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ロジャーとマチルダ

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女中頭がダーナの状況確認という嫌な役目を押し付けられた。

女中頭は、死体を発見する可能性に気がついて、それを手下の女中に押し付けた。彼女だって、死体なんかとお知り合いになりたくなかった。

女中はおびえた。そう言えば、最近、ぜんっぜん食事なんか持って行っていない。

死んでいるとしか思えなかった。

死体を発見すると思うと心底ゾッとした。

そこで二人は、衰えていらっしゃいましたが、生きていましたという、うその報告をした。



「まあ、意外に粘り強いのね!」

「あつかましいわ。私たちのおかげで生き延びてるって言う自覚あるのかしら」

義母とマチルダは大いにほっとした。同時にムカッとした。余計な心配をさせられた。



次の夜会に出た時、チャンスをつかんで、マチルダはロジャーに近づいた。

「ダーナの妹だって? もっと、ずっと子どもだと思っていたよ」

そう言うとロジャーは、上から下まで、マチルダを見回した。

「もう、大人ですわ」

マチルダは誇らしそうに言った。

ロジャーは大いに興味をそそられたらしく、マチルダとしばらく話をした。

彼女が立ち去ると、つぶやいた。


「ダーナと違って、そこそこ美人じゃないか」


そこへ足早に近寄ってくる人物がいた。

王太子殿下のフィルだった。ロジャーを見かけたら、一度聞いてみたいと思っていたのだ。

もう半年近く、ダーナを見ていない。一体どうなっているんだろう。


「知らない。そう言えば最近見ないな」

ロジャーは無関心の極みだった。

「今、話していたのは誰だったんだ」

フィルはいらだって従兄弟に聞いた。

「ダーナの異母妹だ。なかなかきれいな人だった。ダーナより彼女と婚約したいくらいだ」

「なんだって? ひどいことを言うな」

「フィル、お前がダーナと婚約したらどうだ? 公爵家の娘なんだし、問題ないだろう、そんなに気になるくらいなら」

「そういうつもりはない。だが、幼いころからの知り合いだろう? 半年も出てこないなんて、何か事情があったんじゃないか?」

「ブス姫だからな」

ロジャーは肩をすくめて、聞こえないように小さい声で言った。


フィルは余計いらだった。同時に心配になった。
義母と義妹は性格が悪いと評判だった。

本人はネコをかぶっているつもりでも、意外とバレるものである。

あのどちらかと言えば気弱なダーナが、ひどい扱いを受けているのではないかと心配になってきた。

「一度、訪問しよう」

フィルは決意した。

だが、一応、母の王妃様に相談した。

「行ってもいいけど、身分を隠して行ってちょうだい。私も公爵家の新しい夫人と娘のことは聞いたことがあるわ。ダーナが心配だけれど、あなたが行くと狙われそうよ」

フィルは一瞬嫌そうな顔をした。

実はフィルにはまだ、婚約者がいない。

この件に関しては利権が絡んで、もめにもめて、未だに一月に一人は新しい婚約者候補が取りざたされるくらいだ。

「わかりました。忍んで行ってきます」

「きっと正面から行ったら会わせてもらえないと思うの。こういう時のためのロジャーなのに」

「義妹の方と婚約し直したいくらいだと言っていました」

「趣味が悪いと思うわ」

王妃様は、嫌な顔をして言った。
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