【完結】儚げ超絶美少女の王女様、うっかり貧乏騎士(中身・王子)を餌付けして、(自称)冒険の旅に出る。

buchi

文字の大きさ
上 下
45 / 62

第45話 エドの独占欲

しおりを挟む
翌日、私は、エドの前で正座させられていた。

なにか異様なオーラがエドから出ている。

ラビリアは魔力不足のため、ウサギのままで放置されていた。

こっちも侍女の姿に戻ったら、相当文句を言われることを覚悟しないといけない。

だが、ラビリアがいないと、エドはヒートアップする傾向がある。

「なんで、あんなのとデートしてたんだ?」

「だって……」

騎士団長だって言うんですもの。情報が取れると思ったの。私はスパイのつもりだったんだもの。

「だからって、デートする必要はないだろう!」

「誘われたのよ。それで、二人きりの方が色々聞けると思って」

エドは真っ赤になってそれから歯軋はぎしりした。

「この……ばか」

どうしてみんなで私をバカ呼ばわりするの?

「よかったでしょ? おかげでいろんなことがわかったわ」

そう。突然、なんの抵抗もなく、クレイモア家の邸宅に侵入出来たのだ。

しかも、王家に近い貴族たちの動向を知ることができた。

勝手に大揉おおもめになっていたので、聞きたい放題だった。

それに、スパイ?には、全然、見えなかったに違いない。

本当はのどから手が出そうなくらいほしい情報だったけど、全くそうは見えなかったことを保証するわ!


エドはキリキリしていた。

「そのせいで、ティナ様がリール家から目をつけられたじゃないか!」

「あのジェラルディンね。私に向かって、エドウィン王太子とは幼馴染で実は愛し合っているって言った」

「え?」

エドがびっくりした顔になった。

「あの人、あなたが好きだったんじゃないかしら。それとも、本当に好きだったのは王妃と言う身分だったのかしらね?」

「いつの話?」

「私が輿こし入れのためにガレンの王城に滞在していた時の話よ」

なんだかとても昔のような気がする。

あの時のガレンはずっと雨が降っていたような気さえする。

実際にはずっと屋内にいたので、空模様なんかわからなかったのだけど。

「でも、結果的にはよかったじゃない。怒ることなんかないわ」

「ティナ様」

エドがあらたまって口を切った。

「このあと、あなたはどうするの?」

「どうとは?」

「まさか、あの見た目綺麗なだけの男と本気で結婚する気なの?」

「まさか!」

私は全力で否定した。

「伯爵家の子息よ? 嫡男でもない。全くどうでもいいわ。それなら
アルクマールに帰った方がいい」

「アルクマールに帰るのか?」

エドの声が突然不安そうになった。

私はエドの方を向き直った。

「それは……王位を奪還し終わったら、私は帰ることになってたでしょ? 最初から」

エドは目を見開いた。

え? そこは驚くとこじゃないでしょ?

「ダメだ。帰らないで欲しい」

エドは一生懸命言った。だが、考えて言い直した。

「いや、帰ってもいい」

どっちなのよ。

「今はリール家に狙われて危険だから、アルクマールに帰ってもいい。でも、もし、この国が俺の手に戻ったら、その時は、戻ってきてほしい」

エドは必死だった。


「ファルクなんか死ねばいい」

「はい?」

「ことが済んだら殺してやる」

「アンセルムは友達じゃないの?」

「弟のファルクのことはちょっと変人だって言っていた。屋敷内で会ったこともある。だが、許せん」

突然、エドは手を取った。

「言っちゃいけないことはわかっているけど、先に約束したのは俺だ」

「言っちゃいけない?」

「そうだ。こんな有様では、あなたにお願いする言葉さえ口にできないことはわかっている。だけど……」

エドはつかえながら続けた。

「生まれた時からの約束だ。ずっと自分のものだと信じていた。その約束をたがえないで欲しい。ええと……」

声がスッと小さくなった。

「好きだから……誰のものにもならないと約束してほしい」

それから切々と説教された。

デートは禁止、二人きりの食事も禁止、ダンスも禁止(どこで踊るって言うんだろう?)、クレイモア家へのご招待に応じてもダメ。

「その代わり、俺も何もしないから」

(……何をするつもりなのかしら……)

私は黙った。冗談ではない。

エドは切なそうに言った。

「本当は好きなんだ」

「何、ややこしいこと言っているの? 私は協力者なのよ?」

「違うよ、愛しい人だ」

あ、どこかで聞いたようなセリフ。

「少なくとも彼のことは選ばないで。そばに行かないで。気が狂いそうになるから」

私は、この気が狂いそうになるという生き物を眺めた。

何を言ってるのかわからない。

「そんなに心配することじゃないと思う」

「ティナはわかっていない!」

「ええと、ファルクに近寄らなければいいのよね……」

それなら簡単だ。ハンスの店に行かなければいいだけだ。

だが、生憎あいにく、事態はそんな方向には進まなかった。

エドの希望は全部、ぶっ潰されていったのだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」 *** ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。 しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。 ――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。  今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。  それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。  これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。  そんな復讐と解放と恋の物語。 ◇ ◆ ◇ ※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。  さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。  カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。 ※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。  選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。 ※表紙絵はフリー素材を拝借しました。

【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」 婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。 ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。 しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。 「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」 ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。 しかし、ある日のこと見てしまう。 二人がキスをしているところを。 そのとき、私の中で何かが壊れた……。

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

処理中です...