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12.ダンジョン演習
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アリシアとの講義の後
講義が終わり、大講義室を出る生徒たちで廊下は賑わっていた。
アルノアも荷物を片付けて出口へ向かおうとしたが、アリシアが彼の横に立ち、声をかけた。
「アルノア、次はダンジョン演習だったわね。」
その言葉に周囲の生徒たちの視線が一斉に集まる。アリシアが自分から誰かと話すことは珍しいため、自然と注目を浴びていた。
「久々の実戦だし、楽しみでもあります。」アルノアは気にする様子もなく答えた。
アリシアは少し笑みを浮かべ、言葉を続ける。
「中央ダンジョンの10層までだと聞いているけれど、演習用に制限がかかっているとはいえ、油断は禁物よ。特に、今回のチーム編成はランダムだから、どんな仲間になるかわからない。」
「わかっています。どんな相手と組んでも、協力するだけです。」
アルノアの淡々とした返答に、アリシアは微笑みながら頷いた。
「そう。それなら心配ないわね。」
しばらく二人で廊下を歩いていると、他の生徒たちが遠巻きに二人を見てヒソヒソと話しているのが耳に入った。
「アリシア様が、編入生と一緒に……?」
「結構親しげな感じだね」
アルノアはその視線に気づきながらも、特に気にすることなく歩き続ける。
しかし、アリシアは彼の横顔をちらりと見ながら思った。
(やっぱり彼、目立つのよね……。それにしても、堂々としているわ。ランドレウスでもこんな環境だったのかしら)
実際はおこぼれのB級としてネガティブな視線を向けられていた事で、周りからの感情を受け流すことが普通になっていただけだが…
演習前の準備――――――
廊下を抜けて上級クラスの準備室に着くと、すでに数人の生徒たちが装備の点検をしていた。
アリシアはここで足を止め、アルノアに言った。
「私は今回の演習には参加しないけれど、あなたの様子は楽しみにしているわ。」
「わざわざ見に来るんですか?」アルノアが冗談めかして聞くと、アリシアは軽く笑った。
「どうかしら。でも、あなたがどんな成長を見せるのか興味はあるわね。」
アリシアが去った後、準備室の中に残ったアルノアは装備を確認し始めた。すると、背後から声がした。
「おい、アルノア。アリシア様と何話してたんだ?」
振り返ると、同じクラスの男子生徒が興味津々にこちらを見ていた。他の生徒たちも話の続きを気にしているようだったが、アルノアは軽く肩をすくめただけだった。
「ちょっと編入後のことを気にかけて頂いてるだけだよ」
それ以上聞かれることはなく、アルノアは自分の装備を整えた。ダンジョン演習は、個々の実力を試されるだけでなく、チームとしての協力も重要な要素になる。
「さて、どんな人達と組むことになるか……。」
彼は静かに呟きながら、演習開始の集合場所へと向かった。
ダンジョンの入り口では、グレゴール教官やエストレード教授がすでに待機しており、ほかの生徒たちも集まりつつあった。
アルノアは一度深呼吸をして、自分の鼓動を整えた。
「久々の実戦だ……俺の力を、さらに磨いてみせる。」
こうしてアルノアは、期待と緊張が入り混じる中、ダンジョン演習へと向かうのだった。
ダンジョン演習の開始
フレスガドル学園では、定期的にダンジョン演習が行われる。実戦経験を積むだけでなく、仲間との連携を学ぶ場でもある。今回の演習の目的地は、フレスガドルの中央にそびえ立つ巨大ダンジョンの10層までとされた。
アルノアは久々の実践を前に、胸の中で密かに決意を新たにしていた。
「今の自分がどれだけ戦えるのか確かめたい。」
「そうじゃの、やはり実践がないと確認出来んしの」
「お主の氷属性と雷属性への適性は強くなっている。纏う以外にも出来るようにはなってきた。後は戦闘中に魔力行使が出来れば大丈夫じゃろう」
ダンジョンの概要――――――
このダンジョンは学園生だけでなく冒険者にも広く知られており、最上層が100層まで存在すると言われている。現在の最高記録は80層だが、そこから先の攻略は3年間進展していない。
特に、30層以下は「低階層」と呼ばれ、比較的危険度が低いとされているが、油断すれば命を落とすこともある。10層以下は初心者向けとされているが、未熟なチームでは対応できないモンスターも出現する。
ランダムチーム編成――――
今回の演習はランダムでチームを組む形式だ。戦闘スタイルや魔法の種類の偏りを防ぎ、協調性を育てる目的がある。チームは3~5人で編成されることになっていた。
アルノアの名前が呼ばれると、話したことがない3人とチームを組むことになった。彼らもまた、アルノアと同じ上級クラスの生徒だった。
集合場所で割り振られたチームが次々と発表されていく中、アルノアは自分の名前が呼ばれるのを待っていた。すると、グレゴール教官が元気な声でこう告げた。
「アルノア! お前のチームにセリア・ノートがいるぞ。射撃魔法の名手だ。少しお転婆だが、頼れるやつだ。」
その瞬間、鮮やかな赤髪のツインテールが揺れると同時に、一人の少女がアルノアの前に飛び込んできた。彼女は明るい笑顔を浮かべ、勢いよく手を振っている。
「アルノアくんでしょ! 私、セリア・ノート! よろしくねー!」
彼女の元気な声に一瞬圧倒されつつも、アルノアは少し戸惑いながら返事をした。
「あ、よろしく……アルノアだ。」
「知ってる知ってる! あの有名な編入生でしょ? 白髪がすごく目立ってたからすぐに覚えちゃった! でも、なんか近寄りがたい雰囲気かと思ってたけど、こうして話してみると全然そんなことないじゃん!」
セリアはまるで初対面の緊張など皆無といった様子で、次々に言葉を続ける。その勢いに押されながらも、アルノアはなんとか会話を続けた。
「そうか……それで、君は射撃魔法の使い手なんだよな?」
「そうそう! 炎属性の射撃魔法が得意なの。遠距離からズバッと狙い撃つ感じね! 私がいるから、アルノアくんは安心して前線で暴れられるよ!」
セリアは自信満々に親指を立て、ウィンクしてみせた。その無邪気な振る舞いにアルノアは思わず苦笑いを浮かべる。
「頼りにしてるよ。でも、俺も何とかチームの足を引っ張らないように頑張らないとな。」
「えー、そんな謙虚でどうするの! 私たちのチームはそれなりに強いメンバーになったみたい、自信持ってよね! 私たちで最高の結果を出すわよ!」
セリアの言葉は底抜けに明るく、周囲にいた他のチームのメンバーまでもが思わず笑顔になりそうなほどだった。
セリア・ノートはアルノアに自己紹介を終えると、にっこりと微笑みながら周りを指差した。
「じゃあ、次はチームメイトを紹介するね! まずはロイド!」
セリアが指し示したのは、がっしりとした体格の少年だった。彼は厚い胸板を誇るように軽く手を挙げ、落ち着いた声で自己紹介を始めた。
「ロイド・マクスウェルだ。主に盾役を担当してるけど、雷属性の魔法も少し使える。敵の注意を引きつけながら仲間を守るのが俺の役目だ。」
アルノアはロイドの落ち着いた物腰に感心しながら手を差し出した。
「アルノアだ。盾役がいると心強い。よろしく頼むよ。」
ロイドはしっかりと握手を返し、静かに頷いた。
「こちらこそ、よろしく頼む。」
セリアは満足げに微笑みながら、今度はもう一人の少年に視線を向けた。
「そしてこっちがガイル! 風属性と回復魔法の両方を使いこなす、頼れる万能型だよ!」
ガイルは鋭い目つきの青年で、短い銀髪が特徴的だった。彼は手を挙げながら軽く笑ってみせた。
「ガイル・レオンだ。風属性での攻撃が得意だけど、状況次第で回復役にも回れる。君は多属性魔法使いだって聞いてるけど、魔法での連携ができるといいな。」
「頼もしいな。連携は任せてくれ。こっちも全力でサポートする。」
セリアが満足そうに手を叩いて、声を張り上げた。
「はい! これでメンバー紹介完了! どう? すごくバランスのいいチームでしょ?」
アルノアは3人を見渡し、確かにそれぞれの役割が明確で、バランスの取れたチームだと感じた。
「本当に心強い。みんな、よろしく頼む。」
セリアが軽く拳を突き出し、全員の顔を見回した。
「じゃあ、行こうか! このチームでダンジョン演習を大成功させるよ!」
こうして、アルノアたちの初めてのチームが結成され、彼らはフレスガドル中央にそびえ立つダンジョンに向かって歩き出した。
演習のスタート――――――
チーム編成が終わると、グレゴール教官が全員を見回しながら説明を始めた。
厳しい視線を一同に向けると、さらに付け加えた。
「特に初対面の者同士でチームを組むのだから、連携を意識しろ。仲間がミスをしたら、即座にフォローに入れ。それができなければお前たちは冒険者にはなれん。」
その言葉に緊張感が走る中、セリアが小声で呟いた。
「さすが教官、怖いねぇ。でも、こっちにはアルノア君もいるし、大丈夫か。」
アルノアはその言葉に少し肩をすくめつつも、決意を新たにした。
ダンジョンの中へ
チームは順番にダンジョンへと入り、10層を目指して進んでいった。
モンスターが潜む暗い洞窟のような空間の中、セリアの炎魔法が道を照らし、ロイドの土属性魔法が足場の安全を確保する。ガイルは周囲を警戒しながら、盾のようにチームの先頭に立った。
アルノアは適応力を活かし、彼らの行動を観察しながら、隙を見つけてサポートに回った。
4層目に差し掛かった頃、チームは最初の強敵である洞窟バイソンと遭遇した。
巨大な牛型の魔物で、突進力が非常に強く、体力も高い。
セリアが攻撃魔法で牽制し、ロイドが前に出てその突進を受け止めたが、衝撃に耐え切れず少し後退した。
「ロイド! 無理するな!」ガイルが後ろから補助魔法をかけながら叫ぶ。
アルノアはその様子を見て、すぐに判断した。
「セリア、足を止めるからバイソンの後ろに回り込めるか?」
「任せて!」
「フロストバインド」
アルノアはバイソンの足元を凍らせる。
セリアが後ろから炎魔法を叩き込むと、洞窟バイソンが苦しげに吠えた。その隙を見逃さず、アルノアとガイルは一気に距離を詰める。
「行ける!」
バイソンの首元を左右から狙い、鋭い斬撃を与えると、魔物は地面に崩れ落ちた。
戦闘後、ガイルがアルノアの肩を叩きながら大笑いした。
「お前、やるじゃないか! やっぱり噂は本当だったな!」
ロイドは冷静な目でアルノアを見つめながら、感心したように言った。
「君、戦術眼がかなり優れているね。しかも、全員の動きをよく見ていた。」
アルノアは照れ臭そうに笑いながら、小さく頷いた。
「こちらこそ、よろしく。」
こうして、アルノアは新たな仲間たちと共に、さらなる高みを目指す第一歩を踏み出した。
5層からは階層主が出てくるから、ここからが本番だ。
講義が終わり、大講義室を出る生徒たちで廊下は賑わっていた。
アルノアも荷物を片付けて出口へ向かおうとしたが、アリシアが彼の横に立ち、声をかけた。
「アルノア、次はダンジョン演習だったわね。」
その言葉に周囲の生徒たちの視線が一斉に集まる。アリシアが自分から誰かと話すことは珍しいため、自然と注目を浴びていた。
「久々の実戦だし、楽しみでもあります。」アルノアは気にする様子もなく答えた。
アリシアは少し笑みを浮かべ、言葉を続ける。
「中央ダンジョンの10層までだと聞いているけれど、演習用に制限がかかっているとはいえ、油断は禁物よ。特に、今回のチーム編成はランダムだから、どんな仲間になるかわからない。」
「わかっています。どんな相手と組んでも、協力するだけです。」
アルノアの淡々とした返答に、アリシアは微笑みながら頷いた。
「そう。それなら心配ないわね。」
しばらく二人で廊下を歩いていると、他の生徒たちが遠巻きに二人を見てヒソヒソと話しているのが耳に入った。
「アリシア様が、編入生と一緒に……?」
「結構親しげな感じだね」
アルノアはその視線に気づきながらも、特に気にすることなく歩き続ける。
しかし、アリシアは彼の横顔をちらりと見ながら思った。
(やっぱり彼、目立つのよね……。それにしても、堂々としているわ。ランドレウスでもこんな環境だったのかしら)
実際はおこぼれのB級としてネガティブな視線を向けられていた事で、周りからの感情を受け流すことが普通になっていただけだが…
演習前の準備――――――
廊下を抜けて上級クラスの準備室に着くと、すでに数人の生徒たちが装備の点検をしていた。
アリシアはここで足を止め、アルノアに言った。
「私は今回の演習には参加しないけれど、あなたの様子は楽しみにしているわ。」
「わざわざ見に来るんですか?」アルノアが冗談めかして聞くと、アリシアは軽く笑った。
「どうかしら。でも、あなたがどんな成長を見せるのか興味はあるわね。」
アリシアが去った後、準備室の中に残ったアルノアは装備を確認し始めた。すると、背後から声がした。
「おい、アルノア。アリシア様と何話してたんだ?」
振り返ると、同じクラスの男子生徒が興味津々にこちらを見ていた。他の生徒たちも話の続きを気にしているようだったが、アルノアは軽く肩をすくめただけだった。
「ちょっと編入後のことを気にかけて頂いてるだけだよ」
それ以上聞かれることはなく、アルノアは自分の装備を整えた。ダンジョン演習は、個々の実力を試されるだけでなく、チームとしての協力も重要な要素になる。
「さて、どんな人達と組むことになるか……。」
彼は静かに呟きながら、演習開始の集合場所へと向かった。
ダンジョンの入り口では、グレゴール教官やエストレード教授がすでに待機しており、ほかの生徒たちも集まりつつあった。
アルノアは一度深呼吸をして、自分の鼓動を整えた。
「久々の実戦だ……俺の力を、さらに磨いてみせる。」
こうしてアルノアは、期待と緊張が入り混じる中、ダンジョン演習へと向かうのだった。
ダンジョン演習の開始
フレスガドル学園では、定期的にダンジョン演習が行われる。実戦経験を積むだけでなく、仲間との連携を学ぶ場でもある。今回の演習の目的地は、フレスガドルの中央にそびえ立つ巨大ダンジョンの10層までとされた。
アルノアは久々の実践を前に、胸の中で密かに決意を新たにしていた。
「今の自分がどれだけ戦えるのか確かめたい。」
「そうじゃの、やはり実践がないと確認出来んしの」
「お主の氷属性と雷属性への適性は強くなっている。纏う以外にも出来るようにはなってきた。後は戦闘中に魔力行使が出来れば大丈夫じゃろう」
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このダンジョンは学園生だけでなく冒険者にも広く知られており、最上層が100層まで存在すると言われている。現在の最高記録は80層だが、そこから先の攻略は3年間進展していない。
特に、30層以下は「低階層」と呼ばれ、比較的危険度が低いとされているが、油断すれば命を落とすこともある。10層以下は初心者向けとされているが、未熟なチームでは対応できないモンスターも出現する。
ランダムチーム編成――――
今回の演習はランダムでチームを組む形式だ。戦闘スタイルや魔法の種類の偏りを防ぎ、協調性を育てる目的がある。チームは3~5人で編成されることになっていた。
アルノアの名前が呼ばれると、話したことがない3人とチームを組むことになった。彼らもまた、アルノアと同じ上級クラスの生徒だった。
集合場所で割り振られたチームが次々と発表されていく中、アルノアは自分の名前が呼ばれるのを待っていた。すると、グレゴール教官が元気な声でこう告げた。
「アルノア! お前のチームにセリア・ノートがいるぞ。射撃魔法の名手だ。少しお転婆だが、頼れるやつだ。」
その瞬間、鮮やかな赤髪のツインテールが揺れると同時に、一人の少女がアルノアの前に飛び込んできた。彼女は明るい笑顔を浮かべ、勢いよく手を振っている。
「アルノアくんでしょ! 私、セリア・ノート! よろしくねー!」
彼女の元気な声に一瞬圧倒されつつも、アルノアは少し戸惑いながら返事をした。
「あ、よろしく……アルノアだ。」
「知ってる知ってる! あの有名な編入生でしょ? 白髪がすごく目立ってたからすぐに覚えちゃった! でも、なんか近寄りがたい雰囲気かと思ってたけど、こうして話してみると全然そんなことないじゃん!」
セリアはまるで初対面の緊張など皆無といった様子で、次々に言葉を続ける。その勢いに押されながらも、アルノアはなんとか会話を続けた。
「そうか……それで、君は射撃魔法の使い手なんだよな?」
「そうそう! 炎属性の射撃魔法が得意なの。遠距離からズバッと狙い撃つ感じね! 私がいるから、アルノアくんは安心して前線で暴れられるよ!」
セリアは自信満々に親指を立て、ウィンクしてみせた。その無邪気な振る舞いにアルノアは思わず苦笑いを浮かべる。
「頼りにしてるよ。でも、俺も何とかチームの足を引っ張らないように頑張らないとな。」
「えー、そんな謙虚でどうするの! 私たちのチームはそれなりに強いメンバーになったみたい、自信持ってよね! 私たちで最高の結果を出すわよ!」
セリアの言葉は底抜けに明るく、周囲にいた他のチームのメンバーまでもが思わず笑顔になりそうなほどだった。
セリア・ノートはアルノアに自己紹介を終えると、にっこりと微笑みながら周りを指差した。
「じゃあ、次はチームメイトを紹介するね! まずはロイド!」
セリアが指し示したのは、がっしりとした体格の少年だった。彼は厚い胸板を誇るように軽く手を挙げ、落ち着いた声で自己紹介を始めた。
「ロイド・マクスウェルだ。主に盾役を担当してるけど、雷属性の魔法も少し使える。敵の注意を引きつけながら仲間を守るのが俺の役目だ。」
アルノアはロイドの落ち着いた物腰に感心しながら手を差し出した。
「アルノアだ。盾役がいると心強い。よろしく頼むよ。」
ロイドはしっかりと握手を返し、静かに頷いた。
「こちらこそ、よろしく頼む。」
セリアは満足げに微笑みながら、今度はもう一人の少年に視線を向けた。
「そしてこっちがガイル! 風属性と回復魔法の両方を使いこなす、頼れる万能型だよ!」
ガイルは鋭い目つきの青年で、短い銀髪が特徴的だった。彼は手を挙げながら軽く笑ってみせた。
「ガイル・レオンだ。風属性での攻撃が得意だけど、状況次第で回復役にも回れる。君は多属性魔法使いだって聞いてるけど、魔法での連携ができるといいな。」
「頼もしいな。連携は任せてくれ。こっちも全力でサポートする。」
セリアが満足そうに手を叩いて、声を張り上げた。
「はい! これでメンバー紹介完了! どう? すごくバランスのいいチームでしょ?」
アルノアは3人を見渡し、確かにそれぞれの役割が明確で、バランスの取れたチームだと感じた。
「本当に心強い。みんな、よろしく頼む。」
セリアが軽く拳を突き出し、全員の顔を見回した。
「じゃあ、行こうか! このチームでダンジョン演習を大成功させるよ!」
こうして、アルノアたちの初めてのチームが結成され、彼らはフレスガドル中央にそびえ立つダンジョンに向かって歩き出した。
演習のスタート――――――
チーム編成が終わると、グレゴール教官が全員を見回しながら説明を始めた。
厳しい視線を一同に向けると、さらに付け加えた。
「特に初対面の者同士でチームを組むのだから、連携を意識しろ。仲間がミスをしたら、即座にフォローに入れ。それができなければお前たちは冒険者にはなれん。」
その言葉に緊張感が走る中、セリアが小声で呟いた。
「さすが教官、怖いねぇ。でも、こっちにはアルノア君もいるし、大丈夫か。」
アルノアはその言葉に少し肩をすくめつつも、決意を新たにした。
ダンジョンの中へ
チームは順番にダンジョンへと入り、10層を目指して進んでいった。
モンスターが潜む暗い洞窟のような空間の中、セリアの炎魔法が道を照らし、ロイドの土属性魔法が足場の安全を確保する。ガイルは周囲を警戒しながら、盾のようにチームの先頭に立った。
アルノアは適応力を活かし、彼らの行動を観察しながら、隙を見つけてサポートに回った。
4層目に差し掛かった頃、チームは最初の強敵である洞窟バイソンと遭遇した。
巨大な牛型の魔物で、突進力が非常に強く、体力も高い。
セリアが攻撃魔法で牽制し、ロイドが前に出てその突進を受け止めたが、衝撃に耐え切れず少し後退した。
「ロイド! 無理するな!」ガイルが後ろから補助魔法をかけながら叫ぶ。
アルノアはその様子を見て、すぐに判断した。
「セリア、足を止めるからバイソンの後ろに回り込めるか?」
「任せて!」
「フロストバインド」
アルノアはバイソンの足元を凍らせる。
セリアが後ろから炎魔法を叩き込むと、洞窟バイソンが苦しげに吠えた。その隙を見逃さず、アルノアとガイルは一気に距離を詰める。
「行ける!」
バイソンの首元を左右から狙い、鋭い斬撃を与えると、魔物は地面に崩れ落ちた。
戦闘後、ガイルがアルノアの肩を叩きながら大笑いした。
「お前、やるじゃないか! やっぱり噂は本当だったな!」
ロイドは冷静な目でアルノアを見つめながら、感心したように言った。
「君、戦術眼がかなり優れているね。しかも、全員の動きをよく見ていた。」
アルノアは照れ臭そうに笑いながら、小さく頷いた。
「こちらこそ、よろしく。」
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