黒祓いがそれを知るまで

星井

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告白

22*

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 ベッドの横の窓を開け、いつものように足を踏み入れているのは隊服姿のアーシュだった。
 下腹部を剥き出しにしている俺を一瞥し、その俺の足首をしっかりと掴んでいる自身の弟の姿を、目を細めて見ている。
 アーシュは手慣れた様子でブーツを脱ぎ部屋に入ると、ふ、と口許を緩め首を傾げた。

「楽しそうだな。私もいいか?」
「な、なに言ってんだよ、アーシュ! こいつ酔ってんだ! 助けてくれ!」

 がっつり掴まれた足首を振ろうと力を込めてもエンリィの力強さに足はぴくりともしない。ならば逃げようと身を引こうとしても、その瞬間に飛び掛かられそうで行動に移せない。
 そんな俺の様子を知りながら、アーシュは大して興味もなさそうな表情で黙々と自身の隊服を脱ぎ始めていて、こいつ何やってんだろうと口を開けて眺めてしまう。

「……ていうか兄上、今取り込み中なんです。出て行って貰えますか? そもそもなぜ当然の如くナツヤの部屋に……」
「よ、よせエンリィ」

 小声で制止するが饒舌なエンリィはお構いなしで言葉を続ける。
 アーシュの様子を見ればピリピリしているのは一目瞭然なのだが、酔っ払いにはそんなもの意味はないようだ。
 大変な夜だったはずだ。エンリィが酒に逃げたくなったように、アーシュもまた疲労を滲ませていた。こんな時間まで仕事だったのだろうか。それとも一度帰って、また出てきたのか。
 色々思う事はあるがその異様な空気に言葉も発せずアーシュを窺い見る。いや、その前に服を着たい。なんで丸出しなんだよ俺は。

「……とりあえずエンリィ、お前の兄貴も来た事だし離してくれ。足が痛い」
「嫌です」
「いいじゃないかそのままで。私は私で楽しませてもらう」

「はあっ?」

 アーシュは淡々とそう言って、すっかり下着のみになった姿で俺の背後に腰を下ろした。滑りこむように背後にくっつくその男を目を丸くして見つめていると、アーシュは感情のこもらない瞳のまま俺の顎を掴んで前を向かせた。
 あくまでも優しい力でだが、やっている事は強引で自分勝手だ。
 正面を向かされエンリィと目が合う。

「兄上、何してるんです」
「子どもはそこで見ておけばいい」

 れろ、と首筋に湿った感触がして俺は肩を震わせた。
 あれ、この展開やばいんじゃ……
 たらたらと冷や汗が背に流れていく。
 アーシュの寡黙さが恐ろしかった。だがそう思っているのは俺だけで、エンリィにはこの空気を読めてないのだと気付く。
 なぜならこいつは平然と言うのだ。

「ナツヤは今私と繋がろうとしていたんです。兄上みたいにナツヤを大事にしない人に彼を抱く資格はない。今すぐ出て行って下さい」
「……だがナツはそうじゃないみたいだぞ。ほら」
「あ……ッ!」

 シャツの下から侵入してきたアーシュの両手が、俺の乳首をくりと摘んできて、反射的に声が出た。そうして咄嗟にその手を掴み、これ以上動かさないようにアーシュを振り返る。

「なにしてんだよやめろ! ……ぅんっ」

 抗議の口をアーシュが問答無用で塞いだ。身体を捻りアーシュのくちづけから逃げようとすれば、片手で抱き締められ動きを封じられる。
 目を開けたままのアーシュは俺を一切見ずに、横目で正面のエンリィを射るように見つめていた。
 口内で暴れるアーシュの舌から逃れようとしても、まるで見せつけるように執拗に舌を吸われ、唾液を滴らせてくる。性交の匂いがするキスだった。その証拠にアーシュのもう一方の手が乳首をくりくりと刺激してくる。

「んんんっ……ぅ、や……ンぅ……!」

 逃れようと身をよじってもその抵抗は意図も簡単に封じられる。ぎり、と足首が痛み、その感触にエンリィが俺の足首を掴んだままだったのだと気付いた。

「兄上!」
「ンンー……ッ! はっ……はぁ……っ」

 乱暴にくちづけを離され、アーシュがエンリィに言う。

「続けるか? ナツは喜ぶぞ」
「はああ? あほか! お前らもう離せ! そして出て行け!」

 このクソ兄弟、付き合ってられるか!
 激昂した俺がジタバタもがくが、アーシュはじっとそんな俺を見て、その物言わぬ目に思わずたじろいでしまう。
 この人、本当に機嫌悪いのか。なんだかこわい……。

「兄上がその気なら……」
「……え?」

 え?

 エンリィが俺の足首から漸く手を放し、膝立ちになった。解放されるのかとほっとしたのは一瞬だ。
 アーシュがそれに一瞥し、俺の頭を掴んで前に押し出す。その乱暴な扱いにごくりと唾を飲み込むことしかできず、その勢いのまま四つん這いにされた。
 空気が変わった。
 対立するかのように向き合う兄弟が、互いに目だけで会話しているようだった。

 ……嫌な予感がする。

「奉仕してやれ。得意だろ?」

 アーシュが有無を言わせない口調で俺の髪を掴みながら言った。苛立ちに塗れたその硬い口調にこれは確実に機嫌が悪いのだと察する。
 だが、だからと言って従順である必要性はないし、目の据わった兄弟にどうこうする気はない。

「アーシュ、やめろ」

 頭を振ってその手から逃れようとするが、その顔を両手で押さえつけてきたのは正面にいたエンリィだった。

「ひどいことをしないでください」

 エンリィは強い口調でアーシュに言って、俺の髪から彼の手を引き剥がした。
 だがアーシュは身を起こそうとする俺の背中をグ、と抑えてつけてくる。無言で瓶の蓋を開ける音がして、ハっと次の行動を予測して焦る。
 慌てた俺に気付いたアーシュが、再度念を押すように背を押してきて俺は叫んだ。

「アーシュ!」

 ぬる、とした感触が後孔でした。アーシュの指が無遠慮にそこに触れている。

「兄上、まさか」
「見てるだけでいいのか? それとも今すぐここから消えるか? 私はどちらでもいい。ナツを抱くのには変わりないからな」
「……っ」

 ぐい、とアーシュの手が剥き出しの尻を掴み香油塗れの指がそこを濡らした。何度か開かせるように蕾をなぞられ、その感触に腰が揺れる。アーシュの腕を制止するために腕を伸ばせば、その腕を掴まれ背中と共に押さえつけられた。

「エンリィ、やめさせてくれ!」

 アーシュが本気なのだと分かったら、もう形振り構わなかった。正面のエンリィを見上げて言えば、エンリィはアーシュから視線を外し俺を見下ろした。
 何かを考えるような表情をしていた彼は、意を決したように唇を結び、そして俺に言った。

「……舐めて下さい」

 は?

 言うが早いがエンリィは自らズボンを寛げて俺の目の前に萎えたそれを突き出した。言葉を失いその行動を見ていただけの俺は、エンリィに髪を優しく撫でられて我に返る。

「ナツ、可愛い年下の男がおねだりしているぞ」

 背後のアーシュが物凄い棒読みで言うのに振り返れば、腕を掴まれたままやれと言わんばかりに尻を押し出された。勢いのままエンリィの男根が俺の頬にあたり、反応も出来ず呆然とする。
 見上げればエンリィは無表情で俺を見下ろしてるし、背後のアーシュはぐちゅりと後孔に指を突き入れている。掴まれたままの片腕は痛いし、宥めるように髪を撫でる手が諦めろと促している。
 少しの間固まっていた俺は、最早考える事を放棄することにして目を閉じ、仕方なく口を開いてエンリィを招き入れた。
 どうせもうこの兄弟は満足するまでやめないだろう。俺を虐め抜くことにしたアーシュと無駄に対抗心を燃やすエンリィ。
 片方は素面で片方は酔っている。どちらも散々な夜だった今日を終えるのに、俺を利用しているだけだ。

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