1 / 28
第1話 目指せ! 劇場型婚約破棄
しおりを挟む
「この婚約は……! 悲劇だわ」
私の名前はシシリー・ミッドフォード。
成金男爵家の娘だ。
黒い髪と濃過ぎる眉毛が特長の、自分で言うのもなんだが、貴族社会においてはものすごくありふれた令嬢なのだ。
身分は男爵と低いが、実家は大富豪。
こんな娘は貴族学院にはゴロゴロしている。本当に平凡な私が注目の的になってしまったのは、母のせいだった。いや、正確に言うと母が取り決めた私の婚約のせいだった。
名門侯爵家の嫡男との婚約!
祖父がお金で男爵位を買って、息子を名のある貴族の令嬢と結婚させた。それが私の母。
母は正直に言うと、ちっともきれいな人ではなかった。
不美人だと言うのはコンプレックスの塊。由緒ある家に生まれながらも、父のような成金と結婚したことを生涯引け目に感じていたらしい。
家は暗い雰囲気で、使用人たちも勤めにくかったと思う。
母は病気で亡くなったが、残された父と兄のロイと私は、むしろほっとしたかもしれないくらいだった。
兄は何事も貴族らしくと説教されただけだったが、娘である私には特にあたりが強くて、自分の理想とする令嬢に近づけようと口やかましく干渉した。
母の実家の侯爵家が全員金髪碧眼だったのに、私は父に似て黒髪だったのが、まず気に入らなかったらしい。
母の理想は、美しく、実家の侯爵家の娘としても打ちどころのないような令嬢。
だけど、無理なものは無理! 髪色や美貌なんて生まれつきだし!
ピアノや刺繍だって、それなりに才能が必要だと思うの。それに学業も、女性で学年一位とか無理に決まっているでしょう。
「礼儀作法や学業は努力次第で達成できるはずです」
私はしょっちゅう叱られていた。叱ることで美人になるとでもいうのかしら。母は私には常に不満で、監視の手を緩めなかった。
その上、母は私が行き遅れてはならないと大変心配したらしく、亡くなる前に縁談をまとめてしまっていた。
母は、縁談の相手に手紙を書き送っていた。
『シシリーはあまりきれいではないし、頭もよくありません。心根も貧しい……』
世に仲人口という言葉があるが、その逆は聞いたことがない。
『だからこそ、行く末を案じています。要領が悪いので大したことはしないと思いますが、どうぞ衣食住に不自由さえないようにしてくだされば……』
母の死後、婚約が明るみになって、父と兄と、本人の私は、婚約契約書を初めて読んで、死にそうになった。
「なぜ、こんな縁談がまとまっているのだ?」
しかも相手はダドリー侯爵家の嫡男!
「男爵家の娘が、侯爵家の嫡男と婚約? 身分的には完全に不釣り合いだが?」
だが、婚約契約書の最期には父でさえ目をむくような巨額の持参金が書き込まれていた。
「まさか……!」
ややこしい性格の母が、娘の結婚をまとめたことだけは喜んであの世へ旅立ったことを思うと……いや、それにしてもこの金額はないだろう。破産しそう。
しかも勝手に家の印鑑を持ち出して押してしまっていた。正式文書の出来上がりである。
「どうして私に無断でこんな真似を……」
父は頭を抱えた。
貴族学院には激震が走った。
「あの幽霊のような娘がなぜ侯爵家へ?」
「お金ですわよ」
「そうよ。ほかに何があると言うの? ダドリー家は最近財政状態が悪いと言うわ。どんなに醜い娘でもお金さえあれば我慢する気なのね」
私はちっとも美人ではなかった。それどころではなかった。
母が、派手すぎる衣装を嫌ったので、私はいつも地味な茶色か暗い濃緑色、たまに濁ったような黄土色のドレスだった。その恰好で通学していた。
どう見ても哀れとしか言いようのないドレスだった。生地は上等でも、センスのカケラもなければ、誰よりも見劣りがした。
リボンひとつ、レースを少し、それだけでも全然イメージが変わるのに!
絶対に許してもらえなかった。母の実家から付いてきた忠実な侍女カザリンの非難の目が容赦ない。
「お金がない訳でもないでしょうに、あんなドレスが好きだなんて! きっとまるでセンスがない人なのね」
その言葉は心に突き刺さった。
一番困ったのが、お化粧をしてはならないと厳命されたことだった。
「若い娘が毒性のある顔料などを顔に塗りたくって。万一、シミでも出来たらどうするの!」
どうしてお化粧をそこまで敵視するのかよくわからなかったが、その剣幕は怖かった。それに母の侍女のカザリンが加勢する。
「自然のままが一番です。神様がそうお決めになったのです」
母は病気だったので、寝室から出ることはまれだったが、カザリンがいた。彼女は私が学校に行く前に必ず点検する。
彼女流の観点から、リボンやレースの襟は外すことを命じられ、ちょっと結んでみただけの黒髪は激しい叱責の言葉と一緒に解かれてぎちぎちの三つ編みに編みなおされた。おでこが丸見え。
すごく困る。だって、手入れを厳禁された眉毛が丸見えになるのだもの。
「何を恥じることがありますか。どんな男性もうらやむ立派な眉です」
カザリンと母は言い放ったが、絶対違う。
男性が羨むようなごっつい眉毛を、年若い乙女の私がおでこに生やしているのが、問題なの! 恥ずかしくて仕方ない。
私は馬車に乗ると、いつも三つ編みを解いて眉毛が隠れるように髪を垂らした。癖の付いた黒髪は、半端に広がってしまう。こんな髪型の貴族令嬢は、他に誰もいない。
この格好のせいで、幽霊みたいと言われていることは知っている。
私はコンプレックスの塊だった。
化粧をしてはいけないし、母の基準に沿わない服は下品だと軽蔑され止められた。私は他の令嬢と同じようなドレスを着たいだけなのに。
父は忙しくて商売で国中を飛び回っている。
娘のドレスや化粧などと言う些細な話で父を煩わせたくない。帰宅時間の関係で、会う機会もあまりなかった。
家の中で、唯一、事情を理解してくれたのは兄だったが、正直兄も私と同じで、母とその信奉者のカザリンの固い信念の前にはお手上げだった。
だが、この結婚問題は、私のドレスや化粧どころの問題ではなかった。深刻度が違う。
私は必死になって父に言った。この母の紹介文では、私は必ず不幸になる。
「品性が卑しくて、顔がまずいバカと、お母さまは私のことを紹介したようですけど、相手の方はよく承知しましたわね?」
どんな男だって、こんな令嬢ではきっとうれしくないだろう。お飾りの妻として、どこかに閉じ込められてしまう人生を送ることになるのではないか?
「うーむ。それだけ財政状態が悪いんだろうな」
父が頭を抱えていた。
「マズいですわ。お金がらみで承諾したとなると、断ってこないですよね?」
兄も頭を抱えていた。
「よく知りもしない他人の家に、なぜかわいい妹と全財産を進呈しなくてはいけないのか」
私たち三人は暗い雰囲気で悩み続けた。
「残る道はただ一つですわ」
遂に私は言った。
「婚約破棄ですわ! 相手側有責の婚約破棄。これしかないわ!」
父が顔を上げた。文句がありそうだ。
「しかしな。相手もバカではあるまい。有責の婚約破棄となれば、まあ、浮気とかそれくらいしか思いつかないが、結婚後はとにかく、結婚前までは絶対にばれないようにすると思うぞ?」
「どこかの演劇座の見習い女優でも雇ってきて、惚れたふりをさせるとか?」
兄が提案してきた。
「そんな女信用できるか。いつ裏切られるかわからない。それこそ、うちが有責で婚約破棄されてしまう。婚約破棄自体は構わないが、持参金のほかに慰謝料まで要求されたら破産してしまう」
私たちはますます暗くなった。
「ところで、シシリーは相手の顔を知っているのか?」
急に兄が聞いた。
「いいえ。お名前だけしか知りませんわ」
「僕もあまり知らない。学校は同じだが、全く関係がないからな。接点がない」
兄はしばらく考えていたが、思い付いたように言った。
「シシリーがその女優役をすればいいんじゃないかな?」
「女優役?」
私はどういう意味か分からなかった。
「つまり婚約相手がほれ込む浮気相手だ。ハニートラップというヤツだ」
私はあきれた。
「私は女優ではありません。そんな真似、無理に決まってますわ」
「でも、やってみる価値はあるかもしれない。だって、万一、工作がバレたとしても、婚約者が婚約者に近づいただけなんだ。誰も咎めない。余興で終わるだろう」
「でも嫌ですわ」
私はごねた。どう考えても無理だ。言いたくないけど、私はちっとも美人ではないのだ。どの殿方も絶対興味を持たないと思う。
「俺も手伝うから」
父は迷った顔をした。
「万一、バレたところで、かわいい妹が婚約者に気に入られたいばかりに発案したんだ。誰にも非難されない」
私は抗議してみた。
「だけど、どう言うのか成功なんですの? 婚約破棄の書状が侯爵家から届くとか?」
「いや、それは無理だ」
父が即座に言った。
「そのハニトラだが、婚約者のダドリー殿がたとえシシリーに夢中になって、シシリーとの結婚を破棄したがったとしても、侯爵家は金勘定しかしないからな。息子を止めるだろう」
シシリーだらけで、話が猛烈にややこしい。
「つまり私が化けたハニトラ偽女優にダドリー様が夢中になり婚約破棄を切望したところで、現実にするのは難しいってことですわね?」
「そうだ。侯爵家が同意しなくてはならない。さもなくば、取り返しがつかない何かをご子息がしでかすとか」
兄がテーブルをパァンと叩いた。
「そうだ! 学園恒例の卒業式パーティ!」
父と私はあっけに取られた。
「親や親族も参加します。婚約者なら必ずエスコートが必要! その場で大々的に婚約破棄を発表してもらえばいい」
ええ?
そんなことする人いる?
「させればいいんだ!」
私の名前はシシリー・ミッドフォード。
成金男爵家の娘だ。
黒い髪と濃過ぎる眉毛が特長の、自分で言うのもなんだが、貴族社会においてはものすごくありふれた令嬢なのだ。
身分は男爵と低いが、実家は大富豪。
こんな娘は貴族学院にはゴロゴロしている。本当に平凡な私が注目の的になってしまったのは、母のせいだった。いや、正確に言うと母が取り決めた私の婚約のせいだった。
名門侯爵家の嫡男との婚約!
祖父がお金で男爵位を買って、息子を名のある貴族の令嬢と結婚させた。それが私の母。
母は正直に言うと、ちっともきれいな人ではなかった。
不美人だと言うのはコンプレックスの塊。由緒ある家に生まれながらも、父のような成金と結婚したことを生涯引け目に感じていたらしい。
家は暗い雰囲気で、使用人たちも勤めにくかったと思う。
母は病気で亡くなったが、残された父と兄のロイと私は、むしろほっとしたかもしれないくらいだった。
兄は何事も貴族らしくと説教されただけだったが、娘である私には特にあたりが強くて、自分の理想とする令嬢に近づけようと口やかましく干渉した。
母の実家の侯爵家が全員金髪碧眼だったのに、私は父に似て黒髪だったのが、まず気に入らなかったらしい。
母の理想は、美しく、実家の侯爵家の娘としても打ちどころのないような令嬢。
だけど、無理なものは無理! 髪色や美貌なんて生まれつきだし!
ピアノや刺繍だって、それなりに才能が必要だと思うの。それに学業も、女性で学年一位とか無理に決まっているでしょう。
「礼儀作法や学業は努力次第で達成できるはずです」
私はしょっちゅう叱られていた。叱ることで美人になるとでもいうのかしら。母は私には常に不満で、監視の手を緩めなかった。
その上、母は私が行き遅れてはならないと大変心配したらしく、亡くなる前に縁談をまとめてしまっていた。
母は、縁談の相手に手紙を書き送っていた。
『シシリーはあまりきれいではないし、頭もよくありません。心根も貧しい……』
世に仲人口という言葉があるが、その逆は聞いたことがない。
『だからこそ、行く末を案じています。要領が悪いので大したことはしないと思いますが、どうぞ衣食住に不自由さえないようにしてくだされば……』
母の死後、婚約が明るみになって、父と兄と、本人の私は、婚約契約書を初めて読んで、死にそうになった。
「なぜ、こんな縁談がまとまっているのだ?」
しかも相手はダドリー侯爵家の嫡男!
「男爵家の娘が、侯爵家の嫡男と婚約? 身分的には完全に不釣り合いだが?」
だが、婚約契約書の最期には父でさえ目をむくような巨額の持参金が書き込まれていた。
「まさか……!」
ややこしい性格の母が、娘の結婚をまとめたことだけは喜んであの世へ旅立ったことを思うと……いや、それにしてもこの金額はないだろう。破産しそう。
しかも勝手に家の印鑑を持ち出して押してしまっていた。正式文書の出来上がりである。
「どうして私に無断でこんな真似を……」
父は頭を抱えた。
貴族学院には激震が走った。
「あの幽霊のような娘がなぜ侯爵家へ?」
「お金ですわよ」
「そうよ。ほかに何があると言うの? ダドリー家は最近財政状態が悪いと言うわ。どんなに醜い娘でもお金さえあれば我慢する気なのね」
私はちっとも美人ではなかった。それどころではなかった。
母が、派手すぎる衣装を嫌ったので、私はいつも地味な茶色か暗い濃緑色、たまに濁ったような黄土色のドレスだった。その恰好で通学していた。
どう見ても哀れとしか言いようのないドレスだった。生地は上等でも、センスのカケラもなければ、誰よりも見劣りがした。
リボンひとつ、レースを少し、それだけでも全然イメージが変わるのに!
絶対に許してもらえなかった。母の実家から付いてきた忠実な侍女カザリンの非難の目が容赦ない。
「お金がない訳でもないでしょうに、あんなドレスが好きだなんて! きっとまるでセンスがない人なのね」
その言葉は心に突き刺さった。
一番困ったのが、お化粧をしてはならないと厳命されたことだった。
「若い娘が毒性のある顔料などを顔に塗りたくって。万一、シミでも出来たらどうするの!」
どうしてお化粧をそこまで敵視するのかよくわからなかったが、その剣幕は怖かった。それに母の侍女のカザリンが加勢する。
「自然のままが一番です。神様がそうお決めになったのです」
母は病気だったので、寝室から出ることはまれだったが、カザリンがいた。彼女は私が学校に行く前に必ず点検する。
彼女流の観点から、リボンやレースの襟は外すことを命じられ、ちょっと結んでみただけの黒髪は激しい叱責の言葉と一緒に解かれてぎちぎちの三つ編みに編みなおされた。おでこが丸見え。
すごく困る。だって、手入れを厳禁された眉毛が丸見えになるのだもの。
「何を恥じることがありますか。どんな男性もうらやむ立派な眉です」
カザリンと母は言い放ったが、絶対違う。
男性が羨むようなごっつい眉毛を、年若い乙女の私がおでこに生やしているのが、問題なの! 恥ずかしくて仕方ない。
私は馬車に乗ると、いつも三つ編みを解いて眉毛が隠れるように髪を垂らした。癖の付いた黒髪は、半端に広がってしまう。こんな髪型の貴族令嬢は、他に誰もいない。
この格好のせいで、幽霊みたいと言われていることは知っている。
私はコンプレックスの塊だった。
化粧をしてはいけないし、母の基準に沿わない服は下品だと軽蔑され止められた。私は他の令嬢と同じようなドレスを着たいだけなのに。
父は忙しくて商売で国中を飛び回っている。
娘のドレスや化粧などと言う些細な話で父を煩わせたくない。帰宅時間の関係で、会う機会もあまりなかった。
家の中で、唯一、事情を理解してくれたのは兄だったが、正直兄も私と同じで、母とその信奉者のカザリンの固い信念の前にはお手上げだった。
だが、この結婚問題は、私のドレスや化粧どころの問題ではなかった。深刻度が違う。
私は必死になって父に言った。この母の紹介文では、私は必ず不幸になる。
「品性が卑しくて、顔がまずいバカと、お母さまは私のことを紹介したようですけど、相手の方はよく承知しましたわね?」
どんな男だって、こんな令嬢ではきっとうれしくないだろう。お飾りの妻として、どこかに閉じ込められてしまう人生を送ることになるのではないか?
「うーむ。それだけ財政状態が悪いんだろうな」
父が頭を抱えていた。
「マズいですわ。お金がらみで承諾したとなると、断ってこないですよね?」
兄も頭を抱えていた。
「よく知りもしない他人の家に、なぜかわいい妹と全財産を進呈しなくてはいけないのか」
私たち三人は暗い雰囲気で悩み続けた。
「残る道はただ一つですわ」
遂に私は言った。
「婚約破棄ですわ! 相手側有責の婚約破棄。これしかないわ!」
父が顔を上げた。文句がありそうだ。
「しかしな。相手もバカではあるまい。有責の婚約破棄となれば、まあ、浮気とかそれくらいしか思いつかないが、結婚後はとにかく、結婚前までは絶対にばれないようにすると思うぞ?」
「どこかの演劇座の見習い女優でも雇ってきて、惚れたふりをさせるとか?」
兄が提案してきた。
「そんな女信用できるか。いつ裏切られるかわからない。それこそ、うちが有責で婚約破棄されてしまう。婚約破棄自体は構わないが、持参金のほかに慰謝料まで要求されたら破産してしまう」
私たちはますます暗くなった。
「ところで、シシリーは相手の顔を知っているのか?」
急に兄が聞いた。
「いいえ。お名前だけしか知りませんわ」
「僕もあまり知らない。学校は同じだが、全く関係がないからな。接点がない」
兄はしばらく考えていたが、思い付いたように言った。
「シシリーがその女優役をすればいいんじゃないかな?」
「女優役?」
私はどういう意味か分からなかった。
「つまり婚約相手がほれ込む浮気相手だ。ハニートラップというヤツだ」
私はあきれた。
「私は女優ではありません。そんな真似、無理に決まってますわ」
「でも、やってみる価値はあるかもしれない。だって、万一、工作がバレたとしても、婚約者が婚約者に近づいただけなんだ。誰も咎めない。余興で終わるだろう」
「でも嫌ですわ」
私はごねた。どう考えても無理だ。言いたくないけど、私はちっとも美人ではないのだ。どの殿方も絶対興味を持たないと思う。
「俺も手伝うから」
父は迷った顔をした。
「万一、バレたところで、かわいい妹が婚約者に気に入られたいばかりに発案したんだ。誰にも非難されない」
私は抗議してみた。
「だけど、どう言うのか成功なんですの? 婚約破棄の書状が侯爵家から届くとか?」
「いや、それは無理だ」
父が即座に言った。
「そのハニトラだが、婚約者のダドリー殿がたとえシシリーに夢中になって、シシリーとの結婚を破棄したがったとしても、侯爵家は金勘定しかしないからな。息子を止めるだろう」
シシリーだらけで、話が猛烈にややこしい。
「つまり私が化けたハニトラ偽女優にダドリー様が夢中になり婚約破棄を切望したところで、現実にするのは難しいってことですわね?」
「そうだ。侯爵家が同意しなくてはならない。さもなくば、取り返しがつかない何かをご子息がしでかすとか」
兄がテーブルをパァンと叩いた。
「そうだ! 学園恒例の卒業式パーティ!」
父と私はあっけに取られた。
「親や親族も参加します。婚約者なら必ずエスコートが必要! その場で大々的に婚約破棄を発表してもらえばいい」
ええ?
そんなことする人いる?
「させればいいんだ!」
188
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
[完結]想ってもいいでしょうか?
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
貴方に逢いたくて逢いたくて逢いたくて胸が張り裂けそう。
失ってしまった貴方は、どこへ行ってしまったのだろう。
暗闇の中、涙を流して、ただただ貴方の事を考え続ける。
後悔しているの。
何度も考えるの。
でもどうすればよかったのか、どうしても分からない。
桜が舞い散り、灼熱の太陽に耐え、紅葉が終わっても貴方は帰ってこない。
本当は分かっている。
もう二度と私の元へ貴方は帰ってこない事を。
雪の結晶がキラキラ輝きながら落ちてくる。
頬についた結晶はすぐに溶けて流れ落ちる。
私の涙と一緒に。
まだ、あと少し。
ううん、一生でも、私が朽ち果てるまで。
貴方の事を想ってもいいでしょうか?
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
作られた悪役令嬢
白羽鳥(扇つくも)
恋愛
血塗られたエリザベス――胸に赤い薔薇の痣を持って生まれた公爵令嬢は、王太子の妃となる神託を受けた。
けれど王太子が選んだのは、同じく胸に痣のある異世界の少女。
嫉妬に狂ったエリザベスは少女を斧で襲い、王太子の怒りを買ってしまう。
罰として与えられたのは、呪いの刻印と化け物と呼ばれる伯爵との結婚。
それは世界一美しい姿をした、世界一醜い女の物語――だと思われていたが……?
※作中に登場する名前が偶然禁止ワードに引っ掛かったため、工夫を入れてます。
※第14回恋愛小説大賞応募作品です。3月からは不定期更新になります。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人の顔色ばかり気にしていた私はもういません
風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。
私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。
彼の姉でなく、私の姉なのにだ。
両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。
そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。
寄り添うデイリ様とお姉様。
幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。
その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。
そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。
※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。
※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる