山姥(やまんば)

野松 彦秋

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第一章 仲良し3人組と委員長

2.かかってきた電話

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『哲也、2学期、国語と算数、5に戻ったらお祝いに何か好きなモノ買ってあげるから、頑張りなさいよ』

『エッ、マジで、スイッチ・・新しいゲームでも良いの??』

『いいわよ、だけど、成績が戻らなかったら、ダメよ!』

『もし、もっと悪くなったら、塾にでも行かせないと・・、それに比べたら、ゲームぐらい安いモノだからね』

(ラッキー!!、怒られると思っていたけど、怒られるどころか、上手くいけば、お年玉を待たなくても・・)

(隠さず、正直に見せて良かった!!)

地元のスーパーで働く母が、帰ってきた後、哲也は恐る恐る学校から持って帰った通知表を母に手渡した。

哲也の母は、哲也から手渡された通知表にユックリと目を通した後、怒りもせず、落ち着いた声で、通知表の感想を哲也に伝えたのであった。

『まずまずね、だけど、残念、得意だった国語と、算数が4になっちゃたね。』

(あれぇ、怒らない、どうしてだ、今日は機嫌が良いのか・・)と哲也が、緊張しながら母の顔を見ていたら、母から信じられない交換条件が出たのであった。

『母さん、2学期は、死ぬ気で頑張るから。約束破ったら、針千本だからね!!』

『針千本、飲めるわけないでしょ。死んじゃうわ。ヨシ、お母さん、約束破ったらアイス10本食べるわよ』

『・・・約束だ・・・母さん、チョット、それって、罰になってなくない。アイス食べるなら、御褒美だよ』

『あれ、バレちゃった。ハハッ、まあどっちでもいいわ。頑張んなさいよ』


『さあ、今から急いで夕食を作るから、アナタは部屋で夏休みの宿題、少しでもやってたら?』

『みつ子も!、ユーチューブばかり見ていないで、兄さんと一緒に部屋に行って、勉強!!』

母は、TVの前のソファで寝ながらタブレットを見ていた、哲也の妹、みつ子にも大きな声でそう言い、忙しそうにエプロンを着る。

『わたし、今、見始めたばかりだよ~、未だ見たいよ!!』

最近、ミニバス(ミニバスケットボール)を初めて髪型をショートカットにした妹が、抗議をする様に立ち上がり、母に大きな声で不満を訴える。


『みつ子、アナタの通信簿は、兄さんは、みせてくれたけど、アナタはまだよ・・ご飯食べたら、お母さんに見せてね』


母が妹と会話し始めたので、哲也は通知表を持って自分の部屋に向かった。

自分の部屋に着いた哲也は、通知表を机の本棚に置くと、その横にあるベットにゴロンと寝転がった。

何気なく、ベットに置いてあったタブレットを手に取り、思い出したかのようにある単語を検索する。

【・・・三枚のおふだ・・】

単語を打ち込み、Enterボタンを押すと、サッと、説明文が表示された。

【A県及びS県で生まれたという昔話。呪的逃走譚じゅてきとうひたんの代表的な物語。鬼婆おにばば小僧こぞう、たべられたやまんばという名でも知られる。】

(なんだ、この難しい字は、じゅてき、にげそう・・・読めない。)

(オニババ、あの、滅札の刃っていうマンガの鬼の、あの鬼の・・おばあさんが。食べられたやまんば。)

(やまんばってなんだ?)

哲也は、初めて見る言葉を、そのまま同じようにタブレットで続けて調べた。
【・・・やまんば・・】


【・・・ヤマンバ⇒山姥】

【やまんば、又ははやまうばという、山奥《やまおく》にひそ老女ろうじょあやかし。 日本の妖怪ようかいで、山に住み、人を食らうと考えられている。】

【山の中で道に迷った旅人に宿を提供し、最初は優しい婦人の姿で食事を与えるなどするが、旅人が夜に寝たところで食い殺すと伝えられる。】

(老女って、おばあさんの事だよな。妖怪か、ゲゲゲの鬼太郎の砂かけババみたいなものかな・・)

(人を食べるって、やっぱり青鬼と一緒じゃん、砂かけババみたいな、青鬼ということかな)


タブレットをずっと見ていくと、ヤマンバだと思われる絵があった。

おばあさんなのだが、口から舌が垂れ下がっており、その下は足の下まで届くほど長い。

(この絵、怖いなあ、って言うか、なんか気持ち悪い・・)

(宿泊研修で行く場所に、この妖怪がいたのかな、嘘くさい、どうせ嘘ばなしだろうけど・・)

哲也は、そんな事を考えながら、寝っ転がりながら、ユックリとタブレットで見られる情報を見ていた。

そんな時である、妹が自分を呼んでいる事に気づいた。

『お兄ちゃん、電話だよ!!お兄ちゃんのクラスの人から!!』

『・・・分かったよ。今、行く!』

『ダレ??カッチか、ナオケンか?』

『男の人じゃない、女の人!』

妹の言葉を聞いていた母が、妹より更に大きい声で、哲也を呼ぶ。

『哲也、松本さんっていう、女の子、イズミちゃんって子から、電話!早く来て!』


『は~い、ワカッタ』


『女の子って、松本・・・イズミ・・・松本和泉いずみ、委員長のイズミか』

『どうして、俺に、委員長が電話を・・・』

哲也は、自分の心臓の音が早くなる様な気がした。

そして、あわてて部屋を出て慌てて下に降りて行った。

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