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第8章 不屈の男、信秀
10.信秀という男【前編】
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時は、少し遡る。
平手政秀を織田信友の元へ一足先に行かせた信秀軍が、己が居城とする古渡城へ到着したのは平手政秀から遅れて二日後であった。
其処には、攻めてきている筈の織田信友軍の姿は既に無かった。
古渡城の城下町は、信友軍に火をつけられ、それは無残な有様であった。
馬上から信秀の目に入ってくる光景は、泣いた童を抱く母親や、自分達の家の焼け跡から必死に使える物を掘り出そうとしている民達の姿であった。
『・・・こりゃヒデェ~な・・』、信長が正直な感想を述べる。
『・・チッ・・』、信広も、自分の見ている光景を作り出した信友の行為に、苛立ちを覚え、、苦々しく舌打ちをする。
『・・・・』、信秀はただ無言でその光景をみつめていた。
その様子は、何かを考えている様でもあり、又、唯呆然としている様にも見受けられた。
3人が、兵達を率いて古渡城へ到着すると、城の門は既に開かれていた。
城門には、数十名の兵達と、平手政秀が3人を待っていた。
『殿、若、信広様、お待ちしておりました・・』
『・・・政秀、信友と話しは、・・・まとまったようじゃな・・・』
『首尾良く、事が上手くいきました』
『そうか・・・大儀であった・・』
信秀は、淡々と決められた儀式をこなす様に、政秀と会話する。
『イエ、大した事では、殿の指示の通りにしただけでございます』
政秀もまた、周囲の兵達の目を意識して、形式的にそう返した。
『ササッ、殿も若様、信広様、サゾ、お疲れの事でしょう・・』
『城の中に、着替えと、簡単ではございますが食事も用意しておりますので、具足を取り外し、御寛ぎ下され・・』
政秀は、ほぼ一ヵ月の間、休まず戦いづめの主君達を労わるようにそう伝える。
『ウム・・・政秀、有り難き心遣いじゃが・・、』
信秀は、側近の行き届いた仕事を褒めたが、少し考える表情をしたと思うと、政秀に次の事を命じた。
『我らよりも、先ずは・・・先ずは兵達に飯を食わせよ。城の大部屋を空け、兵達に使わす事を許す』
『・・・兵達にこの城の部屋を・・・・』
『殿、何をお考えですか・・・・』
政秀のカンが、何か怪しい空気を察する。
『未だ考えておらん、町があの有様じゃ、直ぐに兵を解散しても、こ奴らの休む場所もないと思ってな・・』
『・・・それもそうですな・・早速手配致します』
平手政秀は、信秀を、いや自分自身を誤魔化すように、平静を装い、信秀に答える。
そういうと、政秀は周囲の家来達に、古渡城の一階の部屋を総て解放する事、庭にも茣蓙を引き、急ぎ簡易的な休憩所を設けるように指示を出した。
厨房で働く者達にも、急ぎ兵達が食べるコメを炊くように指示を出す。
信秀の突然の命で、いままで静かであった城が、忙しく動き出す。
政秀が指示を出す傍らで、信秀は馬をおり、自分の身についた具足を脱ぎ始めようとすると、何人かの男達が直ぐにそれ気づき、信秀を手伝う。
父信秀の様子を見た息子達、信長、信広も、信秀に続くように次々と下馬し、自分の具足を脱ぎ始めた。
『政秀、ワシと信長、信広は松の間で飯を食う・・・』
『飯を食いながら、今後の打ち合わせをするから、お主も、手配が終わったら直ぐに来い』
『オイ、お前ら行くぞ!』
信秀と息子二人は、政秀の応答を待たず、そう言うとズンズンと古渡城の入り口に入って行ってしまったのであった。
『・・・殿、御休みになられないのですか・・・』と、政秀は、信秀には聞こえないと思いつつも、普通の声でそう呼びかけた。
信秀が、その呼び掛けに応答せず、振り向かない様子を眺め、今度は呟く様な小さい声で続ける。
『1日ぐらい・・・休まないのですか??・・トノ』
『休みましょうよ、・・・一日ぐらい、・・・だけでも』
『アアアッ、クソ、何時もコウじゃ、こうなのじゃ、殿は』
『ワシは疲れた、疲れたんじゃァ、もう休みたい・・いつもこの老体にばかりムチ打ちやがりおって』
『休みたい、休みたい、休み・・・』
『チキショウ!』
最後の言葉だけは、うって変わってその場にいる総ての者達に聞こえる様な大きな声であった。
平手政秀は、ヤケクソになって敬愛する主君の後を追ったのであった。
平手政秀を織田信友の元へ一足先に行かせた信秀軍が、己が居城とする古渡城へ到着したのは平手政秀から遅れて二日後であった。
其処には、攻めてきている筈の織田信友軍の姿は既に無かった。
古渡城の城下町は、信友軍に火をつけられ、それは無残な有様であった。
馬上から信秀の目に入ってくる光景は、泣いた童を抱く母親や、自分達の家の焼け跡から必死に使える物を掘り出そうとしている民達の姿であった。
『・・・こりゃヒデェ~な・・』、信長が正直な感想を述べる。
『・・チッ・・』、信広も、自分の見ている光景を作り出した信友の行為に、苛立ちを覚え、、苦々しく舌打ちをする。
『・・・・』、信秀はただ無言でその光景をみつめていた。
その様子は、何かを考えている様でもあり、又、唯呆然としている様にも見受けられた。
3人が、兵達を率いて古渡城へ到着すると、城の門は既に開かれていた。
城門には、数十名の兵達と、平手政秀が3人を待っていた。
『殿、若、信広様、お待ちしておりました・・』
『・・・政秀、信友と話しは、・・・まとまったようじゃな・・・』
『首尾良く、事が上手くいきました』
『そうか・・・大儀であった・・』
信秀は、淡々と決められた儀式をこなす様に、政秀と会話する。
『イエ、大した事では、殿の指示の通りにしただけでございます』
政秀もまた、周囲の兵達の目を意識して、形式的にそう返した。
『ササッ、殿も若様、信広様、サゾ、お疲れの事でしょう・・』
『城の中に、着替えと、簡単ではございますが食事も用意しておりますので、具足を取り外し、御寛ぎ下され・・』
政秀は、ほぼ一ヵ月の間、休まず戦いづめの主君達を労わるようにそう伝える。
『ウム・・・政秀、有り難き心遣いじゃが・・、』
信秀は、側近の行き届いた仕事を褒めたが、少し考える表情をしたと思うと、政秀に次の事を命じた。
『我らよりも、先ずは・・・先ずは兵達に飯を食わせよ。城の大部屋を空け、兵達に使わす事を許す』
『・・・兵達にこの城の部屋を・・・・』
『殿、何をお考えですか・・・・』
政秀のカンが、何か怪しい空気を察する。
『未だ考えておらん、町があの有様じゃ、直ぐに兵を解散しても、こ奴らの休む場所もないと思ってな・・』
『・・・それもそうですな・・早速手配致します』
平手政秀は、信秀を、いや自分自身を誤魔化すように、平静を装い、信秀に答える。
そういうと、政秀は周囲の家来達に、古渡城の一階の部屋を総て解放する事、庭にも茣蓙を引き、急ぎ簡易的な休憩所を設けるように指示を出した。
厨房で働く者達にも、急ぎ兵達が食べるコメを炊くように指示を出す。
信秀の突然の命で、いままで静かであった城が、忙しく動き出す。
政秀が指示を出す傍らで、信秀は馬をおり、自分の身についた具足を脱ぎ始めようとすると、何人かの男達が直ぐにそれ気づき、信秀を手伝う。
父信秀の様子を見た息子達、信長、信広も、信秀に続くように次々と下馬し、自分の具足を脱ぎ始めた。
『政秀、ワシと信長、信広は松の間で飯を食う・・・』
『飯を食いながら、今後の打ち合わせをするから、お主も、手配が終わったら直ぐに来い』
『オイ、お前ら行くぞ!』
信秀と息子二人は、政秀の応答を待たず、そう言うとズンズンと古渡城の入り口に入って行ってしまったのであった。
『・・・殿、御休みになられないのですか・・・』と、政秀は、信秀には聞こえないと思いつつも、普通の声でそう呼びかけた。
信秀が、その呼び掛けに応答せず、振り向かない様子を眺め、今度は呟く様な小さい声で続ける。
『1日ぐらい・・・休まないのですか??・・トノ』
『休みましょうよ、・・・一日ぐらい、・・・だけでも』
『アアアッ、クソ、何時もコウじゃ、こうなのじゃ、殿は』
『ワシは疲れた、疲れたんじゃァ、もう休みたい・・いつもこの老体にばかりムチ打ちやがりおって』
『休みたい、休みたい、休み・・・』
『チキショウ!』
最後の言葉だけは、うって変わってその場にいる総ての者達に聞こえる様な大きな声であった。
平手政秀は、ヤケクソになって敬愛する主君の後を追ったのであった。
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