上 下
50 / 57

49

しおりを挟む
「碧くん、金曜日の夜ね、悠人くんここに来ることになったから。こんなふうに無理やり進めちゃって大丈夫だったかな...?」


「蘭さん...ありがとうございます。悠人くんには会いたかったから、感謝してます。」


「それなら良かった。そしたら元気な姿で会えるようにいっぱいご飯食べなきゃね。」


蘭さんは無理に話を進めすぎたんじゃないかと心配してる。
全然そんなことないのに。

悠人くんに迷惑かけちゃうという気持ちはあるけどやっぱり会いたい気持ちが勝ってしまう。
僕のことずっと探してくれてたっていうのがそもそも嬉しくて。
僕を求めてくれてる人がいるなんて......



会える日が決まって僕も前より食欲は戻ってきた。
そんな僕を見て蘭さんも嬉しそうな顔をしていた。



そして金曜日。


「ははっ。碧くん緊張してる?ドキドキって感じかな?さっきからソワソワしてる。大丈夫、もうすぐ着くって連絡来たから。お茶でも飲んで座ってて。今日はお店もう閉めちゃってるから心配しないで。」


「すみません、お店閉めていただいて.....」

蘭さんは僕たちが話しやすいようにお店を臨時休業にしてくださった。


「いいのいいの。たまにはお休みしたいしね。碧くんのおかげで売上もいいし!」

「ありがとうございます...」




カランカラン


「こんばんは.........碧くん!」


ガタンッ


「悠人くん....!」


「よかった、本当に良かった......」


ギュッ



きつく抱きしめられる。


少し経って身体を離すと次は顔に手を当ててくる。


「少し痩せたね。でも蘭さんのとこにいて良かった....」


その手は少し震えていた。


「悠人くんも、少し痩せた。」


「ほらほら、とりあえず座りなよ。飲み物何がいい?コーヒーかな?」


「そうですね、コーヒー、ブラックでお願いします。」


今更になって、あの手紙に大好きって書いたことを思い出す。近くにいると胸がドキドキする。



「碧くん。まず謝らせて。碧くんが大変な時に助けてあげられなくてごめん。間に合わなくてごめん。次こそは守るって決めてたのにこんなことになってごめん。」


「悠人くん......顔上げてください.....
悠人くんが謝ることなんて何もないし、こうやって探しに来てくれて、それが本当に嬉しいです。」

「それでね、碧くんの家の事なんだけど、これは勝手に進めちゃダメだと思って、碧くんの許可を得てからしか動けないことなんだけど、聞いてほしい。碧くんが西園寺家から籍を抜いたならもう西園寺家を潰してもいいかなと思って。そしてね、碧くん、僕と付き合ってほしい。碧くんのことが好きなんだ。本当はあのお出かけする日に伝えようと思ってたんだけど、言えなくって.....言いたいことはすぐ伝えないとって学んだ。会えたら直ぐに言おうと思って。碧くんがいなくなった日、本当に目の前が真っ暗になった。もう会えないなんて耐えられなかった。」


「悠人くん......僕も好きです悠人くんのことが、大好きです......」


「付き合ってくれる?」

「こちらこそ、なんもない僕だけど....」

「碧くんがいてくれればそれだけで俺は幸せなんだ。それと、こんなに急に話すことじゃないとは思うんだけど、年齢が大丈夫になったら俺の籍に入らないか...?碧くんと家族になりたい。」


「え、そんな、いいの...?お家の方とかいろいろあるんじゃないの....?」


「俺は次男だし、もう親には言ってある。親も俺の気持ちを汲んでくれた。だからそこは気にしなくていいんだ。」


「うん、それなら、悠人くんがその時も僕でいいって思ってくれてたら、お願いします....」


「これ、受け取ってください。」



そう言って差し出されたのは指輪だった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

天使様はいつも不機嫌です

白鳩 唯斗
BL
 兎に角口が悪い主人公。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

処理中です...