【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi

文字の大きさ
上 下
17 / 18

その後

しおりを挟む
義母とマチルダは悲鳴を上げながら、衛兵に連れられて行った。

「さあ、ダーナ、邪魔者はいなくなったよ」

フィル王子は、とたんにとろけるような笑顔になって、私に向かって言った。

「あの、あの二人は?」

「君が気にすることじゃないさ」

「あの、お父さまには?」

「大丈夫。全部、僕から説明する」

「それに、あの……」

私はちらりと元の婚約者のロジャーを見た。

ロジャーはわずか1時間の間に起きた、婚約破棄と別婚約と断罪に呆然として、フィル王子を眺めていた。

フィル王子はニコリとして、ロジャーに向かって言った。

「大丈夫だ。ロジャー。君は悪い公爵夫人に騙されて、マチルダ嬢と婚約したんだ。なにも恥じることはない。よかったな、あのマチルダと結婚しないで済んで。実は年齢詐称だったらしい」

「年齢詐称?」

「うん。どうやら公爵の実子ではなかったらしい。実は16歳だったそうだ。もし君に幼女趣味があるというなら別だが……」

「そんなものはない!」

「なら、良かったじゃないか! 僕と母が君にふさわしい妻を見つけてあげよう。今回のことでは気の毒だった。婚約者をすげ替えようなどという見下げ果てた根性は問題があると僕も思うが、何しろ、相手が悪い」

「あの義母の公爵夫人のことか?」

ブスッとした表情でロジャーは聞いた。

「もちろん、違うとも。悪い相手は王家かな」

フィル王子は上機嫌で答えた。

「君には悪かったと思っているよ。だから、特別に婚約者を顧みず、勝手に婚約破棄した件は目をつぶろう」


ロジャー様は、フィル王子の言うことは、よくわからなかったみたいだが、私の方に向き直った。


「ダーナには悪かったと思っている。君がパーティに出て来なくなってしばらくたつのに、心配しないで放っておいた。許してくれないか?」

許す? 

マチルダと結婚したかったくらいなのだから、私のことなんか、どうでもいいでしょう?

私は黙っていた。

「これで何もかも元通りだ。マチルダ嬢も公爵夫人もいないしね。いつでも、君と結婚できる。嬉しいだろう?」

ロジャーは、笑いながら、近づいてきた。



突然、フィル王子が割って入った。

「ロジャー、何をおかしなことを言っているんだ。君は、今さっき、ダーナと婚約破棄したんだよ?」

「ああ。するにはした。悪い公爵夫人に騙されてね」

「君は何を聞いていたんだ。僕が認めたのは、マチルダとの婚約の部分だけだ。ダーナとの婚約破棄はゆるがない」

「え?」

「君は自分にダーナ嬢はふさわしくないと宣言したろう。それに、婚約者らしいことは何もしてこなかった」

私はうんうんとうなずいた。フィル王子の言う通りよ。

「ここにいる全員が、ダーナ嬢との婚約破棄の証人だ。マチルダ嬢との婚約もみんなが聞いている。君はマチルダ嬢の婚約者だ」

ロジャーは真っ青になった。


「そして、ダーナ嬢は僕の婚約者だ。絶対に譲らない」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜

よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。  夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。  不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。  どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。  だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。  離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。  当然、慰謝料を払うつもりはない。  あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?

好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。

豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」 「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」 「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

この罰は永遠に

豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」 「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」 「……ふうん」 その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。 なろう様でも公開中です。

前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。

四季
恋愛
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた-- 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は-- ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

処理中です...