太子殿下と自分たちの一族の令嬢と結婚させるために、殿下の婚約を破棄に追い込んだそうだ。
『愛し合っている二人の間を割くだなんて。婚約破棄された令嬢はすっかり悲観して修道院に入ってしまったそうなの。その後、自殺したそうよ』
その話を聞いた時、私は何も感じなかったけど、今はわかる。
もし本当にその婚約者同志が愛し合っていたのなら、なんて残酷なことをしたのだろうかと。
私はイアンに向かって、無理に微笑みながら、何気なく言った。
「私、この袋を年末の星祭りの時のために、売ろうと思ってるの。星祭りが終わったら教会に行きましょう」
イアンの顔が輝いた。
「教会にお礼のお金が少しは必要だわ」
「リナ」
イアンは顔を近づけてきて、キスした。
大好きな人から、キスされたら、こんな気持ちになるの?
私は固まってしまった。イアンはそれを見て、嬉しそうに笑った。
「ああ。びっくりさせてごめん。初めてだったんだね」
いま、この瞬間に、世界中がイアンの色に染まっていく。
私に大事な人が出来てしまった。
元・住所不定無職、呪い持ちの貧乏痩せ騎士、今・猟師。婚約者あり……。でも、やさしいの。
とても優しいの。
「じゃあ、行ってくるよ。たくさん獲って来るからね」
イアンは、ものすごく嬉しそうに猟に出て行った。
離れたくない。だけど、私はのろのろと立ち上がった。
そして、例の伯母からもらったバッグに、ドングリを山ほど詰め込んで、街に出た。
最初の頃のみすぼらしい痩せ騎士はもういなくなっていて、そうかといってふくふくに太らず、イアンはたくましい猟師?に化けていた。
彼が肩を翻して出ていくと、風がその後ろを舞っているようだった。
大きな人。
私は、彼との会話がとても楽しかった。
彼は博識で、私が知らないようなこともよく知っていた。
そして、彼の出身は彼自身が言っていたように、貴族、それもかなり高位の貴族だった。
国内外のいろいろな事情に通じていて、自分の見解を持っていた。
地政学や、歴史、はっきりと口にはしなかったけれど、今の政治状況もしっかり頭に入っていた。
どこが猟師なのよ。
ウサギを持って帰ってきた時は、仰天したけど、だんだん慣れてきて、彼の猟の獲物が楽しみになってきた。
肉好きが幸いして、食料品の減りっぷりも歯止めがかかった。
それに買う予定だった薪は、全部イアンが森から持ってきてくれた。
明るくてたくましくて頼りになって、嫌味で余計なことにも頭が周り、目先が利く上に、手先も器用だ。
たまに街の食料品屋に猟の獲物を売りに行くと、大抵驚かれた。
「こりゃいい。処理もきれいだし、よく上等の鹿肉だなっ」
「腕のいい猟師だねえ」
おかみさんも褒めてくれた。
腕のいい猟師だと本人は一度も言った事がない。
だけど、きっと彼は優秀なのだ。猟の腕前は大した問題じゃないのだ。
最初に雪が降りだした時、イアンはそろそろ覚悟を決めてくれないかと言いだした。
「これから長い冬が始まる。ここに閉じ込められてしまう。僕はあなたが好きだ。このまま、ここで暮らしたい。ずっと一緒に」
それは……
イアンはうなずいた。もうすっかり筋肉隆々とした一人前の男だった。へろへろの痩せ騎士ではない。
見ほれるようないい男だった。
「あなたみたいな若い女性と二人きりは不自然だ。ちゃんと教会に行って、そして認められたい」
イアンの目に欲が浮かんだ。
「僕のものだと」
イアンは続けた。
「平凡で貧しい生活しかできないと思うけど、幸せに暮らせると思う……あなたが好きだ」
こう言われた時、私は嫌というほど気が付いた。
私は彼のことが好きだった。
だけど……もったいない。
これほどまでに、雪深い田舎に埋もれさせておくべきじゃない人物を私は知らない。
この人を、ここに閉じ込めておくことは正しいことなのだろうか。
連れてきたのは私なのだ。
もったいないと思う。人材の無駄遣い。
何よりも、後で彼は後悔しないだろうか。
「元の場所に戻してあげないと……」
私は思った。
「あと、ちょっとのお金があれば、きっと帰れる」
お金儲けは難しい。
私は悩んだ。私にできることと言えばジュースを作って売るくらいだ。
でも、冬の最中、いくらマグリナが暖かい地方にあると言っても、冷たいジュースは売れないと思う。
暖かいものの方が売れるわよね。
私は庭に山ほどあったドングリを思い出した。
あれをあったかくして、袋に詰めて売ったらどうだろう。
ドングリがほんのり燃えていく。人肌よりも少し暖かい温度で。
持って歩けば暖かい、不思議な袋。
数時間すれば、ドングリは燃え尽きて無くなってしまうが、ゴミにならない。
もちろん、ちょっとした魔法が必要だけど、袋に入れる時に掛ければいい。
それから、あったかいレモネードとホットジンジャー。
いいことがありますように。
そう祈って作ろう。
「何してるの?」
袋を作っていると、イアンが声をかけてきた。
「この家には端切れがいっぱいあったから、袋を作ろうと思って」
「何のために?」
妙なところに鋭いのはイアンの特長だ。
この頃は、雪が本格的になる前に、行けるだけ猟に出るって言ってたくせに。
「リナ。そろそろ返事を聞かせてよ」
「でも……」
「でもじゃないでしょ? 簡単なことだよ」
イアンはじれてきていた。
彼は私の前に座った。
「君は僕のこと、大好きでしょ?」
大好きです。
とても好き。
あなたのことを思うと、心があたたかくなる。嬉しくなる。
だけど、好きすぎて、私はあなたが今のままではダメなのじゃないかと思う。
私は平民じゃなかった。だから、貴族界で彼がどんな立ち位置を占めうるか、簡単に想像がつく。
「あなたは貴族なのに、私は平民だし……」
「そんなこと問題にならないよ。だって、僕も今はただの猟師だ」
あなたが、本当に、粗野で何の教養もないただの平民だったら……食事のたびに洗練された所作に驚かされなかったら……私は、私の魔法で隔離されたこの地にあなたが埋もれてしまっても、気にしないだろう。
だけど、若くて、知性あふれる最高の貴族が、ここで何をするというのだろう。
「それに婚約者もいたのでしょう? その人のこと、嫌いではなかったのでしょ?」
イアンはこの話になると、ちょっと黙る。
「でも、婚約は解消されている」
いつだったか、街でジュースを売っていた時、隣の食料品屋の奥さんが言っていた言葉を思い出す。
どこかの国では、王位を狙う勢力が、王太子殿下と自分たちの一族の令嬢と結婚させるために、殿下の婚約を破棄に追い込んだそうだ。
『愛し合っている二人の間を割くだなんて。婚約破棄された令嬢はすっかり悲観して修道院に入ってしまったそうなの。その後、自殺したそうよ』
その話を聞いた時、私は何も感じなかったけど、今はわかる。
もし本当にその婚約者同志が愛し合っていたのなら、なんて残酷なことをしたのだろうかと。
私はイアンに向かって、無理に微笑みながら、何気なく言った。
「私、この袋を年末の星祭りの時のために、売ろうと思ってるの。星祭りが終わったら教会に行きましょう」
イアンの顔が輝いた。
「教会にお礼のお金が少しは必要だわ」
「リナ」
イアンは顔を近づけてきて、キスした。
大好きな人から、キスされたら、こんな気持ちになるの?
私は固まってしまった。イアンはそれを見て、嬉しそうに笑った。
「ああ。びっくりさせてごめん。初めてだったんだね」
いま、この瞬間に、世界中がイアンの色に染まっていく。
私に大事な人が出来てしまった。
元・住所不定無職、呪い持ちの貧乏痩せ騎士、今・猟師。婚約者あり……。でも、やさしいの。
とても優しいの。
「じゃあ、行ってくるよ。たくさん獲って来るからね」
イアンは、ものすごく嬉しそうに猟に出て行った。
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