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第22話 悪魔の罠
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フィールス夫人のお茶会は、地雷が大量に設置された、かなりの危険地帯に見受けられた。
なるほど、これが社交界だと言うなら、母がうっかり地雷を踏み抜き、連鎖爆発を引き起こして出禁になるのもうなずける。母はそう言う失敗が得意中の得意なのだ。一番踏んではいけないヤツをさらっと踏み抜く、しでかし系の失敗が。
とっとと、こんな会から抜け出したいところだったが、その時、噂のクリスチン・パーシヴァル嬢がやってきたのだった。
誰もがこの社交界の人気者を振り返って見た。フィオナもだ。
なんて美しい方かしら!
フィオナは、思わず見とれた。
よく似合う素晴らしいドレスと高そうな宝飾品が目に付く。だが、それよりも、もっとフィオナを魅了したのはその女性が本当に美しい人だったからだ。
フィオナのような地味な道具立てではない。
きらきら光を跳ね返すようなブロンドに濃い青の瞳。とび色のまつげは長く眉毛はミルク色の肌にくっきりと美しい形を描いていた。
そのうえ、顔は小さ目で首が長く、すらりとしており、腰が細く胸の形が最高だった。
なんと完璧な美女だろう!
ところが、彼女はフィールス夫人たちと一言二言交わしてすぐに、あたりを見回してフィオナを見つけると、愛想のいい笑顔を浮かべて一直線にフィオナのところへやって来たのだった。
「あら。あなたがダーリントン伯爵令嬢かしら?」
そばで見ると、より一層大変な美女だ。
多分、その感嘆の思いが相手にも伝わったのだろう。その女性は、たぶん彼女には珍しいことなのだろうが、ちょっと照れたようだった。
「呼び止めてしまってごめんなさい。私はクリスチン・パーシヴァル。ジャックの姉なの」
ジャックの姉……。
正直、どう反応したらいいかわからなかった。
ジャックからはいろいろ申し込みを受けている。だが、まだ、OKしていない。
「ジャックがあなたに夢中なのは知っているのよ」
クリスチンは笑いかけた。
「なるほどすてきなお嬢さんだわ。ジャックが熱中するのも無理はないわ」
「そんなことはございませんわ」
フィオナはやっとのことで言葉を絞り出した。
「そんなこと、ありますとも。姉として弟を応援しているのよ。こんなかわいいお嬢さんだったなんて。ぜひ、弟をよろしくね」
彼女は突然現れたが、突然離れて行った。
彼女の後姿を追って見て居ると、次から次へといろいろな人々に声をかけられている。
「ねえ、何のお話をしていたの?」
気が付くと主催者のフィールス夫人がそばに来ていて、食い入るようにフィオナの顔を覗き込んでいた。
「ええと、あの……あまりにお美しい方だものですから、つい、見とれてしまって、お褒め申し上げてしまいました」
「それだけなの?」
「ええ。不躾だとお思いにならないといいのですけれど……」
フィールス夫人は不審そうにチラとフィオナを見た。
「あなたに向かって歩いて行ったように見えたけど……」
「それはないと思いますわ」
さすがのフィールス夫人もなにからなにまで見て居たわけではない。フィオナの言葉を疑う理由はなかった。
「あの、あのおきれいな方はどなたですか?」
まあと言った様子で、フィールス夫人は、フィオナを見た。そんなことも知らないのかと言った表情だった。
「クリスチン・パーシヴァル嬢よ。ご存じない?」
「お名前だけ」
「あの通りの美女で、とても機知のある方なの。社交界の花形と言われて長いわ。まだ、結婚はされていないのよ。大勢の男性が恋焦がれてお申込みが引きも切らないのに。持参金も莫大でしょうし……。フィールス家のサロンに来ていただけるとは思っていなかったわ」
フィオナににしてみれば、パーシヴァル嬢が自分に近づいてきたのが意外だった。おまけに彼女をべた褒めだ。
バーシヴァル嬢が帰ってしまった後で、フィオナ嬢は人々に取り囲まれていた。なんの話をしていたのか聞きに押し寄せたのだ。
「パーシヴァル嬢は、滅多に女性には声をかけないもの。そりゃー、気になるわ。一体、何の用事があったのかしら」
フィールス夫人は眉を寄せた。
そして、数日後、フィオナは、パーシヴァル嬢から、夜会の招待状を受け取った。
『ほんの気軽な会ですの。親しい方だけの集まりです。ご参加いただければ嬉しいわ
クリスチン』
これを見て、舞い上がったのはフィオナではない。兄のアンドルーである。
「フィ、フィオナ! すぐ参加すると返事しなさい! 何を着て行こうかな」
「落ち着いて! アンドルー。あなたは招かれていないから」
アレクサンドラから、喝を入れられた。
「しかし、これは、ジャックのおかげのご縁だなあ……」
アレクサンドラはあからさまにイヤな顔を始めた。
何かの機会に一度だけ噂に名高い社交界の花、クリスチン・パーシヴァルを見たことがある。もう何年も前だ。
「そんな若い盛りじゃないはずよ?」
「あなたよりは年下だよ」
興奮のあまり、アンドルーは拙劣極まる返事をしてしまった。
「もしかすると、義理の兄妹になるかもしれないな」
アレクサンドラは猛烈にイライラし始めた。
「いいこと? だからといって、向こうはあなたのことなんか歯牙にもかけませんよ」
「とはいえ、これはお受けになられた方がようございます」
マーゴットが珍しくあまり乗り気ではなさそうに言った。
「クリスチン様といえば……美人で華やかな社交界の花形。お知り合いの方々も選り抜きのエリートばかり。行けばその方々とお知り合いになれます。花婿探し以外にも、ぜひ、出席しておきたいところです。ただ、クリスチン様は、お美しいから持て囃されている方ではありません。もう、本当に……」
口ごもるマーゴットなんか初めてだ。
「なんとも、底の知れない、面白かったらなんでもやってしまうその性格が花形なのです」
ここで彼女は黙った。
「……フィオナ様を呼ばれたのだって、何か裏がありそうな気がいたします」
ところ変わってパーシヴァル家では、クリスチンが弟の部屋を訪ねて来ていて、ジャックがあからさまに嫌な顔をしていた。
「自分のアパルトマンにいるんじゃなかったの?」
クリスチンは、両親のいる自邸では勝手が出来なくて不便だと言って、数年前にしゃれたアパルトマンを市中に借りて住んでいた。未婚の女性一人が住むと外聞が悪いので、叔母の一人が一緒に住んでいたが、果たして何かのガードになってるのかどうか疑問だった。
だが、ジャックもそれからモンゴメリ卿もよく知っていたが、嫌がらせや奇想天外なことをさせたら並ぶ者はいなかったが、こと男に関しては姉は潔白だった。
臆病なのか(それなら可愛いが)、性格がどうかしているのか、頭が良すぎるせいなのかジャックにはさっぱりわからなかった。
とは言え、ジャックは姉に興味が全くなかったので、本宅から出て行ってくれてほっとした。姉はジャックを見ると、何か仕掛けてくるのだ。大体ろくなことにならない。
「今日はジャックにいい知らせを持ってきたのよ」
ジャックは眉をしかめた。姉が言ういい話が、いい話だったためしがない。
「いやねえ。本当よ。それにお願いがあるの」
更によくない。姉の願いがまともだったことがない。
「今度の私の夜会に出て欲しいのよ」
速攻断った。
「いやだね」
「大丈夫よ。本当にいい知らせなんだから」
姉はキラキラした金髪の巻き毛を肩の上で揺らしながら部屋の中に入ってきた。
「姉さんの友達なんか、興味もないし、俺は忙しい」
姉がキラリと目を光らせた。
「そんなことはないと思うの。ダーリントン伯爵令嬢をお招きしたの」
心の底からゾッとした。
嫌がらせの極致だ。
だが、悟られてはならない。ジャックが嫌がる程、姉は喜ぶらしい。
「それで、ジャックにはダーリントン嬢のお相手をお願いしたいの」
「……いやだね」
どうせ、ジャックの反応を見て楽しむつもりだろう。そのあと、何週間もからかう気だ。
「ダーリントン嬢を招待すると、グレンフェル侯爵がもれなくついてくるの」
え?
「いいこと? フィオナ嬢が来れば、グレンフェル侯爵が付いてくるの」
そうなのか?
「でも、フィオナ嬢はあなたにあげる」
ジャックは黙った。
「グレンフェル侯爵の友人のアレンを招いたの。彼、きっと連れてきてくれるわ。フィオナ嬢を招いたって伝えたのよ。アレンはフィオナ嬢を見たいので……正確に言えばグレンフェル侯爵の反応を見たいのだと思うわ。悪友ね」
なんという計画……てか、この計画、うまくいくのか? グレンフェル侯爵狙いだとは知っていたが、フィオナをエサに侯爵をおびき寄せるだなんて。侯爵は本当にノコノコやって来るのか?
「うまくいかなかったら、いいじゃない。思い切りフィオナ嬢を独り占めすればいいわ。それに、グレンフェル侯爵が来たら、それこそあなたの出番だと思わない?」
ジャックの出番?
「あなたはホスト側なのよ。フィオナをもてなすのは当然でしょう。そして、私はホステス側。グレンフェル侯爵をおもてなしするのは私の役割だわ」
鉢合わせと言う言葉が頭に浮かんだ。
「来ないならいいわよ。来なくても別にかまわない。フィオナ嬢を招待してグレンフェル公爵が来てくれれば、私は彼とお話してみたいの。時間が余って、彼がフィオナ嬢と楽しむのだったら、それは仕方ないわ」
「……行きます」
姉は高らかに笑い出した。何か屈辱的だ。だが、これは行かないわけにはいかない。
「お願いするわ。フィオナ嬢をしっかり捕まえておいてね」
なるほど、これが社交界だと言うなら、母がうっかり地雷を踏み抜き、連鎖爆発を引き起こして出禁になるのもうなずける。母はそう言う失敗が得意中の得意なのだ。一番踏んではいけないヤツをさらっと踏み抜く、しでかし系の失敗が。
とっとと、こんな会から抜け出したいところだったが、その時、噂のクリスチン・パーシヴァル嬢がやってきたのだった。
誰もがこの社交界の人気者を振り返って見た。フィオナもだ。
なんて美しい方かしら!
フィオナは、思わず見とれた。
よく似合う素晴らしいドレスと高そうな宝飾品が目に付く。だが、それよりも、もっとフィオナを魅了したのはその女性が本当に美しい人だったからだ。
フィオナのような地味な道具立てではない。
きらきら光を跳ね返すようなブロンドに濃い青の瞳。とび色のまつげは長く眉毛はミルク色の肌にくっきりと美しい形を描いていた。
そのうえ、顔は小さ目で首が長く、すらりとしており、腰が細く胸の形が最高だった。
なんと完璧な美女だろう!
ところが、彼女はフィールス夫人たちと一言二言交わしてすぐに、あたりを見回してフィオナを見つけると、愛想のいい笑顔を浮かべて一直線にフィオナのところへやって来たのだった。
「あら。あなたがダーリントン伯爵令嬢かしら?」
そばで見ると、より一層大変な美女だ。
多分、その感嘆の思いが相手にも伝わったのだろう。その女性は、たぶん彼女には珍しいことなのだろうが、ちょっと照れたようだった。
「呼び止めてしまってごめんなさい。私はクリスチン・パーシヴァル。ジャックの姉なの」
ジャックの姉……。
正直、どう反応したらいいかわからなかった。
ジャックからはいろいろ申し込みを受けている。だが、まだ、OKしていない。
「ジャックがあなたに夢中なのは知っているのよ」
クリスチンは笑いかけた。
「なるほどすてきなお嬢さんだわ。ジャックが熱中するのも無理はないわ」
「そんなことはございませんわ」
フィオナはやっとのことで言葉を絞り出した。
「そんなこと、ありますとも。姉として弟を応援しているのよ。こんなかわいいお嬢さんだったなんて。ぜひ、弟をよろしくね」
彼女は突然現れたが、突然離れて行った。
彼女の後姿を追って見て居ると、次から次へといろいろな人々に声をかけられている。
「ねえ、何のお話をしていたの?」
気が付くと主催者のフィールス夫人がそばに来ていて、食い入るようにフィオナの顔を覗き込んでいた。
「ええと、あの……あまりにお美しい方だものですから、つい、見とれてしまって、お褒め申し上げてしまいました」
「それだけなの?」
「ええ。不躾だとお思いにならないといいのですけれど……」
フィールス夫人は不審そうにチラとフィオナを見た。
「あなたに向かって歩いて行ったように見えたけど……」
「それはないと思いますわ」
さすがのフィールス夫人もなにからなにまで見て居たわけではない。フィオナの言葉を疑う理由はなかった。
「あの、あのおきれいな方はどなたですか?」
まあと言った様子で、フィールス夫人は、フィオナを見た。そんなことも知らないのかと言った表情だった。
「クリスチン・パーシヴァル嬢よ。ご存じない?」
「お名前だけ」
「あの通りの美女で、とても機知のある方なの。社交界の花形と言われて長いわ。まだ、結婚はされていないのよ。大勢の男性が恋焦がれてお申込みが引きも切らないのに。持参金も莫大でしょうし……。フィールス家のサロンに来ていただけるとは思っていなかったわ」
フィオナににしてみれば、パーシヴァル嬢が自分に近づいてきたのが意外だった。おまけに彼女をべた褒めだ。
バーシヴァル嬢が帰ってしまった後で、フィオナ嬢は人々に取り囲まれていた。なんの話をしていたのか聞きに押し寄せたのだ。
「パーシヴァル嬢は、滅多に女性には声をかけないもの。そりゃー、気になるわ。一体、何の用事があったのかしら」
フィールス夫人は眉を寄せた。
そして、数日後、フィオナは、パーシヴァル嬢から、夜会の招待状を受け取った。
『ほんの気軽な会ですの。親しい方だけの集まりです。ご参加いただければ嬉しいわ
クリスチン』
これを見て、舞い上がったのはフィオナではない。兄のアンドルーである。
「フィ、フィオナ! すぐ参加すると返事しなさい! 何を着て行こうかな」
「落ち着いて! アンドルー。あなたは招かれていないから」
アレクサンドラから、喝を入れられた。
「しかし、これは、ジャックのおかげのご縁だなあ……」
アレクサンドラはあからさまにイヤな顔を始めた。
何かの機会に一度だけ噂に名高い社交界の花、クリスチン・パーシヴァルを見たことがある。もう何年も前だ。
「そんな若い盛りじゃないはずよ?」
「あなたよりは年下だよ」
興奮のあまり、アンドルーは拙劣極まる返事をしてしまった。
「もしかすると、義理の兄妹になるかもしれないな」
アレクサンドラは猛烈にイライラし始めた。
「いいこと? だからといって、向こうはあなたのことなんか歯牙にもかけませんよ」
「とはいえ、これはお受けになられた方がようございます」
マーゴットが珍しくあまり乗り気ではなさそうに言った。
「クリスチン様といえば……美人で華やかな社交界の花形。お知り合いの方々も選り抜きのエリートばかり。行けばその方々とお知り合いになれます。花婿探し以外にも、ぜひ、出席しておきたいところです。ただ、クリスチン様は、お美しいから持て囃されている方ではありません。もう、本当に……」
口ごもるマーゴットなんか初めてだ。
「なんとも、底の知れない、面白かったらなんでもやってしまうその性格が花形なのです」
ここで彼女は黙った。
「……フィオナ様を呼ばれたのだって、何か裏がありそうな気がいたします」
ところ変わってパーシヴァル家では、クリスチンが弟の部屋を訪ねて来ていて、ジャックがあからさまに嫌な顔をしていた。
「自分のアパルトマンにいるんじゃなかったの?」
クリスチンは、両親のいる自邸では勝手が出来なくて不便だと言って、数年前にしゃれたアパルトマンを市中に借りて住んでいた。未婚の女性一人が住むと外聞が悪いので、叔母の一人が一緒に住んでいたが、果たして何かのガードになってるのかどうか疑問だった。
だが、ジャックもそれからモンゴメリ卿もよく知っていたが、嫌がらせや奇想天外なことをさせたら並ぶ者はいなかったが、こと男に関しては姉は潔白だった。
臆病なのか(それなら可愛いが)、性格がどうかしているのか、頭が良すぎるせいなのかジャックにはさっぱりわからなかった。
とは言え、ジャックは姉に興味が全くなかったので、本宅から出て行ってくれてほっとした。姉はジャックを見ると、何か仕掛けてくるのだ。大体ろくなことにならない。
「今日はジャックにいい知らせを持ってきたのよ」
ジャックは眉をしかめた。姉が言ういい話が、いい話だったためしがない。
「いやねえ。本当よ。それにお願いがあるの」
更によくない。姉の願いがまともだったことがない。
「今度の私の夜会に出て欲しいのよ」
速攻断った。
「いやだね」
「大丈夫よ。本当にいい知らせなんだから」
姉はキラキラした金髪の巻き毛を肩の上で揺らしながら部屋の中に入ってきた。
「姉さんの友達なんか、興味もないし、俺は忙しい」
姉がキラリと目を光らせた。
「そんなことはないと思うの。ダーリントン伯爵令嬢をお招きしたの」
心の底からゾッとした。
嫌がらせの極致だ。
だが、悟られてはならない。ジャックが嫌がる程、姉は喜ぶらしい。
「それで、ジャックにはダーリントン嬢のお相手をお願いしたいの」
「……いやだね」
どうせ、ジャックの反応を見て楽しむつもりだろう。そのあと、何週間もからかう気だ。
「ダーリントン嬢を招待すると、グレンフェル侯爵がもれなくついてくるの」
え?
「いいこと? フィオナ嬢が来れば、グレンフェル侯爵が付いてくるの」
そうなのか?
「でも、フィオナ嬢はあなたにあげる」
ジャックは黙った。
「グレンフェル侯爵の友人のアレンを招いたの。彼、きっと連れてきてくれるわ。フィオナ嬢を招いたって伝えたのよ。アレンはフィオナ嬢を見たいので……正確に言えばグレンフェル侯爵の反応を見たいのだと思うわ。悪友ね」
なんという計画……てか、この計画、うまくいくのか? グレンフェル侯爵狙いだとは知っていたが、フィオナをエサに侯爵をおびき寄せるだなんて。侯爵は本当にノコノコやって来るのか?
「うまくいかなかったら、いいじゃない。思い切りフィオナ嬢を独り占めすればいいわ。それに、グレンフェル侯爵が来たら、それこそあなたの出番だと思わない?」
ジャックの出番?
「あなたはホスト側なのよ。フィオナをもてなすのは当然でしょう。そして、私はホステス側。グレンフェル侯爵をおもてなしするのは私の役割だわ」
鉢合わせと言う言葉が頭に浮かんだ。
「来ないならいいわよ。来なくても別にかまわない。フィオナ嬢を招待してグレンフェル公爵が来てくれれば、私は彼とお話してみたいの。時間が余って、彼がフィオナ嬢と楽しむのだったら、それは仕方ないわ」
「……行きます」
姉は高らかに笑い出した。何か屈辱的だ。だが、これは行かないわけにはいかない。
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