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第二章 七海諸島 大江島
第六話 タヌキ親父との会談
しおりを挟む 目的の場所に小さな光の塊が現れる。
それはやがて大きくなり、光の中から二人の頭が現れたと思うと、体、腕と人の体の部品が出来て行った。
完全に体が出来上がると、光の塊は消えてしまい、蘭と秀人が姿を現した。
『着いたぞ』
ゴリアスの声に蘭と秀人が目を開けると、暗闇の中に居た。
「どこだろう? ここは?」
「待っていて、ライトを点けるから」
蘭がスマホを取り出して、ライトを点ける。
暗闇の中で照らされたのは、恐竜の骨格模型で秀人は思わず息を呑んだ。
落ち着いてから、辺りを確認すると、今度は昆虫標本に動物剥製が目に入る。
どこかの博物館か資料館の館内らしく、蘭は安堵するが、どうにも気味が悪かった。
明るい昼間に、電灯の着いた状態で展示資料を見るのなら、別に問題は無いのだが、一切の光もなく、手元にあるライトだけで、見るのは事情が違い過ぎる。
そう言えば、昔見た映画で博物館の展示物が動き出す、ファンタジー映画があったことを蘭は思い出した。
展示資料が暗闇の力を借りて、動き出してくるのではないか? 自分に襲い掛かって来るんじゃないか? そんな妄想をしてしまう。
いくら考えても、無機物が勝手に動き出すわけがない。頭の中でそう考えていても、妄想を簡単になんか拭えない。
なにせ、無機物だった琥珀の中に生きた怪獣が封印されていたり、巨大怪獣が現れたりするんだから、何が起こっても不思議じゃない。
「蘭大丈夫だよ。動くわけがないんだから」
『そうだぞ。少し落ち着け』
蘭の感情を察した秀人とゴリアスが話しかけて来る。その言葉で蘭は現実に引き戻される。
「分かったよ。それよりここはどこなんだろう?」
何か分かるものは無いのかと思い、辺りを見渡す。
蘭は窓から外に何か見えないのかと思って眺めるも、目印になるようなものはなかった。
本来なら点いているはずの街灯も星の光も何もない。まるで暗闇の中に閉じ込められている様だ。
万が一閉じ込められていたとしても、窓を開けるか、最悪割ってでも情報を知りたい。
鍵を外して、サッシに手をかけて、引いてもびくともしなかった。
「何だおい、こうなったら」
近くにあった椅子を掴んで、思いっきりぶつける。
ガッツ!
弾かれる音を立てて椅子は床に転がった。
「何なんだ……、一体?」
「蘭、他の部屋に行こう。もしかしたらこの部屋とは違うかもしれないし」
秀人の言葉に同意して、部屋を出た。その際に椅子を思いっきり蹴った。
何が起こっているのか、分からない怒りを八つ当たりした。それで何か壊れてしまうのかもしれないと思ったが、別にそれでも良かった。
「八つ当たりしても、仕方ないよ」
秀人が咎める。
「分かっているよ、でも何だかなぁ」
釈然としない気持ちを持ったまま、部屋を出る。同時にどこか薄気味悪さを背中に感じた。
出て見ると、同じような部屋がいくつも並び、そして廊下も随分と年季が入った作りになっていた。
「どこかで見たな……」
見覚えがあった。以前にも訪れた様な気がする。
デジャブだろうか? 人間の記憶は、もともと曖昧で初めて訪れた場所を、何かと混同して、また訪れた様な気分にさせる。いわゆる認識のずれだ。
しかし、そんなずれを感じさせない思いが秀人の頭の中をよぎって、一つの結論が出る。
「ここ、北大博物館じゃないか! そうだ、あの骨格展示に標本! 暗くてよく分からなかったけど」
「そうなのか! 俺も確かに覚えがあったんだが、いまいち自信がなかった……」
秀人の言葉に蘭が同意し、聞いて来る。
「ここに気配がしたのか、ゴリアス……」
『間違いない。どこかに居るんだ……』
だとしたら、北大博物館だけ異空間に閉じ込められてしまったかのような、現象も説明がつく。
「とにかく調べよう。何が原因なのか突き止めないと……。どうする? 二手に分かれるか?」
「一緒に調べよう!」
それはやがて大きくなり、光の中から二人の頭が現れたと思うと、体、腕と人の体の部品が出来て行った。
完全に体が出来上がると、光の塊は消えてしまい、蘭と秀人が姿を現した。
『着いたぞ』
ゴリアスの声に蘭と秀人が目を開けると、暗闇の中に居た。
「どこだろう? ここは?」
「待っていて、ライトを点けるから」
蘭がスマホを取り出して、ライトを点ける。
暗闇の中で照らされたのは、恐竜の骨格模型で秀人は思わず息を呑んだ。
落ち着いてから、辺りを確認すると、今度は昆虫標本に動物剥製が目に入る。
どこかの博物館か資料館の館内らしく、蘭は安堵するが、どうにも気味が悪かった。
明るい昼間に、電灯の着いた状態で展示資料を見るのなら、別に問題は無いのだが、一切の光もなく、手元にあるライトだけで、見るのは事情が違い過ぎる。
そう言えば、昔見た映画で博物館の展示物が動き出す、ファンタジー映画があったことを蘭は思い出した。
展示資料が暗闇の力を借りて、動き出してくるのではないか? 自分に襲い掛かって来るんじゃないか? そんな妄想をしてしまう。
いくら考えても、無機物が勝手に動き出すわけがない。頭の中でそう考えていても、妄想を簡単になんか拭えない。
なにせ、無機物だった琥珀の中に生きた怪獣が封印されていたり、巨大怪獣が現れたりするんだから、何が起こっても不思議じゃない。
「蘭大丈夫だよ。動くわけがないんだから」
『そうだぞ。少し落ち着け』
蘭の感情を察した秀人とゴリアスが話しかけて来る。その言葉で蘭は現実に引き戻される。
「分かったよ。それよりここはどこなんだろう?」
何か分かるものは無いのかと思い、辺りを見渡す。
蘭は窓から外に何か見えないのかと思って眺めるも、目印になるようなものはなかった。
本来なら点いているはずの街灯も星の光も何もない。まるで暗闇の中に閉じ込められている様だ。
万が一閉じ込められていたとしても、窓を開けるか、最悪割ってでも情報を知りたい。
鍵を外して、サッシに手をかけて、引いてもびくともしなかった。
「何だおい、こうなったら」
近くにあった椅子を掴んで、思いっきりぶつける。
ガッツ!
弾かれる音を立てて椅子は床に転がった。
「何なんだ……、一体?」
「蘭、他の部屋に行こう。もしかしたらこの部屋とは違うかもしれないし」
秀人の言葉に同意して、部屋を出た。その際に椅子を思いっきり蹴った。
何が起こっているのか、分からない怒りを八つ当たりした。それで何か壊れてしまうのかもしれないと思ったが、別にそれでも良かった。
「八つ当たりしても、仕方ないよ」
秀人が咎める。
「分かっているよ、でも何だかなぁ」
釈然としない気持ちを持ったまま、部屋を出る。同時にどこか薄気味悪さを背中に感じた。
出て見ると、同じような部屋がいくつも並び、そして廊下も随分と年季が入った作りになっていた。
「どこかで見たな……」
見覚えがあった。以前にも訪れた様な気がする。
デジャブだろうか? 人間の記憶は、もともと曖昧で初めて訪れた場所を、何かと混同して、また訪れた様な気分にさせる。いわゆる認識のずれだ。
しかし、そんなずれを感じさせない思いが秀人の頭の中をよぎって、一つの結論が出る。
「ここ、北大博物館じゃないか! そうだ、あの骨格展示に標本! 暗くてよく分からなかったけど」
「そうなのか! 俺も確かに覚えがあったんだが、いまいち自信がなかった……」
秀人の言葉に蘭が同意し、聞いて来る。
「ここに気配がしたのか、ゴリアス……」
『間違いない。どこかに居るんだ……』
だとしたら、北大博物館だけ異空間に閉じ込められてしまったかのような、現象も説明がつく。
「とにかく調べよう。何が原因なのか突き止めないと……。どうする? 二手に分かれるか?」
「一緒に調べよう!」
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