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第42話 ダーリントン伯爵家の反応
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ジャックの不安は的中した。
ジャックだって、遺言の中身を知っていたわけではない。想像もしていなかった。むしろ彼が望んでいたのは、フィオナに財産がないことだった。確認したかっただけなのだ。
だが、この話は、いったい誰が発生源なのかジャックにはわからなかったが、社交界全体にあっという間に広がっていた。
何しろ金額が大きすぎる。誰もが興奮する話だった。
その結果、ダーリントン伯爵令嬢と言えば、今では社交界で最もホットな話題の人物になっていた。彼女の持参金額はすごい金額なのだ。
婚約者として彼の名前が取り沙汰されるのは嫌だった。
彼は情報を取るために婚約を匂わせたが、まだ肝心のフィオナからOKをもらっていないのだ。
それに、そんな守銭奴みたいな、体よく遺産付きの娘を狙ったみたいな評価をされるのは不本意だった。
しかしいったん広がってしまった噂をどうにか収めることは難しい。しかも、デマではない、事実なのだ。
彼は、仕方なく、まずダーリントン伯爵家へ赴いた。
「ジャック、君は知っていたのか?」
アンドルーの目が血走っていた。ジャックは苦労して彼に時系列を思い出させた。
「ダーリントン家に縁もゆかりもない僕が、遺言の中身を知っているわけがないでしょう。フィオナ嬢へ結婚申し込みをしたのはずっと前ですよ?」
「あ、ああ。そうだったな。失礼した」
「フィオナ嬢はいつ戻って来られるのですか?」
「やっとクリスチン嬢から手紙が届いてな。パーシヴァル家が借りた田舎の別宅にいるらしい。マルゴットを迎えにやらした。婚約者が待っているのに、暢気すぎだろう」
「どこです? それは?」
「なんで君が知らんのだ? 姉君のクリスチン嬢と一緒のはずだろう?」
ジャックはぐっと詰まった。
「いや、とにかく、いつ戻って来られるのですか?」
「二日ほど後だ。私も、フィオナには言いたいことがある。予定ではもう五日ほどいるはずだったが、早く帰って来いと言ってやった」
二日か。どこら辺まで行ったのかさっぱりわからないが、二日で戻る話をしているところを見ると、多分、そう遠くではないだろう。迎えに行きたいところだが、二日なら待っていた方がいい。ジャックはそう判断した。
「では、戻って来られたら、すぐにご連絡ください」
「おお、もちろん」
ジャックは辞去したが、どうも不穏な雰囲気を感じないではいられなかった。
彼の未来の花嫁が、この家でどういう扱いを受けるのか、なんだか心配になってきた。
そもそもアンドルーは興奮状態に見えた。
多分莫大な遺産相続の話を聞いて混乱しているのだろう。
伯爵家だって、館や領地がある。維持費には悩んでいるはずだ。だが、喉から手が出るほど欲しいその金は、全然アンドルーの手には入らないのだ。
アンドルーが名誉職のような仕事しかしていないことをジャックは知っていた。領地経営があるのでと言っていたが、領地がありながら立派に議員をしている男や海将を勤め上げた貴族もいる。商売で名をあげた者もいる。名誉職なんかでくすぶっているアンドルーはやる気がないか、無能なのだ。そのくせ、金には執着している。
「まあ、あの額では執着するなと言う方が無理だが……」
フィオナはどうしているのだろう。
会えないジャックは、お預けを食った犬のような気分だった。
あと二日……ジャックは、翌々日には必ずダーリントン伯爵家を訪問しようと決意を固めた。
ジャックだって、遺言の中身を知っていたわけではない。想像もしていなかった。むしろ彼が望んでいたのは、フィオナに財産がないことだった。確認したかっただけなのだ。
だが、この話は、いったい誰が発生源なのかジャックにはわからなかったが、社交界全体にあっという間に広がっていた。
何しろ金額が大きすぎる。誰もが興奮する話だった。
その結果、ダーリントン伯爵令嬢と言えば、今では社交界で最もホットな話題の人物になっていた。彼女の持参金額はすごい金額なのだ。
婚約者として彼の名前が取り沙汰されるのは嫌だった。
彼は情報を取るために婚約を匂わせたが、まだ肝心のフィオナからOKをもらっていないのだ。
それに、そんな守銭奴みたいな、体よく遺産付きの娘を狙ったみたいな評価をされるのは不本意だった。
しかしいったん広がってしまった噂をどうにか収めることは難しい。しかも、デマではない、事実なのだ。
彼は、仕方なく、まずダーリントン伯爵家へ赴いた。
「ジャック、君は知っていたのか?」
アンドルーの目が血走っていた。ジャックは苦労して彼に時系列を思い出させた。
「ダーリントン家に縁もゆかりもない僕が、遺言の中身を知っているわけがないでしょう。フィオナ嬢へ結婚申し込みをしたのはずっと前ですよ?」
「あ、ああ。そうだったな。失礼した」
「フィオナ嬢はいつ戻って来られるのですか?」
「やっとクリスチン嬢から手紙が届いてな。パーシヴァル家が借りた田舎の別宅にいるらしい。マルゴットを迎えにやらした。婚約者が待っているのに、暢気すぎだろう」
「どこです? それは?」
「なんで君が知らんのだ? 姉君のクリスチン嬢と一緒のはずだろう?」
ジャックはぐっと詰まった。
「いや、とにかく、いつ戻って来られるのですか?」
「二日ほど後だ。私も、フィオナには言いたいことがある。予定ではもう五日ほどいるはずだったが、早く帰って来いと言ってやった」
二日か。どこら辺まで行ったのかさっぱりわからないが、二日で戻る話をしているところを見ると、多分、そう遠くではないだろう。迎えに行きたいところだが、二日なら待っていた方がいい。ジャックはそう判断した。
「では、戻って来られたら、すぐにご連絡ください」
「おお、もちろん」
ジャックは辞去したが、どうも不穏な雰囲気を感じないではいられなかった。
彼の未来の花嫁が、この家でどういう扱いを受けるのか、なんだか心配になってきた。
そもそもアンドルーは興奮状態に見えた。
多分莫大な遺産相続の話を聞いて混乱しているのだろう。
伯爵家だって、館や領地がある。維持費には悩んでいるはずだ。だが、喉から手が出るほど欲しいその金は、全然アンドルーの手には入らないのだ。
アンドルーが名誉職のような仕事しかしていないことをジャックは知っていた。領地経営があるのでと言っていたが、領地がありながら立派に議員をしている男や海将を勤め上げた貴族もいる。商売で名をあげた者もいる。名誉職なんかでくすぶっているアンドルーはやる気がないか、無能なのだ。そのくせ、金には執着している。
「まあ、あの額では執着するなと言う方が無理だが……」
フィオナはどうしているのだろう。
会えないジャックは、お預けを食った犬のような気分だった。
あと二日……ジャックは、翌々日には必ずダーリントン伯爵家を訪問しようと決意を固めた。
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