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サジシーム
第141話 奇妙な伝説「アネンサード」
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「それで、メフメト殿が亡くなられたので、新たな混乱が起きる心配が出てきました」
王と王妃だけになると、サジシームはそう言って一枚の紙を取り出した。
「こちらに御署名くだされ」
それは昨日署名した、王権所領移譲証書を同じものだった。
ただし、移譲を受ける者の名前はサジシームになっていた。
「私が法定相続人なのです」
サジシームは説明した。
「ダリア王家に認めていただければ、メフメト様の近親者と争いにならないで済みます。ダリアのことをよく知らないロンゴバルト人に、王太子様のことがばれて、口出しされるのは心配です」
王と王妃に否も応もなかった。彼らには息子の安否しか、頭に入っていなかった。
彼らは大急ぎで署名し、息子のことをくれぐれも頼んだ。
「これさえいただければ、王太子殿下は早めに解放されましょう。ですが……」
彼は、部屋の窓の外に広がる丘を指した。
「王様、王妃様、あの丘の上には、レイビック伯の軍隊が私を狙っている」
「え?」
あわてて二人は、窓のそばに駆け寄った。
よく見ると、確かに丘の上には細かいゴミのように見える黒いものが動いていた。
「ロンゴバルトを狙っているのです。私は早く帰りたい。でないと、メフメト様のご遺体が腐ってしまう。傷の有無が確認できず、ダリアが殺したことになる。王太子ご夫妻が危険です」
「急いで、あれを止めさせなければ」
「誰か、誰かある。使者を出してレイビック伯を止めるのだ」
衛士たちが大声に反応してばらばらとやって来た。
「何事でございますか?」
「レイビック伯を止めるのだ。ロンゴバルトのサジシーム殿を狙っておる。失礼にもほどがある」
王はバタバタと数人の使いに指示を出しており、王妃は窓の外の兵たちの姿をじりじりしながら見守っていた。
「無事にできるだけ早くロンゴバルトへ帰れれば、それで結構でございます。……ところで、王妃様」
部屋に残っていたのは、サジシームと王妃だけだった。
「使者たちがあそこに着くまで、ほんの少し時間がございます。少しばかり王妃様に申し上げたいごとがございます」
王妃は、サジシームの静かな語りに驚いて耳をそばだてた。今は火急の時で、王も王妃も家来たちも、キンキン声でしゃべっていたからだ。
「わたくしは、ダリアに来て初めて、ダリアの教会の本とやらを拝見しました」
全く関係ない話を振られて、王妃は、少し驚いてサジシームの顔を見た。
「教会の本?」
「そう。初めて読みました。レイビックに魔王が棲むと言う話を」
王妃は元々、この世ならぬものに不安を感じるたちだった。宗教にはまってしまったり、妙な祈祷を信じたり、訳の分からない木の札に大枚を払ったりしていた。
たいていの人なら忘れてしまっているはずの、奇妙な、この世のものと思えない話は彼女の脳裏に深く刻まれていた。
「でも、それは伝説ですわ。それに魔王ではなかった。ええと……」
「異人種」
「そう、そんな話でした」
「ところで、その同じ話が、ロンゴバルトの宗教書にも伝えられていたのです。全く同じ話が……」
「え?」
「同じ。場所の名前もレイバイクなら、北の国だということも一緒。それから、金が産出される土地だということも全く一緒です」
「レイバイク? あ……」
「そう。現在、レイビックと呼ばれている、その場所ではないかと思ったのです」
「でも、それが何だと言うのですか?」
「ほら、あの丘の上……」
サジシームは指さした。
「レイビック伯がいる。彼は、突然やって来た。いきなり、金を掘り当て、大変な金持ちになった。彼が狙っているのは、私なのでしょうか?」
「ど……どういうことです?」
「彼は、人間離れした力の持ち主だ。異様な美貌で。体も並外れて大きい。まるで、人ではないようだ」
王妃はそんなことは考えたことがなかった。だが、神秘的な事柄におびえるたちの彼女は、その言葉に恐怖を感じた。レイビック伯が、まさか……ヒトではないと?
「おかしいと思いませんか? いまだにルシア妃と結婚しない。結婚できない理由があるのかもしれません」
「どんな理由?」
「異人種だから」
「……わからないわ……」
「異人種なので、人と結合できない。なぜなら、結合した人間の女たちはみんな死んでしまうから。一度、教会の本をお読みください。大昔から伝えられた真実なのかも知れないと思いませんか?」
「……まさか……そんなこと……」
「二つの全くつながりのない国の、全然異なる宗教に、同じ話が伝えられている。賢明なる王妃様はどうお考えでございましょう。そして、夕べのメフメト様の突然死。どこかに死神がいて、彼にそっと触れたかのような……」
「止めて! こわいわ」
「事実かもしれないと言っているのです。レイビック伯は、アネンサードの魔王なのかもしれない」
聞き慣れない単語に王妃は戸惑った。……そして、不安になった。
「アネンサード? それは……いったい何なのですか?」
「ロンゴバルトに伝わる伝説です。人間でない生き物の恐ろしい物話。闇の中を動き、人を襲い魂を奪う。大昔に人によって滅ぼされたことになっていた。だが、あそこにいる人物は……」
彼は丘の上を指した。
「そっくりだ。その伝説に。あなた方も狙われているのかもしれない」
王妃は口を開けたまま、憑かれたように、丘の上を必死に凝視した。サジシームは恐怖におびえたその顔を醜いと思った。そして内心ニヤリとした。
「おおーい。伝令を走らせた。大丈夫だ。安心して帰られよ」
王が汗だくになって戻ってきた。
サジシームはにっこりした。王妃は不安定な人物だ。十分に不安を植え付けた。後は自分で調べるなり、話を聞くなりして、恐怖と不信を高めていくだろう。
この国で、もっとも怖い人物は、レイビック伯爵だった。
だが、これで王家は彼を信用しなくなるだろう。
「かたじけない。それでは、お暇致しまする」
レイビック伯爵を始めとした編成軍は、王からの解散命令に、みんな拍子抜けした。
と、同時に王に腹を立てた。
わざわざ使者をよこして、撤退する敵軍を攻撃するなとは何事だろう。
「自分ではなにも出来んくせに、なんという言い草」
「ロンゴバルトの精鋭を潰すチャンスだったのに。今後、また攻め入られたら、どうするのだ。無責任な」
「王太子の命しか、頭の中に入っとらんのだ。今後も無抵抗で、国土を蹂躙されるかもしれない」
レイビック伯爵は、腕を組み、考え込んでいた。
「明らかにサジシームの差し金だな。ロンゴバルトは軍隊を温存したいということか」
「まあ、そうでしょうな。それに奥に入り込み過ぎている。本気でぶち当たれば、ロンゴバルト軍は壊滅の危険もある」
誰かがため息をついた。
「しかし、それをやると王太子はダリアに帰れないでしょう。もしかすると一生」
「ううむ」
彼らは目前を撤退するロンゴバルト軍を目で追った。
先頭を大型の馬車が走っていた。そしてそれを追うように軍勢は進んでいた。
「メフメトの棺か」
「多分」
それでもいいことはあった。
レイビック伯を中心とした集まりは、互いに結束し、演習を行ったようなものだった。
砦を撤退する前に、僧服を着た人物が二人、馬車で駆け付けてきた。
「ロドリック! フリースラント!」
それはベルブルグの副院長と、彼が連れてきたカプトルの大修道院の副院長だった。
「おそろしいことになったものだ。万一を考えて、我々もお力添えをさせていただく」
「坊さんがか? 鐘でも叩くのか?」
ベルブルグの副院長が、無礼な軽口をたたくゼンダの領主をにらみつけた。
「前身が騎士の修道士も多いのじゃ。だが、戦闘に参加させるのは本意ではない。我々が担当するのは、輸送と補給じゃ」
カプトルの副修道院長は、背が低く、小太りで、戦闘には全く不向きそうだったが、説明は極めて明快だった。
「つまり、津々浦々に修道院はある。ロンゴバルトの宗教は我々とは相いれない。とにかく、連中は、我々の顔さえ見ると、粛清にかかるのでな。とてもつきあえん」
「だから、輸送と補給については、繋がりの強い修道院を大いにあてにしてもらおうと」
「俺は教会と修道院は業突く張りの商売人だとばっかり思っていたよ」
ゼンダの領主がからかった。
「何を失礼な。業突く張りではない。立派に商売人として通用する、物わかりのいい修道院ばかりじゃ。でなくて、どうやって、あれだけの数の修道士を食わせて修行に専念させることができると言うのじゃ」
「なるほどね」
ゼンダの領主はからかうような態度だったが、その場にいた貴族たち全員が修道院とは多少なりとも付き合いがあった。
当然である。領地で採れた穀物や畜産品などは商人に売られることもあったが、修道院に売られたり、修道院から物を買うことだってあった。
「私の城の近くの修道院は、しょっちゅう寄付のお願いに来るのだが」
ラトマン殿がからかうような口調で口をはさんだが、ロドリックが言った。
「いずれも大修道院だ。ぜひ、お力をお借りしよう。我々は貴族全体ではない。手の届かない地方も多い。そして、南の地方は、今もまだ、ロンゴバルトの脅威にさらされている」
彼らは一旦、布陣を解き、それぞれの領地に戻ることになった。
「そんなに長くこの状態は保たないと思っている」
彼は言った。
砦から最後に出るのはレイビック伯爵と決まった。最大人数だったからだ。ゼンダの領主は、レイビック伯爵の城に招待された。今後を一緒に検討したいとレイビック伯が希望したからだ。
砦を発ち、レイビックを目指す日の前の晩、テンセスト女伯は、フリースラントとロドリックを集めた。それまで、どうしても三人きりになることができなかったからだ。
「どうして、フリースラントばかりが狙われたか、理由があるのです」
王と王妃だけになると、サジシームはそう言って一枚の紙を取り出した。
「こちらに御署名くだされ」
それは昨日署名した、王権所領移譲証書を同じものだった。
ただし、移譲を受ける者の名前はサジシームになっていた。
「私が法定相続人なのです」
サジシームは説明した。
「ダリア王家に認めていただければ、メフメト様の近親者と争いにならないで済みます。ダリアのことをよく知らないロンゴバルト人に、王太子様のことがばれて、口出しされるのは心配です」
王と王妃に否も応もなかった。彼らには息子の安否しか、頭に入っていなかった。
彼らは大急ぎで署名し、息子のことをくれぐれも頼んだ。
「これさえいただければ、王太子殿下は早めに解放されましょう。ですが……」
彼は、部屋の窓の外に広がる丘を指した。
「王様、王妃様、あの丘の上には、レイビック伯の軍隊が私を狙っている」
「え?」
あわてて二人は、窓のそばに駆け寄った。
よく見ると、確かに丘の上には細かいゴミのように見える黒いものが動いていた。
「ロンゴバルトを狙っているのです。私は早く帰りたい。でないと、メフメト様のご遺体が腐ってしまう。傷の有無が確認できず、ダリアが殺したことになる。王太子ご夫妻が危険です」
「急いで、あれを止めさせなければ」
「誰か、誰かある。使者を出してレイビック伯を止めるのだ」
衛士たちが大声に反応してばらばらとやって来た。
「何事でございますか?」
「レイビック伯を止めるのだ。ロンゴバルトのサジシーム殿を狙っておる。失礼にもほどがある」
王はバタバタと数人の使いに指示を出しており、王妃は窓の外の兵たちの姿をじりじりしながら見守っていた。
「無事にできるだけ早くロンゴバルトへ帰れれば、それで結構でございます。……ところで、王妃様」
部屋に残っていたのは、サジシームと王妃だけだった。
「使者たちがあそこに着くまで、ほんの少し時間がございます。少しばかり王妃様に申し上げたいごとがございます」
王妃は、サジシームの静かな語りに驚いて耳をそばだてた。今は火急の時で、王も王妃も家来たちも、キンキン声でしゃべっていたからだ。
「わたくしは、ダリアに来て初めて、ダリアの教会の本とやらを拝見しました」
全く関係ない話を振られて、王妃は、少し驚いてサジシームの顔を見た。
「教会の本?」
「そう。初めて読みました。レイビックに魔王が棲むと言う話を」
王妃は元々、この世ならぬものに不安を感じるたちだった。宗教にはまってしまったり、妙な祈祷を信じたり、訳の分からない木の札に大枚を払ったりしていた。
たいていの人なら忘れてしまっているはずの、奇妙な、この世のものと思えない話は彼女の脳裏に深く刻まれていた。
「でも、それは伝説ですわ。それに魔王ではなかった。ええと……」
「異人種」
「そう、そんな話でした」
「ところで、その同じ話が、ロンゴバルトの宗教書にも伝えられていたのです。全く同じ話が……」
「え?」
「同じ。場所の名前もレイバイクなら、北の国だということも一緒。それから、金が産出される土地だということも全く一緒です」
「レイバイク? あ……」
「そう。現在、レイビックと呼ばれている、その場所ではないかと思ったのです」
「でも、それが何だと言うのですか?」
「ほら、あの丘の上……」
サジシームは指さした。
「レイビック伯がいる。彼は、突然やって来た。いきなり、金を掘り当て、大変な金持ちになった。彼が狙っているのは、私なのでしょうか?」
「ど……どういうことです?」
「彼は、人間離れした力の持ち主だ。異様な美貌で。体も並外れて大きい。まるで、人ではないようだ」
王妃はそんなことは考えたことがなかった。だが、神秘的な事柄におびえるたちの彼女は、その言葉に恐怖を感じた。レイビック伯が、まさか……ヒトではないと?
「おかしいと思いませんか? いまだにルシア妃と結婚しない。結婚できない理由があるのかもしれません」
「どんな理由?」
「異人種だから」
「……わからないわ……」
「異人種なので、人と結合できない。なぜなら、結合した人間の女たちはみんな死んでしまうから。一度、教会の本をお読みください。大昔から伝えられた真実なのかも知れないと思いませんか?」
「……まさか……そんなこと……」
「二つの全くつながりのない国の、全然異なる宗教に、同じ話が伝えられている。賢明なる王妃様はどうお考えでございましょう。そして、夕べのメフメト様の突然死。どこかに死神がいて、彼にそっと触れたかのような……」
「止めて! こわいわ」
「事実かもしれないと言っているのです。レイビック伯は、アネンサードの魔王なのかもしれない」
聞き慣れない単語に王妃は戸惑った。……そして、不安になった。
「アネンサード? それは……いったい何なのですか?」
「ロンゴバルトに伝わる伝説です。人間でない生き物の恐ろしい物話。闇の中を動き、人を襲い魂を奪う。大昔に人によって滅ぼされたことになっていた。だが、あそこにいる人物は……」
彼は丘の上を指した。
「そっくりだ。その伝説に。あなた方も狙われているのかもしれない」
王妃は口を開けたまま、憑かれたように、丘の上を必死に凝視した。サジシームは恐怖におびえたその顔を醜いと思った。そして内心ニヤリとした。
「おおーい。伝令を走らせた。大丈夫だ。安心して帰られよ」
王が汗だくになって戻ってきた。
サジシームはにっこりした。王妃は不安定な人物だ。十分に不安を植え付けた。後は自分で調べるなり、話を聞くなりして、恐怖と不信を高めていくだろう。
この国で、もっとも怖い人物は、レイビック伯爵だった。
だが、これで王家は彼を信用しなくなるだろう。
「かたじけない。それでは、お暇致しまする」
レイビック伯爵を始めとした編成軍は、王からの解散命令に、みんな拍子抜けした。
と、同時に王に腹を立てた。
わざわざ使者をよこして、撤退する敵軍を攻撃するなとは何事だろう。
「自分ではなにも出来んくせに、なんという言い草」
「ロンゴバルトの精鋭を潰すチャンスだったのに。今後、また攻め入られたら、どうするのだ。無責任な」
「王太子の命しか、頭の中に入っとらんのだ。今後も無抵抗で、国土を蹂躙されるかもしれない」
レイビック伯爵は、腕を組み、考え込んでいた。
「明らかにサジシームの差し金だな。ロンゴバルトは軍隊を温存したいということか」
「まあ、そうでしょうな。それに奥に入り込み過ぎている。本気でぶち当たれば、ロンゴバルト軍は壊滅の危険もある」
誰かがため息をついた。
「しかし、それをやると王太子はダリアに帰れないでしょう。もしかすると一生」
「ううむ」
彼らは目前を撤退するロンゴバルト軍を目で追った。
先頭を大型の馬車が走っていた。そしてそれを追うように軍勢は進んでいた。
「メフメトの棺か」
「多分」
それでもいいことはあった。
レイビック伯を中心とした集まりは、互いに結束し、演習を行ったようなものだった。
砦を撤退する前に、僧服を着た人物が二人、馬車で駆け付けてきた。
「ロドリック! フリースラント!」
それはベルブルグの副院長と、彼が連れてきたカプトルの大修道院の副院長だった。
「おそろしいことになったものだ。万一を考えて、我々もお力添えをさせていただく」
「坊さんがか? 鐘でも叩くのか?」
ベルブルグの副院長が、無礼な軽口をたたくゼンダの領主をにらみつけた。
「前身が騎士の修道士も多いのじゃ。だが、戦闘に参加させるのは本意ではない。我々が担当するのは、輸送と補給じゃ」
カプトルの副修道院長は、背が低く、小太りで、戦闘には全く不向きそうだったが、説明は極めて明快だった。
「つまり、津々浦々に修道院はある。ロンゴバルトの宗教は我々とは相いれない。とにかく、連中は、我々の顔さえ見ると、粛清にかかるのでな。とてもつきあえん」
「だから、輸送と補給については、繋がりの強い修道院を大いにあてにしてもらおうと」
「俺は教会と修道院は業突く張りの商売人だとばっかり思っていたよ」
ゼンダの領主がからかった。
「何を失礼な。業突く張りではない。立派に商売人として通用する、物わかりのいい修道院ばかりじゃ。でなくて、どうやって、あれだけの数の修道士を食わせて修行に専念させることができると言うのじゃ」
「なるほどね」
ゼンダの領主はからかうような態度だったが、その場にいた貴族たち全員が修道院とは多少なりとも付き合いがあった。
当然である。領地で採れた穀物や畜産品などは商人に売られることもあったが、修道院に売られたり、修道院から物を買うことだってあった。
「私の城の近くの修道院は、しょっちゅう寄付のお願いに来るのだが」
ラトマン殿がからかうような口調で口をはさんだが、ロドリックが言った。
「いずれも大修道院だ。ぜひ、お力をお借りしよう。我々は貴族全体ではない。手の届かない地方も多い。そして、南の地方は、今もまだ、ロンゴバルトの脅威にさらされている」
彼らは一旦、布陣を解き、それぞれの領地に戻ることになった。
「そんなに長くこの状態は保たないと思っている」
彼は言った。
砦から最後に出るのはレイビック伯爵と決まった。最大人数だったからだ。ゼンダの領主は、レイビック伯爵の城に招待された。今後を一緒に検討したいとレイビック伯が希望したからだ。
砦を発ち、レイビックを目指す日の前の晩、テンセスト女伯は、フリースラントとロドリックを集めた。それまで、どうしても三人きりになることができなかったからだ。
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