23 / 88
第二章 リ,スタート
22長月 愛しさのベクトル②
しおりを挟む
「ほら、気持ちいいを沢山教えてあげるから」
片足を肩に担がれてさらに結合部が深くなるように挿入された。
「んはっ、やばい、やばいってば……それダメなやつ――」
「ダメ?違うだろう。気持ちいいんだよ。ほら、お尻の奥までトントンしてるのがわかるかい」
「わかる、とんとんしてる……わかる……んはぁ、ダメダメ」
「だからこれは、ダメじゃなくて良いって言うんだよ」
そう言われた紫苑は眉間にシワを寄せ、眉を下げ辛そうな表情をしていた。
行き止まりまでペニスを突っ込まれ、キツくて苦しくて……でもとってもあったかくて愛しい。複雑な感情がミックスジュースみたいに混ぜ合わされていた。
「この奥にもっと気持ちいい場所があるんだよ。今はまだ美月の体には無理だけど、抑制剤を弱いのに変えて、疑似α剤もやめればいつかきちんとしたヒートがくるようになる。子供も産める。そうしたらこの結腸の先を抜いてあげる」
「子供?きちんとしたヒート……?」
紫苑は結合部に手を伸ばした。
「そう、ヒートの間は俺のチンコしか考えられない。オメガってのはそう言うものだよ」
さっきまでの幸せが噓のように足場が崩れていく。
「そんなのになりたくないって言った――」
「どうして?」
紫苑はサイドテーブルのハイボールを一気に口に入れごくりと飲み込むとその缶を頬にくっつけた。それはまるで愛しいものに頬ずりするように幸せそうな動作であったのに、それとは裏腹にその目は何も信じてはいなかった。神無月を見て口がゆっくりと動いた。
「柊さんを幸せにしたかったから……」
神無月には紫苑の心の痛みは判らない。オメガだとなぜ神無月が幸せになれないのかも解らなかった。そもそもここまで話をさせるのだって一苦労だ。――でもここでやめては意味がない。
「だからどうして?俺は美月がオメガで凄く幸せだよ。よく考えて、アルファとオメガなら子作りもできる」
何も言わず俯いたまま、ただ顔を左右に振っていた。
「あなたは何も知らないから」
「だから何を知らないんだ」
「同僚なら、ライバルとか、仲間とか、そんなんなら僕、あなたを幸せにする自信凄いあるんです。適度な距離感が必要な事もあるでしょう」
神無月は何も言わずにただ聞きに徹しようと思った。
「ねえ忘れてください」
「何を」
「僕がオメガであることをです」
――思ったのに、「嫌だ」つい言っていた。
「我が儘ですよ」」
「我が儘は美月だろ」
サイドテーブルの灰皿を投げていた。
冷たい視線が神無月に注がれた。それでも怯んだら負けだ、ただの勘がそう言っていた。
「小さなころ会ったあれは美月だろ、違うのか」
「違いませんよ」
「なら……」
感情的になる神無月に対し、紫苑はどんどん冷静になっていく。
「しつこいですよ。あれが僕だから、だから何?お互いに好きだから、だから何?ベータだからオメガだから、アルファだから、いい加減にしてください」
片足を肩に担がれてさらに結合部が深くなるように挿入された。
「んはっ、やばい、やばいってば……それダメなやつ――」
「ダメ?違うだろう。気持ちいいんだよ。ほら、お尻の奥までトントンしてるのがわかるかい」
「わかる、とんとんしてる……わかる……んはぁ、ダメダメ」
「だからこれは、ダメじゃなくて良いって言うんだよ」
そう言われた紫苑は眉間にシワを寄せ、眉を下げ辛そうな表情をしていた。
行き止まりまでペニスを突っ込まれ、キツくて苦しくて……でもとってもあったかくて愛しい。複雑な感情がミックスジュースみたいに混ぜ合わされていた。
「この奥にもっと気持ちいい場所があるんだよ。今はまだ美月の体には無理だけど、抑制剤を弱いのに変えて、疑似α剤もやめればいつかきちんとしたヒートがくるようになる。子供も産める。そうしたらこの結腸の先を抜いてあげる」
「子供?きちんとしたヒート……?」
紫苑は結合部に手を伸ばした。
「そう、ヒートの間は俺のチンコしか考えられない。オメガってのはそう言うものだよ」
さっきまでの幸せが噓のように足場が崩れていく。
「そんなのになりたくないって言った――」
「どうして?」
紫苑はサイドテーブルのハイボールを一気に口に入れごくりと飲み込むとその缶を頬にくっつけた。それはまるで愛しいものに頬ずりするように幸せそうな動作であったのに、それとは裏腹にその目は何も信じてはいなかった。神無月を見て口がゆっくりと動いた。
「柊さんを幸せにしたかったから……」
神無月には紫苑の心の痛みは判らない。オメガだとなぜ神無月が幸せになれないのかも解らなかった。そもそもここまで話をさせるのだって一苦労だ。――でもここでやめては意味がない。
「だからどうして?俺は美月がオメガで凄く幸せだよ。よく考えて、アルファとオメガなら子作りもできる」
何も言わず俯いたまま、ただ顔を左右に振っていた。
「あなたは何も知らないから」
「だから何を知らないんだ」
「同僚なら、ライバルとか、仲間とか、そんなんなら僕、あなたを幸せにする自信凄いあるんです。適度な距離感が必要な事もあるでしょう」
神無月は何も言わずにただ聞きに徹しようと思った。
「ねえ忘れてください」
「何を」
「僕がオメガであることをです」
――思ったのに、「嫌だ」つい言っていた。
「我が儘ですよ」」
「我が儘は美月だろ」
サイドテーブルの灰皿を投げていた。
冷たい視線が神無月に注がれた。それでも怯んだら負けだ、ただの勘がそう言っていた。
「小さなころ会ったあれは美月だろ、違うのか」
「違いませんよ」
「なら……」
感情的になる神無月に対し、紫苑はどんどん冷静になっていく。
「しつこいですよ。あれが僕だから、だから何?お互いに好きだから、だから何?ベータだからオメガだから、アルファだから、いい加減にしてください」
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
僕の罪と君の記憶
深山恐竜
BL
——僕は17歳で初恋に落ちた。
そしてその恋は叶った。僕と恋人の和也は幸せな時間を過ごしていたが、ある日和也から別れ話を切り出される。話し合いも十分にできないまま、和也は交通事故で頭を打ち記憶を失ってしまった。
もともと和也はノンケであった。僕は恋仲になることで和也の人生を狂わせてしまったと負い目を抱いていた。別れ話をしていたこともあり、僕は記憶を失った和也に自分たちの関係を伝えなかった。
記憶を失い別人のようになってしまった和也。僕はそのまま和也との関係を断ち切ることにしたのだが……。
[改稿版]これは百貨店で働く俺の話なんだけど
だいきち
BL
旭理人は、昔から寂しいとか辛いとか、そういうものをうまく口にできない性格であった。
人の顔色ばかり伺うせいで、デザイナーになるという幼いころからの夢を叶えても、身にならずに脆く崩れ去る。
ままならない人生、そんな人の隙間を縫うように生きてきた旭に変化を与えたのは、一人の男の言葉だった。
変じゃねーよ。お前は何も変じゃねえ。
再就職先である外資系ブランドの取引先相手という立場で再会したのは、専門学生時代に親しくしていた柴崎であった。
学生時代に少しずつ積もらせていた小さな思いが、ゆっくりと形になっていく。
ぶっきらぼうで適当で、顔しか取り柄のない男の隣が、こんなにも居心地がいいなんて。
ぶっきらぼうで適当なスパダリ雰囲気の柴崎(27)×自己肯定感低め、空元気流され不憫受け旭(24)が幸せになるまでの話(長!)
第二章は榊原×大林編です!
これは百貨店で働く俺の話何だけどスピンオフ
大林(24)は、とある理由で体を売っていた。もちろん、勤め先であるブランドのスタッフには秘密である。
しかし、アパレルショップに来たもさい男、榊原(32)に、ひょんなことがきっかけで秘密がばれた!
バラさない変わりに提案されたのは、まさかの榊原宅の家事手伝い!
「どうなるかは、君次第かな。」
「毛玉だらけのネクタイ締めてんじゃねえ!!」
ズレた性格をしている榊原に、日に日に絆されていく。恋心を自覚したとき、榊原の左手に光る指輪に気がついて…
陰湿豹変型溺愛攻め榊原×苦労性メンタルマゾ大林のドタバタラブコメディ!
2022,0928 改稿完了、完結しました!
改稿前の作品はなろうにて!
改稿前と改稿後を乗せるのはNGだったので、アルファポリスでは改稿後のみ掲載します!
前作をブクマしてくださっていて方々には申し訳ございません。近況にてなろうのURLを貼りましたので、お手数ですがお読み頂ける場合はそちらからお願いします。
20201026に初めて小説として書いたこの作品を、今の筆力で書き直しています。
他サイトのコミカライズ原作の公募に向けて鋭意執筆中。®️18はこちらでのみ投稿。
比較としてあえて改稿前も残しています。比較も楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
幸せな復讐
志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。
明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。
だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。
でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。
君に捨てられた僕の恋の行方は……
それぞれの新生活を意識して書きました。
よろしくお願いします。
fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。
サイテー上司とデザイナーだった僕の半年
谷村にじゅうえん
BL
デザイナー志望のミズキは就活中、憧れていたクリエイター・相楽に出会う。そして彼の事務所に採用されるが、相楽はミズキを都合のいい営業要員としか考えていなかった。天才肌で愛嬌のある相楽には、一方で計算高く身勝手な一面もあり……。ミズキはそんな彼に振り回されるうち、否応なく惹かれていく。
「知ってるくせに意地悪ですね……あなたみたいなひどい人、好きになった僕が馬鹿だった」
「ははっ、ホントだな」
――僕の想いが届く日は、いつか来るのでしょうか?
★★★★★★★★
エブリスタ『真夜中のラジオ文芸部×執筆応援キャンペーン スパダリ/溺愛/ハートフルなBL』入賞作品
※エブリスタのほか、フジョッシー、ムーンライトノベルスにも転載しています
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。
西友
BL
こぼれ話し、完結です。
ありがとうございました!
母子家庭で育った璃空(りく)は、年の離れた弟の面倒も見る、しっかり者。
でも、恋人の優斗(ゆうと)の前では、甘えん坊になってしまう。でも、いつまでもこんな幸せな日は続かないと、いつか終わる日が来ると、いつも心の片隅で覚悟はしていた。
だがいざ失ってみると、その辛さ、哀しみは想像を絶するもので……
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる