104 / 120
第104話 気が付けば、お茶会のテーマ変更
しおりを挟む
お茶会!
ブライトン公爵家で何回か参加して、なんなら一回くらいはブライトン家の侍女と一緒に計画する側に回ったことがある。
結構、得意だと思う。
だが、わかっているだけにシエナは悩んだ。
呼びたい要員はキャロライン嬢、アリス嬢、イライザ嬢と、えーとそれから……
たかがお茶会とは言え、未婚の貴族令嬢を、女性の監督者のいない家に招くわけにはいかない。
ましてや、キャロライン嬢、アリス嬢を呼ぶとなれば、家格の劣る伯爵家からのお招きだ。
そこで、まず、社交界でも名の通ったコーンウォール卿夫人を監督としてお呼びした。
公爵家も安心して娘を寄越せるように。
次に、親戚でもないコーンウォール卿夫人がなぜ取り仕切っているのかという理由を作らなくてはいけない。
どうしようかと思ったが、現在の状況で言えば、お茶会のテーマは「内輪の婚約お披露会」しかないだろう。いつかは正式に発表しないといけないわけだし。
これなら、コーンウォール卿夫人が取り仕切るのも当然だ。
最初に、コーンウォール卿夫人と当主のパトリックが挨拶して、リオを婚約者として紹介し、姉のリリアスがお茶を持ってきた侍女の監督といった格好で、加わってちょっとおしゃべりする、と言うスケジュールにした。
「どう思う? イライザ嬢?」
リオのファンクラブ会員を集めて、リオの婚約披露会の開催するというのは、相当大胆なプランじゃないかと、シエナは不安だった。
「なんか山盛りですけど、リリアス様以外は、全員もう顔を知ってますしね。大丈夫じゃないでしょうか」
常に新たなスターを探し求めているイライザ嬢は冷静だった。
「まあ、リオ様ときたら、シエナ様一筋ですからね。もう、最初から仕方なかったですもんね」
他人にもそう見えるのか。
ちょっとシエナは赤くなった。
他にも、子爵家のご令嬢マーガレット嬢とベアトリス嬢が来てくれることになり、賑やかな会になりそうだった。
「あの二人なら大丈夫ですわ。余計なことは言いませんし」
イライザ嬢は保証した。一方、キャロライン嬢は無邪気に言った。
「へええ! シエナのお家に呼ばれるのは初めてだわ!」
あのボロ屋敷には呼べませんから……
シエナは苦笑したが、お茶会はつつがなくスタートした。
ラッフルズは、家の改築に相当奮発したに違いない。
あのキャロライン嬢とアリス嬢が、いいおうちねと感心していた。
まあ、お宅拝見も、コーンウォール卿夫人とリーズ伯爵が現れるまでだったが。
「妹をよろしく」
今度こそ、本物の兄登場だった。
地味で飾りの少ない服を着こなしていたが、なぜかカッコイイ。シエナによく似ている。それから、リオもやってきた。
「この度正式に婚約が整いまして」
リオは微笑んで言ったが、どこか満足げだ。
「では、ごゆっくり」
三人が去り、ドアが静かにしまったとたん、
ゴクリ。
新旧二人のマンスリー・メンズ・レポート・クラシック、ナンバーワンの登場だった。そして、同時に政権交代の瞬間でもあった。
シエナ以外の五人娘は、お互いに顔を見合わせた。
「見た?」
「見たわ」
リオはどこへ置き忘れられたのか。
話題はひたすらにパトリック一色になっていた。
「パトリック様……素晴らしい逸品ですわ」
イライザ嬢が満足そうに言った。
うちの兄はモノではない。
令嬢方はソワソワ相談を始めた。
「どうしましょう?」
どうする気なのか聞きたいのはこっちである。シエナは兄が心配になってきた。パトリックをどうするつもり?
これでいいのか? この方がいいんだろうなあ。
ノックの音と同時に茶器の音がしたので、お茶が運ばれてきたのだとすぐわかった。
次はリリアスの登場だ。みんなが緊張した。
ちょっと恥ずかしそうに現れたリリアスは、シエナに本当によく似ていた。
シエナが姉のそばに寄った。
「姉のリリアスですわ」
シエナが落ち着いた調子で紹介する。
全員が穴が開くほど、噂の駆け落ち伯爵令嬢、現在のラッフルズ夫人を見つめた。
シエナのほうが背が高い。でも、リリアスも大変な美人だとみんな思った。
確かにこれでは執着する男が出てきても不思議ではない。シエナの場合は、リオとそれから圧倒的権力者のアラン殿下が守り切ったけれど。
しかしながら、イライザ嬢が声をかけた。
「失礼ですが、パトリック様とはおいくつ違いですの?」
せっかく出てきたリリアスに関係ない、なんだか不適切なような質問だったが、なぜかこれに令嬢方はグイと乗り出した。
「三歳違いですのよ。シエナと私たちが少し年が離れていて……」
イライザ嬢以下全員が、今度はくるりとシエナに目を向けたので、シエナは解説した。
「姉とは四つ離れていますの」
全員が一生懸命計算していたのは、リリアスの年齢ではない。パトリックの年だ。
3+4+17(シエナの年齢)=24?
若い。思っていたよりずっと若い! これなら十分圏内だ。
リリアスがケーキやパイを説明しながら勧めてくれたが、残念なことに誰も聞いちゃいなかった。
友達のカレシを奪うことを考えるような不届き者はここにはいない。
だがしかし、リオをも吹き飛ばすような絶対王者……ではない、絶対的イケメンが先ほど登場した。
そして生声も聞かせていただいた。
いい声だ。全員の感想が一致した。
なおかつ、ずっとみんなが気になっていたパトリックの年齢が判明したのだ。
「ということはリリアス様、リーズ伯爵様は、二十四歳ですか?」
常に恐れを知らないアリス嬢が堂々と聞いた。
「パトリックは十二月生まれなので、もうすぐ二十五歳になるわ」
「何日生まれなのですか?」
食い込むイライザ嬢。
「十二月祭りの日なのよ。それでパトリックという名前なの」
リリアス夫人はゆったりとほほ笑みながら、教えてくれた。
そうか。十二月祭りは、勇者パトリックが悪竜からこの地を救い、国を開いた記念の祭り。
「なんだか、勇者みたいなお名前ですね」
アリス嬢が感想を述べた。
勇者の名前である。本人は別に勇者でも何でもないけれど。
「でも、パトリックは勇者っぽいのよ」
リリアス夫人が解説した。
「どういうことですか?」
リリアス夫人はにっこり優雅に答えた。
「辺境の南部地域の軍にいたころは、国境線なので、結構、小競り合いなどもあったみたいなの。血が騒ぐらしくて、切り込み隊長をしていたらしいの」
え? あんな顔なのに?
「危ないでしょ? 妹の私としては、ぜひとも止めて欲しかったのだけど、そう手紙に書くと、それっきりその話題はしてこなくなってしまって。でも、ラッフルズは自国他国を問わず、支店が多いもので、いろんな噂が届くのよ。パトリック兄さまは敵側から銀騎士というあだ名で呼ばれていたらしいの」
「銀騎士?」
パトリック様のことなら、なんでも聞きたいイライザ嬢が聞き返した。
「髪の毛の色のことらしいわ。パトリックの髪は銀ではないのだけど、南部地域は帝国との国境線であちらの人はみんな黒っぽい髪でしょう。パトリックの髪色が目立ったらしくて。それに、やたらに強かったらしいわ。こっちに帰ってきてくれて安心しました。本人は嫌みたいですけどね」
ほおおおお。
なんとなく、好物感のあるお話ですわ。
「パトリック様に剣は似合いそうですわね」
キャロライン様が素直に感想を述べた。
「それより、飲み物はいかが? このタルトのストロベリーは温室で育てましたのよ」
ストロベリーの一言に、はっと我に返った一同は、様々なスイーツに目を向けた。
豪華。公爵家でもなかなか出ない品々だ。
「おいしいわ」
特にシエナは感慨深かった。圧倒的なまでのラッフルズの財力!
冬の最中に温室栽培のイチゴを惜しげもなく使い、薫り高いお茶は初めて飲む舶来の高級品だった。
ついこの前まで、この伯爵邸は荒れ果てて、シエナは着るものも食べるものなく、本格的な冬になったらどうしようと怯えていたのに。
ブライトン公爵家で何回か参加して、なんなら一回くらいはブライトン家の侍女と一緒に計画する側に回ったことがある。
結構、得意だと思う。
だが、わかっているだけにシエナは悩んだ。
呼びたい要員はキャロライン嬢、アリス嬢、イライザ嬢と、えーとそれから……
たかがお茶会とは言え、未婚の貴族令嬢を、女性の監督者のいない家に招くわけにはいかない。
ましてや、キャロライン嬢、アリス嬢を呼ぶとなれば、家格の劣る伯爵家からのお招きだ。
そこで、まず、社交界でも名の通ったコーンウォール卿夫人を監督としてお呼びした。
公爵家も安心して娘を寄越せるように。
次に、親戚でもないコーンウォール卿夫人がなぜ取り仕切っているのかという理由を作らなくてはいけない。
どうしようかと思ったが、現在の状況で言えば、お茶会のテーマは「内輪の婚約お披露会」しかないだろう。いつかは正式に発表しないといけないわけだし。
これなら、コーンウォール卿夫人が取り仕切るのも当然だ。
最初に、コーンウォール卿夫人と当主のパトリックが挨拶して、リオを婚約者として紹介し、姉のリリアスがお茶を持ってきた侍女の監督といった格好で、加わってちょっとおしゃべりする、と言うスケジュールにした。
「どう思う? イライザ嬢?」
リオのファンクラブ会員を集めて、リオの婚約披露会の開催するというのは、相当大胆なプランじゃないかと、シエナは不安だった。
「なんか山盛りですけど、リリアス様以外は、全員もう顔を知ってますしね。大丈夫じゃないでしょうか」
常に新たなスターを探し求めているイライザ嬢は冷静だった。
「まあ、リオ様ときたら、シエナ様一筋ですからね。もう、最初から仕方なかったですもんね」
他人にもそう見えるのか。
ちょっとシエナは赤くなった。
他にも、子爵家のご令嬢マーガレット嬢とベアトリス嬢が来てくれることになり、賑やかな会になりそうだった。
「あの二人なら大丈夫ですわ。余計なことは言いませんし」
イライザ嬢は保証した。一方、キャロライン嬢は無邪気に言った。
「へええ! シエナのお家に呼ばれるのは初めてだわ!」
あのボロ屋敷には呼べませんから……
シエナは苦笑したが、お茶会はつつがなくスタートした。
ラッフルズは、家の改築に相当奮発したに違いない。
あのキャロライン嬢とアリス嬢が、いいおうちねと感心していた。
まあ、お宅拝見も、コーンウォール卿夫人とリーズ伯爵が現れるまでだったが。
「妹をよろしく」
今度こそ、本物の兄登場だった。
地味で飾りの少ない服を着こなしていたが、なぜかカッコイイ。シエナによく似ている。それから、リオもやってきた。
「この度正式に婚約が整いまして」
リオは微笑んで言ったが、どこか満足げだ。
「では、ごゆっくり」
三人が去り、ドアが静かにしまったとたん、
ゴクリ。
新旧二人のマンスリー・メンズ・レポート・クラシック、ナンバーワンの登場だった。そして、同時に政権交代の瞬間でもあった。
シエナ以外の五人娘は、お互いに顔を見合わせた。
「見た?」
「見たわ」
リオはどこへ置き忘れられたのか。
話題はひたすらにパトリック一色になっていた。
「パトリック様……素晴らしい逸品ですわ」
イライザ嬢が満足そうに言った。
うちの兄はモノではない。
令嬢方はソワソワ相談を始めた。
「どうしましょう?」
どうする気なのか聞きたいのはこっちである。シエナは兄が心配になってきた。パトリックをどうするつもり?
これでいいのか? この方がいいんだろうなあ。
ノックの音と同時に茶器の音がしたので、お茶が運ばれてきたのだとすぐわかった。
次はリリアスの登場だ。みんなが緊張した。
ちょっと恥ずかしそうに現れたリリアスは、シエナに本当によく似ていた。
シエナが姉のそばに寄った。
「姉のリリアスですわ」
シエナが落ち着いた調子で紹介する。
全員が穴が開くほど、噂の駆け落ち伯爵令嬢、現在のラッフルズ夫人を見つめた。
シエナのほうが背が高い。でも、リリアスも大変な美人だとみんな思った。
確かにこれでは執着する男が出てきても不思議ではない。シエナの場合は、リオとそれから圧倒的権力者のアラン殿下が守り切ったけれど。
しかしながら、イライザ嬢が声をかけた。
「失礼ですが、パトリック様とはおいくつ違いですの?」
せっかく出てきたリリアスに関係ない、なんだか不適切なような質問だったが、なぜかこれに令嬢方はグイと乗り出した。
「三歳違いですのよ。シエナと私たちが少し年が離れていて……」
イライザ嬢以下全員が、今度はくるりとシエナに目を向けたので、シエナは解説した。
「姉とは四つ離れていますの」
全員が一生懸命計算していたのは、リリアスの年齢ではない。パトリックの年だ。
3+4+17(シエナの年齢)=24?
若い。思っていたよりずっと若い! これなら十分圏内だ。
リリアスがケーキやパイを説明しながら勧めてくれたが、残念なことに誰も聞いちゃいなかった。
友達のカレシを奪うことを考えるような不届き者はここにはいない。
だがしかし、リオをも吹き飛ばすような絶対王者……ではない、絶対的イケメンが先ほど登場した。
そして生声も聞かせていただいた。
いい声だ。全員の感想が一致した。
なおかつ、ずっとみんなが気になっていたパトリックの年齢が判明したのだ。
「ということはリリアス様、リーズ伯爵様は、二十四歳ですか?」
常に恐れを知らないアリス嬢が堂々と聞いた。
「パトリックは十二月生まれなので、もうすぐ二十五歳になるわ」
「何日生まれなのですか?」
食い込むイライザ嬢。
「十二月祭りの日なのよ。それでパトリックという名前なの」
リリアス夫人はゆったりとほほ笑みながら、教えてくれた。
そうか。十二月祭りは、勇者パトリックが悪竜からこの地を救い、国を開いた記念の祭り。
「なんだか、勇者みたいなお名前ですね」
アリス嬢が感想を述べた。
勇者の名前である。本人は別に勇者でも何でもないけれど。
「でも、パトリックは勇者っぽいのよ」
リリアス夫人が解説した。
「どういうことですか?」
リリアス夫人はにっこり優雅に答えた。
「辺境の南部地域の軍にいたころは、国境線なので、結構、小競り合いなどもあったみたいなの。血が騒ぐらしくて、切り込み隊長をしていたらしいの」
え? あんな顔なのに?
「危ないでしょ? 妹の私としては、ぜひとも止めて欲しかったのだけど、そう手紙に書くと、それっきりその話題はしてこなくなってしまって。でも、ラッフルズは自国他国を問わず、支店が多いもので、いろんな噂が届くのよ。パトリック兄さまは敵側から銀騎士というあだ名で呼ばれていたらしいの」
「銀騎士?」
パトリック様のことなら、なんでも聞きたいイライザ嬢が聞き返した。
「髪の毛の色のことらしいわ。パトリックの髪は銀ではないのだけど、南部地域は帝国との国境線であちらの人はみんな黒っぽい髪でしょう。パトリックの髪色が目立ったらしくて。それに、やたらに強かったらしいわ。こっちに帰ってきてくれて安心しました。本人は嫌みたいですけどね」
ほおおおお。
なんとなく、好物感のあるお話ですわ。
「パトリック様に剣は似合いそうですわね」
キャロライン様が素直に感想を述べた。
「それより、飲み物はいかが? このタルトのストロベリーは温室で育てましたのよ」
ストロベリーの一言に、はっと我に返った一同は、様々なスイーツに目を向けた。
豪華。公爵家でもなかなか出ない品々だ。
「おいしいわ」
特にシエナは感慨深かった。圧倒的なまでのラッフルズの財力!
冬の最中に温室栽培のイチゴを惜しげもなく使い、薫り高いお茶は初めて飲む舶来の高級品だった。
ついこの前まで、この伯爵邸は荒れ果てて、シエナは着るものも食べるものなく、本格的な冬になったらどうしようと怯えていたのに。
11
お気に入りに追加
514
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる