32 / 47
第28話 ロアン様の嘘物語
しおりを挟む
私、突然、貴族になってしまった?
「まあ、これまでも美貌の富豪の令嬢として、十分に尊重されて暮らしてきたと思うが、身分が追いついてきたわけだ。隣国王家からの好意もあるし、名実ともにこの国の社交界では花形になるだろう」
ロアン様はそう言ったが、なんだか喜んではいないらしい。
なんとなく表情が曇っていた。
「爵位はあった方がいいからね。伯爵令嬢ともなれば、より良い縁談が望めるだろう。きっと一緒に隣国へ行くように言われるだろう」
私は絶望的な顔になって、ロアン様を見つめた。
お店が遠くなっていく。
「あなたが遠くなって行く」
ロアン様が暗い調子で言った。
よく見ると、顔色が悪かった。それから、さっきから、あなた呼びになっている。
「今度ばかりは本当にモレル伯爵から言いつかった。あなたを警備するようにと」
ん? ちょっと待って。じゃあ、今までは警護しろとは言われてなかったってこと?
ロアン様はだんだんと打ちのめされたような顔つきになっていった。
「あなたを伯爵家の本邸へお連れするようにと言われていた」
なんですって?
「じゃあ、どうして今まではロアン様の別邸へ?」
いよいよ打ち萎れてロアン様は言った。
「だって、本邸は母上の目があるから」
なんだとぉ? どう言う意味だ?
「うまい具合に、ちょうど両親が留守だったので……俺の別邸に」
ええええ。何言い出すの!
「……でも、嫌われたくなくて」
はああ?
「あなたの両親が出かける前に、許しを願いに行ったんだ。伯爵をようやく説き伏せて、平民でも結婚を許してもらったところだった」
結婚?
「あなたが好きだった。必ず結婚しようと心に決めていた。式場の予約も候補日を押さえたし、ドレスは母上のドレスメーカーにお願いしたいと」
突然の告白……?
ちょっと待って! 本人は? 本人の意向は?
「相思相愛の二人だと両親を説き伏せた。だから、いいかなって」
誰と誰が相思相愛なの? 何言ってるの? いいかなって何がいいの? もしかして、私の勘、当たってた? ロアン様の方が、ジェロームより危険だったの?
「バリー商会は国内でも有数の大商会だ。その娘が伯爵家に嫁いだところで、ウチが金目当てと誹られるのが関の山で、羨ましがられるのがせいぜいだ」
勝手に話を進めないでください!
「だが、こうなってしまっては……」
ロアン様は、襲撃後の家に唯一残った私のイスに崩れるように座って頭を抱えた。
「あなたはきっと隣国に行くだろう。バリー商会は隣国にも支店がある。今度のことで、バリー商会の当主は裕福なだけではなく、立派な身分がついた。隣国王家と言うバックも付いた。大勢の貧しい人たちを助けたことで評判も爆上がりだ。それにあなたは美しい……」
え? わあ、褒められちゃった?
「俺だって、一目見た時からどうやって手に入れようか、毎晩考えた」
えっ? 一足飛びに今なんて言った?
ゾオオオ。誰か助けて。この人、変態です。
「こんなきれいな人を誰も捨ておかないだろう。きっと大勢の男たちが……」
バタンと音がして、急に外が騒がしくなった。
普段なら怯えるところだけど、今回ばかりは助かった。
変態とさし向かいはイヤ。
「ローズさん!」
ヘンリー君の声だった。
忘れてた。
ヘンリー君の真剣な求婚の最中だった。ほっぽらかして、出て行っちゃった。そのあと、忘れてた。いろいろあって。もうだいぶ経つ。
「ローズさん、無事ですか?」
ああ、この騎士様だけじゃなかった。
もう一人いたの忘れてたわ。
「まあ、これまでも美貌の富豪の令嬢として、十分に尊重されて暮らしてきたと思うが、身分が追いついてきたわけだ。隣国王家からの好意もあるし、名実ともにこの国の社交界では花形になるだろう」
ロアン様はそう言ったが、なんだか喜んではいないらしい。
なんとなく表情が曇っていた。
「爵位はあった方がいいからね。伯爵令嬢ともなれば、より良い縁談が望めるだろう。きっと一緒に隣国へ行くように言われるだろう」
私は絶望的な顔になって、ロアン様を見つめた。
お店が遠くなっていく。
「あなたが遠くなって行く」
ロアン様が暗い調子で言った。
よく見ると、顔色が悪かった。それから、さっきから、あなた呼びになっている。
「今度ばかりは本当にモレル伯爵から言いつかった。あなたを警備するようにと」
ん? ちょっと待って。じゃあ、今までは警護しろとは言われてなかったってこと?
ロアン様はだんだんと打ちのめされたような顔つきになっていった。
「あなたを伯爵家の本邸へお連れするようにと言われていた」
なんですって?
「じゃあ、どうして今まではロアン様の別邸へ?」
いよいよ打ち萎れてロアン様は言った。
「だって、本邸は母上の目があるから」
なんだとぉ? どう言う意味だ?
「うまい具合に、ちょうど両親が留守だったので……俺の別邸に」
ええええ。何言い出すの!
「……でも、嫌われたくなくて」
はああ?
「あなたの両親が出かける前に、許しを願いに行ったんだ。伯爵をようやく説き伏せて、平民でも結婚を許してもらったところだった」
結婚?
「あなたが好きだった。必ず結婚しようと心に決めていた。式場の予約も候補日を押さえたし、ドレスは母上のドレスメーカーにお願いしたいと」
突然の告白……?
ちょっと待って! 本人は? 本人の意向は?
「相思相愛の二人だと両親を説き伏せた。だから、いいかなって」
誰と誰が相思相愛なの? 何言ってるの? いいかなって何がいいの? もしかして、私の勘、当たってた? ロアン様の方が、ジェロームより危険だったの?
「バリー商会は国内でも有数の大商会だ。その娘が伯爵家に嫁いだところで、ウチが金目当てと誹られるのが関の山で、羨ましがられるのがせいぜいだ」
勝手に話を進めないでください!
「だが、こうなってしまっては……」
ロアン様は、襲撃後の家に唯一残った私のイスに崩れるように座って頭を抱えた。
「あなたはきっと隣国に行くだろう。バリー商会は隣国にも支店がある。今度のことで、バリー商会の当主は裕福なだけではなく、立派な身分がついた。隣国王家と言うバックも付いた。大勢の貧しい人たちを助けたことで評判も爆上がりだ。それにあなたは美しい……」
え? わあ、褒められちゃった?
「俺だって、一目見た時からどうやって手に入れようか、毎晩考えた」
えっ? 一足飛びに今なんて言った?
ゾオオオ。誰か助けて。この人、変態です。
「こんなきれいな人を誰も捨ておかないだろう。きっと大勢の男たちが……」
バタンと音がして、急に外が騒がしくなった。
普段なら怯えるところだけど、今回ばかりは助かった。
変態とさし向かいはイヤ。
「ローズさん!」
ヘンリー君の声だった。
忘れてた。
ヘンリー君の真剣な求婚の最中だった。ほっぽらかして、出て行っちゃった。そのあと、忘れてた。いろいろあって。もうだいぶ経つ。
「ローズさん、無事ですか?」
ああ、この騎士様だけじゃなかった。
もう一人いたの忘れてたわ。
116
お気に入りに追加
621
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる