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第22話 冒険に出られず
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早い話が、私は独立を目指した。
エドと一緒に冒険に出かける道を選んだのだ。
私は、エドを追いかけ追いついた。エッセン伯爵夫人は撒いて見せたわ。
やる気になれば、これくらい簡単よ。
それなのに……
「いい? 絶対、エドの為なんかじゃないんだからね?」
「え? あのー、出来れば、ついて来ないでくれた方が……」
エドは無精髭で段々黒化していく顔の中から、困ったような表情で答えた。
なぜ困る? もっと喜んでいいのよ?
「それに、先に言っとくけど、私の好みは、痩せてすらりとした知的な男性なの」
「俺はそんなこと、聞いてない……」
「知らなかったかも知れないことは、認めるわ」
私は公正だもの。一応、エドの主張は認めた。
「違う。男性の好みなんか質問してないから。それはとにかく、くっ付いて来るとは聞いてなかった……」
「やっぱりあなた一人じゃ力不足だと思うの。私も一緒に闘うわ」
折角の申し出なのに、エドは弱りきった様子だった。
「美少女戦士なの? でも、実戦の際には、ちょっと、あの……」
確かに私は身長不足。エドの胸辺りまでしか背はないわ。
だけど、それがなんだって言うの? 私には有り余る魔法力がある。
「クリスティーナ様、ちょっと戻って、国王陛下と相談してきていいですか?」
「あら、だめよ。お父様は全然認めてくださらないの。ひどいと思わない?」
「やっぱり」
エドはガックリと肩を落とした。
旅は始まった途端に終わりを告げた。
「じゃー、姫君様はそちらで厳重にお預かりくださるってことで」
「もちろん! もちろんですわ! 連れ帰ってくださって、ありがとうございましたー!」
母の王妃様と侍女頭のエッセン伯爵夫人は、引き攣った笑顔でエドを見送った。
その後ろでは、私は、他の屈強な侍女二名により、羽交い締めにされていた。
なぜ?
どうして、王女をこんな目に遭わせるの?
「いいええ。俺の方こそ助かりました。いやー、お姫様に何かあったら、生きた心地がしませんから」
「ごもっともですわあ。ほんっとーに、ご迷惑をおかけしました!」
そう言うと、一国の王妃ともあろう母が深々と頭を下げた。
エドはにこやかに手を振ると、さっさと馬に乗って行ってしまった。
「さて」
エドを見送った母は、ギロリンと私に顔を向けた。
「なんで、こんな真似を仕出かしてくれたのかしら? 理由を聞かせてもらおうじゃないの」
「ぼ、冒険をしたかったのよ!」
「冒険?」
母と侍女頭と私を羽交い締めにしていた屈強な侍女が、はああ…っとため息を漏らした。
「エド様がお気の毒」
「なんでよ?」
彼女たちは一斉に憐れみの目を向けた。
「エド様は、これから追っ手を撒きながら、ガレンに再入国しなくてはいけないのです」
「現王家と敵対する家も多いでしょう。その情報を頼りに、勢力を拡大していくのです。時間と根気が必要な仕事です。どれくらいかかるかわからない」
「誰が味方かもわかりません」
「途中で裏切られるかもしれません。危険なのです。いつ戦闘になるかも分からない」
「だからこそ、私が!」
彼女たちは、再度深いため息をつくと、口々に言った。
「あなたみたいな子どもがついて行ったって、戦闘力にすらならないでしょう? それとも剣でも使えるというのですか?」
「……剣は使えないけど」
「馬に乗れるとでも?」
「馬は乗れないけど」
鹿になら乗れる。森で練習したから。結構な特技だと思う。それに、私、カエルから馬を作れるわ!
でも、これを言うと、おばあさまに叱られるかな……
「そら、ご覧なさい」
黙っていると、勝ち誇ったように憎たらしい母たちが決めつけた。
「足手まといがオチですよ。エド様のことは、アルクマールにとっても賭けなのです。成るかならないか。失敗したら、エド様はここに来なかったことになる」
母は唇をキッと引き締めて宣言した。
「失敗する可能性は高い。今、彼は国家の敵なのです。一度、死んだことになってる。それでも、あの若者は挑むと言うのです。アルクマールは彼に金を与えました。だが、それ以上のことを表立ってできるわけではない」
母は、私を見た。
「あなたの気持ちはわかるわ。とても逞しい、男ぶりのいい立派な若者ですもの。自分の立ち位置をキチンと理解し、運命に挑む。よほどの胆力がないとできないことです。でも、今は待ちましょう」
侍女たちもウンウンと頷いている。なぜか一人は涙を拭いていた。
「私たちも、彼には感動しましたわ。なんなんでしょうね。ああいう気概は、伝わるものです。身ひとつでチャレンジするだなんて。でも、だからこそ、あなたの邪魔は許しません」
サッと母が手で合図すると、私は侍女二名にいとも簡単に担ぎ上げられた。
「しばらく、部屋で反省していなさい」
それからこっそり言った。
「やっぱり、筋肉隆々が趣味じゃないの! この嘘つき」
違ううううう!
エドと一緒に冒険に出かける道を選んだのだ。
私は、エドを追いかけ追いついた。エッセン伯爵夫人は撒いて見せたわ。
やる気になれば、これくらい簡単よ。
それなのに……
「いい? 絶対、エドの為なんかじゃないんだからね?」
「え? あのー、出来れば、ついて来ないでくれた方が……」
エドは無精髭で段々黒化していく顔の中から、困ったような表情で答えた。
なぜ困る? もっと喜んでいいのよ?
「それに、先に言っとくけど、私の好みは、痩せてすらりとした知的な男性なの」
「俺はそんなこと、聞いてない……」
「知らなかったかも知れないことは、認めるわ」
私は公正だもの。一応、エドの主張は認めた。
「違う。男性の好みなんか質問してないから。それはとにかく、くっ付いて来るとは聞いてなかった……」
「やっぱりあなた一人じゃ力不足だと思うの。私も一緒に闘うわ」
折角の申し出なのに、エドは弱りきった様子だった。
「美少女戦士なの? でも、実戦の際には、ちょっと、あの……」
確かに私は身長不足。エドの胸辺りまでしか背はないわ。
だけど、それがなんだって言うの? 私には有り余る魔法力がある。
「クリスティーナ様、ちょっと戻って、国王陛下と相談してきていいですか?」
「あら、だめよ。お父様は全然認めてくださらないの。ひどいと思わない?」
「やっぱり」
エドはガックリと肩を落とした。
旅は始まった途端に終わりを告げた。
「じゃー、姫君様はそちらで厳重にお預かりくださるってことで」
「もちろん! もちろんですわ! 連れ帰ってくださって、ありがとうございましたー!」
母の王妃様と侍女頭のエッセン伯爵夫人は、引き攣った笑顔でエドを見送った。
その後ろでは、私は、他の屈強な侍女二名により、羽交い締めにされていた。
なぜ?
どうして、王女をこんな目に遭わせるの?
「いいええ。俺の方こそ助かりました。いやー、お姫様に何かあったら、生きた心地がしませんから」
「ごもっともですわあ。ほんっとーに、ご迷惑をおかけしました!」
そう言うと、一国の王妃ともあろう母が深々と頭を下げた。
エドはにこやかに手を振ると、さっさと馬に乗って行ってしまった。
「さて」
エドを見送った母は、ギロリンと私に顔を向けた。
「なんで、こんな真似を仕出かしてくれたのかしら? 理由を聞かせてもらおうじゃないの」
「ぼ、冒険をしたかったのよ!」
「冒険?」
母と侍女頭と私を羽交い締めにしていた屈強な侍女が、はああ…っとため息を漏らした。
「エド様がお気の毒」
「なんでよ?」
彼女たちは一斉に憐れみの目を向けた。
「エド様は、これから追っ手を撒きながら、ガレンに再入国しなくてはいけないのです」
「現王家と敵対する家も多いでしょう。その情報を頼りに、勢力を拡大していくのです。時間と根気が必要な仕事です。どれくらいかかるかわからない」
「誰が味方かもわかりません」
「途中で裏切られるかもしれません。危険なのです。いつ戦闘になるかも分からない」
「だからこそ、私が!」
彼女たちは、再度深いため息をつくと、口々に言った。
「あなたみたいな子どもがついて行ったって、戦闘力にすらならないでしょう? それとも剣でも使えるというのですか?」
「……剣は使えないけど」
「馬に乗れるとでも?」
「馬は乗れないけど」
鹿になら乗れる。森で練習したから。結構な特技だと思う。それに、私、カエルから馬を作れるわ!
でも、これを言うと、おばあさまに叱られるかな……
「そら、ご覧なさい」
黙っていると、勝ち誇ったように憎たらしい母たちが決めつけた。
「足手まといがオチですよ。エド様のことは、アルクマールにとっても賭けなのです。成るかならないか。失敗したら、エド様はここに来なかったことになる」
母は唇をキッと引き締めて宣言した。
「失敗する可能性は高い。今、彼は国家の敵なのです。一度、死んだことになってる。それでも、あの若者は挑むと言うのです。アルクマールは彼に金を与えました。だが、それ以上のことを表立ってできるわけではない」
母は、私を見た。
「あなたの気持ちはわかるわ。とても逞しい、男ぶりのいい立派な若者ですもの。自分の立ち位置をキチンと理解し、運命に挑む。よほどの胆力がないとできないことです。でも、今は待ちましょう」
侍女たちもウンウンと頷いている。なぜか一人は涙を拭いていた。
「私たちも、彼には感動しましたわ。なんなんでしょうね。ああいう気概は、伝わるものです。身ひとつでチャレンジするだなんて。でも、だからこそ、あなたの邪魔は許しません」
サッと母が手で合図すると、私は侍女二名にいとも簡単に担ぎ上げられた。
「しばらく、部屋で反省していなさい」
それからこっそり言った。
「やっぱり、筋肉隆々が趣味じゃないの! この嘘つき」
違ううううう!
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