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第1話 目指せ! 劇場型婚約破棄
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「この婚約は……! 悲劇だわ」
私の名前はシシリー・ミッドフォード。
成金男爵家の娘だ。
黒い髪と濃過ぎる眉毛が特長の、自分で言うのもなんだが、貴族社会においてはものすごくありふれた令嬢なのだ。
身分は男爵と低いが、実家は大富豪。
こんな娘は貴族学院にはゴロゴロしている。本当に平凡な私が注目の的になってしまったのは、母のせいだった。いや、正確に言うと母が取り決めた私の婚約のせいだった。
名門侯爵家の嫡男との婚約!
祖父がお金で男爵位を買って、息子を名のある貴族の令嬢と結婚させた。それが私の母。
母は正直に言うと、ちっともきれいな人ではなかった。
不美人だと言うのはコンプレックスの塊。由緒ある家に生まれながらも、父のような成金と結婚したことを生涯引け目に感じていたらしい。
家は暗い雰囲気で、使用人たちも勤めにくかったと思う。
母は病気で亡くなったが、残された父と兄のロイと私は、むしろほっとしたかもしれないくらいだった。
兄は何事も貴族らしくと説教されただけだったが、娘である私には特にあたりが強くて、自分の理想とする令嬢に近づけようと口やかましく干渉した。
母の実家の侯爵家が全員金髪碧眼だったのに、私は父に似て黒髪だったのが、まず気に入らなかったらしい。
母の理想は、美しく、実家の侯爵家の娘としても打ちどころのないような令嬢。
だけど、無理なものは無理! 髪色や美貌なんて生まれつきだし!
ピアノや刺繍だって、それなりに才能が必要だと思うの。それに学業も、女性で学年一位とか無理に決まっているでしょう。
「礼儀作法や学業は努力次第で達成できるはずです」
私はしょっちゅう叱られていた。叱ることで美人になるとでもいうのかしら。母は私には常に不満で、監視の手を緩めなかった。
その上、母は私が行き遅れてはならないと大変心配したらしく、亡くなる前に縁談をまとめてしまっていた。
母は、縁談の相手に手紙を書き送っていた。
『シシリーはあまりきれいではないし、頭もよくありません。心根も貧しい……』
世に仲人口という言葉があるが、その逆は聞いたことがない。
『だからこそ、行く末を案じています。要領が悪いので大したことはしないと思いますが、どうぞ衣食住に不自由さえないようにしてくだされば……』
母の死後、婚約が明るみになって、父と兄と、本人の私は、婚約契約書を初めて読んで、死にそうになった。
「なぜ、こんな縁談がまとまっているのだ?」
しかも相手はダドリー侯爵家の嫡男!
「男爵家の娘が、侯爵家の嫡男と婚約? 身分的には完全に不釣り合いだが?」
だが、婚約契約書の最期には父でさえ目をむくような巨額の持参金が書き込まれていた。
「まさか……!」
ややこしい性格の母が、娘の結婚をまとめたことだけは喜んであの世へ旅立ったことを思うと……いや、それにしてもこの金額はないだろう。破産しそう。
しかも勝手に家の印鑑を持ち出して押してしまっていた。正式文書の出来上がりである。
「どうして私に無断でこんな真似を……」
父は頭を抱えた。
貴族学院には激震が走った。
「あの幽霊のような娘がなぜ侯爵家へ?」
「お金ですわよ」
「そうよ。ほかに何があると言うの? ダドリー家は最近財政状態が悪いと言うわ。どんなに醜い娘でもお金さえあれば我慢する気なのね」
私はちっとも美人ではなかった。それどころではなかった。
母が、派手すぎる衣装を嫌ったので、私はいつも地味な茶色か暗い濃緑色、たまに濁ったような黄土色のドレスだった。その恰好で通学していた。
どう見ても哀れとしか言いようのないドレスだった。生地は上等でも、センスのカケラもなければ、誰よりも見劣りがした。
リボンひとつ、レースを少し、それだけでも全然イメージが変わるのに!
絶対に許してもらえなかった。母の実家から付いてきた忠実な侍女カザリンの非難の目が容赦ない。
「お金がない訳でもないでしょうに、あんなドレスが好きだなんて! きっとまるでセンスがない人なのね」
その言葉は心に突き刺さった。
一番困ったのが、お化粧をしてはならないと厳命されたことだった。
「若い娘が毒性のある顔料などを顔に塗りたくって。万一、シミでも出来たらどうするの!」
どうしてお化粧をそこまで敵視するのかよくわからなかったが、その剣幕は怖かった。それに母の侍女のカザリンが加勢する。
「自然のままが一番です。神様がそうお決めになったのです」
母は病気だったので、寝室から出ることはまれだったが、カザリンがいた。彼女は私が学校に行く前に必ず点検する。
彼女流の観点から、リボンやレースの襟は外すことを命じられ、ちょっと結んでみただけの黒髪は激しい叱責の言葉と一緒に解かれてぎちぎちの三つ編みに編みなおされた。おでこが丸見え。
すごく困る。だって、手入れを厳禁された眉毛が丸見えになるのだもの。
「何を恥じることがありますか。どんな男性もうらやむ立派な眉です」
カザリンと母は言い放ったが、絶対違う。
男性が羨むようなごっつい眉毛を、年若い乙女の私がおでこに生やしているのが、問題なの! 恥ずかしくて仕方ない。
私は馬車に乗ると、いつも三つ編みを解いて眉毛が隠れるように髪を垂らした。癖の付いた黒髪は、半端に広がってしまう。こんな髪型の貴族令嬢は、他に誰もいない。
この格好のせいで、幽霊みたいと言われていることは知っている。
私はコンプレックスの塊だった。
化粧をしてはいけないし、母の基準に沿わない服は下品だと軽蔑され止められた。私は他の令嬢と同じようなドレスを着たいだけなのに。
父は忙しくて商売で国中を飛び回っている。
娘のドレスや化粧などと言う些細な話で父を煩わせたくない。帰宅時間の関係で、会う機会もあまりなかった。
家の中で、唯一、事情を理解してくれたのは兄だったが、正直兄も私と同じで、母とその信奉者のカザリンの固い信念の前にはお手上げだった。
だが、この結婚問題は、私のドレスや化粧どころの問題ではなかった。深刻度が違う。
私は必死になって父に言った。この母の紹介文では、私は必ず不幸になる。
「品性が卑しくて、顔がまずいバカと、お母さまは私のことを紹介したようですけど、相手の方はよく承知しましたわね?」
どんな男だって、こんな令嬢ではきっとうれしくないだろう。お飾りの妻として、どこかに閉じ込められてしまう人生を送ることになるのではないか?
「うーむ。それだけ財政状態が悪いんだろうな」
父が頭を抱えていた。
「マズいですわ。お金がらみで承諾したとなると、断ってこないですよね?」
兄も頭を抱えていた。
「よく知りもしない他人の家に、なぜかわいい妹と全財産を進呈しなくてはいけないのか」
私たち三人は暗い雰囲気で悩み続けた。
「残る道はただ一つですわ」
遂に私は言った。
「婚約破棄ですわ! 相手側有責の婚約破棄。これしかないわ!」
父が顔を上げた。文句がありそうだ。
「しかしな。相手もバカではあるまい。有責の婚約破棄となれば、まあ、浮気とかそれくらいしか思いつかないが、結婚後はとにかく、結婚前までは絶対にばれないようにすると思うぞ?」
「どこかの演劇座の見習い女優でも雇ってきて、惚れたふりをさせるとか?」
兄が提案してきた。
「そんな女信用できるか。いつ裏切られるかわからない。それこそ、うちが有責で婚約破棄されてしまう。婚約破棄自体は構わないが、持参金のほかに慰謝料まで要求されたら破産してしまう」
私たちはますます暗くなった。
「ところで、シシリーは相手の顔を知っているのか?」
急に兄が聞いた。
「いいえ。お名前だけしか知りませんわ」
「僕もあまり知らない。学校は同じだが、全く関係がないからな。接点がない」
兄はしばらく考えていたが、思い付いたように言った。
「シシリーがその女優役をすればいいんじゃないかな?」
「女優役?」
私はどういう意味か分からなかった。
「つまり婚約相手がほれ込む浮気相手だ。ハニートラップというヤツだ」
私はあきれた。
「私は女優ではありません。そんな真似、無理に決まってますわ」
「でも、やってみる価値はあるかもしれない。だって、万一、工作がバレたとしても、婚約者が婚約者に近づいただけなんだ。誰も咎めない。余興で終わるだろう」
「でも嫌ですわ」
私はごねた。どう考えても無理だ。言いたくないけど、私はちっとも美人ではないのだ。どの殿方も絶対興味を持たないと思う。
「俺も手伝うから」
父は迷った顔をした。
「万一、バレたところで、かわいい妹が婚約者に気に入られたいばかりに発案したんだ。誰にも非難されない」
私は抗議してみた。
「だけど、どう言うのか成功なんですの? 婚約破棄の書状が侯爵家から届くとか?」
「いや、それは無理だ」
父が即座に言った。
「そのハニトラだが、婚約者のダドリー殿がたとえシシリーに夢中になって、シシリーとの結婚を破棄したがったとしても、侯爵家は金勘定しかしないからな。息子を止めるだろう」
シシリーだらけで、話が猛烈にややこしい。
「つまり私が化けたハニトラ偽女優にダドリー様が夢中になり婚約破棄を切望したところで、現実にするのは難しいってことですわね?」
「そうだ。侯爵家が同意しなくてはならない。さもなくば、取り返しがつかない何かをご子息がしでかすとか」
兄がテーブルをパァンと叩いた。
「そうだ! 学園恒例の卒業式パーティ!」
父と私はあっけに取られた。
「親や親族も参加します。婚約者なら必ずエスコートが必要! その場で大々的に婚約破棄を発表してもらえばいい」
ええ?
そんなことする人いる?
「させればいいんだ!」
私の名前はシシリー・ミッドフォード。
成金男爵家の娘だ。
黒い髪と濃過ぎる眉毛が特長の、自分で言うのもなんだが、貴族社会においてはものすごくありふれた令嬢なのだ。
身分は男爵と低いが、実家は大富豪。
こんな娘は貴族学院にはゴロゴロしている。本当に平凡な私が注目の的になってしまったのは、母のせいだった。いや、正確に言うと母が取り決めた私の婚約のせいだった。
名門侯爵家の嫡男との婚約!
祖父がお金で男爵位を買って、息子を名のある貴族の令嬢と結婚させた。それが私の母。
母は正直に言うと、ちっともきれいな人ではなかった。
不美人だと言うのはコンプレックスの塊。由緒ある家に生まれながらも、父のような成金と結婚したことを生涯引け目に感じていたらしい。
家は暗い雰囲気で、使用人たちも勤めにくかったと思う。
母は病気で亡くなったが、残された父と兄のロイと私は、むしろほっとしたかもしれないくらいだった。
兄は何事も貴族らしくと説教されただけだったが、娘である私には特にあたりが強くて、自分の理想とする令嬢に近づけようと口やかましく干渉した。
母の実家の侯爵家が全員金髪碧眼だったのに、私は父に似て黒髪だったのが、まず気に入らなかったらしい。
母の理想は、美しく、実家の侯爵家の娘としても打ちどころのないような令嬢。
だけど、無理なものは無理! 髪色や美貌なんて生まれつきだし!
ピアノや刺繍だって、それなりに才能が必要だと思うの。それに学業も、女性で学年一位とか無理に決まっているでしょう。
「礼儀作法や学業は努力次第で達成できるはずです」
私はしょっちゅう叱られていた。叱ることで美人になるとでもいうのかしら。母は私には常に不満で、監視の手を緩めなかった。
その上、母は私が行き遅れてはならないと大変心配したらしく、亡くなる前に縁談をまとめてしまっていた。
母は、縁談の相手に手紙を書き送っていた。
『シシリーはあまりきれいではないし、頭もよくありません。心根も貧しい……』
世に仲人口という言葉があるが、その逆は聞いたことがない。
『だからこそ、行く末を案じています。要領が悪いので大したことはしないと思いますが、どうぞ衣食住に不自由さえないようにしてくだされば……』
母の死後、婚約が明るみになって、父と兄と、本人の私は、婚約契約書を初めて読んで、死にそうになった。
「なぜ、こんな縁談がまとまっているのだ?」
しかも相手はダドリー侯爵家の嫡男!
「男爵家の娘が、侯爵家の嫡男と婚約? 身分的には完全に不釣り合いだが?」
だが、婚約契約書の最期には父でさえ目をむくような巨額の持参金が書き込まれていた。
「まさか……!」
ややこしい性格の母が、娘の結婚をまとめたことだけは喜んであの世へ旅立ったことを思うと……いや、それにしてもこの金額はないだろう。破産しそう。
しかも勝手に家の印鑑を持ち出して押してしまっていた。正式文書の出来上がりである。
「どうして私に無断でこんな真似を……」
父は頭を抱えた。
貴族学院には激震が走った。
「あの幽霊のような娘がなぜ侯爵家へ?」
「お金ですわよ」
「そうよ。ほかに何があると言うの? ダドリー家は最近財政状態が悪いと言うわ。どんなに醜い娘でもお金さえあれば我慢する気なのね」
私はちっとも美人ではなかった。それどころではなかった。
母が、派手すぎる衣装を嫌ったので、私はいつも地味な茶色か暗い濃緑色、たまに濁ったような黄土色のドレスだった。その恰好で通学していた。
どう見ても哀れとしか言いようのないドレスだった。生地は上等でも、センスのカケラもなければ、誰よりも見劣りがした。
リボンひとつ、レースを少し、それだけでも全然イメージが変わるのに!
絶対に許してもらえなかった。母の実家から付いてきた忠実な侍女カザリンの非難の目が容赦ない。
「お金がない訳でもないでしょうに、あんなドレスが好きだなんて! きっとまるでセンスがない人なのね」
その言葉は心に突き刺さった。
一番困ったのが、お化粧をしてはならないと厳命されたことだった。
「若い娘が毒性のある顔料などを顔に塗りたくって。万一、シミでも出来たらどうするの!」
どうしてお化粧をそこまで敵視するのかよくわからなかったが、その剣幕は怖かった。それに母の侍女のカザリンが加勢する。
「自然のままが一番です。神様がそうお決めになったのです」
母は病気だったので、寝室から出ることはまれだったが、カザリンがいた。彼女は私が学校に行く前に必ず点検する。
彼女流の観点から、リボンやレースの襟は外すことを命じられ、ちょっと結んでみただけの黒髪は激しい叱責の言葉と一緒に解かれてぎちぎちの三つ編みに編みなおされた。おでこが丸見え。
すごく困る。だって、手入れを厳禁された眉毛が丸見えになるのだもの。
「何を恥じることがありますか。どんな男性もうらやむ立派な眉です」
カザリンと母は言い放ったが、絶対違う。
男性が羨むようなごっつい眉毛を、年若い乙女の私がおでこに生やしているのが、問題なの! 恥ずかしくて仕方ない。
私は馬車に乗ると、いつも三つ編みを解いて眉毛が隠れるように髪を垂らした。癖の付いた黒髪は、半端に広がってしまう。こんな髪型の貴族令嬢は、他に誰もいない。
この格好のせいで、幽霊みたいと言われていることは知っている。
私はコンプレックスの塊だった。
化粧をしてはいけないし、母の基準に沿わない服は下品だと軽蔑され止められた。私は他の令嬢と同じようなドレスを着たいだけなのに。
父は忙しくて商売で国中を飛び回っている。
娘のドレスや化粧などと言う些細な話で父を煩わせたくない。帰宅時間の関係で、会う機会もあまりなかった。
家の中で、唯一、事情を理解してくれたのは兄だったが、正直兄も私と同じで、母とその信奉者のカザリンの固い信念の前にはお手上げだった。
だが、この結婚問題は、私のドレスや化粧どころの問題ではなかった。深刻度が違う。
私は必死になって父に言った。この母の紹介文では、私は必ず不幸になる。
「品性が卑しくて、顔がまずいバカと、お母さまは私のことを紹介したようですけど、相手の方はよく承知しましたわね?」
どんな男だって、こんな令嬢ではきっとうれしくないだろう。お飾りの妻として、どこかに閉じ込められてしまう人生を送ることになるのではないか?
「うーむ。それだけ財政状態が悪いんだろうな」
父が頭を抱えていた。
「マズいですわ。お金がらみで承諾したとなると、断ってこないですよね?」
兄も頭を抱えていた。
「よく知りもしない他人の家に、なぜかわいい妹と全財産を進呈しなくてはいけないのか」
私たち三人は暗い雰囲気で悩み続けた。
「残る道はただ一つですわ」
遂に私は言った。
「婚約破棄ですわ! 相手側有責の婚約破棄。これしかないわ!」
父が顔を上げた。文句がありそうだ。
「しかしな。相手もバカではあるまい。有責の婚約破棄となれば、まあ、浮気とかそれくらいしか思いつかないが、結婚後はとにかく、結婚前までは絶対にばれないようにすると思うぞ?」
「どこかの演劇座の見習い女優でも雇ってきて、惚れたふりをさせるとか?」
兄が提案してきた。
「そんな女信用できるか。いつ裏切られるかわからない。それこそ、うちが有責で婚約破棄されてしまう。婚約破棄自体は構わないが、持参金のほかに慰謝料まで要求されたら破産してしまう」
私たちはますます暗くなった。
「ところで、シシリーは相手の顔を知っているのか?」
急に兄が聞いた。
「いいえ。お名前だけしか知りませんわ」
「僕もあまり知らない。学校は同じだが、全く関係がないからな。接点がない」
兄はしばらく考えていたが、思い付いたように言った。
「シシリーがその女優役をすればいいんじゃないかな?」
「女優役?」
私はどういう意味か分からなかった。
「つまり婚約相手がほれ込む浮気相手だ。ハニートラップというヤツだ」
私はあきれた。
「私は女優ではありません。そんな真似、無理に決まってますわ」
「でも、やってみる価値はあるかもしれない。だって、万一、工作がバレたとしても、婚約者が婚約者に近づいただけなんだ。誰も咎めない。余興で終わるだろう」
「でも嫌ですわ」
私はごねた。どう考えても無理だ。言いたくないけど、私はちっとも美人ではないのだ。どの殿方も絶対興味を持たないと思う。
「俺も手伝うから」
父は迷った顔をした。
「万一、バレたところで、かわいい妹が婚約者に気に入られたいばかりに発案したんだ。誰にも非難されない」
私は抗議してみた。
「だけど、どう言うのか成功なんですの? 婚約破棄の書状が侯爵家から届くとか?」
「いや、それは無理だ」
父が即座に言った。
「そのハニトラだが、婚約者のダドリー殿がたとえシシリーに夢中になって、シシリーとの結婚を破棄したがったとしても、侯爵家は金勘定しかしないからな。息子を止めるだろう」
シシリーだらけで、話が猛烈にややこしい。
「つまり私が化けたハニトラ偽女優にダドリー様が夢中になり婚約破棄を切望したところで、現実にするのは難しいってことですわね?」
「そうだ。侯爵家が同意しなくてはならない。さもなくば、取り返しがつかない何かをご子息がしでかすとか」
兄がテーブルをパァンと叩いた。
「そうだ! 学園恒例の卒業式パーティ!」
父と私はあっけに取られた。
「親や親族も参加します。婚約者なら必ずエスコートが必要! その場で大々的に婚約破棄を発表してもらえばいい」
ええ?
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