兄の代わりを務めたら嫌われものでした

3（奏side）

小学校の頃からずっと不思議だった。

宮野碧はそれは可愛くて、美人で、華奢でみんなが目を引くような子だった。

でもいつも独りで寂しそうで、みんなと常に距離を保とうとしていて、特定の誰かと仲良くなろうとはしたくなさそうだった。

でもなんだかほっとけなくてとにかく話しかけまくってたらちょっとみんなよりは距離が縮まった気がした。

でも碧にはタブーな内容があって、それが家族の事だった。

普通の会話の中で家族の話をしていて碧の家族について当たり前のように聞いたとき、碧は何も言えない顔で寂しそうに笑った。特に何も話すことなく。


あ、きっと家のことは聞いちゃいけない。そう瞬時に理解して以降、碧の前では家族の話題を出すことはなくなった。


どこに住んでるかも分からず、学校内だけでしか会えない。でもなんだかほっとけなくて、すこしぽやんと抜けている心優しい碧のことが友達として大好きだった。


高校もできたら同じところに行きたくて、中3の夏にどこを受けるか聞いてみた。

「碧は高校どこ行く？」


碧は少し黙って、その後ちょっと微笑んだ。



「秘密」


まあ志望校言いたくないこともあるよなと思って少し悲しかったけどとても成績のいい碧のことだからこの辺で優秀なところに行くだろうと思うことにした。


秋になっても教えてくれず、願書を出す1月になって碧はやっと教えてくれた。



「僕、働こうと思う。」


びっくりだった。高校に行かないという選択肢を考えていなかった。家族と何かありそうではあったけど今どき中卒だと働く先も困るし、あんなに成績のいい碧がと思うと衝撃だった。


けど意思は固そうで、もう決めたことなんだなと悟った。