9 / 25
第一話:魔法使い、誕生
◆春風が吹く②◆
しおりを挟む
「契約?」
【契約】という言葉に、智也はピクリを肩を震わせた。
いきなり現れ追いかけてきたバジリスクもその【契約】を迫ってきていたからだ。
智也は颯から目をそらすように俯いた。恐怖から喉がしめつけられ、つっかかって声がうまく出せない。
それでも、それでもだ。
このまま何もしなければ、もっと恐ろしいことが起こってしまう。
智也は小さな手でギュッと握りこぶしを作った。
「……颯君と【契約】をすれば、バジリスクを追い払うことができる? 俺の力で、何とかすることができる?」
「あぁ。できる。俺と智也の力で追い払えるよ」
颯は『できる』と言い切った。
その言葉に勇気をもらった智也は顔を上げ、颯と目を合わせた。
「わかった。俺、颯君と【契約】する」
智也の鳶色の瞳に鋭く、強い光が宿った。その光は一直線に颯の若草色の瞳を射貫き、二人の間を風が駆け抜けていった。
「ありがとう」
颯は智也と同じ視線になるように膝を付くと、コツンとお互いの額をつけた。智也は驚きのあまり「わっ」と小さく声を漏らす。
「我が名のもとに、【魔法使い】と【契約】す」
「えっと……?」
颯の宣誓に対してどう返して良いのか分からずにいると、颯がフッと笑い智也にある言葉を教えた。
「……我が名のもとに、【精霊】と、【契約】す」
智也は颯が教えてくれた通りの言葉を唱えると、颯は額を離した。すると、智也のパンツのポケットから強烈な光が漏れ始めた。
「えっ、なになに?」
智也が急いでポケットの中身を取り出すと、光は智也のスマホの画面から出ていた。
「なにこれ? 俺のスマホ故障した?」
「大丈夫、すぐにおさまるから」
颯の言う通り、光はすぐに収まった。
「一体何が起こったんだ……?」
「俺達の【契約】が成立したんだ。これで智也は【魔法使い】になった」
「【魔法使い】? 俺が?」
智也は困惑した。
颯に魔法使いになったと言われても全くと言っていいほどに実感がないのだ。
「魔法の使い方を教えるよ」
颯がすっと智也のスマホを指差した。
「スマホに入っている【グリモワール】アプリを起動させて」
颯があの謎のアプリを指差した。
智也は言われたとおりにアプリを起動させると、前回と様子がちがっていた。
模様が光っているのだ。
「あれ……模様が、光ってる?」
「それは【魔法陣】っていうんだ」
「魔法陣?」
颯はニコリと微笑むと智也の頭を撫でる。
「智也、俺の言ったようにやってみてくれるか?」
「うん、わかった」
「まず、魔法陣に指を乗せて」
智也はスマホの画面で光る魔法陣に指を乗せる。
すると、魔法陣の光が強くなった。
ドクン。
智也の心臓が強く鼓動を打った。
(あれ……、頭の中に言葉が浮かんできた……!)
「頭に浮かんだ言葉……【呪文】を、ゆっくりでいいから声に出してくれ」
智智也は恐怖で足がすくんだが、それでも颯を信じて呪文を唱えた。
心臓の鼓動が耳に響き、全身に冷たい汗が流れる。也は頭に浮かんだ言葉を声に出す。
「……芽吹きを告げる【春風の精霊】よ、その清らかなる風で、邪なものを吹き祓い給え」
颯の周囲に光輝く風が集まりはじめ、街路樹の葉が大きく揺れ始めた。
バジリスクはその風が吹く度に苦しいのか、身体を左右に揺らす。
「俺の名を呼んでくれ、智也!」
智也は、大きく息を吸った。
「来いっ! 【ゼピュロス】」
【契約】という言葉に、智也はピクリを肩を震わせた。
いきなり現れ追いかけてきたバジリスクもその【契約】を迫ってきていたからだ。
智也は颯から目をそらすように俯いた。恐怖から喉がしめつけられ、つっかかって声がうまく出せない。
それでも、それでもだ。
このまま何もしなければ、もっと恐ろしいことが起こってしまう。
智也は小さな手でギュッと握りこぶしを作った。
「……颯君と【契約】をすれば、バジリスクを追い払うことができる? 俺の力で、何とかすることができる?」
「あぁ。できる。俺と智也の力で追い払えるよ」
颯は『できる』と言い切った。
その言葉に勇気をもらった智也は顔を上げ、颯と目を合わせた。
「わかった。俺、颯君と【契約】する」
智也の鳶色の瞳に鋭く、強い光が宿った。その光は一直線に颯の若草色の瞳を射貫き、二人の間を風が駆け抜けていった。
「ありがとう」
颯は智也と同じ視線になるように膝を付くと、コツンとお互いの額をつけた。智也は驚きのあまり「わっ」と小さく声を漏らす。
「我が名のもとに、【魔法使い】と【契約】す」
「えっと……?」
颯の宣誓に対してどう返して良いのか分からずにいると、颯がフッと笑い智也にある言葉を教えた。
「……我が名のもとに、【精霊】と、【契約】す」
智也は颯が教えてくれた通りの言葉を唱えると、颯は額を離した。すると、智也のパンツのポケットから強烈な光が漏れ始めた。
「えっ、なになに?」
智也が急いでポケットの中身を取り出すと、光は智也のスマホの画面から出ていた。
「なにこれ? 俺のスマホ故障した?」
「大丈夫、すぐにおさまるから」
颯の言う通り、光はすぐに収まった。
「一体何が起こったんだ……?」
「俺達の【契約】が成立したんだ。これで智也は【魔法使い】になった」
「【魔法使い】? 俺が?」
智也は困惑した。
颯に魔法使いになったと言われても全くと言っていいほどに実感がないのだ。
「魔法の使い方を教えるよ」
颯がすっと智也のスマホを指差した。
「スマホに入っている【グリモワール】アプリを起動させて」
颯があの謎のアプリを指差した。
智也は言われたとおりにアプリを起動させると、前回と様子がちがっていた。
模様が光っているのだ。
「あれ……模様が、光ってる?」
「それは【魔法陣】っていうんだ」
「魔法陣?」
颯はニコリと微笑むと智也の頭を撫でる。
「智也、俺の言ったようにやってみてくれるか?」
「うん、わかった」
「まず、魔法陣に指を乗せて」
智也はスマホの画面で光る魔法陣に指を乗せる。
すると、魔法陣の光が強くなった。
ドクン。
智也の心臓が強く鼓動を打った。
(あれ……、頭の中に言葉が浮かんできた……!)
「頭に浮かんだ言葉……【呪文】を、ゆっくりでいいから声に出してくれ」
智智也は恐怖で足がすくんだが、それでも颯を信じて呪文を唱えた。
心臓の鼓動が耳に響き、全身に冷たい汗が流れる。也は頭に浮かんだ言葉を声に出す。
「……芽吹きを告げる【春風の精霊】よ、その清らかなる風で、邪なものを吹き祓い給え」
颯の周囲に光輝く風が集まりはじめ、街路樹の葉が大きく揺れ始めた。
バジリスクはその風が吹く度に苦しいのか、身体を左右に揺らす。
「俺の名を呼んでくれ、智也!」
智也は、大きく息を吸った。
「来いっ! 【ゼピュロス】」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
Dream of a Cradle外伝 導きの牛
叶 望
児童書・童話
牛飼いの少年が住む鈴の丘のふもとの村ではとある異変が起きていた。
買い出しに村へと降りた少年はそこで神隠しが起こっていることを知った。
昔作ったDream of a CradleのGAME内で読むことが出来る外伝。
GAMEに登場する導き牛カウベル君の誕生秘話。
※ゲーム本編とは関係のない内容になっています。
気軽にお読みいただければ幸いです。
この作品は「小説家になろう」及び「nono&mimiのお部屋」にも掲載しています。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
鎌倉西小学校ミステリー倶楽部
澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】
https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230
【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】
市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。
学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。
案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。
……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。
※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。
※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)
今、この瞬間を走りゆく
佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】
皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!
小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。
「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」
合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──
ひと夏の冒険ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる