犯され探偵

白石潤之介

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解決?

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 「確かに、事件が解決すれば、いま執筆中の『女子大生、危機一髪(仮題)』もおそらく完結します」とわたしは古茂田こもた泰蔵たいぞうというあやしい男に言った。

 「だったら、この〝〟古茂田泰蔵にお任せください!」と男は、胸をはって宣言した。
 「はぁ~」と中年男ちゅうねんおとこの発言の真意しんいが、把握できずわたしは、しばらく間抜けづらさらしていた。

 「それって、警察と探偵の〝おしごと〟だよ、おじさん」と加奈かな梨奈りなが、ハモって男に主張した。

 「おじさんは、こう見えて・・・顔が広いんだよ。まかせてもらえば、立ち所たちどころに犯人逮捕、事件解決となるよ」と男は、あいかわらず自信満々で加奈と梨奈の発言にこたえた。

 「どうやって、調査というか?捜査をするんですか?」とわたしは、疑問を男に示した。

 男は、やや困ったような表情で・・・
 「松田さん、それは〝企業秘密〟ってやつで、お教え出来かねます」

 「あなたは、出版社の代表取締役なんでしょ?警察でも探偵でもないのに、どうしてそんなに簡単に解決させられるとおっしゃるのですか?」とわたしは、追及ついきゅうした。

 「調査状況を定期的に、電話でお知らせします。それで勘弁かんべんしてください」と男は、妥協案だきょうあんを提示した。

 そのとき、柴犬〝小太郎こたろう〟の散歩から麻衣まいが帰宅して、玄関で話し合っているわたしたちを見て――
 「セールスならお断りですよ!」と男に、即刻そっこく退去たいきょするようににらんだ。
 
 柴犬の小太郎も麻衣の様子と発言を受けて、男に吠えかかった。

 わたしは、あわてて・・・
 「麻衣、この方はセールスマンじゃないわよ」と説明した。
 「そうだよ、麻衣姉まいねい!このおじさん、事件を解決してくれるんだって」と加奈、梨奈も麻衣に説明した。

 古茂田という男は、犬が苦手みたいで――――
 吠えられて、おびえて
 「それじゃ、友香さんわたしは、これでおいとまします」と大慌てで、玄関から逃走した。

 「なんか、あたし悪いことしたかしら?」と麻衣は、小太郎の足を濡れ雑巾ぬれぞうきんで入念に拭きながらつぶやいた。

 ――――奥の間から、メスの三毛猫の〝ららぁ〟が、おなかいたと「ニャーオ、ニャーオ」とリビングに登場。

 家族全員で旅行に行けない・・・という理由わけは、犬とネコを飼っているからでもあった。だから、いつもは〝小太郎〟と〝ららぁ〟の世話をしている両親が、連休などには優先的に出かけて、休み中の面倒は四姉妹がみるという不文律ふぶんりつというか?暗黙の了解あんもくのりょうかいとなっていた。

 

 そして、連休最終日にリビングに〝東京音頭とうきょうおんど〟が、鳴り響いた。

 

  
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