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第31話 伯爵令嬢になりました
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「身分?」
私は平民だ。だが、ロアン様は言った。
「平民だろうが富豪の娘なんだ。こんなところに住んで、誘拐されて身の代金を要求されたらどうする? それこそ、みんなが迷惑するぞ?」
「こんなところに人がいるだなんて、誰も考えませんよ」
私は口答えをしたが、ロアン様の言うことは正しい。
でも、ここにある薬を作る道具を自分の屋敷に持ち帰らなきゃいけないのよ。
「今日は重大な話があるんだ」
ロアン様がいつになく重々しく言った。
「明日、お前の両親が帰ってくる」
「えっ?」
私は騎士様の顔を見た。
めちゃくちゃホッとした。よかった。
もう、これで安心だ。
「よかったです」
もう、言葉がなかった。帰ってくるとは聞いていたが、やっぱり心配だったのだ。
「良かったな。だが、今日の話はそこじゃない。もっと大事な話があるんだ。まずお前の両親は、立派だってことだ」
「どういうことですか?」
なんの話かしら?
「難破の時のことだ。船と積み荷はどうでもいい、人命を真っ先に考えろと命じたそうだ。積み荷は全部海に捨てられ船が軽くなったおかげで、乗っていた貧乏人たちは助かった。お前の両親は何人かの貧乏人たちの願いを聞き入れて、船に乗せていたのだ」
両親はいつでも偉かった。
「損害は相当なものだ。だけど、両親も知らなかったことだが、その乗せてやった人々の中に隣国の王子アシュトン殿下がいたのだ」
誰、それ。
「王子だ」
名前からして王子でしょうけど、そんな人がなぜ両親のチャーター貨物船に?
「どうして、貧乏人のふりをして船に乗っていたのですか?」
「お前に似てるんじゃないか? 無茶をするというか、下手な冒険心があるというか」
ロアン様は皮肉を言った。
それ、不敬ですよ!
「城でじっとしていれば、何不自由ない暮らしが待っているはずだ。噂だが、外に出てみたいと親の反対を押し切って出て行ったそうだ」
私はそんな無謀な真似はしていない。家出をしたのはちっとも得にならない結婚を強いられたからで、ちゃんとした理由があった。あのままではバリー家は乗っ取られてしまう。ジェロームが正式な夫になったら、いくら両親でも無理だ。バリー男爵家を生涯養い続けなくてはならなくなるだろう。
「両親は私に縁談があるようなことをほのめかしていましたわ。はっきりとは言いませんでしたけど。でも、その相手は多分ジェロームではなかったと思います。私がジェロームと結婚していたら、さぞがっかりするでしょう」
「まあ、その意味では、冒険心があって大変に良かったよ」
ロアン様が妙な誉め方をした。
「それでね、その外国の王子様を助けた件だが、ご両親の国王陛下夫妻が大変感謝されて、バリー商会の会長は隣国の伯爵になることになった。爵位を与えられたんだ」
「爵位?」
私は耳を疑った。
爵位はそう簡単にもらえるものではない。
ロアン様も同じことを思ったらしい。
「うん。この国ではあまりそんな話は聞かないけれどね。隣国には名誉伯爵とかいろいろあるらしい。勲章のようなものらしいな。宮廷やそう言ったところでは、伯爵並みの扱いを受けられるとかで」
私には想像がつかなかったので黙り込んだ。
ロアン様も同じく黙り込んだ。やがて彼は言った。
「まあ、そんなことで、あなたは伯爵令嬢になったのだ」
「え?」
私はびっくりして顔を上げた。
伯爵令嬢?
ロアン様はうなずいた。ちょっと悲しそうだな。なぜだろう?
「ことによるとご両親はそちらの国に移られるかもしれない。高潔な行いで王子を助けたとなれば、商売にとってもきっと有利に働くだろう」
そうね。父が伯爵になれば母は伯爵夫人。そして、私は伯爵令嬢……?
私は平民だ。だが、ロアン様は言った。
「平民だろうが富豪の娘なんだ。こんなところに住んで、誘拐されて身の代金を要求されたらどうする? それこそ、みんなが迷惑するぞ?」
「こんなところに人がいるだなんて、誰も考えませんよ」
私は口答えをしたが、ロアン様の言うことは正しい。
でも、ここにある薬を作る道具を自分の屋敷に持ち帰らなきゃいけないのよ。
「今日は重大な話があるんだ」
ロアン様がいつになく重々しく言った。
「明日、お前の両親が帰ってくる」
「えっ?」
私は騎士様の顔を見た。
めちゃくちゃホッとした。よかった。
もう、これで安心だ。
「よかったです」
もう、言葉がなかった。帰ってくるとは聞いていたが、やっぱり心配だったのだ。
「良かったな。だが、今日の話はそこじゃない。もっと大事な話があるんだ。まずお前の両親は、立派だってことだ」
「どういうことですか?」
なんの話かしら?
「難破の時のことだ。船と積み荷はどうでもいい、人命を真っ先に考えろと命じたそうだ。積み荷は全部海に捨てられ船が軽くなったおかげで、乗っていた貧乏人たちは助かった。お前の両親は何人かの貧乏人たちの願いを聞き入れて、船に乗せていたのだ」
両親はいつでも偉かった。
「損害は相当なものだ。だけど、両親も知らなかったことだが、その乗せてやった人々の中に隣国の王子アシュトン殿下がいたのだ」
誰、それ。
「王子だ」
名前からして王子でしょうけど、そんな人がなぜ両親のチャーター貨物船に?
「どうして、貧乏人のふりをして船に乗っていたのですか?」
「お前に似てるんじゃないか? 無茶をするというか、下手な冒険心があるというか」
ロアン様は皮肉を言った。
それ、不敬ですよ!
「城でじっとしていれば、何不自由ない暮らしが待っているはずだ。噂だが、外に出てみたいと親の反対を押し切って出て行ったそうだ」
私はそんな無謀な真似はしていない。家出をしたのはちっとも得にならない結婚を強いられたからで、ちゃんとした理由があった。あのままではバリー家は乗っ取られてしまう。ジェロームが正式な夫になったら、いくら両親でも無理だ。バリー男爵家を生涯養い続けなくてはならなくなるだろう。
「両親は私に縁談があるようなことをほのめかしていましたわ。はっきりとは言いませんでしたけど。でも、その相手は多分ジェロームではなかったと思います。私がジェロームと結婚していたら、さぞがっかりするでしょう」
「まあ、その意味では、冒険心があって大変に良かったよ」
ロアン様が妙な誉め方をした。
「それでね、その外国の王子様を助けた件だが、ご両親の国王陛下夫妻が大変感謝されて、バリー商会の会長は隣国の伯爵になることになった。爵位を与えられたんだ」
「爵位?」
私は耳を疑った。
爵位はそう簡単にもらえるものではない。
ロアン様も同じことを思ったらしい。
「うん。この国ではあまりそんな話は聞かないけれどね。隣国には名誉伯爵とかいろいろあるらしい。勲章のようなものらしいな。宮廷やそう言ったところでは、伯爵並みの扱いを受けられるとかで」
私には想像がつかなかったので黙り込んだ。
ロアン様も同じく黙り込んだ。やがて彼は言った。
「まあ、そんなことで、あなたは伯爵令嬢になったのだ」
「え?」
私はびっくりして顔を上げた。
伯爵令嬢?
ロアン様はうなずいた。ちょっと悲しそうだな。なぜだろう?
「ことによるとご両親はそちらの国に移られるかもしれない。高潔な行いで王子を助けたとなれば、商売にとってもきっと有利に働くだろう」
そうね。父が伯爵になれば母は伯爵夫人。そして、私は伯爵令嬢……?
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