【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi

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シンデレラの姉なみに困惑

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「どうしても婚約者に会わせろですって?」

義母の公爵夫人は困惑した。

断るしかない。そもそも生きているのかどうかもよく分からない。

「元気だって、言ってたじゃないの? 女中頭が」

マチルダが呑気に言った。

「でも、せさばらえているかもしれない」

「ちょうどよかったじゃない、ダイエットに」

ダイエットどころではない。

しかし、生死のほどだけは、女中頭は把握していた。

持っていった食料品が、一応、なくなっていたからだ。

「生きては、いらっしゃいます」

どんなになっているのかは、わからなかったが。

「とりあえず、本人が希望していないと返事を出しましょう」


だが、そんなことで、へこたれるフィル王子ではなかった。

やれ、病気だ、気が向かない、別の用事がある、どんな言い訳も通用しなかった。

何しろ、相手は婚約者である。それだけの権利がある。

途中から招待状はフィル王子がせっせと書いていたが、差出人の名前だけはロジャーだった。


「では、迎えに行く」

フィル王子は決意した。

夜陰に紛れて前回同様、木に登った。

美しい娘が呑気にお茶をしていた。
夜会に行く気など、完全にないらしい。


「こんな美しい娘がもったいない」


フィル王子は王太子である。

例えば、王太子が窓を蹴破けやぶったとしよう。

誰も非難しないに決まっている。

王太子が強姦した場合、親は大喜びだ。

その程度には、自分の身分をわきまえていた。


だから、彼は、窓を蹴破けやぶることにした。


だが、意外なことが起きた。


娘は、その幻のように美しい娘は、フィル王子を見ても驚かなかった。

それどころか、呆れたように叫んだ。

「フィル! 王太子殿下! 窓なんから入っていてどうしたの? 危ないじゃないの」

フィルは、額の汗をぬぐった。

ああ、この娘は知っている。

この娘なら知っている。

ダーナだ。
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