見切り教育

ラッキーセヴァン

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9月2日

原 悠介

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私と一緒にいる男、原 悠介は若干19歳にして世界に通用するヤクザ「龍頭組」の第一幹部を務めるという鬼才っぷりを発揮している。

しかし、そんな彼にも昔は別の夢があったらしい。

「ゆうちゃんねー、大きくなったらおまわりさんになりたい!」

彼は幼い頃から人一倍正義感が強く、周りの人達に分け隔てなく接する様な人だった。だから強くて優しい警察官は彼にとって憧れでもあり、ヒーローでもあり、うってつけの職業だったというわけだ。そして彼はコツコツと必死に勉強に取り組んだ。

しかし、彼に転機が訪れる。

「よっしゃ!俺、徒競走一位だぜ!」

「俺二位だった!おい、悠介はどうだった?」

「・・・俺四位だった。」

「えー!?おっせえの!!」

小学校に入学してからこの様に周りと比較される様になったのだ。それでも彼は勉強に加えてスポーツも必死に努力して取り組んだ。

しかし、現実はそう甘くないと学年が上がるに連れて原は思い知らされた。

(よし!今回のテストは87点だ!結構いいぞ!)

「テストどうだったー!?俺96点!」

「やるじゃん!俺92点!」

「まあ今回のテスト結構簡単だったもんねー!」

「なあ!悠介はどうだった?」

「おっ、俺もそれぐらい!」

「お前いっつも答案見せてくれねえよな。見せろよ!!」

「あっ!!」

「・・・えー!!87点!?バカすぎるでしょ!!」

「お前全然勉強してねえだろー!!」

「ま・・・まあな。」

(何言ってんだよこん畜生。でも俺ならまだやれるはず。)



(・・・リレー選手補欠かぁ。まあ今までは入れなかったし上出来か。)

「すごーい!!田中くんまたリレーのアンカー?」

「カッコいい!!」

「ありがとー!!悪いな原、俺は休まねえぜ!」

(・・・まだまだ!)

原は自分の無力さを思い知らされていった。それでも彼は持ち前のポジティブさで諦めずに寝る間も惜しんで勉強した。

しかし、そんな彼に追い討ちをかける出来事が訪れた。

中学2年生のあくる日、将来の夢をクラスで発表する事になった。そして原の番が回ってきた時だった。

「では原くん、発表してください。」

「はい!よろしくお願いします。

僕の将来の夢は警察官になる事です!!」

・・・・・・。

(えっ?何だよ。俺なんか変な事言った?)

「「「あはははははははは!!」」」

「・・・何で?」

「無理に決まってんだろー!」

「そんなに勉強もできねえのに!?」

「スポーツだって言うほど出来ないじゃん!」

「笑わせないでよ!!」

(畜生、悔しい・・・!でも!)

「へっ!そう言っていられるのも今のうちだ!絶対にもっと頭良くなってスポーツもできるようになって、警察官になってやる!!」

「そもそもおまえんち貧乏だろ?高校行けんのかよ!」

原の家は私と変わらないくらい貧乏だった。しかし、性格が明るく、虐められずに済んだのだ。

「そこまで貧乏じゃねえよ!それぐらいの金持っとるわ!」

「「「あはははは!!」」」

こう言った感じでその場はやり過ごしたらしい。

家に帰ってからいつものように勉強をしていると、原は急に話があると父親に呼び出された。何か嫌な予感がしたという。

「親父!何だよ話って!」

原は笑顔で父の元へ駆け寄った。

「すまない。落ち着いて聞いてくれ。父さんは・・・



お前を高校へやれない。」

まさかあの男子が言った事が本当になるなんて。原はしばらく黙ってから態度を変えずに聞いた。

「どういうことだよ?」

この時、若干声が震えていたかもしれないと原は振り返る。そして、申し訳無さそうに原の父親は言った。

「父さんの会社、差し押さえられる事になった。職を失ったんだ。」

「いやいや、どうして急に?」

「会社の連中が身分が低い奴ばっかでな、上手くいかなかったんだ。

ごめんな、父さんがダメだったばっかりに。」

全てを理解した原は何故か膝を床に付いていたという。今まで積み上げてきたものがぶち壊された音がした。そして笑顔がどんどん崩れていき・・・ 


「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。

うわあああああああああ!!!」


何か訳の分からない事を叫びながら原は家を飛び出した。その後手当たり次第に電車に乗りまくり、12時を過ぎる頃にはギラギラ光る店が沢山ある都会に着いていた。そこでは汚いおっさんとケバいメイクをした女が腕を組んで歩いていたという。

やばいな。これ。

原は身の危険を感じてそこを引き返そうとした。しかし、あと一息遅かった。原は刺青をした30代ぐらいの男に腕を掴まれた。

「おい坊主、何だこんな時間に。」

「テメェには関係ねえだろ!?離せオラァ!!」

「口答えすんじゃねえよ。」

「ひっ!!」

ピストルを向けられた。

「一緒に来てもらう。」

そして原はなす術も無く、ヤクザのアジトへ連れて行かれてしまい、そのままヤクザになったという。

「ヤクザはさあ!警察よりも大きな組織で!今みたいに世界を救う事だって出来ちゃうんだぜ!?」

「・・・ふーん、そうなんだ。それは凄いね。凄いけどさあ、こんな事聞いちゃアレだけど、お父さんとお母さんには再開した事、あるの?」

「・・・一度も無い。」

「寂しく無いの?」

「・・・まあ過ぎた事だ。でもそのお陰で俺は世界に轟くヤクザになれたんだぜ!」

「努力は無駄にならなかった?」

「それはならなかったよ。ヤクザだって頭良く無いとやっていけないんだ!あと努力したお陰で体術使えるし、幹部にもなれたんだぜ!」

「・・・クラスの奴らの事、見返せたって思う?」

「うーん、見返したいとは思わないな。だって人がどうだからじゃなくて、自分がどうしたいか、だろ?」

成る程。原はこういう経験を通して大物になったんだな。

「うどんごっそさん!こんな事してる場合じゃ無いぜ!」

え!?切り替え早!

「だってこの後・・・

偏差値が出るんだぜ!!」

き・・・きたああああああ!!












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