山姥(やまんば)

野松 彦秋

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第2章 謎の少年

7.十年前の真実(前編)

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『10年前、何があったんですか?』

『オレたち、多分あの妖怪に、目をつけられたと思うんです』

『このままだとオレらも、何時かはアイツに食べられてしまう・・、俺の友だちは戦うつもりだけど』

哲也は、泣いている透明の一馬少年に、自分の持っている疑問、不安を伝えた。

(・・・10年・・10年前ね、僕らは宿泊研修の日、夕食の前の休憩時間に栗拾いをしてたんだ)

(もともとは、栗拾いをしたかったわけじゃない。時間があったから、仲の良い友達と、少し散歩していただけなんだ)

(そしたら、俊哉としやが栗が落ちているのを発見して・・・・)

(栗が、本当に沢山落ちていたから、僕たち、クラスメートにお土産に持って帰ろうって)

(栗拾いに夢中になって、気がついたら、宿泊地から遠く、山奥まで来てしまって・・・)

(・・・・其処にアイツが現れたんだ)

(最初は、アイツは自分の事を、地元に住むおばあさんだと言って僕らに近づいて来たんだ)

(ニコニコして、とっても優しそうに話す、おばあさんだった)

(・・・最初、3つお饅頭をくれてね。僕たちは、ちょっと気持ち悪いなあと思ったんだけど)

(見知らぬ人から、親切にしてもらったと思った僕たちは、・・・その饅頭を食べないと、それはおばあさんに失礼だと思ったんだ)

(ただ、学校ではさ・・・・先生達から、見知らぬ人からモノを貰ってはいけないって言われてたし、僕のお母さんにも、誘拐犯かもしれないから、知らない人にはついていくな、変な事をして来たら、逃げろって言われてたから)

(・・僕が、饅頭を持って、どうすればいいんだと困っていると、僕らの仲間の中で、一番優しいさとるが・・)

(それでは、頂きますって、パクリと食べたんだ。・・・たぶん、悟は無理してでも食べる事が、おばあさんの親切に応える事だと、思って、・・食べ・・・たんだと思う)

(・・・・あいつは、優しそうな顔でニコニコしながら、饅頭を食べた悟の顔を見て・・こういったんだ)

(・・・本当に、美味しそうだねぇ)

(僕と、俊哉は、聞き間違いだとおもった。)

(おばあさんは、悟が食べた饅頭を美味しそうだと、もしくは、悟が饅頭を美味しそうに食べるといったと思ったんだ)

(たぶん悟も、そう思ったんだと思う・・悟は、食べきれず、手に残っていた饅頭の半分を、慌てておばあさんに返そうとしたんだ)

(そしたら、アイツがさ、ニコニコしながら、言ったんだ)

(饅頭じゃないよ、お前だよ・・・)

(そう言った後、直ぐに、アイツの顔が、おばあさんの顔から鬼の様な顔に変わり、身体が一回り大きくなって、ウデが伸びたんだ。)

哲也は、最初低い声で聞こえていた、一馬さんの思念テレパシーが、だんだん大きくなっている事に気がついた。

(アイツの手に捕まった悟は、何が何だか分からない、様子だったけど、僕と俊哉を見て言ったんだ)

(カズちゃん、トシ、助けてって・・・)

(悟がそう言ったと思った瞬間、アイツはものすごい勢いで、悟を抱えたまま走り去って行ったんだ)

(僕と、俊哉は、もう、ワケが分らなくなって、とにかく追いかけた・・・)

(怖いとか、怖くないとかじゃない、大事な友達が、追わなければ、もう会えなくなってしまうって)

(そう感じたんだ)

(必死に、走って追いかけたんだ。さとるを、悟をたすけないと、・・僕らは必死に走ったんだよ)

半透明の一馬さんの思いが、怖いとおもうほど伝わって来た。

まるで昨日の事を話す様に、一馬さんがその時感じた事が、臨場感をもって二人の心に伝わて来た。

(オレも、ナオケンが捕まったら、一馬さんたちと同じ事を絶対する・・)

哲也も、ナオケンも、自分の事のように恐怖をもって一馬さんの思念に耳を傾けた。

一馬さんの話しに引き込まれていた。

一馬さんの声が少しもとにもどった、ふたりの状況を察したのか、少し冷静になってくれた様だった。

(・・・僕らが、アイツと悟を追って見つけたのが、小さなほこらだった)


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