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第24話 鈍感生活満喫中
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「少佐の制服はかなり焼け焦げてました。だいぶ重症でしょう。あなたも気を失っていたので、すぐに救急隊を呼びました」
「今、あの現場はどうなっているの?」
「すぐに、ブラック隊が向かいました。ロウ曹長が慣れているので、光ボムも使って、ジャニスの城からグラクイを吸い出す作戦を行っています」
ジャニスの小屋とその下に続く迷路のような地下は、ジャニスの城というあだ名になっていた。
「私は、どこに組み込まれているの?」
「体の状態さえよければ、通常通りブルー隊のローテーションに入ってください。ただ、今日は、ブルーは休みにあたっています」
私は考えた。これは、少佐にお礼を言わないといけないのか。
なんだって、気を失ったりしたんだろう。余計な迷惑をかけてしまった。
彼を背負って帰ってきたほうがよかった。ああ、でも、私の体格じゃ無理だ。
バルク少佐は、どう少なく見積もっても私より二十キロくらいは重そうだから、運べなさそう。逆だったら、二人とも死んでたな。
「病院に、少佐のお見舞いに行ってくるよ」
オスカーが複雑な顔をした。そして、私が基地を離れると、付いてきた。
「なあ、どうでもいいけど、ギルをどうする気だ」
「ギル? ああ、困ったなあ。付き合う気はないんだけど」
「残酷だな、君は。やつは病院に行きたがった。君にくっついていたかったんだ」
私はオスカーをじろりと見た。私だって、そこまで目が見えないわけじゃない。
ギルについては、一度注意されたから、ちゃんと見てたんだ。ギルを病院に回したのは、オスカーだって事もわかっていた。
「そして、バルク少佐に不安を感じた。同じ作戦に泊りがけで行ったからだ。ただの仕事なのに」
私は言ってみた。オスカーがたじろいだ。
「わかってるのに、なぜ、見舞いに行く」
「助けてくれたからね。代わりにやけどを負ったらしい。申し訳ないことになった」
「なんで、少佐のことになると、そう必死になる?」
「え?」
「少佐もそうだ。少佐が誰かを怒鳴っているなんて聞いたこともない。君の事になると、ズバズバ怒鳴る。君たちは必死になりすぎる」
「……冷静になれと? 特に興奮しているわけじゃないけど」
「おれは、ギルの友達なんだ。君もそうだ。いままで、なにを見てもどうでもよさそうにしていた君が必死になっているのを見ると、これでよかったと思うけど、同時に、少佐で正解なのかと……」
この見解には驚いた。
「オスカー、違うよ。必死になったのは、ライフルの腕を認めてもらいたかっただけなんだ。見舞いのほうは、マイカから話を聞いたんだ。少佐は体を張って助けてくれた。お礼を言わないといけない。それに、作戦はすでに終わった。少佐は、もう怒鳴らないよ。私も、必死になる必要がもうない」
「本当?」
オスカーは疑わしそうだった。
「まあ、今後とも彼は私の上司だけど、二人でする仕事なんか、もうないんじゃないかな」
「確かに二人でする仕事なんか、この先なさそうだけど……バルク少佐は、そんな人じゃないよ」
オスカーは、そうつぶやくと自分は立ち止まって、私を先に行かせた。
でも、オスカーとの話は私を滅入らせた。
ギルのことは好きだ。だが、ギルと付き合っている自分が全く想像できなかった。少佐のことは好きかどうかなんて考えたことがなかった。第一、少佐の方には、そんな感情はまるきりないだろう。
それより、どうして、みんな、こんな忙しい時にそんな心配ばっかりやってるんだろう。
「若いんだな」
私は結論付けた。
スナイパーとして使ってくれたのは、うれしかった。でも、これからはそんな出番はないだろう。個人の作戦も減るだろうし、この戦闘(戦争ではない)もじきに収束するだろう。
私はどうしよう。のんきで孤独なシューティングゲームが終わってしまうなら、軍にいても仕方ない。
自室へ戻ると、あんまりしゃきっとしていない軍服を引っ張り出して、きちんと着た。それから、病院へ出かけた。
バルク少佐の病室がどこなのかを聞くと、聞いただけなのに看護師は猛烈に疑わしそうな顔をした。朝から、軍関係者のフリをした野次馬が何人か来たらしい。
ローカルのニュースなので、扱いも小さかったはずだが、それでもここは地元なので野次馬も来るのだろう。
「あと、ノルライド少尉とか言う人の病室とね」
「あー、そうですか」
「だから、軍関係じゃない人には、すぐに引き取ってもらっているのよ。あなたは軍の人ね。服を見ればわかるわ。新品じゃないし、身についてるもの」
「どうも」
変なところで正解だったらしい。服のことだが。
「お名前は? 通しますから」
「ああ、あの、ノルライドです」
看護師の首がずーっと伸びて、顔を覗き込みに来た。
彼女は少佐の部屋番号を教えてくれて、
「今は、軍関係者が一杯詰めているわ」 と教えてくれた。
わずか数語の会話だったが、状況はわかった。ある意味、人気なんだ。注目を浴びてるんだ。
もし、今後、空が明るくなっていくとしたら……それは確かに、希望だった。
病室へエレベーターであがった。
なにやら人だかりのしている病室があり、それが案の定、少佐の病室だった。
こそこそ近づいて、知った顔を捜した。オーツ中佐がいたので、そろりと声をかけた。
「おーっ、君か、ノルライド少尉」
サーっと全員がこちらを向いた。あの会議室にいた面々と同じ顔ぶれだったのには、驚いた。
「一発で頭を撃ち抜いたそうだな。おそろしい女だ」
「これで、グラクイは人を襲わなくなるだろうし、武器も持たないだろう。本当に良かった」
そう、それが問題だった。今後は、グラクイは脅威ではなくなるだろうし、卵を囮に出すことで、グラクイ退治を計画的に進めることができる。
「我々も君の病室へ行く予定だったのだよ。ところが、君は早々と退院してしまったそうなので」
「痛むかね」
「大丈夫です。それより、少佐が重傷と聞きましたので、助けていただいたお礼を申し上げねばならないと思いまして……」
「おー、それはそうだ」
人が引いて、ベッドが見渡せるようになった。気の毒な少佐は、かなり渋い顔をしていた。
私は思わず笑いそうになった。
少佐と来たら、腹ばいになって(背中に火傷をしてしまったので仕方ないのだが)、眉毛の上にしわを一杯寄せてこちらを見ていたのだ。下から見上げるようにするほかなかったので、目が動くたびに眉毛も動いていた。
「申し訳ございません。お手数をおかけいたしました。おかげさまで助かりました」
笑いで声が震えた。周りには、感動的な風景だったろうが、実は私は笑いを抑えるのに必死だった。
「君もバルク少佐も助かって本当によかった。少佐は二週間くらいで退院できるらしい」
彼らは、ちょうど帰るところだったらしく、次々に少佐に声をかけ、私にも声を掛けて出て行こうとしていた。
「まあ、大活躍の後だから、少し休養しなくちゃ」
「君に会えてよかった、少尉」
「バルク少佐に対してもそうだが、君に対しても相応の措置を考えている」
「今後とも、がんばりたまえ」
最後にこう言ったのは、例の昔スナイパーだったと言う、脂ぎって禿げ上がった男だった。彼は、景気づけに私の右肩をパンと音がするほど強くたたいた。
「うあ……っ」
私はうめいた。
少佐の目が丸くなった。彼は私がどこにどれだけの傷を負っているのか知っていたのだ。
激痛が走り、肩が割れたのが自分でもわかった。肩の傷が裂けたのだ。もう立っていられなかった。ずるずるべったり倒れた。
ものすごくまずい。また入院だ。これはまずい。
将校たちは(専門外の事態なので)右往左往していたが、看護師たちに蹴散らされたらしかった。
「なんて馬鹿なことを」
誰かが息巻いていた。その通りだ。だが、この痛さは何だ。ほかの事はみな忘れた。古い制服でよかった。血となにかの汁が出てきて、いっぺんでだめになった。肩に触らないでくれ。
「今、あの現場はどうなっているの?」
「すぐに、ブラック隊が向かいました。ロウ曹長が慣れているので、光ボムも使って、ジャニスの城からグラクイを吸い出す作戦を行っています」
ジャニスの小屋とその下に続く迷路のような地下は、ジャニスの城というあだ名になっていた。
「私は、どこに組み込まれているの?」
「体の状態さえよければ、通常通りブルー隊のローテーションに入ってください。ただ、今日は、ブルーは休みにあたっています」
私は考えた。これは、少佐にお礼を言わないといけないのか。
なんだって、気を失ったりしたんだろう。余計な迷惑をかけてしまった。
彼を背負って帰ってきたほうがよかった。ああ、でも、私の体格じゃ無理だ。
バルク少佐は、どう少なく見積もっても私より二十キロくらいは重そうだから、運べなさそう。逆だったら、二人とも死んでたな。
「病院に、少佐のお見舞いに行ってくるよ」
オスカーが複雑な顔をした。そして、私が基地を離れると、付いてきた。
「なあ、どうでもいいけど、ギルをどうする気だ」
「ギル? ああ、困ったなあ。付き合う気はないんだけど」
「残酷だな、君は。やつは病院に行きたがった。君にくっついていたかったんだ」
私はオスカーをじろりと見た。私だって、そこまで目が見えないわけじゃない。
ギルについては、一度注意されたから、ちゃんと見てたんだ。ギルを病院に回したのは、オスカーだって事もわかっていた。
「そして、バルク少佐に不安を感じた。同じ作戦に泊りがけで行ったからだ。ただの仕事なのに」
私は言ってみた。オスカーがたじろいだ。
「わかってるのに、なぜ、見舞いに行く」
「助けてくれたからね。代わりにやけどを負ったらしい。申し訳ないことになった」
「なんで、少佐のことになると、そう必死になる?」
「え?」
「少佐もそうだ。少佐が誰かを怒鳴っているなんて聞いたこともない。君の事になると、ズバズバ怒鳴る。君たちは必死になりすぎる」
「……冷静になれと? 特に興奮しているわけじゃないけど」
「おれは、ギルの友達なんだ。君もそうだ。いままで、なにを見てもどうでもよさそうにしていた君が必死になっているのを見ると、これでよかったと思うけど、同時に、少佐で正解なのかと……」
この見解には驚いた。
「オスカー、違うよ。必死になったのは、ライフルの腕を認めてもらいたかっただけなんだ。見舞いのほうは、マイカから話を聞いたんだ。少佐は体を張って助けてくれた。お礼を言わないといけない。それに、作戦はすでに終わった。少佐は、もう怒鳴らないよ。私も、必死になる必要がもうない」
「本当?」
オスカーは疑わしそうだった。
「まあ、今後とも彼は私の上司だけど、二人でする仕事なんか、もうないんじゃないかな」
「確かに二人でする仕事なんか、この先なさそうだけど……バルク少佐は、そんな人じゃないよ」
オスカーは、そうつぶやくと自分は立ち止まって、私を先に行かせた。
でも、オスカーとの話は私を滅入らせた。
ギルのことは好きだ。だが、ギルと付き合っている自分が全く想像できなかった。少佐のことは好きかどうかなんて考えたことがなかった。第一、少佐の方には、そんな感情はまるきりないだろう。
それより、どうして、みんな、こんな忙しい時にそんな心配ばっかりやってるんだろう。
「若いんだな」
私は結論付けた。
スナイパーとして使ってくれたのは、うれしかった。でも、これからはそんな出番はないだろう。個人の作戦も減るだろうし、この戦闘(戦争ではない)もじきに収束するだろう。
私はどうしよう。のんきで孤独なシューティングゲームが終わってしまうなら、軍にいても仕方ない。
自室へ戻ると、あんまりしゃきっとしていない軍服を引っ張り出して、きちんと着た。それから、病院へ出かけた。
バルク少佐の病室がどこなのかを聞くと、聞いただけなのに看護師は猛烈に疑わしそうな顔をした。朝から、軍関係者のフリをした野次馬が何人か来たらしい。
ローカルのニュースなので、扱いも小さかったはずだが、それでもここは地元なので野次馬も来るのだろう。
「あと、ノルライド少尉とか言う人の病室とね」
「あー、そうですか」
「だから、軍関係じゃない人には、すぐに引き取ってもらっているのよ。あなたは軍の人ね。服を見ればわかるわ。新品じゃないし、身についてるもの」
「どうも」
変なところで正解だったらしい。服のことだが。
「お名前は? 通しますから」
「ああ、あの、ノルライドです」
看護師の首がずーっと伸びて、顔を覗き込みに来た。
彼女は少佐の部屋番号を教えてくれて、
「今は、軍関係者が一杯詰めているわ」 と教えてくれた。
わずか数語の会話だったが、状況はわかった。ある意味、人気なんだ。注目を浴びてるんだ。
もし、今後、空が明るくなっていくとしたら……それは確かに、希望だった。
病室へエレベーターであがった。
なにやら人だかりのしている病室があり、それが案の定、少佐の病室だった。
こそこそ近づいて、知った顔を捜した。オーツ中佐がいたので、そろりと声をかけた。
「おーっ、君か、ノルライド少尉」
サーっと全員がこちらを向いた。あの会議室にいた面々と同じ顔ぶれだったのには、驚いた。
「一発で頭を撃ち抜いたそうだな。おそろしい女だ」
「これで、グラクイは人を襲わなくなるだろうし、武器も持たないだろう。本当に良かった」
そう、それが問題だった。今後は、グラクイは脅威ではなくなるだろうし、卵を囮に出すことで、グラクイ退治を計画的に進めることができる。
「我々も君の病室へ行く予定だったのだよ。ところが、君は早々と退院してしまったそうなので」
「痛むかね」
「大丈夫です。それより、少佐が重傷と聞きましたので、助けていただいたお礼を申し上げねばならないと思いまして……」
「おー、それはそうだ」
人が引いて、ベッドが見渡せるようになった。気の毒な少佐は、かなり渋い顔をしていた。
私は思わず笑いそうになった。
少佐と来たら、腹ばいになって(背中に火傷をしてしまったので仕方ないのだが)、眉毛の上にしわを一杯寄せてこちらを見ていたのだ。下から見上げるようにするほかなかったので、目が動くたびに眉毛も動いていた。
「申し訳ございません。お手数をおかけいたしました。おかげさまで助かりました」
笑いで声が震えた。周りには、感動的な風景だったろうが、実は私は笑いを抑えるのに必死だった。
「君もバルク少佐も助かって本当によかった。少佐は二週間くらいで退院できるらしい」
彼らは、ちょうど帰るところだったらしく、次々に少佐に声をかけ、私にも声を掛けて出て行こうとしていた。
「まあ、大活躍の後だから、少し休養しなくちゃ」
「君に会えてよかった、少尉」
「バルク少佐に対してもそうだが、君に対しても相応の措置を考えている」
「今後とも、がんばりたまえ」
最後にこう言ったのは、例の昔スナイパーだったと言う、脂ぎって禿げ上がった男だった。彼は、景気づけに私の右肩をパンと音がするほど強くたたいた。
「うあ……っ」
私はうめいた。
少佐の目が丸くなった。彼は私がどこにどれだけの傷を負っているのか知っていたのだ。
激痛が走り、肩が割れたのが自分でもわかった。肩の傷が裂けたのだ。もう立っていられなかった。ずるずるべったり倒れた。
ものすごくまずい。また入院だ。これはまずい。
将校たちは(専門外の事態なので)右往左往していたが、看護師たちに蹴散らされたらしかった。
「なんて馬鹿なことを」
誰かが息巻いていた。その通りだ。だが、この痛さは何だ。ほかの事はみな忘れた。古い制服でよかった。血となにかの汁が出てきて、いっぺんでだめになった。肩に触らないでくれ。
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