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第55話 その後のそれぞれ(その1)
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そんなこんなで、2組の結婚式は、半年ほど間を空けて、無事執り行われた。
マークは新婚旅行先に犬ぞりレースが開催されない貴族的なスイスを選び、クリスチンと旅立った。一年くらい帰ってこないかもしれなかった。
「冬はイタリアを回ればいいさ。レマン湖のほとりのいいホテルを知っているんだ」
セシルとフィオナは、セシルの仕事の都合でまだどこに行くか決めていなかった。
「代わりにグレンフェルの屋敷に滞在しましょう」
セシルは少し不安そうだった。母の容体が不安定だからだ。
「大丈夫よ。それに私にとって、あの屋敷は懐かしい思い出でいっぱいなの」
***************
義姉のアレクサンドラは、フィオナの遺産を手に入れようと、婚約者がいるのに修道院送りをもくろんでいたことが家族にバレて、居心地の悪い日々を送っていた。
伯爵夫妻も詳細が分かると、さすがに嫌な顔をした。
それまでアレクサンドラは、フィオナに十分なことをしてやっていると考えていたのだった。
「無理よ。本当にお金がないの。子どものことだけで精一杯。フィオナなんかに回せるお金なんかないわよ。自分たちの財政状況の把握ができていないから、そんな勝手なことが言えるのよ」
アレクサンドラは、自分の姉に、夫と義理の両親からの仕打ちを訴えた。
「あなた、馬鹿じゃないの?」
姉からの反応は意外なものだった。
「あなたは、グレンフェル侯爵の結婚を阻止して、妹の財産を掠め取ろうとしたのよ。社交界で密かに話題になっているわ。当分、どこのお茶会からもお誘いが来ないかもしれないわよ。それに誘われても行かない方がいいわ。何を言われるかわからないもの」
アレクサンドラは愕然とした。
「わからないなんて、どうしようもないわ」
アレクサンドラの姉は、妹が驚いた様子なのを見て嘆いた。
「家族はフィオナのことをとても大事に思っていると思うわ。あなただって、大金持ちのグレンフェル侯爵夫人に嫌われたら、どうするの?」
「どうって……」
フィオナのことは自分の方が気に入らなかっただけだ。フィオナから嫌われるなんて考えたこともなかった。
「もし、結婚式に招待されなかったらどうするつもりなの?」
「結婚式? 出るに決まってるわよ。いくら気に入らなかったからって、そこまで不人情な真似はしないわよ」
「逆よ、逆。その結婚式は某公爵の出席まで取りざたされているのよ。それはそれは華やかな式よ。人の口に上るような式なのよ? あなたはフィオナと仲が悪いから出ないことにして、代わりに私が出ましょうか? あなたの子どもが花嫁の付き添いをするのが慣習だけど、うちの子が代わりに出てもいいのよ?」
アレクサンドラの姉は意地悪そうに微笑んだ。アレクサンドラは呆然とした。
ようやく事態を掌握したアレクサンドラは、結局、アンドルーに頼み込んでフィオナに詫びを入れることになった。
「甘い顔をしてはなりませんよ、お嬢様」
マルゴットが上顎と下顎をがっちりとくっつけたまましゃべった。
「付け焼刃の謝罪ですよ。自分のやったことを客観視できるようになるまで、もっともっと時間がかかります」
「あの、それはそうなんだけど、きっと結婚式に出るドレス代がないわ」
フィオナは言いにくそうにマルゴットに言った。
「伯爵夫妻とアンドルー様と付き添いの姪のバーバラ様の分をお出しになられてはいかがですか?」
「アレクサンドラの分は?」
「腐っても伯爵家です。どうにかするでしょう」
マルゴットが微笑んだ。なんだか、ちょっと怖い笑顔だったが、笑顔は笑顔だ。
「私のことを、フィオナ様と同じく、気の利かないごく潰しとおっしゃいましたので! アレクサンドラ様のドレス代まで気が利かなくても想定内だと思いますね!」
マークは新婚旅行先に犬ぞりレースが開催されない貴族的なスイスを選び、クリスチンと旅立った。一年くらい帰ってこないかもしれなかった。
「冬はイタリアを回ればいいさ。レマン湖のほとりのいいホテルを知っているんだ」
セシルとフィオナは、セシルの仕事の都合でまだどこに行くか決めていなかった。
「代わりにグレンフェルの屋敷に滞在しましょう」
セシルは少し不安そうだった。母の容体が不安定だからだ。
「大丈夫よ。それに私にとって、あの屋敷は懐かしい思い出でいっぱいなの」
***************
義姉のアレクサンドラは、フィオナの遺産を手に入れようと、婚約者がいるのに修道院送りをもくろんでいたことが家族にバレて、居心地の悪い日々を送っていた。
伯爵夫妻も詳細が分かると、さすがに嫌な顔をした。
それまでアレクサンドラは、フィオナに十分なことをしてやっていると考えていたのだった。
「無理よ。本当にお金がないの。子どものことだけで精一杯。フィオナなんかに回せるお金なんかないわよ。自分たちの財政状況の把握ができていないから、そんな勝手なことが言えるのよ」
アレクサンドラは、自分の姉に、夫と義理の両親からの仕打ちを訴えた。
「あなた、馬鹿じゃないの?」
姉からの反応は意外なものだった。
「あなたは、グレンフェル侯爵の結婚を阻止して、妹の財産を掠め取ろうとしたのよ。社交界で密かに話題になっているわ。当分、どこのお茶会からもお誘いが来ないかもしれないわよ。それに誘われても行かない方がいいわ。何を言われるかわからないもの」
アレクサンドラは愕然とした。
「わからないなんて、どうしようもないわ」
アレクサンドラの姉は、妹が驚いた様子なのを見て嘆いた。
「家族はフィオナのことをとても大事に思っていると思うわ。あなただって、大金持ちのグレンフェル侯爵夫人に嫌われたら、どうするの?」
「どうって……」
フィオナのことは自分の方が気に入らなかっただけだ。フィオナから嫌われるなんて考えたこともなかった。
「もし、結婚式に招待されなかったらどうするつもりなの?」
「結婚式? 出るに決まってるわよ。いくら気に入らなかったからって、そこまで不人情な真似はしないわよ」
「逆よ、逆。その結婚式は某公爵の出席まで取りざたされているのよ。それはそれは華やかな式よ。人の口に上るような式なのよ? あなたはフィオナと仲が悪いから出ないことにして、代わりに私が出ましょうか? あなたの子どもが花嫁の付き添いをするのが慣習だけど、うちの子が代わりに出てもいいのよ?」
アレクサンドラの姉は意地悪そうに微笑んだ。アレクサンドラは呆然とした。
ようやく事態を掌握したアレクサンドラは、結局、アンドルーに頼み込んでフィオナに詫びを入れることになった。
「甘い顔をしてはなりませんよ、お嬢様」
マルゴットが上顎と下顎をがっちりとくっつけたまましゃべった。
「付け焼刃の謝罪ですよ。自分のやったことを客観視できるようになるまで、もっともっと時間がかかります」
「あの、それはそうなんだけど、きっと結婚式に出るドレス代がないわ」
フィオナは言いにくそうにマルゴットに言った。
「伯爵夫妻とアンドルー様と付き添いの姪のバーバラ様の分をお出しになられてはいかがですか?」
「アレクサンドラの分は?」
「腐っても伯爵家です。どうにかするでしょう」
マルゴットが微笑んだ。なんだか、ちょっと怖い笑顔だったが、笑顔は笑顔だ。
「私のことを、フィオナ様と同じく、気の利かないごく潰しとおっしゃいましたので! アレクサンドラ様のドレス代まで気が利かなくても想定内だと思いますね!」
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