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第49話 推測と理由と方法
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「バルク少佐」
私は、遠慮がちに言ってみた。
「なんだ」
「私の意見ですが」
「まあ、言ってみろ」
「気象センター付近の調査をしなくてはいけません。
危険なグラクイが、他のエリアにも広がっていくのかを知りたいのです。
広がるようなら大変です。襲撃事件が増えてしまうかもしれません。
もし、広がるのを阻止できるなら、警戒は気象センターの付近のみという狭い範囲だけになります」
少佐は黙っていた。
「私は、第二のジャニスがいるのかも知れないと疑っています。
気象センター付近のグラクイのみ好戦的なら、なんらかの原因が気象センター付近にあるはずです」
しばらく黙った上で、バルク少佐は言った。
「調査なんて、言うだけなら簡単だ。どう調査する気だ。軍は研究組織じゃないんだ。そんなことに時間を割けない」
「でも、急ぎです。なぜなら、広がっていくなら、急いで阻止しないといけないからです」
少佐はため息をついた。
「なんで、あの場で言わないんだ」
「そこまで、頭が整理できていませんでした」
オスカーやロウ曹長、ジェレミー、バーグ曹長は黙っていた。
「君達はどう考える?」
「私は、いや、特に何も考えていませんでした」
オスカーは、どもりながら言った。
「では、グラクイの本質については、どう考える? 好戦的なのか? 意欲がない無気力な連中なのか?」
「無気力という感じではないです。ただ、合理的というか、無駄なことは決してしない。死んだ仲間の遺体を回収したりはしない」
「人間と争うのはどうだ。」
「わかりません。できるだけ、遭遇しないように気を配っていると思っていました。敵討ちとか、そういう激しい感情的な衝動を感じたことがありません」
「そう、感情はないでしょう」
ロウ曹長が割って入った。
「目的は常に合理的です。単に死なないように、種族が絶えないように、それくらいの意図しか感じたことがない。野生の動物並みです。カリブーとか、うさぎとか」
「自分たちが人間に狙われている以上、人間を皆殺しにしなくては、彼らの平安はないと考え始めたとしたら?」
「それは合理的な考え方でしょうか?
人間だって、もし、本気なら、彼らが住んでいる穴に毒ガスを注入すればいいのです。それをしなかったのは、取り返しのつかない環境汚染を心配したからです。
人間が、リスクの大きい手段をとってまで、グラクイの全滅を図る気にならなかったのと同様、彼らにも全面戦争へ突入するメリットはなかったのでしょう」
少佐はため息をついた
「ベッグ、ちょっと先に行って、会を始めててくれ。オレは、こいつを中佐のところに連れて行く」
実際には、行ったのではなく、オーツ中佐が私たちのいた会議室にやってきた。
「この方がいいからね。防音がしてある」
少佐が私たちの話を手短にまとめて話し、中佐は腕を組んだ。
「君の考えでは、第二のジャニスの存在が確実だというんだね」
「私はそう思います」
私は頑固にそう言い張った。
「別のエリアにおけるグラクイの行動と比べて、明らかに違う目的を持った行動を取っているなら、間違いなく第二のジャニスが存在することでしょう」
「しかし、誰か人間が裏にいるとしても、グラクイに命令することなんかできるんだろうか」
中佐はそう言った後、あわてて続けた。
「確かにジャニスは命令していた。本人自身が、そう自慢していたし、実際そうとしか考えられなかった。
だが、私たちには、方法がわかっていないのだ。
君の意見によると、誰かが同じことをしていることになる。グラクイへの意志のの伝達方法を引き継いでいる者がいるわけだ。
人間に対する悪意的な意思が広がっていくのなら、断固阻止しなくてはならない。それはそのとおりだが……」
「彼ら同士は、一体、どう意思を疎通させているのか。なぜ、ある一定の人物の命令だけは聞き入れるのに、他の人物の意見は聞かないのか。
さっぱりわからない。なにか特別な言葉で、しゃべれば通じるとか、そんな具合なんだろうか……」
少佐がつぶやいた。
私は少佐の顔を見た。
「少佐、あなたと私は、ジャニスがグラクイに命令しているところを見ていたことがある」
「えっ?」
少佐はびっくりして聞き返した。
中佐はあわてて聞いた。
「どういうことだ。君達は、ジャニスが命令しているところを知っているのか」
「そう、狙撃するために、私達はジャニスを見張っていました。
最後の日、ジャニスは、グラクイに話しかけていました。あれは、ただ、しゃべっているだけだった」
「ノルライド、なぜ、そんなことが言える?」
少佐が真剣になって聞いた。
「グラクイに言葉がわかるだなんて」
「少佐、少なくとも、私達は彼がしゃべって命令するところを見た。伝達方法は言語に間違いない」
「それは確かかね?」
中佐は疑り深そうに、確認した。
「生物学者たちは、生きたグラクイは、まるで言葉を理解しないと言っているのに、なぜ、断言できる?」
「それは、私達は一部始終を見ていたからです。ジャニスが何か言うと、彼らは椅子を動かした。ジャニスが口を動かすと、皿を運んできたりコップに飲み物を注いだりしていた」
「ホントにしゃべっていたかどうか、遠くから見ていただけの君たちに確認は出来ないだろう。声は聞こえないはずだ」
「でも、グラクイだって、見えてはいないはずです。
だって、あの日は天気がよかった。しかも、最も日の光が強いお昼頃だった。
グラクイは、明るいのが苦手なので、全員が、黒い布をかぶっていました。
細かい口の動きなんか見えているはずがない。
それに、命令には即座に従っていました。
紙に書いて渡したのでも、身振りでもない。ジャニスはだらりと寝そべったままでした」
中佐は黙った。
「なぜ、今まで黙っていたんだね?」
「気がついていなかった。忘れていたんです。重要だと思っていなかった」
私は、ばかばかしい返事をした。
「それに、もうひとつある」
私は、思いついたことがあった。
この前のバルク少佐の話から、私は、今、気づいたことがあった。
バルク少佐の妻の日記だ。ジャニスの日常がこまごまと記されていたという……。
そこには、おそらくヒントが隠されているに違いなかった。どれくらいの分量があるのか私は全然知らなかったが、多ければ多いほど良質の資料となる。軍の人間が読んでも、なんの参考にもならないだろうが、専門家が読めば、時間をかけて、今から、グラクイを観察するより、ずっと時間が節約できる。
「ジャニスの城からの資料は、全部、研究者に渡されているのですか。特に生物行動学の専門家に?」
中佐は何をいきなり言い出すんだという顔つきだった。中佐は、少佐の妻の日記の存在を知らないかもしれなかった。
「君は、何を差し出がましいことを言い出すんだね?」
少佐が苦々し気に口をはさんだ。
「バルク少佐、そこまで言わなくてもいいと思うが。ああ、そうか、ノルライド少尉は、生物学が専門だったね?」
その話はしたくないのだが、私はうなずいた。
「君は、ここへ来る前までは、研究室にいた。確か、そんな記録を読んだ覚えがある。変り種だと思ったので、覚えている。なるほど。資料か」
中佐はそのほかにも色々思い出したかも知れなかった。その証拠に後は口をもごもごさせていた。
「ノルライド少尉、君は……」
「申し訳ありません。確かに差し出がましいことを言いました」
「まあまあ、少佐、とりあえず、私が提案してみよう」
中佐がとりなした。
「しかし、どう説明したらいいものやら……」
私は、遠慮がちに言ってみた。
「なんだ」
「私の意見ですが」
「まあ、言ってみろ」
「気象センター付近の調査をしなくてはいけません。
危険なグラクイが、他のエリアにも広がっていくのかを知りたいのです。
広がるようなら大変です。襲撃事件が増えてしまうかもしれません。
もし、広がるのを阻止できるなら、警戒は気象センターの付近のみという狭い範囲だけになります」
少佐は黙っていた。
「私は、第二のジャニスがいるのかも知れないと疑っています。
気象センター付近のグラクイのみ好戦的なら、なんらかの原因が気象センター付近にあるはずです」
しばらく黙った上で、バルク少佐は言った。
「調査なんて、言うだけなら簡単だ。どう調査する気だ。軍は研究組織じゃないんだ。そんなことに時間を割けない」
「でも、急ぎです。なぜなら、広がっていくなら、急いで阻止しないといけないからです」
少佐はため息をついた。
「なんで、あの場で言わないんだ」
「そこまで、頭が整理できていませんでした」
オスカーやロウ曹長、ジェレミー、バーグ曹長は黙っていた。
「君達はどう考える?」
「私は、いや、特に何も考えていませんでした」
オスカーは、どもりながら言った。
「では、グラクイの本質については、どう考える? 好戦的なのか? 意欲がない無気力な連中なのか?」
「無気力という感じではないです。ただ、合理的というか、無駄なことは決してしない。死んだ仲間の遺体を回収したりはしない」
「人間と争うのはどうだ。」
「わかりません。できるだけ、遭遇しないように気を配っていると思っていました。敵討ちとか、そういう激しい感情的な衝動を感じたことがありません」
「そう、感情はないでしょう」
ロウ曹長が割って入った。
「目的は常に合理的です。単に死なないように、種族が絶えないように、それくらいの意図しか感じたことがない。野生の動物並みです。カリブーとか、うさぎとか」
「自分たちが人間に狙われている以上、人間を皆殺しにしなくては、彼らの平安はないと考え始めたとしたら?」
「それは合理的な考え方でしょうか?
人間だって、もし、本気なら、彼らが住んでいる穴に毒ガスを注入すればいいのです。それをしなかったのは、取り返しのつかない環境汚染を心配したからです。
人間が、リスクの大きい手段をとってまで、グラクイの全滅を図る気にならなかったのと同様、彼らにも全面戦争へ突入するメリットはなかったのでしょう」
少佐はため息をついた
「ベッグ、ちょっと先に行って、会を始めててくれ。オレは、こいつを中佐のところに連れて行く」
実際には、行ったのではなく、オーツ中佐が私たちのいた会議室にやってきた。
「この方がいいからね。防音がしてある」
少佐が私たちの話を手短にまとめて話し、中佐は腕を組んだ。
「君の考えでは、第二のジャニスの存在が確実だというんだね」
「私はそう思います」
私は頑固にそう言い張った。
「別のエリアにおけるグラクイの行動と比べて、明らかに違う目的を持った行動を取っているなら、間違いなく第二のジャニスが存在することでしょう」
「しかし、誰か人間が裏にいるとしても、グラクイに命令することなんかできるんだろうか」
中佐はそう言った後、あわてて続けた。
「確かにジャニスは命令していた。本人自身が、そう自慢していたし、実際そうとしか考えられなかった。
だが、私たちには、方法がわかっていないのだ。
君の意見によると、誰かが同じことをしていることになる。グラクイへの意志のの伝達方法を引き継いでいる者がいるわけだ。
人間に対する悪意的な意思が広がっていくのなら、断固阻止しなくてはならない。それはそのとおりだが……」
「彼ら同士は、一体、どう意思を疎通させているのか。なぜ、ある一定の人物の命令だけは聞き入れるのに、他の人物の意見は聞かないのか。
さっぱりわからない。なにか特別な言葉で、しゃべれば通じるとか、そんな具合なんだろうか……」
少佐がつぶやいた。
私は少佐の顔を見た。
「少佐、あなたと私は、ジャニスがグラクイに命令しているところを見ていたことがある」
「えっ?」
少佐はびっくりして聞き返した。
中佐はあわてて聞いた。
「どういうことだ。君達は、ジャニスが命令しているところを知っているのか」
「そう、狙撃するために、私達はジャニスを見張っていました。
最後の日、ジャニスは、グラクイに話しかけていました。あれは、ただ、しゃべっているだけだった」
「ノルライド、なぜ、そんなことが言える?」
少佐が真剣になって聞いた。
「グラクイに言葉がわかるだなんて」
「少佐、少なくとも、私達は彼がしゃべって命令するところを見た。伝達方法は言語に間違いない」
「それは確かかね?」
中佐は疑り深そうに、確認した。
「生物学者たちは、生きたグラクイは、まるで言葉を理解しないと言っているのに、なぜ、断言できる?」
「それは、私達は一部始終を見ていたからです。ジャニスが何か言うと、彼らは椅子を動かした。ジャニスが口を動かすと、皿を運んできたりコップに飲み物を注いだりしていた」
「ホントにしゃべっていたかどうか、遠くから見ていただけの君たちに確認は出来ないだろう。声は聞こえないはずだ」
「でも、グラクイだって、見えてはいないはずです。
だって、あの日は天気がよかった。しかも、最も日の光が強いお昼頃だった。
グラクイは、明るいのが苦手なので、全員が、黒い布をかぶっていました。
細かい口の動きなんか見えているはずがない。
それに、命令には即座に従っていました。
紙に書いて渡したのでも、身振りでもない。ジャニスはだらりと寝そべったままでした」
中佐は黙った。
「なぜ、今まで黙っていたんだね?」
「気がついていなかった。忘れていたんです。重要だと思っていなかった」
私は、ばかばかしい返事をした。
「それに、もうひとつある」
私は、思いついたことがあった。
この前のバルク少佐の話から、私は、今、気づいたことがあった。
バルク少佐の妻の日記だ。ジャニスの日常がこまごまと記されていたという……。
そこには、おそらくヒントが隠されているに違いなかった。どれくらいの分量があるのか私は全然知らなかったが、多ければ多いほど良質の資料となる。軍の人間が読んでも、なんの参考にもならないだろうが、専門家が読めば、時間をかけて、今から、グラクイを観察するより、ずっと時間が節約できる。
「ジャニスの城からの資料は、全部、研究者に渡されているのですか。特に生物行動学の専門家に?」
中佐は何をいきなり言い出すんだという顔つきだった。中佐は、少佐の妻の日記の存在を知らないかもしれなかった。
「君は、何を差し出がましいことを言い出すんだね?」
少佐が苦々し気に口をはさんだ。
「バルク少佐、そこまで言わなくてもいいと思うが。ああ、そうか、ノルライド少尉は、生物学が専門だったね?」
その話はしたくないのだが、私はうなずいた。
「君は、ここへ来る前までは、研究室にいた。確か、そんな記録を読んだ覚えがある。変り種だと思ったので、覚えている。なるほど。資料か」
中佐はそのほかにも色々思い出したかも知れなかった。その証拠に後は口をもごもごさせていた。
「ノルライド少尉、君は……」
「申し訳ありません。確かに差し出がましいことを言いました」
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