6 / 18
義母と義妹視点
しおりを挟む
「邪魔者がいなくなってせいせいしたわ」
満足そうに、こう言った義母だったが、マチルダは不満だった。
もっとダーナを虐めたい。
ダーナが困った顔をしたり泣きそうになったりすると満足なのだ。
なんだか、自分が優れた人物になったような気がする。
いないと、そのチャンスがないので、なんとなく不満だった。
「婚約者を入れ替えてもらいましょうよ。そのことを真剣に考える時が来たわ」
母親は、娘に向かって言った。
「ロジャー様のこと?」
マチルダは少し赤くなって聞いた。
ダーナの婚約者は、態度は少々荒いが、なかなかの美男子だった。マチルダも夜会などで見かけたことがある。
「そうよ。公爵家の娘なら、王弟一家の一員になっても問題はないわ。ダーナなんかより、あなたの方がふさわしいわ。ただ、年がね……」
彼女は、表向き公爵の娘だということになっている。
義母の公爵夫人とダーナの父の公爵が知り合いになったのは、15年ほど前。だから、マチルダは14歳という設定になっている。娘の存在が、公爵を結婚に持ちこませたのだ。
「ロジャー様はあなたのことを14歳だと思ってらっしゃる」
マチルダは難しい顔をした。
確かに14歳では結婚は難しい。16歳なら十分だが。
「まさか、本当の年をばらすわけにはいかないし」
「でも、夜会で私を見たことがおありになるわ。皆さん、私のことを大人っぽいっておっしゃられますもの」
「そうね。魅力的だと思うわ」
母親の公爵夫人は娘のマチルダを自慢そうに眺めた。
「少なくとも、ダーナの婚約を取り下げて、あなたに差し替えしたいわ。結婚まで行かなくても、王家の一族に食い込みたいわ」
二人は、夜会と言う夜会には全部出席して、ロジャー様に媚びを売りに行く計画を立てた。
「ダーナときたら、太ってしまって、顔も醜いし、本当に王家になんか嫁げるような娘ではないしね。公爵家の恥ですわ」
マチルダはこの話をぜひともダーナに聞かせたくなってきた。
婚約者のことは大事にしているらしかったから、この話を聞いたら、さぞ、悲しむだろう。
ダーナは別にロジャーを好いてはいなかった。
ダーナにしてみれば、この二人に支配された家から出て行けるチャンスは結婚くらいなものだったから、その意味ではロジャーは望みの綱だったのだ。
早く結婚したいくらいだった。
だが、そんなことは、マチルダは全然知らなかったから、当然ダーナが婚約者を愛しているのだろうと解釈していた。
「ちょっと、どこへ行くの? マチルダ?」
「フフフ、ダーナに教えといてやろうと思って。ロジャーはもう、あなたの婚約者ではなくなってしまうのよって」
「あんな汚い場所に行くのはおよしなさい」
義母は、ハッとした。
最後にダーナに食事を与えてからどれくらい経ったかしら?
「人間、いや、魔法使いは、やればできるもんね」
その頃、ダーナは、自分でデザインしたふくふくのあたたかい部屋着にくるまって、新しい魔法の本をパラパラめくりながら、新作のパイを賞味していた。
太ってはいけないと思って、自制していたが、パイの一切れくらいならいいんじゃないだろうか。
自分に自信のないダーナは鏡を持ち込んでいなかった。
だから、どんな変化が自分に起きているのか知らなかった。
満足そうに、こう言った義母だったが、マチルダは不満だった。
もっとダーナを虐めたい。
ダーナが困った顔をしたり泣きそうになったりすると満足なのだ。
なんだか、自分が優れた人物になったような気がする。
いないと、そのチャンスがないので、なんとなく不満だった。
「婚約者を入れ替えてもらいましょうよ。そのことを真剣に考える時が来たわ」
母親は、娘に向かって言った。
「ロジャー様のこと?」
マチルダは少し赤くなって聞いた。
ダーナの婚約者は、態度は少々荒いが、なかなかの美男子だった。マチルダも夜会などで見かけたことがある。
「そうよ。公爵家の娘なら、王弟一家の一員になっても問題はないわ。ダーナなんかより、あなたの方がふさわしいわ。ただ、年がね……」
彼女は、表向き公爵の娘だということになっている。
義母の公爵夫人とダーナの父の公爵が知り合いになったのは、15年ほど前。だから、マチルダは14歳という設定になっている。娘の存在が、公爵を結婚に持ちこませたのだ。
「ロジャー様はあなたのことを14歳だと思ってらっしゃる」
マチルダは難しい顔をした。
確かに14歳では結婚は難しい。16歳なら十分だが。
「まさか、本当の年をばらすわけにはいかないし」
「でも、夜会で私を見たことがおありになるわ。皆さん、私のことを大人っぽいっておっしゃられますもの」
「そうね。魅力的だと思うわ」
母親の公爵夫人は娘のマチルダを自慢そうに眺めた。
「少なくとも、ダーナの婚約を取り下げて、あなたに差し替えしたいわ。結婚まで行かなくても、王家の一族に食い込みたいわ」
二人は、夜会と言う夜会には全部出席して、ロジャー様に媚びを売りに行く計画を立てた。
「ダーナときたら、太ってしまって、顔も醜いし、本当に王家になんか嫁げるような娘ではないしね。公爵家の恥ですわ」
マチルダはこの話をぜひともダーナに聞かせたくなってきた。
婚約者のことは大事にしているらしかったから、この話を聞いたら、さぞ、悲しむだろう。
ダーナは別にロジャーを好いてはいなかった。
ダーナにしてみれば、この二人に支配された家から出て行けるチャンスは結婚くらいなものだったから、その意味ではロジャーは望みの綱だったのだ。
早く結婚したいくらいだった。
だが、そんなことは、マチルダは全然知らなかったから、当然ダーナが婚約者を愛しているのだろうと解釈していた。
「ちょっと、どこへ行くの? マチルダ?」
「フフフ、ダーナに教えといてやろうと思って。ロジャーはもう、あなたの婚約者ではなくなってしまうのよって」
「あんな汚い場所に行くのはおよしなさい」
義母は、ハッとした。
最後にダーナに食事を与えてからどれくらい経ったかしら?
「人間、いや、魔法使いは、やればできるもんね」
その頃、ダーナは、自分でデザインしたふくふくのあたたかい部屋着にくるまって、新しい魔法の本をパラパラめくりながら、新作のパイを賞味していた。
太ってはいけないと思って、自制していたが、パイの一切れくらいならいいんじゃないだろうか。
自分に自信のないダーナは鏡を持ち込んでいなかった。
だから、どんな変化が自分に起きているのか知らなかった。
261
お気に入りに追加
1,208
あなたにおすすめの小説

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。
豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」
「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」
「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。

【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜
よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。
夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。
不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。
どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。
だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。
離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。
当然、慰謝料を払うつもりはない。
あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
四季
恋愛
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる