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第13話 思っていたのより深刻
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それは……本当らしい。グスマンおじさんが言ってたもの。
「入れ替える気なんだ。そのためにはお前が邪魔だ。殺してやると言うのはそういう意味だ。お前が逃げてしまったから」
「仕方なかったのよ! あの家に居続けるわけにはいかなかった」
「助けたのは俺だしな。あのままだったら、絶対に引っ越し先にたどり着けてなかったはずだ」
「恩を着せる気?」
「そんなつもりじゃない。ただ、責任を感じて。単なる好まない結婚を強いられるだけで済んだはずなのに、命を狙われることになってしまった。命の方が大事だ。それに……」
騎士様は言いにくそうに口ごもった。
「それに、実は、確かな話ではないので、伯爵から絶対に口外するなと言われているんだが……」
「なに?」
私は騎士様に抑え込まれたまま聞いた。
「お前の両親のことだ。船は行方不明になったんじゃない。難破した」
「えっ……」
「だけど、乗客や乗組員の中には助かった者もいるらしい……」
私は大きく目を見張った。
「すまない。このことを話しても、お前の為にはならないだろうと伯爵は言うんだ。さぞ、動揺するだろうから、余計な憶測は伝えるなと言われたんだ」
生きているかもしれない? 勝手に手が小刻みに震えだした。
「いいか、ローズ。わからないんだ。冷静になって」
騎士様は心配そうに私の手を取って言った。
「バリー商会に親戚がやってきて乗っ取りを企んでいることは伯爵も知っている。だからここに匿えと言われたんだ」
「え? 伯爵様が?」
私はパッと顔を上げた。騎士様は唇をかんだ。
「まあ……伯爵はお前の親族や友人ではない。お前はただの領民だ。甘えちゃいけない」
いつのまにか私の目は涙でいっぱいになっていた。うなずくと、床にポタポタ水が落ちた。
「わかっています」
でも、嬉しい。両親が生きている可能性があるなんて。
両親がいなくなってしまってから、いろいろあり過ぎた。私は自分の身を自分で守らなくてはならなかった。世の中に誰も味方はいなかったし、信用できる人もいなかった。
だから伯爵様が気にしてくださったと聞いただけで、ほっとした。
このいささか強引なご招待が、イケメン騎士様の下心ではなくて、伯爵様の手配だったことがわかって本当に安心した。
私は怖かったのだ。
「そりゃそうだろう。だから、俺がいろいろ心配してやったのに」
騎士様はブツブツ言った。
「でも、騎士様は、あの……」
「なんだ」
「割と強引なんで……私、ちょっと勘違いしてしまったかもしれません」
下心を疑っただなんて、失礼だったわ。こんなイケメンの騎士様が、私に関心を持ってると考えるだなんて、申し訳ない。恥ずかしい。
「おお。それはな」
騎士様は何か言い淀んでいるようだったが結局教えてくれた。
「今晩が危なかったんだ」
「今晩が?」
「そう。今晩、襲撃事件があると、警備の者から知らせがあってな。だから今晩、少々強引でもあの家から引き離そうと思ったんだ」
「まあ。申し訳ございません」
そんな配慮を知らず、騎士様の玄関をぶち壊すところだったわ。
「そう言った情報はあまり確かではないんだ。何も起きなかったかもしれない。だから、はっきり説明できなかった。それに、教えると情報源の人が迷惑するからね」
そう言うことだったのね。ますます申し訳ない。口は悪いけど、いい人なんだ、騎士様。
「だから今日はあの部屋で我慢しなさい。市場に働きに行く時はこの格好だから、下女という触れ込みでこの家にいた方が自然だろう。だが、俺はお前の正体を知っている。良家の子女だ。ここはバリー男爵家の目が届かないから、本当のお前らしく暮らしたらいいだろう」
「入れ替える気なんだ。そのためにはお前が邪魔だ。殺してやると言うのはそういう意味だ。お前が逃げてしまったから」
「仕方なかったのよ! あの家に居続けるわけにはいかなかった」
「助けたのは俺だしな。あのままだったら、絶対に引っ越し先にたどり着けてなかったはずだ」
「恩を着せる気?」
「そんなつもりじゃない。ただ、責任を感じて。単なる好まない結婚を強いられるだけで済んだはずなのに、命を狙われることになってしまった。命の方が大事だ。それに……」
騎士様は言いにくそうに口ごもった。
「それに、実は、確かな話ではないので、伯爵から絶対に口外するなと言われているんだが……」
「なに?」
私は騎士様に抑え込まれたまま聞いた。
「お前の両親のことだ。船は行方不明になったんじゃない。難破した」
「えっ……」
「だけど、乗客や乗組員の中には助かった者もいるらしい……」
私は大きく目を見張った。
「すまない。このことを話しても、お前の為にはならないだろうと伯爵は言うんだ。さぞ、動揺するだろうから、余計な憶測は伝えるなと言われたんだ」
生きているかもしれない? 勝手に手が小刻みに震えだした。
「いいか、ローズ。わからないんだ。冷静になって」
騎士様は心配そうに私の手を取って言った。
「バリー商会に親戚がやってきて乗っ取りを企んでいることは伯爵も知っている。だからここに匿えと言われたんだ」
「え? 伯爵様が?」
私はパッと顔を上げた。騎士様は唇をかんだ。
「まあ……伯爵はお前の親族や友人ではない。お前はただの領民だ。甘えちゃいけない」
いつのまにか私の目は涙でいっぱいになっていた。うなずくと、床にポタポタ水が落ちた。
「わかっています」
でも、嬉しい。両親が生きている可能性があるなんて。
両親がいなくなってしまってから、いろいろあり過ぎた。私は自分の身を自分で守らなくてはならなかった。世の中に誰も味方はいなかったし、信用できる人もいなかった。
だから伯爵様が気にしてくださったと聞いただけで、ほっとした。
このいささか強引なご招待が、イケメン騎士様の下心ではなくて、伯爵様の手配だったことがわかって本当に安心した。
私は怖かったのだ。
「そりゃそうだろう。だから、俺がいろいろ心配してやったのに」
騎士様はブツブツ言った。
「でも、騎士様は、あの……」
「なんだ」
「割と強引なんで……私、ちょっと勘違いしてしまったかもしれません」
下心を疑っただなんて、失礼だったわ。こんなイケメンの騎士様が、私に関心を持ってると考えるだなんて、申し訳ない。恥ずかしい。
「おお。それはな」
騎士様は何か言い淀んでいるようだったが結局教えてくれた。
「今晩が危なかったんだ」
「今晩が?」
「そう。今晩、襲撃事件があると、警備の者から知らせがあってな。だから今晩、少々強引でもあの家から引き離そうと思ったんだ」
「まあ。申し訳ございません」
そんな配慮を知らず、騎士様の玄関をぶち壊すところだったわ。
「そう言った情報はあまり確かではないんだ。何も起きなかったかもしれない。だから、はっきり説明できなかった。それに、教えると情報源の人が迷惑するからね」
そう言うことだったのね。ますます申し訳ない。口は悪いけど、いい人なんだ、騎士様。
「だから今日はあの部屋で我慢しなさい。市場に働きに行く時はこの格好だから、下女という触れ込みでこの家にいた方が自然だろう。だが、俺はお前の正体を知っている。良家の子女だ。ここはバリー男爵家の目が届かないから、本当のお前らしく暮らしたらいいだろう」
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