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第5章 不器用な親子【道三と義龍】
4.お亀顔の大男
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その日は十兵衛ら3人は、自分達の城には戻らず稲葉城へ泊まる事になった。
次の日の朝、3人は一緒の部屋に集まり朝食をとる事になった。
『昨日は、稲葉殿も巻き込んでしまいスマヌ事をした、貴殿の予定もあっただろうに・・』
光安は、朝の挨拶を稲葉一鉄にしたあと、謝罪する様に言った。
『いやいや、楽しい時間を共有させてもらい、良き機会を頂いたと思っておる』
『おお、シジミの味噌汁ではないか、スマヌ、ワシの好物じゃ、先にもらうぞ』
一鉄は、そう言いながら一足先に味噌汁をすする。
『ウム、ワシの舌にはちょっと塩からいかのう・・』
『光安殿、十兵衛殿、明智家の舌ではどうじゃ??』
一見無礼にも見えるその態度は、気遣いは不要だと二人に伝える様に場を和ませる。
『ワシには、丁度良い』と光安が自分の感想を言うと、十兵衛も箸をつける。
そんな感じで、3人の朝食が始まったのであった。
『しかし、まさか、十兵衛殿が義龍様のご学友に指名されるとは・・・』と、稲葉一鉄は食事を取りながら十兵衛の事を話題に出した。
『殿も、十兵衛殿を次代の斎藤家を背負う男と見込んだのかもしれんの』
『ははは、稲葉殿、大げさな事を・・・未だ分らぬ。小姓をさせて試すとつもりなのじゃよ』
『いやいや、殿の眼力は鋭い、昨日の時点で既に試されての、お考えの筈じゃ』
『まあ、十兵衛殿、義龍様は色々悩みを持っている御方じゃ、其方が義龍様の理解者になって頂ければ、姉上も喜ぶ筈じゃ。』
『叔父にあたるワシも、義龍様には心身共に健やかに育って欲しいと思っておる、頼むぞ』
『・・・・ハッ!未熟者ではありますが、全力で勤めさせて頂きます』と十兵衛は腹を決める様に答えたのであった。
食事を終えると、十兵衛だけ別室に呼ばれる事になった。
十兵衛は案内する者に先導され一室に通される。
暫く待っていると、一人の若い大男が襖を乱暴に開けズカズカと部屋に入って来た。
均整の取れた身体であるが、6尺(180㎝)を軽く越す身長の高さである。
(なんじゃ、この大男は、斎藤家を代表する武人か??しかし、無作法な・・)
『挨拶もなしに、部屋に入ってくるとは、無礼であろう!お主は野人か?それでも武士か?』
十兵衛は、正直に思いをぶつけた。
それを聞き、大男は十兵衛の座っている目の前にドカッと座る。
『これは、失礼した。ワシの名は斎藤義龍、斎藤道三入道の嫡男じゃ、文句あるか?』
その視線は、十兵衛を見下すような、試す様な視線であった。
大男は、色白でのっぺりとしているが、眉毛がほそく、正月にするふく笑いのお亀顔である。
正直、器量良しではない。ムスっとした顔が、なんともはや、フテブテシイ。
『・・・親の権威で、モノを言うとは情けなし、斎藤家も先は無いとお見受け致します』
十兵衛も、負けてはいない物おじせず大きな声で言う。
彼も又、義龍という大男を見下す様な、試す様な視線を向ける。
『・・・・・』
二人の間に暫しの沈黙が走る。
先に折れたのは、義龍である。
『ハハハッ、ワシから恫喝されたのに、逆に恫喝してくるとは』
『なかなか骨のある奴じゃ、親父殿が、お主を気に入ったのも分かる!』
『お主名は?・・・ワシが名乗ったのじゃ、お主も名乗れ!』
『・・・明智十兵衛と申します』
『十兵衛か、良い名じゃ、改めて言う、ワシは義龍じゃ』
『今日から、宜しく頼む』
『親父殿からは、暫くの間、お主と生活を共にしろと言われてな』
『親父殿に気に入られたお主に嫉妬し、試そうとした。スマヌ悪かった』と義龍はそう言うと何と十兵衛に向け頭を下げたのである。
『義龍様、恐れおおい、私も言い過ぎました。お許しください!』と十兵衛も慌てて謝罪し、頭を下げた。
『ヨシ、これで互いの非礼は水に流した・・・それでは十兵衛、後でな』と笑顔で言うと、義龍は巨体を立上げまたドカドカと部屋を後にしていった。
(親も親だが、息子も息子、容姿は違えど、なんとも味のある人じゃな)と十兵衛は、最初に持った嫌悪感がなくなり、義龍の潔さに好感を持ったのであった。
次の日の朝、3人は一緒の部屋に集まり朝食をとる事になった。
『昨日は、稲葉殿も巻き込んでしまいスマヌ事をした、貴殿の予定もあっただろうに・・』
光安は、朝の挨拶を稲葉一鉄にしたあと、謝罪する様に言った。
『いやいや、楽しい時間を共有させてもらい、良き機会を頂いたと思っておる』
『おお、シジミの味噌汁ではないか、スマヌ、ワシの好物じゃ、先にもらうぞ』
一鉄は、そう言いながら一足先に味噌汁をすする。
『ウム、ワシの舌にはちょっと塩からいかのう・・』
『光安殿、十兵衛殿、明智家の舌ではどうじゃ??』
一見無礼にも見えるその態度は、気遣いは不要だと二人に伝える様に場を和ませる。
『ワシには、丁度良い』と光安が自分の感想を言うと、十兵衛も箸をつける。
そんな感じで、3人の朝食が始まったのであった。
『しかし、まさか、十兵衛殿が義龍様のご学友に指名されるとは・・・』と、稲葉一鉄は食事を取りながら十兵衛の事を話題に出した。
『殿も、十兵衛殿を次代の斎藤家を背負う男と見込んだのかもしれんの』
『ははは、稲葉殿、大げさな事を・・・未だ分らぬ。小姓をさせて試すとつもりなのじゃよ』
『いやいや、殿の眼力は鋭い、昨日の時点で既に試されての、お考えの筈じゃ』
『まあ、十兵衛殿、義龍様は色々悩みを持っている御方じゃ、其方が義龍様の理解者になって頂ければ、姉上も喜ぶ筈じゃ。』
『叔父にあたるワシも、義龍様には心身共に健やかに育って欲しいと思っておる、頼むぞ』
『・・・・ハッ!未熟者ではありますが、全力で勤めさせて頂きます』と十兵衛は腹を決める様に答えたのであった。
食事を終えると、十兵衛だけ別室に呼ばれる事になった。
十兵衛は案内する者に先導され一室に通される。
暫く待っていると、一人の若い大男が襖を乱暴に開けズカズカと部屋に入って来た。
均整の取れた身体であるが、6尺(180㎝)を軽く越す身長の高さである。
(なんじゃ、この大男は、斎藤家を代表する武人か??しかし、無作法な・・)
『挨拶もなしに、部屋に入ってくるとは、無礼であろう!お主は野人か?それでも武士か?』
十兵衛は、正直に思いをぶつけた。
それを聞き、大男は十兵衛の座っている目の前にドカッと座る。
『これは、失礼した。ワシの名は斎藤義龍、斎藤道三入道の嫡男じゃ、文句あるか?』
その視線は、十兵衛を見下すような、試す様な視線であった。
大男は、色白でのっぺりとしているが、眉毛がほそく、正月にするふく笑いのお亀顔である。
正直、器量良しではない。ムスっとした顔が、なんともはや、フテブテシイ。
『・・・親の権威で、モノを言うとは情けなし、斎藤家も先は無いとお見受け致します』
十兵衛も、負けてはいない物おじせず大きな声で言う。
彼も又、義龍という大男を見下す様な、試す様な視線を向ける。
『・・・・・』
二人の間に暫しの沈黙が走る。
先に折れたのは、義龍である。
『ハハハッ、ワシから恫喝されたのに、逆に恫喝してくるとは』
『なかなか骨のある奴じゃ、親父殿が、お主を気に入ったのも分かる!』
『お主名は?・・・ワシが名乗ったのじゃ、お主も名乗れ!』
『・・・明智十兵衛と申します』
『十兵衛か、良い名じゃ、改めて言う、ワシは義龍じゃ』
『今日から、宜しく頼む』
『親父殿からは、暫くの間、お主と生活を共にしろと言われてな』
『親父殿に気に入られたお主に嫉妬し、試そうとした。スマヌ悪かった』と義龍はそう言うと何と十兵衛に向け頭を下げたのである。
『義龍様、恐れおおい、私も言い過ぎました。お許しください!』と十兵衛も慌てて謝罪し、頭を下げた。
『ヨシ、これで互いの非礼は水に流した・・・それでは十兵衛、後でな』と笑顔で言うと、義龍は巨体を立上げまたドカドカと部屋を後にしていった。
(親も親だが、息子も息子、容姿は違えど、なんとも味のある人じゃな)と十兵衛は、最初に持った嫌悪感がなくなり、義龍の潔さに好感を持ったのであった。
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