60 / 64
第60話 戴冠式
しおりを挟む
それから三か月後、国王は正式にラルフを後継者に指名した。
私は心底仰天したが、父もゲイリーもビンセントも、テオさえ当然と言った顔をしていることに力が抜ける思いだった。
「また、王太子妃……」
「今度は、候補じゃない」
ラルフがニコニコしながら言った。
「もう既成事実だから。王妃教育もバッチリすんでいる。僕は幸運だ」
私はラルフをにらんだ。
街でのショッピングも、気楽なカフェ巡りも全部できなくなるわ!
「なに、出来るよ」
ラルフは簡単そうに言った。
「人払いをすれば警備も簡単だ」
「違う、そうじゃない!」
私はわめいた。
「人がいるところがいいの! みんなが楽しそうにしているところへ行きたいの!」
「ダメだよ、そんな所に行ったら」
真面目な顔でラルフは注意した。
「世の中、馬鹿な男だっている。誰かがあなたに見惚れたり付きまとったりするかもしれない。そうなったら殺すしかないだろう?」
殺す? 私は一瞬黙ったが、叫んだ。
「その冗談は笑えないわ! 物騒過ぎるわ!」
ベロス公爵は完全に力を失い、役職も取り上げられ、隠居生活に入ることとなった。家を出たはずのビンセントが爵位を継いだ。
そしてさらにその半年後、国王夫妻は突然、王位を新王太子に譲ると宣言した。
「疲れたのよ、もう」
王妃様はシャーロットにそう言ったそうだ。
だが、私は知っている。
なぜ、王妃様がそんなに疲れたのかという理由をだ。
やれば出来る新王太子だったが、実子ではないので、非常に遠慮がちだった。
なんでも、国王夫妻をそれとなく立てた。
従って、国王の仕事は減らなかった。
いや、減らなくて当然なのだが、多少カバーしてあげてもよかったのではないかと思う。国王ではなく、王妃様を。
そもそも国王陛下は、仕事をしない。
正確には出来ないのだ。
ヘマをするのがうまい。とてもうまい。どうしてここで、そんな要らない発言をわざわざするのかなと思うところで、見事にクリーンヒットする。
樽のように太った奥方に嫌気が差して浮気をしているという噂が流れた時、噂の当の主人公、アーディントン卿に向かって、王が奥方の腰回りサイズを訪ねた時は、正直、思考回路を疑った。ではない、思考回路が透けて見えた。後ろに夫人が立っていることに気がついた時は、身が震えた。ここからは王妃様の出番だ。
全てが王妃様に回ってくる。年を取って、希望を失い、しんどいだけの王妃様のところへ。
ラルフは、わかっていたに違いない。
だが、彼は、他の貴族から非難されないように、そこは細心だった。厚かましいと非難されるような行動は決してとらなかった。
そして、国王夫妻への遠慮を隠れ蓑に、王妃様の負担を決して減らそうとはしなかった。
王位を完全に継承すれば、彼の天下になる。
「あなたは良い王様になると思うわ」
ラルフは、この腹黒い男は、私を見た。
「ぴったりだわ」
計算高いところと言い、腹黒いところと言い。
「でも、僕は、いつかも言ったと思うけれど、最初の第一歩は王太子殿下からあなたを取り返すことだったんだ」
彼は言った。
「あの時、エレノアに言った一言、王太子殿下に言った一言が成功して、そうしたら芋づる式にこうならざるを得なかったんだ」
私は困惑した。
「王位を狙ってたんだと信じてたわ」
ラルフの方が呆れたという顔をした。
「なんで、そんなめんどくさいもの、欲しがるんだよ? ベロス公爵ではあるまいし」
「だって……」
「いや、やりますよ? 出来るからね。どの歴代王より自信があるよ。別に人を殺してまでやりたかないが、王妃様とベロス公爵に殺されるところだったからね」
戴冠式は豪華で立派だった。
結婚式も適当で済ませ、白い結婚から始まり、王太子殿下の殺害事件に巻き込まれ、本当にいろいろあった挙句の、私たちにとっては初めての大規模な公式の式だった。
結婚式には参加出来なかったラルフの五人の姉たちも、それぞれの夫や家族と主に参加していたし、元国王と元王妃も参加していた。
エレノアはコーブルグ家の長男と一緒に参加した。
彼女は三つ年下の彼と婚約に持ち込まれたのだ。
コーブルグ家の長男はリッチモンド家に入り婿することに決まっている。
エレノアは最初嫌がったが、ビックリするほど美しい貴公子を見ると気が変わったらしい。浮気されたらどうしようと心配している。
「妥当な心配だな。だが、大丈夫だと思うよ?」
ラルフは言った。
「ジョージはそんなマヌケではない」
どういう意味よ?
「僕はあなたを手に入れた。王位はオマケで付いてきた。王位を捨てるとあなたを失う」
「失う?」
「本当に困った。どうしても、どんなふうに手を尽くしても、不安定要素が残った。自分が王にならない限り。どうしてあなたは手の出ないような高位貴族に愛されるの?」
「……私は、社交界でモテたかったのよ? でも、全然モテなかったわ。王太子殿下と婚約破棄の直後にはあなたと結婚……」
「だって、十三歳のあなたとでも結婚しておきたかったのだもの。手放すはずがないだろう。そして、僕の取り柄といえば血筋だけだった」
それ以上話をすることはできなかった。
戴冠式が終わると、教会から王城までパレードをしなくちゃいけなかったからだ。
「神も嘉したもう」
白い髭の威厳ある聖職者が、天を仰ぎながら国の未来を祝して言った。
確かに、滅多にないほどの晴天だった。
周りは久しぶりの祝賀行事に沸き立つたくさんの人々で溢れていて、喜んで祝う歓声で私たちの話などかき消された。
ラルフのことは、みんなが知っていた。
王太子殿下のために作られたサラッとお手柄作成ミッションを自分のものにしたラルフは、戦勝将軍として大人気だった。
それはもう、王太子殿下とは比べものにならないくらい。
彼らは噂を聞いて知っていた。
新国王の結婚は、不実な婚約破棄の後、長年心に秘めていた愛を告白し、その恋を実らせたものだったと。
「うーん。どれもこれも、誤解ばかりみたいな?」
全部、自作自演っぽい。
だが、聞こえだけは、すばらしくロマンチックな恋物語だった。
戦いに勝って、最後に王位につくあたり、理想的な、清廉潔白で情熱的な騎士物語でもある。
沿道に駆けつけた民衆が大盛り上がりなのは、この話のせいだ。
必死に手を振り、大声で叫んでいる。
騎馬の護衛騎士達が、道へはみ出さないよう、しょっちゅう注意していた。
王宮には、すでに大勢の貴族たちが待ち構えているはずだった。これから三日三晩祝賀の宴会が続くのだ。
「王と王妃は国民の模範なんだ」
ラルフは、パレード用の無蓋馬車の中で、でっかい嵩張る戴冠式用のドレスごと私を抱きしめて言った。
歓声が余計大きくなった。
「いつも仲良く愛し合っていないとダメなんだ」
ラルフが私に公開キスすると、歓声はヤジに変わって、笑い声が混ざり、さらに大きくなった。
私は心底仰天したが、父もゲイリーもビンセントも、テオさえ当然と言った顔をしていることに力が抜ける思いだった。
「また、王太子妃……」
「今度は、候補じゃない」
ラルフがニコニコしながら言った。
「もう既成事実だから。王妃教育もバッチリすんでいる。僕は幸運だ」
私はラルフをにらんだ。
街でのショッピングも、気楽なカフェ巡りも全部できなくなるわ!
「なに、出来るよ」
ラルフは簡単そうに言った。
「人払いをすれば警備も簡単だ」
「違う、そうじゃない!」
私はわめいた。
「人がいるところがいいの! みんなが楽しそうにしているところへ行きたいの!」
「ダメだよ、そんな所に行ったら」
真面目な顔でラルフは注意した。
「世の中、馬鹿な男だっている。誰かがあなたに見惚れたり付きまとったりするかもしれない。そうなったら殺すしかないだろう?」
殺す? 私は一瞬黙ったが、叫んだ。
「その冗談は笑えないわ! 物騒過ぎるわ!」
ベロス公爵は完全に力を失い、役職も取り上げられ、隠居生活に入ることとなった。家を出たはずのビンセントが爵位を継いだ。
そしてさらにその半年後、国王夫妻は突然、王位を新王太子に譲ると宣言した。
「疲れたのよ、もう」
王妃様はシャーロットにそう言ったそうだ。
だが、私は知っている。
なぜ、王妃様がそんなに疲れたのかという理由をだ。
やれば出来る新王太子だったが、実子ではないので、非常に遠慮がちだった。
なんでも、国王夫妻をそれとなく立てた。
従って、国王の仕事は減らなかった。
いや、減らなくて当然なのだが、多少カバーしてあげてもよかったのではないかと思う。国王ではなく、王妃様を。
そもそも国王陛下は、仕事をしない。
正確には出来ないのだ。
ヘマをするのがうまい。とてもうまい。どうしてここで、そんな要らない発言をわざわざするのかなと思うところで、見事にクリーンヒットする。
樽のように太った奥方に嫌気が差して浮気をしているという噂が流れた時、噂の当の主人公、アーディントン卿に向かって、王が奥方の腰回りサイズを訪ねた時は、正直、思考回路を疑った。ではない、思考回路が透けて見えた。後ろに夫人が立っていることに気がついた時は、身が震えた。ここからは王妃様の出番だ。
全てが王妃様に回ってくる。年を取って、希望を失い、しんどいだけの王妃様のところへ。
ラルフは、わかっていたに違いない。
だが、彼は、他の貴族から非難されないように、そこは細心だった。厚かましいと非難されるような行動は決してとらなかった。
そして、国王夫妻への遠慮を隠れ蓑に、王妃様の負担を決して減らそうとはしなかった。
王位を完全に継承すれば、彼の天下になる。
「あなたは良い王様になると思うわ」
ラルフは、この腹黒い男は、私を見た。
「ぴったりだわ」
計算高いところと言い、腹黒いところと言い。
「でも、僕は、いつかも言ったと思うけれど、最初の第一歩は王太子殿下からあなたを取り返すことだったんだ」
彼は言った。
「あの時、エレノアに言った一言、王太子殿下に言った一言が成功して、そうしたら芋づる式にこうならざるを得なかったんだ」
私は困惑した。
「王位を狙ってたんだと信じてたわ」
ラルフの方が呆れたという顔をした。
「なんで、そんなめんどくさいもの、欲しがるんだよ? ベロス公爵ではあるまいし」
「だって……」
「いや、やりますよ? 出来るからね。どの歴代王より自信があるよ。別に人を殺してまでやりたかないが、王妃様とベロス公爵に殺されるところだったからね」
戴冠式は豪華で立派だった。
結婚式も適当で済ませ、白い結婚から始まり、王太子殿下の殺害事件に巻き込まれ、本当にいろいろあった挙句の、私たちにとっては初めての大規模な公式の式だった。
結婚式には参加出来なかったラルフの五人の姉たちも、それぞれの夫や家族と主に参加していたし、元国王と元王妃も参加していた。
エレノアはコーブルグ家の長男と一緒に参加した。
彼女は三つ年下の彼と婚約に持ち込まれたのだ。
コーブルグ家の長男はリッチモンド家に入り婿することに決まっている。
エレノアは最初嫌がったが、ビックリするほど美しい貴公子を見ると気が変わったらしい。浮気されたらどうしようと心配している。
「妥当な心配だな。だが、大丈夫だと思うよ?」
ラルフは言った。
「ジョージはそんなマヌケではない」
どういう意味よ?
「僕はあなたを手に入れた。王位はオマケで付いてきた。王位を捨てるとあなたを失う」
「失う?」
「本当に困った。どうしても、どんなふうに手を尽くしても、不安定要素が残った。自分が王にならない限り。どうしてあなたは手の出ないような高位貴族に愛されるの?」
「……私は、社交界でモテたかったのよ? でも、全然モテなかったわ。王太子殿下と婚約破棄の直後にはあなたと結婚……」
「だって、十三歳のあなたとでも結婚しておきたかったのだもの。手放すはずがないだろう。そして、僕の取り柄といえば血筋だけだった」
それ以上話をすることはできなかった。
戴冠式が終わると、教会から王城までパレードをしなくちゃいけなかったからだ。
「神も嘉したもう」
白い髭の威厳ある聖職者が、天を仰ぎながら国の未来を祝して言った。
確かに、滅多にないほどの晴天だった。
周りは久しぶりの祝賀行事に沸き立つたくさんの人々で溢れていて、喜んで祝う歓声で私たちの話などかき消された。
ラルフのことは、みんなが知っていた。
王太子殿下のために作られたサラッとお手柄作成ミッションを自分のものにしたラルフは、戦勝将軍として大人気だった。
それはもう、王太子殿下とは比べものにならないくらい。
彼らは噂を聞いて知っていた。
新国王の結婚は、不実な婚約破棄の後、長年心に秘めていた愛を告白し、その恋を実らせたものだったと。
「うーん。どれもこれも、誤解ばかりみたいな?」
全部、自作自演っぽい。
だが、聞こえだけは、すばらしくロマンチックな恋物語だった。
戦いに勝って、最後に王位につくあたり、理想的な、清廉潔白で情熱的な騎士物語でもある。
沿道に駆けつけた民衆が大盛り上がりなのは、この話のせいだ。
必死に手を振り、大声で叫んでいる。
騎馬の護衛騎士達が、道へはみ出さないよう、しょっちゅう注意していた。
王宮には、すでに大勢の貴族たちが待ち構えているはずだった。これから三日三晩祝賀の宴会が続くのだ。
「王と王妃は国民の模範なんだ」
ラルフは、パレード用の無蓋馬車の中で、でっかい嵩張る戴冠式用のドレスごと私を抱きしめて言った。
歓声が余計大きくなった。
「いつも仲良く愛し合っていないとダメなんだ」
ラルフが私に公開キスすると、歓声はヤジに変わって、笑い声が混ざり、さらに大きくなった。
7
お気に入りに追加
1,039
あなたにおすすめの小説

3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい
エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。
だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい
一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。
月が隠れるとき
いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。
その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。
という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。
小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
悪役令嬢の大きな勘違い
神々廻
恋愛
この手紙を読んでらっしゃるという事は私は処刑されたと言う事でしょう。
もし......処刑されて居ないのなら、今はまだ見ないで下さいまし
封筒にそう書かれていた手紙は先日、処刑された悪女が書いたものだった。
お気に入り、感想お願いします!

彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる