35 / 57
第35話 莫大な遺産の相続人
しおりを挟む
その三日後、トコトコと伯爵家の門まで特大のバラの花束を抱えてやってきた男がいた。
エドワードだった。
「あなたは、この家にはもう来られないものと思っていましたが?」
フィオナ嬢に会いたいと用件を告げると、どことなく歓迎していない雰囲気を漂わせた執事が対応した。
「それにフィオナ様は、今、この屋敷におられません」
「え? どこへ?」
「申せません。田舎の別邸に行ってらっしゃいます」
ダーリントン伯爵家に田舎の別邸はない。
しかし、執事はこう言うことで、なんとなく満足した。
なにか、大層なお金持ちのような響きがある。
「では、アンドルーを」
確かにアンドルーへの面会を断る理由はない。特大の花束は変だが。
「なんだ、エドワード」
アンドルーは、困惑の表情を浮かべて、客間に入ってきた。
「やあ、アンドルー、これをフィオナ嬢に」
「困るよ、エドワード。フィオナにはもう婚約者がいる」
エドワードは嬉しそうに笑った。
「フィオナ嬢は、莫大な遺産を受け取るそうじゃないか」
アンドルーは眉をしかめた。彼はまだフィオナの遺産の噂を知らなかったのである。
「莫大? 確かに少しはあるが……」
「なにを謙遜を! 莫大な額じゃないか。それほどお金があるって言うんなら、僕が結婚してやっても全然構わない。どうして、その話を最初にしてくれなかったんだい? 最初の舞踏会の時だって、ちゃんと踊ってやれたのに」
「どう言う意味だ?」
エドワードの言っている意味がアンドルーにはさっぱりわからなかった。彼は、浮かれているエドワードから、自分の家の話を聞くことになった。
「ほんとうなのか!」
「兄のあんたが知らないなんて、おかしいだろう。あ、そうか、結婚が決まるか二十一歳になるまで、家族にも秘密だったんだね」
「秘密……」
アンドルーの顔が赤黒く変わってきた。
自分……と、アレクサンドラだけが知らなかったのか。
どう言うことだ。みんなで、自分を、次期伯爵当主を蔑ろにして……。
「さあ。という訳で、やってきたのさ。君みたいな家は、成金一家なんぞより立派な貴族と縁を結ぶべきだ。少々器量が悪くても、地味でも、それだけの財産があれば、このエドワード、喜んでもらい受けよう。フィオナ嬢も、大喜びだ」
アンドルーは、我にかえった。
彼は妹に対する愛がないわけではない。だから財産があると聞いた途端に手の平を返したように振舞うこの男に腹が立った。それにアンドルーは、今や立派なジャック派だった。エドワードが、古い貴族の家柄である以上、自分に味方するのが当然だと言った態度にむかついた。
まずは、この勘違い男を退治することが先決だ。
「すでに話は決まっている。覆すことはない」
「フィオナ嬢の気持ちを聞いたことがあるのか?」
エドワードは自信たっぷりに聞いてきた。アンドルーはなんだかイライラしてきた。
「フィオナの気持ち? ジャック・パーシヴァルで満足しないんだったら誰ならいいんだ」
「花を送ったら、また会いましょうって手紙をくれたんだ。フィオナ嬢は僕と会えるのを心待ちにしてる。遺産目当ての成金の婚約者なんか相手にするはずがないだろう」
さすがにアンドルーはカチンときた。
「じゃあ、今頃、ここへ来たエドワードは遺産目当てじゃないと言うのかね」
「遅くなったのは、フィオナがあのジャックとかいう男とばかり話をするからだよ。言いたくなかったが、アンドルー、君はダメだな。妹の躾が出来てない。本当に若い娘は考えなしで愚かだが、まあ、そこがフィオナのかわいいところかな……」
ちょっと得意そうに頰を染めるエドワードに、アンドルーはあっけにとられた。何の夢を見て居るのだ、この男は。
「まあ、今度、誰かに会った時に、その話をしてみるといいかも知れんな。もう、誰にも相手をされなくなるだろうが。少なくとも、この家には二度と来るんじゃない」
アンドルーは手荒くエドワードを追い返した。ばかばかしすぎる。執事が後を追い立てるように執拗に玄関まで送りだした。彼も怒っているのだろう。
「エドワードがあそこまで馬鹿だとは知らなかった」
だが、エドワードの残した言葉はトゲのように心に刺さった。
『フィオナに莫大な遺産がいく』だと?
何の話だ。
そこへ急いで帰宅したらしいアレクサンドラが玄関で金切り声で叫んでいた。
「アンドルーはどこ?」
バタバタと足音がして、親戚のお茶会から帰って来たばかりのアレクサンドラが、花飾りのついた帽子を斜めにかぶったまま、客間へ入ってきた。
「アンドルー、ジョージアナ叔母様が言うには、ハドウェイ大伯母様には莫大な遺産があって、それが全部フィオナに行くって言うのよ? あなた知ってた?」
「今、聞いたところだ。いくらなのか知らないが」
アンドルーは努めて冷静に言った。
「ゴードン弁護士事務所は私たちをだましたのよ! 五十万ルイ以上あるらしいわ!」
アンドルーは目が飛び出しそうになった。
「あのフィオナなんかに! それだけあれば、私たち、こんな苦労することないのに! 私たち、大金持ちになれたのに! フィオナは大伯母様を騙したのだわ」
アレクサンドラは、アンドルーをにらみつけて叫んだ。
「修道院にいれましょう! もともと修道院に入りたいと言っていたじゃないの。願いをかなえてやりましょう。入会金だけあればいいでしょう。残りは、実家の伯爵家に残せばいいのよ。あんな娘を飾り立てるだなんて、本当にお金の無駄だったわ。なんてことだろう、私たち、あの小娘に出し抜かれたのだわ!」
騒ぎはそれだけでおさまらなかった。
その日から麗々しくフィオナ嬢宛ての招待状が何通もダーリントン家に届いた。パーティや舞踏会へのお招きである。
「最初から遺産相続の話をしていれば、壁の花なんかにならないで済んだのに……」
アンドルーはしみじみ思った。
もっとずっと華やかなデビューを飾れたはずだった。ましてやマルゴットが付いていた。伯爵夫人が何もしなくても手配は出来たはずだ。
だが、手紙を一枚一枚ひっくり返して招待主の名前を確認していくうちに、必ずしも喜んでいられるわけではないとも思った。
明らかに財産狙いとしか思えない招待状が多かった。
いや、ほとんどがそうだろう。
今、アンドルーはゴードン弁護士から聞かされた大伯母の無謀とも言える『貧乏でも愛してくれる人を選んで』という言葉をしみじみ噛み締めていた。
だが、それが無謀な世迷言で終わらなかったのは、大伯母が彼女にドレス代だけは出してくれたからだった。
「シンデレラだって、ドレスがなかったら、お城の舞踏会には行けなかったものな」
大伯母は賢い人だと言う評判だった。
フィオナは、良い婚約者に巡り合えた、よかったと、ジャックの顔を思い浮かべながら、アンドルーはしみじみ思った。
一方、社交界には、この遺産相続はまるで爆弾のような効果をもたらしていた。
「やっと納得がいきましたわ。どおりで、あんな貧乏伯爵家の、何の取り柄もなさそうな娘にグレンフェル侯爵やパーシヴァル家のご子息が付きまとっていらっしゃったのか」
「秘密事項とやらは、守られなかったのね。きっとその娘は、良さそうな男の方には自分から遺産相続の秘密を打ち明けたのでしょう」
そんなやっかみ混じりの話もあったが、相当な財産がフィオナのものになることは事実であり、社交界全体の雰囲気はガラリと変わっていた。
フィオナがもう一度、どこかの舞踏会に参加したら、最早、壁の花などはあり得ない。
それどころか、名だたる名士や、特に金に困っている高位の貴族連中から、悲鳴のように花嫁として望まれたことだろう。
プライドばかりが高くて、金がある平民との婚姻を忌避し、そのくせ働くことを潔しとしない高位の連中に取り囲まれるに決まっている。彼らは由緒正しい古い伯爵家の令嬢なら公爵家などへ嫁ぐべきだと説きつけるだろう。
エドワードのように。
いや、ダメだ、とアンドルーは思った。
ジャックがいい。彼は、懸命にフィオナを追っていた。彼の愛は本物だ。
商家の出だろうと、関係ないではないか。
十分な教育を受け、礼儀をわきまえ、繁盛している家業を引き継ぐだけの力量を持った一人前の男だ。
フィオナが全財産を継いだ件については、アンドルーも残念だったが、前回、1万5千ルイの件で弁護士事務所を訪ねた時、説明されたことを忘れたわけではなかった。
遺産は大伯母の意志に左右される。これまでのことを考えてみれば、フィオナ以外に行くはずがなかった。
もし、アレクサンドラが大伯母とあんなにもめなければ、少しはアンドルーに回る余地だってあったのだが。
アレクサンドラは大伯母のお眼鏡にかなわなかったうえ、大伯母の物言いが気に入らないと一悶着やらかしたのだ。アンドルー自身は、大伯母に気に入られてはいなかったが、まあまあ我慢しようと言う態度だったのに、あれで全部だめになった。
親族が気に入らないと、全額、慈善団体へというケースもありうる。
遺産相続人がせめてフィオナでよかったと思わないではいられなかった。
これが父の伯爵の手に渡っていたら、目も当てられない。遺産を受け取った次の日には、だまされて全額他人への遺贈証書にサインしかねない。
フィオナなら、必ずアンドルーを助けてくれるだろうし、彼女は堅実で公平だ。
「ちゃんとジャックと結婚させてやらねば」
アンドルーは、フィオナを修道院にやってしまえとわめく妻の傍らで、固く決意した。
エドワードだった。
「あなたは、この家にはもう来られないものと思っていましたが?」
フィオナ嬢に会いたいと用件を告げると、どことなく歓迎していない雰囲気を漂わせた執事が対応した。
「それにフィオナ様は、今、この屋敷におられません」
「え? どこへ?」
「申せません。田舎の別邸に行ってらっしゃいます」
ダーリントン伯爵家に田舎の別邸はない。
しかし、執事はこう言うことで、なんとなく満足した。
なにか、大層なお金持ちのような響きがある。
「では、アンドルーを」
確かにアンドルーへの面会を断る理由はない。特大の花束は変だが。
「なんだ、エドワード」
アンドルーは、困惑の表情を浮かべて、客間に入ってきた。
「やあ、アンドルー、これをフィオナ嬢に」
「困るよ、エドワード。フィオナにはもう婚約者がいる」
エドワードは嬉しそうに笑った。
「フィオナ嬢は、莫大な遺産を受け取るそうじゃないか」
アンドルーは眉をしかめた。彼はまだフィオナの遺産の噂を知らなかったのである。
「莫大? 確かに少しはあるが……」
「なにを謙遜を! 莫大な額じゃないか。それほどお金があるって言うんなら、僕が結婚してやっても全然構わない。どうして、その話を最初にしてくれなかったんだい? 最初の舞踏会の時だって、ちゃんと踊ってやれたのに」
「どう言う意味だ?」
エドワードの言っている意味がアンドルーにはさっぱりわからなかった。彼は、浮かれているエドワードから、自分の家の話を聞くことになった。
「ほんとうなのか!」
「兄のあんたが知らないなんて、おかしいだろう。あ、そうか、結婚が決まるか二十一歳になるまで、家族にも秘密だったんだね」
「秘密……」
アンドルーの顔が赤黒く変わってきた。
自分……と、アレクサンドラだけが知らなかったのか。
どう言うことだ。みんなで、自分を、次期伯爵当主を蔑ろにして……。
「さあ。という訳で、やってきたのさ。君みたいな家は、成金一家なんぞより立派な貴族と縁を結ぶべきだ。少々器量が悪くても、地味でも、それだけの財産があれば、このエドワード、喜んでもらい受けよう。フィオナ嬢も、大喜びだ」
アンドルーは、我にかえった。
彼は妹に対する愛がないわけではない。だから財産があると聞いた途端に手の平を返したように振舞うこの男に腹が立った。それにアンドルーは、今や立派なジャック派だった。エドワードが、古い貴族の家柄である以上、自分に味方するのが当然だと言った態度にむかついた。
まずは、この勘違い男を退治することが先決だ。
「すでに話は決まっている。覆すことはない」
「フィオナ嬢の気持ちを聞いたことがあるのか?」
エドワードは自信たっぷりに聞いてきた。アンドルーはなんだかイライラしてきた。
「フィオナの気持ち? ジャック・パーシヴァルで満足しないんだったら誰ならいいんだ」
「花を送ったら、また会いましょうって手紙をくれたんだ。フィオナ嬢は僕と会えるのを心待ちにしてる。遺産目当ての成金の婚約者なんか相手にするはずがないだろう」
さすがにアンドルーはカチンときた。
「じゃあ、今頃、ここへ来たエドワードは遺産目当てじゃないと言うのかね」
「遅くなったのは、フィオナがあのジャックとかいう男とばかり話をするからだよ。言いたくなかったが、アンドルー、君はダメだな。妹の躾が出来てない。本当に若い娘は考えなしで愚かだが、まあ、そこがフィオナのかわいいところかな……」
ちょっと得意そうに頰を染めるエドワードに、アンドルーはあっけにとられた。何の夢を見て居るのだ、この男は。
「まあ、今度、誰かに会った時に、その話をしてみるといいかも知れんな。もう、誰にも相手をされなくなるだろうが。少なくとも、この家には二度と来るんじゃない」
アンドルーは手荒くエドワードを追い返した。ばかばかしすぎる。執事が後を追い立てるように執拗に玄関まで送りだした。彼も怒っているのだろう。
「エドワードがあそこまで馬鹿だとは知らなかった」
だが、エドワードの残した言葉はトゲのように心に刺さった。
『フィオナに莫大な遺産がいく』だと?
何の話だ。
そこへ急いで帰宅したらしいアレクサンドラが玄関で金切り声で叫んでいた。
「アンドルーはどこ?」
バタバタと足音がして、親戚のお茶会から帰って来たばかりのアレクサンドラが、花飾りのついた帽子を斜めにかぶったまま、客間へ入ってきた。
「アンドルー、ジョージアナ叔母様が言うには、ハドウェイ大伯母様には莫大な遺産があって、それが全部フィオナに行くって言うのよ? あなた知ってた?」
「今、聞いたところだ。いくらなのか知らないが」
アンドルーは努めて冷静に言った。
「ゴードン弁護士事務所は私たちをだましたのよ! 五十万ルイ以上あるらしいわ!」
アンドルーは目が飛び出しそうになった。
「あのフィオナなんかに! それだけあれば、私たち、こんな苦労することないのに! 私たち、大金持ちになれたのに! フィオナは大伯母様を騙したのだわ」
アレクサンドラは、アンドルーをにらみつけて叫んだ。
「修道院にいれましょう! もともと修道院に入りたいと言っていたじゃないの。願いをかなえてやりましょう。入会金だけあればいいでしょう。残りは、実家の伯爵家に残せばいいのよ。あんな娘を飾り立てるだなんて、本当にお金の無駄だったわ。なんてことだろう、私たち、あの小娘に出し抜かれたのだわ!」
騒ぎはそれだけでおさまらなかった。
その日から麗々しくフィオナ嬢宛ての招待状が何通もダーリントン家に届いた。パーティや舞踏会へのお招きである。
「最初から遺産相続の話をしていれば、壁の花なんかにならないで済んだのに……」
アンドルーはしみじみ思った。
もっとずっと華やかなデビューを飾れたはずだった。ましてやマルゴットが付いていた。伯爵夫人が何もしなくても手配は出来たはずだ。
だが、手紙を一枚一枚ひっくり返して招待主の名前を確認していくうちに、必ずしも喜んでいられるわけではないとも思った。
明らかに財産狙いとしか思えない招待状が多かった。
いや、ほとんどがそうだろう。
今、アンドルーはゴードン弁護士から聞かされた大伯母の無謀とも言える『貧乏でも愛してくれる人を選んで』という言葉をしみじみ噛み締めていた。
だが、それが無謀な世迷言で終わらなかったのは、大伯母が彼女にドレス代だけは出してくれたからだった。
「シンデレラだって、ドレスがなかったら、お城の舞踏会には行けなかったものな」
大伯母は賢い人だと言う評判だった。
フィオナは、良い婚約者に巡り合えた、よかったと、ジャックの顔を思い浮かべながら、アンドルーはしみじみ思った。
一方、社交界には、この遺産相続はまるで爆弾のような効果をもたらしていた。
「やっと納得がいきましたわ。どおりで、あんな貧乏伯爵家の、何の取り柄もなさそうな娘にグレンフェル侯爵やパーシヴァル家のご子息が付きまとっていらっしゃったのか」
「秘密事項とやらは、守られなかったのね。きっとその娘は、良さそうな男の方には自分から遺産相続の秘密を打ち明けたのでしょう」
そんなやっかみ混じりの話もあったが、相当な財産がフィオナのものになることは事実であり、社交界全体の雰囲気はガラリと変わっていた。
フィオナがもう一度、どこかの舞踏会に参加したら、最早、壁の花などはあり得ない。
それどころか、名だたる名士や、特に金に困っている高位の貴族連中から、悲鳴のように花嫁として望まれたことだろう。
プライドばかりが高くて、金がある平民との婚姻を忌避し、そのくせ働くことを潔しとしない高位の連中に取り囲まれるに決まっている。彼らは由緒正しい古い伯爵家の令嬢なら公爵家などへ嫁ぐべきだと説きつけるだろう。
エドワードのように。
いや、ダメだ、とアンドルーは思った。
ジャックがいい。彼は、懸命にフィオナを追っていた。彼の愛は本物だ。
商家の出だろうと、関係ないではないか。
十分な教育を受け、礼儀をわきまえ、繁盛している家業を引き継ぐだけの力量を持った一人前の男だ。
フィオナが全財産を継いだ件については、アンドルーも残念だったが、前回、1万5千ルイの件で弁護士事務所を訪ねた時、説明されたことを忘れたわけではなかった。
遺産は大伯母の意志に左右される。これまでのことを考えてみれば、フィオナ以外に行くはずがなかった。
もし、アレクサンドラが大伯母とあんなにもめなければ、少しはアンドルーに回る余地だってあったのだが。
アレクサンドラは大伯母のお眼鏡にかなわなかったうえ、大伯母の物言いが気に入らないと一悶着やらかしたのだ。アンドルー自身は、大伯母に気に入られてはいなかったが、まあまあ我慢しようと言う態度だったのに、あれで全部だめになった。
親族が気に入らないと、全額、慈善団体へというケースもありうる。
遺産相続人がせめてフィオナでよかったと思わないではいられなかった。
これが父の伯爵の手に渡っていたら、目も当てられない。遺産を受け取った次の日には、だまされて全額他人への遺贈証書にサインしかねない。
フィオナなら、必ずアンドルーを助けてくれるだろうし、彼女は堅実で公平だ。
「ちゃんとジャックと結婚させてやらねば」
アンドルーは、フィオナを修道院にやってしまえとわめく妻の傍らで、固く決意した。
1
お気に入りに追加
639
あなたにおすすめの小説

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる