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第7章 遅れてやっときた二人の新婚生活
2.寂しげな後ろ姿
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『頼純様が亡くなられた・・・』
十兵衛は、絶句し言葉を失う。
叔父明智光安は、そんな状態の十兵衛を心情を察してか、少し、時間を置き、ユックリと十兵衛が刺客に襲われ、記憶を失っていた期間の事を甥っ子に語り始めた。
そして、無事稲葉山城に戻った帰蝶も、夫である土岐頼純の死を受け入れられず、部屋に籠ってしまった事も伝えたのである
(あの聡明な頼純様が、お亡くなりに・・)
(私でも、こんなに悲しいのだ・・幼い帰蝶様が耐えれるワケが無い)
『伯父上、今回の大桑城の件、真に、土岐頼芸の単独での行動ですか?』
十兵衛は、土岐頼芸を意識して呼び捨てにした。それは、自分が慕う者を殺した者に対する憎しみが増さっての行動であった。
『十兵衛、何を言っておるのじゃ、誰かが手引きしたとでも言いたいのか?』
『殿は、道三様の陰謀であれば、私は道三様を許しません』
『そんな事は、・・・それは無いと思う、いくら道三様でも』
『何より、大桑城が襲撃されたと聞いた時の、道三様の慌てよう、尋常では無かった』
叔父、光安が、言葉を選びながら、そう言った時である。
部屋の外、襖越しに声が聞こえて来た。
『此度の件、ワシではない。ワシではないぞ、十兵衛。信じてもらえぬとは思うが・・』
その声の主は、道三であった。
声が聞こえたと思った襖が、開けられ道三が部屋に入ってくる。
『十兵衛、皆の者、そのまま、そのまま、そのままで良い』
開口一番、道三は十兵衛と部屋にいる者総てに、畏まる必要は無いと伝え、ドカッとその場で胡坐をかき座ったのである。」
道三が座ったのは、十兵衛の寝ている布団の横。
丁度、十兵衛の枕元である。
『十兵衛、久しぶりじゃな、1年もの長い間、我が娘帰蝶を守ってくれて・・』
『身を挺して、刺客の者達から帰蝶を守ってくれた事、この道三、この恩一生忘れん』
そう言った道三は、涙を流しながら、十兵衛の両手を掴み、そして十兵衛の手に自分の頭をつけた。
『良くぞ、良くぞ、生きて帰って来てくれたな』
その姿を、十兵衛はジッと見つめる。
『道三様、先程のお言葉、大桑城の襲撃の件、道三様の仕業では無いとの事、私の目を見てもう一度仰って下さい』
『十兵衛、何を言う、殿のお言葉が信じられないのか?』
主君の怒りを恐れ、叔父光安が、十兵衛の事を注意する様に言う。
『光安、良い、十兵衛の人柄はワシも重々承知しておる、悪気は無いのじゃ』
道三はそう言うと、顔をあげ、真剣な表情で十兵衛の顔を見つめる。
『十兵衛、土岐頼純様の不運の死、ワシではない。ワシは関与しておらん』
叔父光安からみた、十兵衛が道三を見る目は、どこか冷たい。
『信じられませぬ・・』
『道三様、土岐頼純様は類まれなる器の持ち主でした』
『その目は、美濃の国の全ての民をみており、土岐家、斎藤家が手を組む事が美濃にとって一番良い事であると、私に教えて下さりました』
『道三様が恐れていたとおりの、立派な名君でした・・・』
言葉を続ける十兵衛の目からは涙が零れ、その言葉を最後に黙ってしまった。
『もう良い、お主や帰蝶の態度で、頼純様がどういう方であったかは想像がつく』
『・・・お主がワシを信用できないのは、仕方が無い事じゃ』
『まあ、良い、今はユックリ養生せい』
『ワシは部屋に戻る、光安、十兵衛には暫く休暇を与える。かなり遅くなったが、祝言を挙げた奥方と暫くユックリするが良い』
道三はそう言うと、立ち上がり部屋を出て行こうとした。
御付きの者が襖を開け、道三が部屋から出ていく時である。
道三が思い出したように、振り向きはしないが、言葉を発した。
『十兵衛、願い事ばかりで申し訳ないが、帰蝶がのう・・』
『頼純様の死を聞いてから、ほとんど食べ物を口にしていないのじゃ』
『ワシや小見が何を言っても、効果が無い。スマヌが、お主から何か帰蝶に言ってはくれんか?』
『これは、命令ではない、帰蝶の父として、親戚からの・・・お願いじゃ・・』
『娘を頼む・・』
道三は、そういうと、部屋を後にした。
その後ろ姿は何処か、寂しげであった。
十兵衛は、絶句し言葉を失う。
叔父明智光安は、そんな状態の十兵衛を心情を察してか、少し、時間を置き、ユックリと十兵衛が刺客に襲われ、記憶を失っていた期間の事を甥っ子に語り始めた。
そして、無事稲葉山城に戻った帰蝶も、夫である土岐頼純の死を受け入れられず、部屋に籠ってしまった事も伝えたのである
(あの聡明な頼純様が、お亡くなりに・・)
(私でも、こんなに悲しいのだ・・幼い帰蝶様が耐えれるワケが無い)
『伯父上、今回の大桑城の件、真に、土岐頼芸の単独での行動ですか?』
十兵衛は、土岐頼芸を意識して呼び捨てにした。それは、自分が慕う者を殺した者に対する憎しみが増さっての行動であった。
『十兵衛、何を言っておるのじゃ、誰かが手引きしたとでも言いたいのか?』
『殿は、道三様の陰謀であれば、私は道三様を許しません』
『そんな事は、・・・それは無いと思う、いくら道三様でも』
『何より、大桑城が襲撃されたと聞いた時の、道三様の慌てよう、尋常では無かった』
叔父、光安が、言葉を選びながら、そう言った時である。
部屋の外、襖越しに声が聞こえて来た。
『此度の件、ワシではない。ワシではないぞ、十兵衛。信じてもらえぬとは思うが・・』
その声の主は、道三であった。
声が聞こえたと思った襖が、開けられ道三が部屋に入ってくる。
『十兵衛、皆の者、そのまま、そのまま、そのままで良い』
開口一番、道三は十兵衛と部屋にいる者総てに、畏まる必要は無いと伝え、ドカッとその場で胡坐をかき座ったのである。」
道三が座ったのは、十兵衛の寝ている布団の横。
丁度、十兵衛の枕元である。
『十兵衛、久しぶりじゃな、1年もの長い間、我が娘帰蝶を守ってくれて・・』
『身を挺して、刺客の者達から帰蝶を守ってくれた事、この道三、この恩一生忘れん』
そう言った道三は、涙を流しながら、十兵衛の両手を掴み、そして十兵衛の手に自分の頭をつけた。
『良くぞ、良くぞ、生きて帰って来てくれたな』
その姿を、十兵衛はジッと見つめる。
『道三様、先程のお言葉、大桑城の襲撃の件、道三様の仕業では無いとの事、私の目を見てもう一度仰って下さい』
『十兵衛、何を言う、殿のお言葉が信じられないのか?』
主君の怒りを恐れ、叔父光安が、十兵衛の事を注意する様に言う。
『光安、良い、十兵衛の人柄はワシも重々承知しておる、悪気は無いのじゃ』
道三はそう言うと、顔をあげ、真剣な表情で十兵衛の顔を見つめる。
『十兵衛、土岐頼純様の不運の死、ワシではない。ワシは関与しておらん』
叔父光安からみた、十兵衛が道三を見る目は、どこか冷たい。
『信じられませぬ・・』
『道三様、土岐頼純様は類まれなる器の持ち主でした』
『その目は、美濃の国の全ての民をみており、土岐家、斎藤家が手を組む事が美濃にとって一番良い事であると、私に教えて下さりました』
『道三様が恐れていたとおりの、立派な名君でした・・・』
言葉を続ける十兵衛の目からは涙が零れ、その言葉を最後に黙ってしまった。
『もう良い、お主や帰蝶の態度で、頼純様がどういう方であったかは想像がつく』
『・・・お主がワシを信用できないのは、仕方が無い事じゃ』
『まあ、良い、今はユックリ養生せい』
『ワシは部屋に戻る、光安、十兵衛には暫く休暇を与える。かなり遅くなったが、祝言を挙げた奥方と暫くユックリするが良い』
道三はそう言うと、立ち上がり部屋を出て行こうとした。
御付きの者が襖を開け、道三が部屋から出ていく時である。
道三が思い出したように、振り向きはしないが、言葉を発した。
『十兵衛、願い事ばかりで申し訳ないが、帰蝶がのう・・』
『頼純様の死を聞いてから、ほとんど食べ物を口にしていないのじゃ』
『ワシや小見が何を言っても、効果が無い。スマヌが、お主から何か帰蝶に言ってはくれんか?』
『これは、命令ではない、帰蝶の父として、親戚からの・・・お願いじゃ・・』
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