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第18話 人選誤り
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なんとも異例なお見合い(?)パーティも無事終わり、私は無事責任を果たしたような気分に浸っていた。
そう。ケネスなんか忘れた。
出来ることは全部したのだもの。
次にすることは何もなかった。
グレシャム侯爵夫人のところから戻って以来、私は新しいドレスを作る時はマチルダを指名させてもらうことにした。
ナイジェルのメゾンでドレスを作る限り、母はうるさいことは言わなかった。
マチルダはあのハリソン夫人教えてくれただけあって、腕も確かだったが、万事そつがなく気の利く女性だった。
母の気に障らないように、でも私の好きなドレスを作ってくれた。
「せっかく腰が細いのだから、際立たせましょう。色合いは深めの方がお嬢様にはお似合いです」
だんだん自分の自由にできることはうれしかった。
どうして、ドレスくらい好きなものにしようとしなかったんだろう。
例のお茶会の後、メゾンへ行った時に私はつぶやいた。
「後はこのメガネをやめさせて欲しいんだけど」
私のつぶやきを拾ったマチルダは言った。
「あらあ、私、いい本を知ってますのよ?」
彼女は私に鼻が陥没する危険性と言う本を貸してくれた。メガネによる鼻の変形とメガネが当たる部分の顔の変色についての危険性をつづった論文だった。
こんなことで、母が意見を変えるかしらと思ったが、母は私の顔からメガネを取り上げた。
「危ないわ。これ以上まずい顔になったら、グレアムに嫌われるわ」
私はムッとした。母に言われたくない。
メガネなしの私は、大歓迎された。
ルシンダは私の顔をのぞき込むと、心から喜んでくれた。
「かわいいわ! この方がいい! よかったわ」
「かわいくないわ! でも、ましよ」
メガネがあろうとなかろうと、別にそれほど変わらない。変わったのは、ウィリアムだった。
彼はなにも言わなかったが、態度が変になった。
ケネスは、新しいご縁が出来て、満足そうだった。
あの二人のどちらかを選ぶのかは、ケネスの自由なので、食堂で時折二人とか三人を見かけても見ないふりをした。
「気にならないの?」
ウィリアムが話しかけてきた。
「別に」
「苦労してくっつけようとしたくらいだもん。うまくいくかどうか、気にならない?」
「だって、私にできるのはそれくらいよ。後はケネスがどうにかすればいいわ」
「気になるなあ、その言い方」
私はキッとしてウィリアムをにらみつけた。
ウィリアムは、ルシンダもアーノルドもいないのに、食堂のテーブルで私と二人で座っていた。
ちょっと違和感があったが、今は正式な婚約者がいないからいいのか。
「本当はケネスのこと、好きだったんじゃないの」
私はブスッとした。
「だって、長いこと婚約者だったのよ。気にはなるわ」
「本当にそれだけ?」
「それだけよ」
なんなの? このウィリアムは。いつもはもっとさらっとしているのに、今日のこの粘着質なしゃべり方。
だが、そこへ思いがけない人物が割り込んできた。
ケネスその人だ。
足取りも荒く、彼は私とウィリアムの真ん前に座った。
彼は挨拶もせず、いきなり話しかけた。
「シュザンナ、あのお茶会は何だったの?」
「え?」
私は、ビックリした。
「どのお茶会……あの被害者の会?」
「そう、そのヘンな会」
ケネスは不機嫌そうだった。
「あれは、あの……」
私は口ごもった。
なぜ、不機嫌?
ケネスは新しく可愛い女の子たちと知り合いになれて、上機嫌のはずでは?
「ねえ、どうして被害者の会にあの二人の女子が混ざっていたの?」
私たちは黙り込んだ。
「あれから、粘着されて困ってるんですけど」
「え?」
「好みじゃなかったの?」
「好み?」
ケネスが眉を寄せて顔をしかめた。
「誰の好み?」
「いえ、その、あなたの」
「違います!」
「だって、真実の愛を探しているって言うから……お手伝いできればと思って」
ケネスの顔が一挙に険悪になった。
「真実の愛は自分で探す!」
「でも、いつも一人でしたでしょ?」
そう言ってから気が付いた。しまった。ケネスには好きな人がもういたのか。
「ごめんなさい。ええと、真実の愛を見つけた後だったのね、きっと」
余計なお世話をしてしまった。でも、ケネスはかわいらしい令嬢が多く参加すると聞いて喜んだそうなのだけど?
「かわいらしい令嬢が来ると聞いて、喜んで参加してくださるってお聞きしましたのよ?」
ケネスの顔つきがいよいよ険悪になった。
「かわいらしくて抱きしめたくなるような女の子が好きって聞いたのに」
「誰がそんなこと言ったの?!」
ケネスは大声で言ってから、周りを見回して声のトーンを落とした。食堂にいるほかの生徒たちが、私たちを見ている。
ちなみに犯人は横にいるウィリアムである。
ただウィリアムはまったく動じる様子がなかった。ケネスをまっすぐ見据えている。
「どうしてメガネ、止めてしまったの?」
それはこの際、関係ない。私はさりげなくケネスのその質問は無視した。
「どんな女の子だったらよかったのですか?」
どうやら人選を間違えたらしい。
ケネスがぐっと詰まった。そして、真っ赤になった。
「なんで、そんなこと君に言わなきゃいけないんだ」
しまった。
「あ。それはそうですわよね。ごめんなさい。私たち関係ないのに」
この言葉にも、なぜかケネスは気分を害したらしい。
「関係ないって……私たちはって、君たちは婚約でもしたのか! 僕は……ほわんとした、でも可愛い女の子が好きだとは言ったが……」
「ルシンダ?」
「違う!」
「僕はシュザンナと婚約したいよ」
ボソッとウィリアムが冗談を言った。
「冗談好きねえ、ウィリアム」
このややこしい時にその冗談はいただけない。今はなんだか怒っているケネスの相手で精一杯だ。
ケネスがさっとウィリアムの顔を見た。
「冗談なのか?」
「冗談ですよ。だって彼女にはもう新しい婚約者がいるんだもの」
ケネスは動揺したらしかった。顔の表情が変わっている。
「まさか。だって婚約破棄したのは、たった2週間前だぞ?」
ケネスは私たちより年上なので、こうやって食堂で同じテーブルにいると、体の大きさが気になった。
ウィリアムもずいぶん大きな人なので、この二人に挟まれると、私は自分がすごくチビで小さいような気がしてきた。
「相手は誰なんだ?」
体が大きく威圧感のあるケネスが、眼光鋭く詰め寄ってきた。
「バイゴッド伯爵」
間の抜けた声で私は答えた。
別に隠すような話ではない。
ケネスは呆れたような顔をしたが、次の瞬間に嘘だろと呟いた。
「ケネス、それよりあなたのことよ」
私は申し訳なくて、余計なことを言ってしまった。
「ごめんなさい。私たち、あなたが真実の愛を探しているって聞いて、少しでもお手伝いしたかっただけなの」
「君は……新しい婚約者が決まったって言うのか?」
私はうなずいた。
「母が見つけてきたの」
「その人が好きなのか?」
ケネスが噛みつくように聞いてきた。
私は首を傾げた。よく知らない人なのだ。好きも嫌いもない。
「わからないわ。でも、私には婚約者が新しく決まりそうなので、あなたにも、いい方が見つかるといいと思ったのよ。不愉快にさせたなら申し訳なかったわ」
ケネスの顔は、なんとも言いようがない表情を浮かべていた。
私には、さっぱりその意味が分からなかった。
そう。ケネスなんか忘れた。
出来ることは全部したのだもの。
次にすることは何もなかった。
グレシャム侯爵夫人のところから戻って以来、私は新しいドレスを作る時はマチルダを指名させてもらうことにした。
ナイジェルのメゾンでドレスを作る限り、母はうるさいことは言わなかった。
マチルダはあのハリソン夫人教えてくれただけあって、腕も確かだったが、万事そつがなく気の利く女性だった。
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「せっかく腰が細いのだから、際立たせましょう。色合いは深めの方がお嬢様にはお似合いです」
だんだん自分の自由にできることはうれしかった。
どうして、ドレスくらい好きなものにしようとしなかったんだろう。
例のお茶会の後、メゾンへ行った時に私はつぶやいた。
「後はこのメガネをやめさせて欲しいんだけど」
私のつぶやきを拾ったマチルダは言った。
「あらあ、私、いい本を知ってますのよ?」
彼女は私に鼻が陥没する危険性と言う本を貸してくれた。メガネによる鼻の変形とメガネが当たる部分の顔の変色についての危険性をつづった論文だった。
こんなことで、母が意見を変えるかしらと思ったが、母は私の顔からメガネを取り上げた。
「危ないわ。これ以上まずい顔になったら、グレアムに嫌われるわ」
私はムッとした。母に言われたくない。
メガネなしの私は、大歓迎された。
ルシンダは私の顔をのぞき込むと、心から喜んでくれた。
「かわいいわ! この方がいい! よかったわ」
「かわいくないわ! でも、ましよ」
メガネがあろうとなかろうと、別にそれほど変わらない。変わったのは、ウィリアムだった。
彼はなにも言わなかったが、態度が変になった。
ケネスは、新しいご縁が出来て、満足そうだった。
あの二人のどちらかを選ぶのかは、ケネスの自由なので、食堂で時折二人とか三人を見かけても見ないふりをした。
「気にならないの?」
ウィリアムが話しかけてきた。
「別に」
「苦労してくっつけようとしたくらいだもん。うまくいくかどうか、気にならない?」
「だって、私にできるのはそれくらいよ。後はケネスがどうにかすればいいわ」
「気になるなあ、その言い方」
私はキッとしてウィリアムをにらみつけた。
ウィリアムは、ルシンダもアーノルドもいないのに、食堂のテーブルで私と二人で座っていた。
ちょっと違和感があったが、今は正式な婚約者がいないからいいのか。
「本当はケネスのこと、好きだったんじゃないの」
私はブスッとした。
「だって、長いこと婚約者だったのよ。気にはなるわ」
「本当にそれだけ?」
「それだけよ」
なんなの? このウィリアムは。いつもはもっとさらっとしているのに、今日のこの粘着質なしゃべり方。
だが、そこへ思いがけない人物が割り込んできた。
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足取りも荒く、彼は私とウィリアムの真ん前に座った。
彼は挨拶もせず、いきなり話しかけた。
「シュザンナ、あのお茶会は何だったの?」
「え?」
私は、ビックリした。
「どのお茶会……あの被害者の会?」
「そう、そのヘンな会」
ケネスは不機嫌そうだった。
「あれは、あの……」
私は口ごもった。
なぜ、不機嫌?
ケネスは新しく可愛い女の子たちと知り合いになれて、上機嫌のはずでは?
「ねえ、どうして被害者の会にあの二人の女子が混ざっていたの?」
私たちは黙り込んだ。
「あれから、粘着されて困ってるんですけど」
「え?」
「好みじゃなかったの?」
「好み?」
ケネスが眉を寄せて顔をしかめた。
「誰の好み?」
「いえ、その、あなたの」
「違います!」
「だって、真実の愛を探しているって言うから……お手伝いできればと思って」
ケネスの顔が一挙に険悪になった。
「真実の愛は自分で探す!」
「でも、いつも一人でしたでしょ?」
そう言ってから気が付いた。しまった。ケネスには好きな人がもういたのか。
「ごめんなさい。ええと、真実の愛を見つけた後だったのね、きっと」
余計なお世話をしてしまった。でも、ケネスはかわいらしい令嬢が多く参加すると聞いて喜んだそうなのだけど?
「かわいらしい令嬢が来ると聞いて、喜んで参加してくださるってお聞きしましたのよ?」
ケネスの顔つきがいよいよ険悪になった。
「かわいらしくて抱きしめたくなるような女の子が好きって聞いたのに」
「誰がそんなこと言ったの?!」
ケネスは大声で言ってから、周りを見回して声のトーンを落とした。食堂にいるほかの生徒たちが、私たちを見ている。
ちなみに犯人は横にいるウィリアムである。
ただウィリアムはまったく動じる様子がなかった。ケネスをまっすぐ見据えている。
「どうしてメガネ、止めてしまったの?」
それはこの際、関係ない。私はさりげなくケネスのその質問は無視した。
「どんな女の子だったらよかったのですか?」
どうやら人選を間違えたらしい。
ケネスがぐっと詰まった。そして、真っ赤になった。
「なんで、そんなこと君に言わなきゃいけないんだ」
しまった。
「あ。それはそうですわよね。ごめんなさい。私たち関係ないのに」
この言葉にも、なぜかケネスは気分を害したらしい。
「関係ないって……私たちはって、君たちは婚約でもしたのか! 僕は……ほわんとした、でも可愛い女の子が好きだとは言ったが……」
「ルシンダ?」
「違う!」
「僕はシュザンナと婚約したいよ」
ボソッとウィリアムが冗談を言った。
「冗談好きねえ、ウィリアム」
このややこしい時にその冗談はいただけない。今はなんだか怒っているケネスの相手で精一杯だ。
ケネスがさっとウィリアムの顔を見た。
「冗談なのか?」
「冗談ですよ。だって彼女にはもう新しい婚約者がいるんだもの」
ケネスは動揺したらしかった。顔の表情が変わっている。
「まさか。だって婚約破棄したのは、たった2週間前だぞ?」
ケネスは私たちより年上なので、こうやって食堂で同じテーブルにいると、体の大きさが気になった。
ウィリアムもずいぶん大きな人なので、この二人に挟まれると、私は自分がすごくチビで小さいような気がしてきた。
「相手は誰なんだ?」
体が大きく威圧感のあるケネスが、眼光鋭く詰め寄ってきた。
「バイゴッド伯爵」
間の抜けた声で私は答えた。
別に隠すような話ではない。
ケネスは呆れたような顔をしたが、次の瞬間に嘘だろと呟いた。
「ケネス、それよりあなたのことよ」
私は申し訳なくて、余計なことを言ってしまった。
「ごめんなさい。私たち、あなたが真実の愛を探しているって聞いて、少しでもお手伝いしたかっただけなの」
「君は……新しい婚約者が決まったって言うのか?」
私はうなずいた。
「母が見つけてきたの」
「その人が好きなのか?」
ケネスが噛みつくように聞いてきた。
私は首を傾げた。よく知らない人なのだ。好きも嫌いもない。
「わからないわ。でも、私には婚約者が新しく決まりそうなので、あなたにも、いい方が見つかるといいと思ったのよ。不愉快にさせたなら申し訳なかったわ」
ケネスの顔は、なんとも言いようがない表情を浮かべていた。
私には、さっぱりその意味が分からなかった。
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