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第四章 会いたい
59弥生 紫苑の覚悟④
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「美月……ヒンヒン泣く顔が可愛いよ」
「旦那様」
白城にそう言われ、羞恥心で死にそうになりながら、それでも紫苑は笑った。
――生き抜いて絶対に柊に会う。この時紫苑を支えていたものはただそれ一択だった。
ピンクの小さな乳首を舌先で転がされた。舐め続けられていたそこは普通の男性より肥大して、ぷっくらしている乳首はそれだけで淫乱なオメガだった。
「そこ、そんなに弄っちゃだめ……乳首で逝っちゃう……んはっっっ、んんん――」
オメガとしては出来損ないでもいじられればそれなりに感じる。
しかも三日に一回は女中達に「坊っちゃんが気持ち良くなる為だ」と言われ、どれだけ泣いても二時間は弄るのをやめてはもらえなかった。おしりの穴を自分で両手で拡げるように躾られ、女中達の棒で内壁を綺麗に擦りあげられた。
そうした日には必ず白城が美月を抱くようなサイクルになっている事にもこの頃の紫苑は既に気がついていた。
「紫苑様、今日は一人お仲間を連れてきましたよ」
今日は疲れて気分ではなかったが、風呂から上がり部屋に行くと女中達が若い男を引き連れて壁側に立っていた。
――あー今日も拷問が待っているのか。紫苑はこの時間が大嫌いだった。しかも今日はなにやら飛び入りがいる。
ばれないように心の中で溜め息をつくと、紫苑は唇を噛み腹の中に想いを貯めた。
「お仲間ですか」
「そうです。坊っちゃまの為に紫苑様を立派なオメガにするための道具です」
「生きてるんでしょう?道具なんて言い方はしないで下さい」
女中に向かって威嚇するように睨みをきかせた。
「何を勘違いしてらっしゃいますか」
女中頭は淡々と事実だけを告げた。
「勘違い……ですか?」
「そうですよ。この家にくるオメガは皆ただの坊っちゃまのオモチャです。ただ今までのオメガは坊っちゃまが味わうまでに既に薬や他のアルファの手により開発済みの極上品ばかり。あなただけが違う、私達はそれがただ不快です」
「そんな事俺は知らないし薬も打たれていない」
裸に剥かれ調教用の箱に乗せられた。うつ伏せで脚を拡げたまま固定されると、調教途中のおしりの穴が露になった。
「知っています。勝手な事をしたら家族共々なにがあるかわからないと脅されました」
ローションがおしりの割れ目に垂らされ、そのまま指を纏わりつかせ連れの男の指が二本、奥まで挿入してきた。普通より遥かに長い指は、奥のいいところを擦るようでお尻が自然に突き出ていった。
「あなたは坊っちゃまのなんなんですか!」
珍しく女中頭が金切り声をあげた。その瞬間、どこから見ていたのか白城の声がした。
「余計な詮索をしていいと、いつ俺が許可をした?」
天井から聞こえる声に女中頭がビクッと震えた。
「これは坊っちゃま、今日は会議ではございませんでしたか……」声が震え顔色が青く血の気がひいていく。
「いつ許可をしたかと聞いている」
「申し訳ございません……二度といたしませんからどうかお許し下さい」
頭を床に擦り付けどこから聞こえてくるのかわからない声にひたすら謝り続けていた。
「12番、今からお前が女中頭だ。そのまま調教を続けろ」
「お願いです。坊っちゃま――」
別の手によって連れさられた女中頭の叫び声は、だんだんと小さくなりバタンと閉ざされたドアによって完全に遮断された。
「邪魔が入ったな」
天井から声が聞こえる。
「旦那様、あの人はどうなるのですか?」
紫苑は気になった。
「気になるのか?」
白城にそう聞かれ、少しの間黙っていた紫苑は、ゆっくりとそしてハッキリと言った。
「いえ、関係ありませんから」
――そうだ。今は自分の足元だけを見なければ、他人にかまっている余裕はない。
「いい子だ。美月、お前は俺の事だけ考えていろ」
「はい……旦那様」
天井から笑い声が響いた。
「お前の一番は誰だ。美月」
――俺の心は全て柊のものだ。
「旦那様です」
紫苑はまた一つ嘘をついた。
――必ず生きて帰ってみせる。
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