富豪デスゲーム

JOKER

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一日目

目覚め

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 目の前の景色をぼんやりと眺めていた。頭が働かず状況が理解出来ない。混乱したまま辺りを見回す。視覚を最大限に使って、状況を理解しようとする。白い壁、白い床、天井。教室ぐらいの大きさの部屋。円形に並べられた椅子。大勢の人影。

椅子から立ち上がると同時に後ろから声がかかった。
「彩香起きたか」
 その低い声に反射的に振り向いた。目先には高身長の男性。クラスメイトのサッカー部の部長、健が立っている。肌に日焼けの跡が目立っている。

「……ここ何処なの?」
 声にならないような声で言う。
「すまん、俺たちにも分からないんだ」
 顔に不安と恐怖が現れる。

「誰か、ここへ来る前の記憶がある人いないか?」
 ホールの中央で高身長の男子が声を出した。顔はよく見えないが、彩香には誰だかはっきり分かった。

「……祐介君」
 遠くから聞こえる声は詩織。彩香にとって、彼女の印象は悪かった。彼女が祐介に思いを寄せていることは知っていた。彩香も祐介に思いを寄せている。詩織とは普段からライバル的存在だった。

「そんなことよりこれ見なよ」
 麻結が首を指して、言う。彩香もまねして首元を触ったか。途中、何か硬く、冷たい物を感じた。「……首輪……なにこれ」
 思ったことを呟く。
「変な首輪。本当ダサい」
 楓が、ため息混じりの声を出す。金持ちの楓には我慢出来ないようだった。
「携帯も繋がらないし」
 彼女は苛立ちが隠しきれていなかった。

「……誰がここに居るの?」
「聞いてばかりじゃなくて。自分で見ろよ」
 強い口調の声が部屋に響く。乱れた服に金色の髪の毛。ヤンキーの和也の声だ。
 彩香は1人ずつ顔を確認する。全て見覚えのある顔。ある顔を見て身体が凍りついた。その人と目が合う。
 それをさえぎるかのように部屋に音が響く。

『ヨォ~コソ~、私ノパーティーへ  貴方達13人ニハ楽シイ遊ビヲシテ貰イマ~ス』

 いきなりノイズのかかった不気味な声がし部屋に響いた。
「なんだテメェは!」
 即座に和也が叫ぶ。
「そうよ!アンタ誰?!」
 今度はみさきが叫んだ。

『ソンナ事ヨリモ13名全員、椅子二座ッテ下サ~イ』

「なんでお前みたいな奴の話聞かなきゃいけねえんだよ!」
 和也がまた叫ぶ。
 その直後、和也の首元が大きい音とともに光った。一瞬で和也の身体が仰け反り床に倒れた。
「……電撃?!」
 誠が驚愕の顔を浮かべた。
 倒れた和也が青ざめた顔でゆっくり立ち上がって、静かに椅子に座った。それにつられて続々と椅子に座っていく。

『デハコレカラ、ルールヲ説明シマ~ス』

 淡々と一方的にされた説明に理解する余裕もなかった。

『皆サンノカードハ椅子ノ裏ニアリマス』

 そう伝えられ、手で椅子の下の探る。すると、何かに触れ取り出すと、一枚の封筒。中には、ハート5のカード。

「これで一人一枚ずつカードを手に入れたことになるのか」

『デハ、夜九時にココへ集マルヨウニ』

 放送はこれで切れた。部屋に再び沈黙が訪れる。誰も声も出さない。
 痺れを切らした和也が立ち上った。
「何だよコレは!」
 全員がまだ状況を理解していないようだ。
「消去って……消されるのか……?」
「私たちここで死んじゃうの?」
「……」
 誰もがそう悟った。
「9時にならないと何も分からないようだし、一度部屋を探索してみるか。」
「そうね、9時までだいぶ暇だし時間つぶしにはなるわね。」
 部活の部長健とクールな麻結が落ち着いた様子で話し、この部屋の唯一ある扉から出て行った。二人について行くように、何人かが出て行き、数人部屋に残った。
「……彩香」
 低く、落ち着いた声。
「……結衣」
 結衣は無表情のまま言った。
「来て」
 そう言うと、この部屋を出て行った。彩香も急いでそれを追いかけた。
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