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フリースラント
第37話 婚礼
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巷では、花嫁がまだ十二歳という異常な事実のみが先走り、華やかな雰囲気にならなかったが、貴族たちの間では、王家の正式行事である以上、参加したがる者が多かった。それは庶民も同じで関心は高く、ヴォルダ家の馬車が首都カプトルの通りを通ると、町中の人びとから注目を集めた。
「花嫁じゃないな。父上だろうか」
「ヴォルダ公爵はもう王宮におられるはずだ。御一族の誰かだろう」
フリースラントは馬車のカーテンを深くおろしたまま、細い隙間から町の様子を眺めた。
これでは、カーテンを開けるわけにはいかなかった。誰もが好奇心丸出しで、中をのぞき込むに違いなかった。
華やかな結婚式ではなかったが、荘厳で一切手抜きのない式であった。
王は、これが極めて正式で、誰しもが尊重しなくてはならない厳重な事実だということを、出来得る限り知らしめたかったのであろう。
病気の身の上では、こんな式に臨むのは負担だったに違いないのに、王は重い衣装と王冠、長い儀式に耐えた。
白い衣装の花嫁は、気高く美しく見えたが、やはり幼さが目立った。
「早く、この服を脱ぎたい」
花嫁衣装は、厚い絹地に金糸銀糸に宝石をずっしりと縫い込み、さらに長いトレーンを引いていた。式の時は、厚いベールをかぶり、ベールだけでもうんざりする重さだったのに、教会で戴冠し、王冠を被らされたのだが、その重さに首が耐えられないような気がした。
教会は貴族たちでぎっしり埋まり、参列していたフリースラントは熱気でどうかしそうだった。
王は呼べる限り、詰め込める限りの人数を、勢ぞろいさせ、教会に押し込んだのだ。
しかも隣の席には父と、機嫌の悪そうなアデリア王女が並んで座っていた。
本来なら、アデリア王女の隣には、嗣子のフリースラントの兄夫婦が座るべきなのだが、アデリア王女が嫌がったのだ。
「ごめんなさいね。アデリア王女はあなたの方がいいって言うのよ」
母が言った。十五歳の、イケメンで評判の若者の方が、アデリア王女のお好みなのは、みんなが理解できた。
母はルシアの世話をしなくてはならなかったので、席がなかった。フリースラントはそれにも憤慨していた。
フリースラントは口数は少なかったが、アデリア王女のどちらかと言うと不適切な感想を穏やかに受け流し、あからさまでなく服をほめたり、細かい要求に即座に応じたりしていた。グルダへの仕打ちと比較すると、天地ほども差がある手際の良さだった。
「まあ、フリースラント、わたくしはあなたと結婚した方が良かったわ」
常に不適切発言が多い、アデリア王女は今回も、なにかややこしいほめ方をした。
「お前は世渡り上手に違いない」
あとで父のヴォルダ公があきれて言った。
式のあと、日替わりで地方の領主まで呼べるだけ呼んで、盛大な披露宴が開催された。
フリースラントは初日だけの出席でよかったが、母や父、アデリア王女は全日出席していた。
国を挙げて、祝賀が繰り広げられた。
恐ろしく派手な祝賀会は地方でもいろいろと執り行われ、そのたびごとに明るいニュースと言うよりは、今回の王の結婚の異様さが、人の噂になった。
だから、結婚式のあと、王宮までのパレードには好奇心も手伝って大勢の人々が駆け付けた。
王と王妃の馬車には、どういうわけかアデリア王女も同乗していた。
彼女は豪奢な衣装を身に着け、王妃以上に興奮していた。大勢の民衆が歓呼の声をあげると、すっかり機嫌がよくなって、手を振って応えたりしていた。
人々は、彼女が王妃だと勘違いして、「十二歳なんか嘘だ。すごい別嬪の立派な貴婦人が王妃様だった」などと噂した。
ルシアは馬車の奥でむっつりしていた。
王は、アデリア王女を止めるのは体力的にも無理だったので、勝手にさせていた。
王宮での祝いの席でも、アデリア王女の振る舞いは、あたかも自分が王妃の座に就いたかのようだった。
王太子と王太子妃は、無視されて、全く出番がなかった。
小太りで年齢以上に老けて見える王太子は怒り、黙って青筋を立てていた。
傍らの王太子妃は、王太子にこっそりささやいた。
「王太子様、けれども、王様には決してお子様は生まれませんわ。だって、王妃様はまだ十二歳。そして、はばかりながら、国王陛下は、今、あの有様ですもの……」
王は痩せ、いかにも具合が悪そうだった。顔色が特に悪かった。
「さすれば殿下の時代がやってまいりまする」
「これ、滅多なことを言うでない」
そうは言いながら、王太子は、その言葉を聞くと機嫌がよくなるのだった。
華やかな晩餐会が行われ、真ん中の一段高くなったところで、王一家は着席していた。
ヴォルダ公爵家は、その真ん前の、最も高位の者が座る席に納まっていた。アデリア王女は、ヴォルダ家の席には座らず、王一家の席に座っていた。
隣のテーブルに、フリースラントはバジエ辺境伯の息子のギュレーターがいるのに気が付いた。向こうも気付いたらしい。
仲が悪いように思っていたギュレーターだったが、ここではなんだか親しみを感じるから不思議だ。
ギュレーターが父のバジエ辺境伯に何事か囁いているのが見えた。バジエ辺境伯が、わずかに目礼してきた。
「父上、バジエ辺境伯をご存知ですか?」
「あ、いや、バジエ殿は、王宮での仕事をしていないので、懇意ではないが……」
「ご子息と学校で一緒でした。ギュレーター殿と」
「ほう」
「隣のテーブルに、ご子息とご一緒におられます」
父のヴォルダ公職は、バジエ辺境伯の方を見た。辺境伯はこちらを見張っていたらしく、ヴォルダ公と目が合うと丁重に礼をした。
礼儀作法にうるさい貴族たちの反目は、アデリア王女に向けられていた。
王の威光を受けて勝手気ままにふるまう彼女に多くに貴族たちは、反感を持っていた。
本来ヴォルダ公妃の地位にいるのでヴォルダ公家のテーブルに着かなければならないのに、あたかも王の一家の一員のように壇上に座り、ほかの貴族たちを見下ろしていた。
確かに王妃は彼女の娘だが、彼女が王妃なのではない。
新しい王妃は、とても小さくて、衣装や王冠に埋もれていた。
ヴォルダ公爵や兄夫婦と共に座りながら、フリースラントは不穏なものを感じ取っていた。
母の横なら母からいろいろと聞けるのだが。そして、こんな場所でなければ、父でも兄にも、感想を聞けるのだが、大勢の人たちの耳目があるここでは、何も話せなかった。
「フリースラント、学校はどうだった?」
当たり障りのない話題で、兄が聞いてきた。
「はい。本科を優等で卒業しまして、高等科へ入学しました。しかし、諸国漫遊の旅を勧められまして……」
ここまで聞くと、兄は薄ら笑いを浮かべた。
「ベルブルグへでも行ったのか」
「その通りでございます。グルダに案内されました」
「グルダはよからぬことを我が弟に教えるな。私は、奴には剣をだいぶ叩き込まれたが、一度も勝てたことがない」
フリーラントは意外なことを聞いた。
「グルダは強かったのですか?」
「強いなんてもんじゃなかった。全く歯が立たなかった」
兄は笑った。
「全国優勝を何回も果たしたのだ。力だけでなく、技が抜きんでている」
「そうでございましたか」
「学校へ行ったとき、私でもそこそこの成績がとれたのは彼のおかげだった」
「兄上は、弓などはいかがでしたか?」
「弓か。まあまあの腕前だろう。父上は得意ではなかったとおっしゃっておられたが、私は、真ん中あたりの距離なら八割方当てられたよ」
兄は少し自慢そうだった。
フリースラントは意外な思いをした。
父も、兄も、決して武芸が得意ではなかったらしい。
フリースラントはてっきり彼の父や兄も、彼同様、武芸に秀でているものと思いこんでいたのだった。
「お前はどうだったのだ、フリースラント?」
「まあまあでございました。」
フリースラントの矢は、せっかく教師が必死で遠くまで運んだ的を、あっという間に真っ二つに割ってしまい、よく怒られていた。的を割るだなんて、よほどの怪力でなければあり得ない話だった。
「まあ、我が一族は軍事より、王の身近で政務を執らせていただく方が性に合っている一族だろう」
同じ兄弟だと言うのにどういうことなのだろう。ロドリックが言うように、偶然のなせる業なのだろうか。
フリースラントは黙って、豪勢な食事を続けた。
傍らの兄嫁や、こっそり様子をうかがっていたバジエ辺境伯の妻と娘は、フリースラントの優雅なマナーや、落ち着いて端正な物腰に、すっかり魅了されていた。
「さすがにヴォルダ家の御曹司はちがうな。お前の話を聞いていると、まるで武芸一辺倒の礼儀作法のなっとらん武骨な若者を想像していたが、非の打ちどころのない優雅な貴公子ではないか」
「しかし、恐ろしいバカ力です。ああ見えて、私が勝てません」
結婚式の全体像は、教会での式と一日目の晩さん会に出席しただけのフリースラントには、良く分からなかった。
フリースラントと母は、ルシアのことを心配していたが、彼らにできることは、なにもなかった。
フリースラントは晩餐会の翌日、母は大きな儀式が終わった三日後に、城に戻ってきた。母は、テンセスト女伯の身分で、ルシアの最も信頼厚い侍女として、その役割を果たしたのだ。
父は連日続く結婚の行事の総取締をしていた。城に帰るどころではなかった。
花嫁の父でもあったので、いろいろな場所に顔を出さねばならなかったが、それ以上に、彼は王の側近として、するべきことが山積していた。
結婚式だからと言って、普段の仕事がなくなるわけでもないので、多忙を極めていた。
フリースラントは、レイビックに戻るつもりだったが、自分の城で母を待った。
「花嫁じゃないな。父上だろうか」
「ヴォルダ公爵はもう王宮におられるはずだ。御一族の誰かだろう」
フリースラントは馬車のカーテンを深くおろしたまま、細い隙間から町の様子を眺めた。
これでは、カーテンを開けるわけにはいかなかった。誰もが好奇心丸出しで、中をのぞき込むに違いなかった。
華やかな結婚式ではなかったが、荘厳で一切手抜きのない式であった。
王は、これが極めて正式で、誰しもが尊重しなくてはならない厳重な事実だということを、出来得る限り知らしめたかったのであろう。
病気の身の上では、こんな式に臨むのは負担だったに違いないのに、王は重い衣装と王冠、長い儀式に耐えた。
白い衣装の花嫁は、気高く美しく見えたが、やはり幼さが目立った。
「早く、この服を脱ぎたい」
花嫁衣装は、厚い絹地に金糸銀糸に宝石をずっしりと縫い込み、さらに長いトレーンを引いていた。式の時は、厚いベールをかぶり、ベールだけでもうんざりする重さだったのに、教会で戴冠し、王冠を被らされたのだが、その重さに首が耐えられないような気がした。
教会は貴族たちでぎっしり埋まり、参列していたフリースラントは熱気でどうかしそうだった。
王は呼べる限り、詰め込める限りの人数を、勢ぞろいさせ、教会に押し込んだのだ。
しかも隣の席には父と、機嫌の悪そうなアデリア王女が並んで座っていた。
本来なら、アデリア王女の隣には、嗣子のフリースラントの兄夫婦が座るべきなのだが、アデリア王女が嫌がったのだ。
「ごめんなさいね。アデリア王女はあなたの方がいいって言うのよ」
母が言った。十五歳の、イケメンで評判の若者の方が、アデリア王女のお好みなのは、みんなが理解できた。
母はルシアの世話をしなくてはならなかったので、席がなかった。フリースラントはそれにも憤慨していた。
フリースラントは口数は少なかったが、アデリア王女のどちらかと言うと不適切な感想を穏やかに受け流し、あからさまでなく服をほめたり、細かい要求に即座に応じたりしていた。グルダへの仕打ちと比較すると、天地ほども差がある手際の良さだった。
「まあ、フリースラント、わたくしはあなたと結婚した方が良かったわ」
常に不適切発言が多い、アデリア王女は今回も、なにかややこしいほめ方をした。
「お前は世渡り上手に違いない」
あとで父のヴォルダ公があきれて言った。
式のあと、日替わりで地方の領主まで呼べるだけ呼んで、盛大な披露宴が開催された。
フリースラントは初日だけの出席でよかったが、母や父、アデリア王女は全日出席していた。
国を挙げて、祝賀が繰り広げられた。
恐ろしく派手な祝賀会は地方でもいろいろと執り行われ、そのたびごとに明るいニュースと言うよりは、今回の王の結婚の異様さが、人の噂になった。
だから、結婚式のあと、王宮までのパレードには好奇心も手伝って大勢の人々が駆け付けた。
王と王妃の馬車には、どういうわけかアデリア王女も同乗していた。
彼女は豪奢な衣装を身に着け、王妃以上に興奮していた。大勢の民衆が歓呼の声をあげると、すっかり機嫌がよくなって、手を振って応えたりしていた。
人々は、彼女が王妃だと勘違いして、「十二歳なんか嘘だ。すごい別嬪の立派な貴婦人が王妃様だった」などと噂した。
ルシアは馬車の奥でむっつりしていた。
王は、アデリア王女を止めるのは体力的にも無理だったので、勝手にさせていた。
王宮での祝いの席でも、アデリア王女の振る舞いは、あたかも自分が王妃の座に就いたかのようだった。
王太子と王太子妃は、無視されて、全く出番がなかった。
小太りで年齢以上に老けて見える王太子は怒り、黙って青筋を立てていた。
傍らの王太子妃は、王太子にこっそりささやいた。
「王太子様、けれども、王様には決してお子様は生まれませんわ。だって、王妃様はまだ十二歳。そして、はばかりながら、国王陛下は、今、あの有様ですもの……」
王は痩せ、いかにも具合が悪そうだった。顔色が特に悪かった。
「さすれば殿下の時代がやってまいりまする」
「これ、滅多なことを言うでない」
そうは言いながら、王太子は、その言葉を聞くと機嫌がよくなるのだった。
華やかな晩餐会が行われ、真ん中の一段高くなったところで、王一家は着席していた。
ヴォルダ公爵家は、その真ん前の、最も高位の者が座る席に納まっていた。アデリア王女は、ヴォルダ家の席には座らず、王一家の席に座っていた。
隣のテーブルに、フリースラントはバジエ辺境伯の息子のギュレーターがいるのに気が付いた。向こうも気付いたらしい。
仲が悪いように思っていたギュレーターだったが、ここではなんだか親しみを感じるから不思議だ。
ギュレーターが父のバジエ辺境伯に何事か囁いているのが見えた。バジエ辺境伯が、わずかに目礼してきた。
「父上、バジエ辺境伯をご存知ですか?」
「あ、いや、バジエ殿は、王宮での仕事をしていないので、懇意ではないが……」
「ご子息と学校で一緒でした。ギュレーター殿と」
「ほう」
「隣のテーブルに、ご子息とご一緒におられます」
父のヴォルダ公職は、バジエ辺境伯の方を見た。辺境伯はこちらを見張っていたらしく、ヴォルダ公と目が合うと丁重に礼をした。
礼儀作法にうるさい貴族たちの反目は、アデリア王女に向けられていた。
王の威光を受けて勝手気ままにふるまう彼女に多くに貴族たちは、反感を持っていた。
本来ヴォルダ公妃の地位にいるのでヴォルダ公家のテーブルに着かなければならないのに、あたかも王の一家の一員のように壇上に座り、ほかの貴族たちを見下ろしていた。
確かに王妃は彼女の娘だが、彼女が王妃なのではない。
新しい王妃は、とても小さくて、衣装や王冠に埋もれていた。
ヴォルダ公爵や兄夫婦と共に座りながら、フリースラントは不穏なものを感じ取っていた。
母の横なら母からいろいろと聞けるのだが。そして、こんな場所でなければ、父でも兄にも、感想を聞けるのだが、大勢の人たちの耳目があるここでは、何も話せなかった。
「フリースラント、学校はどうだった?」
当たり障りのない話題で、兄が聞いてきた。
「はい。本科を優等で卒業しまして、高等科へ入学しました。しかし、諸国漫遊の旅を勧められまして……」
ここまで聞くと、兄は薄ら笑いを浮かべた。
「ベルブルグへでも行ったのか」
「その通りでございます。グルダに案内されました」
「グルダはよからぬことを我が弟に教えるな。私は、奴には剣をだいぶ叩き込まれたが、一度も勝てたことがない」
フリーラントは意外なことを聞いた。
「グルダは強かったのですか?」
「強いなんてもんじゃなかった。全く歯が立たなかった」
兄は笑った。
「全国優勝を何回も果たしたのだ。力だけでなく、技が抜きんでている」
「そうでございましたか」
「学校へ行ったとき、私でもそこそこの成績がとれたのは彼のおかげだった」
「兄上は、弓などはいかがでしたか?」
「弓か。まあまあの腕前だろう。父上は得意ではなかったとおっしゃっておられたが、私は、真ん中あたりの距離なら八割方当てられたよ」
兄は少し自慢そうだった。
フリースラントは意外な思いをした。
父も、兄も、決して武芸が得意ではなかったらしい。
フリースラントはてっきり彼の父や兄も、彼同様、武芸に秀でているものと思いこんでいたのだった。
「お前はどうだったのだ、フリースラント?」
「まあまあでございました。」
フリースラントの矢は、せっかく教師が必死で遠くまで運んだ的を、あっという間に真っ二つに割ってしまい、よく怒られていた。的を割るだなんて、よほどの怪力でなければあり得ない話だった。
「まあ、我が一族は軍事より、王の身近で政務を執らせていただく方が性に合っている一族だろう」
同じ兄弟だと言うのにどういうことなのだろう。ロドリックが言うように、偶然のなせる業なのだろうか。
フリースラントは黙って、豪勢な食事を続けた。
傍らの兄嫁や、こっそり様子をうかがっていたバジエ辺境伯の妻と娘は、フリースラントの優雅なマナーや、落ち着いて端正な物腰に、すっかり魅了されていた。
「さすがにヴォルダ家の御曹司はちがうな。お前の話を聞いていると、まるで武芸一辺倒の礼儀作法のなっとらん武骨な若者を想像していたが、非の打ちどころのない優雅な貴公子ではないか」
「しかし、恐ろしいバカ力です。ああ見えて、私が勝てません」
結婚式の全体像は、教会での式と一日目の晩さん会に出席しただけのフリースラントには、良く分からなかった。
フリースラントと母は、ルシアのことを心配していたが、彼らにできることは、なにもなかった。
フリースラントは晩餐会の翌日、母は大きな儀式が終わった三日後に、城に戻ってきた。母は、テンセスト女伯の身分で、ルシアの最も信頼厚い侍女として、その役割を果たしたのだ。
父は連日続く結婚の行事の総取締をしていた。城に帰るどころではなかった。
花嫁の父でもあったので、いろいろな場所に顔を出さねばならなかったが、それ以上に、彼は王の側近として、するべきことが山積していた。
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