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第79話 毒パーティの行方
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殿下は妙な顔をしていたし、アデル様の顔色は真っ青だった。
自業自得よ。
たまには、こんな目に会えばいいのよ。
本当に飲む前に、私がはたき落としたので、口に入った量はごく少量。多分、効き目も少ないだろうし、万一なにかあっても、私はいつも命のポーションを持ち歩いている。
言い値で売ってあげるわ。(上から目線)
殿下は私たち二人の間に流れる奇妙な雰囲気に気がついていただろうけれど、私たちが仲良しだとか思ってるはずがない。どうにもならないと無視したんだろうと思う。
アデル嬢はいつもにもまして、殿下にお色気作戦に出た。
さっきの毒薬は、まだ効いていないんだろうな。
ガセボの中、私は殿下の向かいの席で、アデル嬢は殿下の横に座った。かなり接近している。招待者特権だな。
「私からのお誘いだと言うのに、どうしてアランソン様をお呼びになったの? 殿下」
「それには事情があって、ぜひともあなたにご協力いただきたかったんだよ、リーマン嬢」
殿下は真面目そうに言った。いつもは歯の浮くようなことを平気で言う殿下が、真面目そうにしている。
「まあっ。殿下のお願いなら、なんでもお聞きしますわ、私」
「だと、ありがたいね」
殿下は暑いのか、ハンカチを取り出すと額を拭った。
「まず、この場をお借りして、ポーシャ嬢」
ルーカス殿下が向き直った。
「無理でもお願いしたい。あなたの手を私に下さらないだろうか?」
「?」
殿下は言い直した。
「結婚してくださらないだろうか?」
私とアデル嬢が固まった。
「え……」
「今すぐでなくていいので、いつか必ず結婚してもらえないだろうか?」
結構、殿下は必死らしかった。
「あなたを好きだ。結婚したいほどに好きなのだ」
…………
「……あの、殿下、なぜ、ここで?」
場所の選択が果てしなく疑問だった。
「信じてくれないからだ」
殿下は言った。
「何回も何回もお願いした。それに真剣なんだと伝えた。あなたしかいない。公爵家の身分だとか、とても美しい人だとか、膨大な未知数の魔力の持ち主だとか、そんなことはどうでもいいんだ。あなたが好きなんだ」
アデル嬢があっけに取られている。
私だって、あっけにとられた。
「傍若無人で、僕を無視して、自分流の優先順位を付けてためらいなく実行するあなたが好きだ。突っ走るあなたが好きだ。事実をズバリと指摘するあなたが好き」
……褒めてくれてありがとう。でも、世の中、そんな人のことを変人と呼ぶのでは?
「違うよ。あなたの頭の中には、あなたの利益は入っていない。人の命や、人のためになる事、それが優先だ。でも、僕が特に好きなのはそこに必ず無意識のバランス感覚があるところだ」
私とアデル嬢は、殿下の難しい話にポカンとした。
「殿下。アランソン嬢はバカですよ? 令嬢の常識は無視しますし」
私は我知らずうなずいた。
だが、殿下はアデル嬢のことは完全に無視して、私に熱心に尋ねた。
「あなたは、結婚なんか考えていないよね? だからまず婚約からでいい」
いきなり婚約って、ハードル高いな。
「殿下、そこは、お友達からスタートでいいのでは」
一応、注意してみた。
「ダメだダメだ。お友達は複数人数いる可能性があるだろう」
なるほど。そう言われれば、それは確かに。大きな差だ。
「でも、婚約者はたった一人なんだ」
殿下はアデル嬢を、押しのけて私の手を掴んだ。
「唯一の人になりたい。婚約者なら、他の男と出歩けないし、ダンスパーティの時も僕の許可がなければダンスできない」
むっ?
「聞けば聞くほど不利なので、お断りします」
「殿下、私なら殿下のご希望を全部飲めますわ」
元気になったアデル嬢が割り込んだ。
「大歓迎ですわ。殿下が私としか外出しない、ダンスパーティのお相手は常に私……うっとりしますわ」
「いや、あなたのことはちっとも好きじゃないんだ。しょっちゅうお茶会のお誘いの手紙を送って来るし、手紙の内容がどうも僕のことを自分のものみたいに思っている感じが漂ってくるので、不愉快なんだ。僕の意中の人は、ポーシャ嬢なんだ」
殿下はアデル嬢に向かって説明した。
アデル嬢が目の玉を飛び出させて絶句していた。
あの、水を差すようですけど、殿下の手紙や話の内容も、どうも私のことを自分のものみたいに思っている感じが漂ってきて、不愉快なんですけども。
「それに、理由はわからないが、ポーシャ嬢が勘違いしていてね」
「何をですか……?」
「僕の意中の人が、アデル嬢だって勘違いしている感じがする。でも、面と向かって僕に言わないので、訂正できない」
「殿下! 勘違いではありませんわ! 殿下の意中の方は、この私! それで、全然オッケーですわ! ねっ? ポーシャ嬢。構わないわよね。構わないとおっしゃって!」
「そう言われると……まあ、その、私は関係ない話ですからねえ……」
私には、殿下とアデル嬢の関係に発言権はないだろう。
「アデル嬢がポーシャや周辺の令嬢方に、自分が僕の婚約者だと言いふらしただろう。嘘は止めて欲しいんだよ」
なに?この断罪ショー……
「その嘘、タチが悪くてね。根拠がないから、結局はただの噂。僕としても追求出来ない。普通は我慢するんだが、ポーシャ嬢が噂を信じて遠慮するので、すっごくアデル嬢の噂は邪魔でね」
殿下、怒ってる?
「あ、あら、違いますわ。その噂を広げているのは、ポーシャ嬢なんですの」
「ええっ?」
初めて聞いたわ。
「そう言わなかったかしら? 言ったわよね? 殿下と私が婚約してるかもって」
言ったかもしれない。誰かに聞かされて、そのまま垂れ流したような?
アデル嬢は私が躊躇うのを見て勝ち誇ったように言った。
「ほーら、この通り。悪いのは全てポーシャ嬢ですわ。殿下、ポーシャ嬢には厳罰が必要です。だってポーシャ嬢は、殿下に媚薬を使ったんです」
何というトクダネ。これまた初めて聞いたわ。
「それで、殿下はポーシャ嬢を好きだと勘違いするようになったのですわ」
「いや、違うから」
殿下は短く言った。
「ポーシャ嬢は幼馴染だ。ずっと前から好きだった」
「すみません、殿下」
私はここでどうしても聞いてみたいことがあったので、口を挟んだ。
「アデル嬢も幼馴染なんですか?」
と言うのも、以前、アデル嬢は、殿下と幼馴染なんだと宣言したことがあり、その直後に殿下が幼馴染と婚約したい発言をしたことがあるからだ。
一足す一は二。なんとなく、その時点でアデル嬢が婚約者かと納得した自分がいた。
殿下は驚いたようだった。
「いや、違うよ?」
「でも、アデル嬢、殿下とは幼馴染なんだっておっしゃいましたよね?」
「無論、幼馴染よ! 八歳の時からのね!」
アデル嬢は胸を張った。
「それは母上が開いたお茶会の時の話だろう。あの時はアデル嬢が他の令嬢に水をぶっかけて大騒ぎになった。以来、めんどくさいので一度も招いていないぞ?」
アデル嬢、その頃から活発だったのね。
「とにかく、媚薬を使うような女は問題外です。すぐに逮捕しなくては」
アデル嬢の様子がおかしくなって来た。ふらついている。毒が効いてきたらしい。
「誰か、あの女を捕まえて。私は毒を盛られたの。王子妃になるのは私よ。あの女は邪魔」
元々おかしなことを言う人だったが、こんなことは言ったことがない。もう少し、オブラートに包んで厭味ったらしかったのに。毒のせいかしら。
「ポーシャ、これはどう言うことだ?」
殿下はアデル嬢の様子に焦って叫んだ。
「本音がダダ洩れではないか」
「あっ、殿下もわかっていただけましたか? ポーシャ嬢は毒使いなんです」
「毒使いはあなたでしょう? さっきの紅茶にたんまり毒を入れて、私を毒殺しようとしたでしょう?」
「えっ? じゃあ、毒入りとわかっていて、私に同じ紅茶を飲めと勧めたの?」
「だって、あなたが大丈夫だっておっしゃるから。それなら、誰が飲んでもいいわけでしょう?」
「毒が効かなかったのかと思ったのよ。ダメな毒かと」
アデル嬢は、上半身がふらついてちゃんと座っていられなくなってきた。
置いてきぼりを食った殿下が語気鋭く聞いた。
「毒って……? 毒を飲んだのか?」
「リーマン家で出された紅茶を飲んだ話ですわ。殿下が来られる前」
「毒が入っていたのか?」
「そう。私の分にだけね。象一頭でも殺せそうなくらい」
「あなたに毒は効かないね?」
アデル嬢の目が動いた。
「そうよ。トルーマン男爵は散々私に毒を送ってきた。でも、私に毒は効かない」
「ええ? それじゃあ……」
アデル嬢がふらつく体を起こそうと努力しながら、聞いた。
「心配しなさんな。そんな酷いことするわけないでしょ? ほら」
私は小さなバッグを取り出すと中から小さなビンを出した。
「ああ。あるのか」
殿下がホッとしたように言った。
「命のポーションよ、アデル嬢」
私は言った。
まあ、もうそろそろ毒が回ってきている頃だと思う。
それでこれだけ騒げるんだったら、命のポーションのお世話にならなくても、多分死なない。
とは言え、毒の耐性なんか、よくわからないしね。
ソファの上に横たわったアデル嬢の口に命のポーションを流し込む。
「大丈夫かな?」
「殿下、このパーティの方が、よっぽど大丈夫かなと思いますよ?」
私は手厳しく殿下を追求した。
自業自得よ。
たまには、こんな目に会えばいいのよ。
本当に飲む前に、私がはたき落としたので、口に入った量はごく少量。多分、効き目も少ないだろうし、万一なにかあっても、私はいつも命のポーションを持ち歩いている。
言い値で売ってあげるわ。(上から目線)
殿下は私たち二人の間に流れる奇妙な雰囲気に気がついていただろうけれど、私たちが仲良しだとか思ってるはずがない。どうにもならないと無視したんだろうと思う。
アデル嬢はいつもにもまして、殿下にお色気作戦に出た。
さっきの毒薬は、まだ効いていないんだろうな。
ガセボの中、私は殿下の向かいの席で、アデル嬢は殿下の横に座った。かなり接近している。招待者特権だな。
「私からのお誘いだと言うのに、どうしてアランソン様をお呼びになったの? 殿下」
「それには事情があって、ぜひともあなたにご協力いただきたかったんだよ、リーマン嬢」
殿下は真面目そうに言った。いつもは歯の浮くようなことを平気で言う殿下が、真面目そうにしている。
「まあっ。殿下のお願いなら、なんでもお聞きしますわ、私」
「だと、ありがたいね」
殿下は暑いのか、ハンカチを取り出すと額を拭った。
「まず、この場をお借りして、ポーシャ嬢」
ルーカス殿下が向き直った。
「無理でもお願いしたい。あなたの手を私に下さらないだろうか?」
「?」
殿下は言い直した。
「結婚してくださらないだろうか?」
私とアデル嬢が固まった。
「え……」
「今すぐでなくていいので、いつか必ず結婚してもらえないだろうか?」
結構、殿下は必死らしかった。
「あなたを好きだ。結婚したいほどに好きなのだ」
…………
「……あの、殿下、なぜ、ここで?」
場所の選択が果てしなく疑問だった。
「信じてくれないからだ」
殿下は言った。
「何回も何回もお願いした。それに真剣なんだと伝えた。あなたしかいない。公爵家の身分だとか、とても美しい人だとか、膨大な未知数の魔力の持ち主だとか、そんなことはどうでもいいんだ。あなたが好きなんだ」
アデル嬢があっけに取られている。
私だって、あっけにとられた。
「傍若無人で、僕を無視して、自分流の優先順位を付けてためらいなく実行するあなたが好きだ。突っ走るあなたが好きだ。事実をズバリと指摘するあなたが好き」
……褒めてくれてありがとう。でも、世の中、そんな人のことを変人と呼ぶのでは?
「違うよ。あなたの頭の中には、あなたの利益は入っていない。人の命や、人のためになる事、それが優先だ。でも、僕が特に好きなのはそこに必ず無意識のバランス感覚があるところだ」
私とアデル嬢は、殿下の難しい話にポカンとした。
「殿下。アランソン嬢はバカですよ? 令嬢の常識は無視しますし」
私は我知らずうなずいた。
だが、殿下はアデル嬢のことは完全に無視して、私に熱心に尋ねた。
「あなたは、結婚なんか考えていないよね? だからまず婚約からでいい」
いきなり婚約って、ハードル高いな。
「殿下、そこは、お友達からスタートでいいのでは」
一応、注意してみた。
「ダメだダメだ。お友達は複数人数いる可能性があるだろう」
なるほど。そう言われれば、それは確かに。大きな差だ。
「でも、婚約者はたった一人なんだ」
殿下はアデル嬢を、押しのけて私の手を掴んだ。
「唯一の人になりたい。婚約者なら、他の男と出歩けないし、ダンスパーティの時も僕の許可がなければダンスできない」
むっ?
「聞けば聞くほど不利なので、お断りします」
「殿下、私なら殿下のご希望を全部飲めますわ」
元気になったアデル嬢が割り込んだ。
「大歓迎ですわ。殿下が私としか外出しない、ダンスパーティのお相手は常に私……うっとりしますわ」
「いや、あなたのことはちっとも好きじゃないんだ。しょっちゅうお茶会のお誘いの手紙を送って来るし、手紙の内容がどうも僕のことを自分のものみたいに思っている感じが漂ってくるので、不愉快なんだ。僕の意中の人は、ポーシャ嬢なんだ」
殿下はアデル嬢に向かって説明した。
アデル嬢が目の玉を飛び出させて絶句していた。
あの、水を差すようですけど、殿下の手紙や話の内容も、どうも私のことを自分のものみたいに思っている感じが漂ってきて、不愉快なんですけども。
「それに、理由はわからないが、ポーシャ嬢が勘違いしていてね」
「何をですか……?」
「僕の意中の人が、アデル嬢だって勘違いしている感じがする。でも、面と向かって僕に言わないので、訂正できない」
「殿下! 勘違いではありませんわ! 殿下の意中の方は、この私! それで、全然オッケーですわ! ねっ? ポーシャ嬢。構わないわよね。構わないとおっしゃって!」
「そう言われると……まあ、その、私は関係ない話ですからねえ……」
私には、殿下とアデル嬢の関係に発言権はないだろう。
「アデル嬢がポーシャや周辺の令嬢方に、自分が僕の婚約者だと言いふらしただろう。嘘は止めて欲しいんだよ」
なに?この断罪ショー……
「その嘘、タチが悪くてね。根拠がないから、結局はただの噂。僕としても追求出来ない。普通は我慢するんだが、ポーシャ嬢が噂を信じて遠慮するので、すっごくアデル嬢の噂は邪魔でね」
殿下、怒ってる?
「あ、あら、違いますわ。その噂を広げているのは、ポーシャ嬢なんですの」
「ええっ?」
初めて聞いたわ。
「そう言わなかったかしら? 言ったわよね? 殿下と私が婚約してるかもって」
言ったかもしれない。誰かに聞かされて、そのまま垂れ流したような?
アデル嬢は私が躊躇うのを見て勝ち誇ったように言った。
「ほーら、この通り。悪いのは全てポーシャ嬢ですわ。殿下、ポーシャ嬢には厳罰が必要です。だってポーシャ嬢は、殿下に媚薬を使ったんです」
何というトクダネ。これまた初めて聞いたわ。
「それで、殿下はポーシャ嬢を好きだと勘違いするようになったのですわ」
「いや、違うから」
殿下は短く言った。
「ポーシャ嬢は幼馴染だ。ずっと前から好きだった」
「すみません、殿下」
私はここでどうしても聞いてみたいことがあったので、口を挟んだ。
「アデル嬢も幼馴染なんですか?」
と言うのも、以前、アデル嬢は、殿下と幼馴染なんだと宣言したことがあり、その直後に殿下が幼馴染と婚約したい発言をしたことがあるからだ。
一足す一は二。なんとなく、その時点でアデル嬢が婚約者かと納得した自分がいた。
殿下は驚いたようだった。
「いや、違うよ?」
「でも、アデル嬢、殿下とは幼馴染なんだっておっしゃいましたよね?」
「無論、幼馴染よ! 八歳の時からのね!」
アデル嬢は胸を張った。
「それは母上が開いたお茶会の時の話だろう。あの時はアデル嬢が他の令嬢に水をぶっかけて大騒ぎになった。以来、めんどくさいので一度も招いていないぞ?」
アデル嬢、その頃から活発だったのね。
「とにかく、媚薬を使うような女は問題外です。すぐに逮捕しなくては」
アデル嬢の様子がおかしくなって来た。ふらついている。毒が効いてきたらしい。
「誰か、あの女を捕まえて。私は毒を盛られたの。王子妃になるのは私よ。あの女は邪魔」
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「ポーシャ、これはどう言うことだ?」
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「本音がダダ洩れではないか」
「あっ、殿下もわかっていただけましたか? ポーシャ嬢は毒使いなんです」
「毒使いはあなたでしょう? さっきの紅茶にたんまり毒を入れて、私を毒殺しようとしたでしょう?」
「えっ? じゃあ、毒入りとわかっていて、私に同じ紅茶を飲めと勧めたの?」
「だって、あなたが大丈夫だっておっしゃるから。それなら、誰が飲んでもいいわけでしょう?」
「毒が効かなかったのかと思ったのよ。ダメな毒かと」
アデル嬢は、上半身がふらついてちゃんと座っていられなくなってきた。
置いてきぼりを食った殿下が語気鋭く聞いた。
「毒って……? 毒を飲んだのか?」
「リーマン家で出された紅茶を飲んだ話ですわ。殿下が来られる前」
「毒が入っていたのか?」
「そう。私の分にだけね。象一頭でも殺せそうなくらい」
「あなたに毒は効かないね?」
アデル嬢の目が動いた。
「そうよ。トルーマン男爵は散々私に毒を送ってきた。でも、私に毒は効かない」
「ええ? それじゃあ……」
アデル嬢がふらつく体を起こそうと努力しながら、聞いた。
「心配しなさんな。そんな酷いことするわけないでしょ? ほら」
私は小さなバッグを取り出すと中から小さなビンを出した。
「ああ。あるのか」
殿下がホッとしたように言った。
「命のポーションよ、アデル嬢」
私は言った。
まあ、もうそろそろ毒が回ってきている頃だと思う。
それでこれだけ騒げるんだったら、命のポーションのお世話にならなくても、多分死なない。
とは言え、毒の耐性なんか、よくわからないしね。
ソファの上に横たわったアデル嬢の口に命のポーションを流し込む。
「大丈夫かな?」
「殿下、このパーティの方が、よっぽど大丈夫かなと思いますよ?」
私は手厳しく殿下を追求した。
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