【完結】儚げ超絶美少女の王女様、うっかり貧乏騎士(中身・王子)を餌付けして、(自称)冒険の旅に出る。

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第45話 エドの独占欲

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翌日、私は、エドの前で正座させられていた。

なにか異様なオーラがエドから出ている。

ラビリアは魔力不足のため、ウサギのままで放置されていた。

こっちも侍女の姿に戻ったら、相当文句を言われることを覚悟しないといけない。

だが、ラビリアがいないと、エドはヒートアップする傾向がある。

「なんで、あんなのとデートしてたんだ?」

「だって……」

騎士団長だって言うんですもの。情報が取れると思ったの。私はスパイのつもりだったんだもの。

「だからって、デートする必要はないだろう!」

「誘われたのよ。それで、二人きりの方が色々聞けると思って」

エドは真っ赤になってそれから歯軋はぎしりした。

「この……ばか」

どうしてみんなで私をバカ呼ばわりするの?

「よかったでしょ? おかげでいろんなことがわかったわ」

そう。突然、なんの抵抗もなく、クレイモア家の邸宅に侵入出来たのだ。

しかも、王家に近い貴族たちの動向を知ることができた。

勝手に大揉おおもめになっていたので、聞きたい放題だった。

それに、スパイ?には、全然、見えなかったに違いない。

本当はのどから手が出そうなくらいほしい情報だったけど、全くそうは見えなかったことを保証するわ!


エドはキリキリしていた。

「そのせいで、ティナ様がリール家から目をつけられたじゃないか!」

「あのジェラルディンね。私に向かって、エドウィン王太子とは幼馴染で実は愛し合っているって言った」

「え?」

エドがびっくりした顔になった。

「あの人、あなたが好きだったんじゃないかしら。それとも、本当に好きだったのは王妃と言う身分だったのかしらね?」

「いつの話?」

「私が輿こし入れのためにガレンの王城に滞在していた時の話よ」

なんだかとても昔のような気がする。

あの時のガレンはずっと雨が降っていたような気さえする。

実際にはずっと屋内にいたので、空模様なんかわからなかったのだけど。

「でも、結果的にはよかったじゃない。怒ることなんかないわ」

「ティナ様」

エドがあらたまって口を切った。

「このあと、あなたはどうするの?」

「どうとは?」

「まさか、あの見た目綺麗なだけの男と本気で結婚する気なの?」

「まさか!」

私は全力で否定した。

「伯爵家の子息よ? 嫡男でもない。全くどうでもいいわ。それなら
アルクマールに帰った方がいい」

「アルクマールに帰るのか?」

エドの声が突然不安そうになった。

私はエドの方を向き直った。

「それは……王位を奪還し終わったら、私は帰ることになってたでしょ? 最初から」

エドは目を見開いた。

え? そこは驚くとこじゃないでしょ?

「ダメだ。帰らないで欲しい」

エドは一生懸命言った。だが、考えて言い直した。

「いや、帰ってもいい」

どっちなのよ。

「今はリール家に狙われて危険だから、アルクマールに帰ってもいい。でも、もし、この国が俺の手に戻ったら、その時は、戻ってきてほしい」

エドは必死だった。


「ファルクなんか死ねばいい」

「はい?」

「ことが済んだら殺してやる」

「アンセルムは友達じゃないの?」

「弟のファルクのことはちょっと変人だって言っていた。屋敷内で会ったこともある。だが、許せん」

突然、エドは手を取った。

「言っちゃいけないことはわかっているけど、先に約束したのは俺だ」

「言っちゃいけない?」

「そうだ。こんな有様では、あなたにお願いする言葉さえ口にできないことはわかっている。だけど……」

エドはつかえながら続けた。

「生まれた時からの約束だ。ずっと自分のものだと信じていた。その約束をたがえないで欲しい。ええと……」

声がスッと小さくなった。

「好きだから……誰のものにもならないと約束してほしい」

それから切々と説教された。

デートは禁止、二人きりの食事も禁止、ダンスも禁止(どこで踊るって言うんだろう?)、クレイモア家へのご招待に応じてもダメ。

「その代わり、俺も何もしないから」

(……何をするつもりなのかしら……)

私は黙った。冗談ではない。

エドは切なそうに言った。

「本当は好きなんだ」

「何、ややこしいこと言っているの? 私は協力者なのよ?」

「違うよ、愛しい人だ」

あ、どこかで聞いたようなセリフ。

「少なくとも彼のことは選ばないで。そばに行かないで。気が狂いそうになるから」

私は、この気が狂いそうになるという生き物を眺めた。

何を言ってるのかわからない。

「そんなに心配することじゃないと思う」

「ティナはわかっていない!」

「ええと、ファルクに近寄らなければいいのよね……」

それなら簡単だ。ハンスの店に行かなければいいだけだ。

だが、生憎あいにく、事態はそんな方向には進まなかった。

エドの希望は全部、ぶっ潰されていったのだ。
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