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第五章 運命
81文月 抱擁②
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神無月に抱かれるように外に出た紫苑は、流れる風の気持ちよさに、顔を上げた。
「甘い匂いがする」
フフフっと口元をほころばせ神無月に顔を近づけた。
「美月からするんじゃないのか?いつもよりも香りが強い気がするぞ」
「僕の体から?百合じゃなくて?」
「百合ってなんだ?」
花に疎い神無月には、秋桜もチューリップも百合も下から生えている花だというだけだった。
外は思ったより涼しくて、道端には、風に舞って落ちた百合の種が芽を出して、見事な白い蕾をつけていた。
「あれですよ」
紫苑は百合の蕾を指して、しょうがない人ですねと百合について説明してくれた。
小さな頃に名も知らぬまま別れた二人は、運命という甘い蜜に吸い寄せられるように出会い、二人が箱根の山で偶然の出会いをしてから、もう季節は一巡りしようとしていた。
「柊の家に行くの?」
「嫌か?」
「ん、何となく何かが変わってしまう気がして……ちょっと怖い」
「そうか」
紫苑の存外小さな声は、世界に二人しか存在しないかのように甘く囁いたし、紫苑の発する言葉なら、どんな囁きですら拾う神無月の姿勢を、人は愛と呼んだ。
腕の中で小さくなって、首に唇を吸いつけるように、顔をよせる紫苑は、やっと安心できるところに居られる安堵からか、幸せという夢の中に落ちていきそうであった。
「ほら車に乗って。いったん降ろすぞ」
「ん、大丈夫」
コルベットの助手席に紫苑をのせ車を滑らせた。
充満する甘い香りが二人を襲った。
「美月、お前、もしかして」
「……白城さんのところで、一番最初に飲まされた薬……ヒートの誘発剤だった……」
息が少しずつ上がってきて、心臓がバクバクする。
「何回飲まされた?」
ンンンンン、ンハァ。
「わかんない、一日に何錠も……飲まされたから、共鳴するアルファと……一つの空間にいたら、頻繫にヒートになるって……言われた……気がする」
口を閉める事すら出来ず、右手が無造作に股間に伸びた。
チャックを下げペニスを出し、上下に何度も扱いた。
「美月、しっかりしろ」
「したい、ねぇ、挿れてほしい」
「お前、その匂い、やべーって、もう着く。我慢しろ」
「今、今ここで、ねぇ柊、柊の大きいおちんちん僕のお尻に頂戴」
動く車のシートベルトを外そうと、手を動かした。
「美月」
大きな声が紫苑に向かい、恐怖で支配するようにアルファのフェロモンが紫苑を襲った。
「動くな。いい子にしてたら、抱いてやる」
「……はい」
車から抱えるように引きずり出し、それでも膨らむお腹を庇う様にベッドに紫苑をおろした。
「柊」
一気に引き下げられたズボンの間から、ブルンと半勃ちになったペニスが顔を出し、銀色に光る先走りは、いやらしいほどに濃密なにおいをまき散らしていた。
「エッロ」
「そんな事言わないで。恥ずかしい……」
「自分でチンコ出して扱いていたくせに、今更恥ずかしいとか言ってんのか」
「柊、なかぐちゅぐちゅってしてー」
アルファはオメガのフェロモンには逆らえない。ましてや運命かもしれない、そんな甘い匂いを撒き散らすメスの匂いには……。
「甘い匂いがする」
フフフっと口元をほころばせ神無月に顔を近づけた。
「美月からするんじゃないのか?いつもよりも香りが強い気がするぞ」
「僕の体から?百合じゃなくて?」
「百合ってなんだ?」
花に疎い神無月には、秋桜もチューリップも百合も下から生えている花だというだけだった。
外は思ったより涼しくて、道端には、風に舞って落ちた百合の種が芽を出して、見事な白い蕾をつけていた。
「あれですよ」
紫苑は百合の蕾を指して、しょうがない人ですねと百合について説明してくれた。
小さな頃に名も知らぬまま別れた二人は、運命という甘い蜜に吸い寄せられるように出会い、二人が箱根の山で偶然の出会いをしてから、もう季節は一巡りしようとしていた。
「柊の家に行くの?」
「嫌か?」
「ん、何となく何かが変わってしまう気がして……ちょっと怖い」
「そうか」
紫苑の存外小さな声は、世界に二人しか存在しないかのように甘く囁いたし、紫苑の発する言葉なら、どんな囁きですら拾う神無月の姿勢を、人は愛と呼んだ。
腕の中で小さくなって、首に唇を吸いつけるように、顔をよせる紫苑は、やっと安心できるところに居られる安堵からか、幸せという夢の中に落ちていきそうであった。
「ほら車に乗って。いったん降ろすぞ」
「ん、大丈夫」
コルベットの助手席に紫苑をのせ車を滑らせた。
充満する甘い香りが二人を襲った。
「美月、お前、もしかして」
「……白城さんのところで、一番最初に飲まされた薬……ヒートの誘発剤だった……」
息が少しずつ上がってきて、心臓がバクバクする。
「何回飲まされた?」
ンンンンン、ンハァ。
「わかんない、一日に何錠も……飲まされたから、共鳴するアルファと……一つの空間にいたら、頻繫にヒートになるって……言われた……気がする」
口を閉める事すら出来ず、右手が無造作に股間に伸びた。
チャックを下げペニスを出し、上下に何度も扱いた。
「美月、しっかりしろ」
「したい、ねぇ、挿れてほしい」
「お前、その匂い、やべーって、もう着く。我慢しろ」
「今、今ここで、ねぇ柊、柊の大きいおちんちん僕のお尻に頂戴」
動く車のシートベルトを外そうと、手を動かした。
「美月」
大きな声が紫苑に向かい、恐怖で支配するようにアルファのフェロモンが紫苑を襲った。
「動くな。いい子にしてたら、抱いてやる」
「……はい」
車から抱えるように引きずり出し、それでも膨らむお腹を庇う様にベッドに紫苑をおろした。
「柊」
一気に引き下げられたズボンの間から、ブルンと半勃ちになったペニスが顔を出し、銀色に光る先走りは、いやらしいほどに濃密なにおいをまき散らしていた。
「エッロ」
「そんな事言わないで。恥ずかしい……」
「自分でチンコ出して扱いていたくせに、今更恥ずかしいとか言ってんのか」
「柊、なかぐちゅぐちゅってしてー」
アルファはオメガのフェロモンには逆らえない。ましてや運命かもしれない、そんな甘い匂いを撒き散らすメスの匂いには……。
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