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5 シェルター
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市場からの帰り道、ひとっこひとり居ない薄暗い小道を2人は迷いもせず歩いていた。
チラリ、ライトの明かりがちらついた。
「やべー、見回りだ!レイ逃げろ。捕まったら殺される」
2人は無我夢中で走った。
途中オレンジが1つ落ちて転がっていった。
「待って、オレンジが……」
レイがオレンジを拾おうと踵を返した。
「バカ、何やってんだ!んなもん良いからさっさと来い」
ヨハスに無理矢理腕を捕まれ引きずられるように地下シェルターに身を隠した。
「ヨハス、折角のオレンジが……」
「オレンジよりテメェの心配しろ」
状況把握の温さはレイの短所だ。最悪だったあの時、まだ3つのコイツには記憶がないせいか、危険察知能力に欠けている。
「お前って普段はそこぬけに明るい、ただの能天気だと思ってたのに、突然びっくりする位俊敏だよな」
レイの台詞に俺は呆れて言葉を失った。
「レイは20年前のことなんか覚えて無いんだよな。幸せなのは良いことだけどよ、こんな時間に出歩いていたら反抗分子扱いだ」
20年前、この国が死んだあの日、まだレイは3歳だった。
「なんで?」
「ベンハムが反抗分子だからだよ。とかく権力のある奴は自分より秀でたものを嫌う性質があってな、ベンハムの頭脳は狂気なんだ。お前は面が割れてないけど、俺は既に札付きだから、見つかりたくはないな」
知らなければばれない。俺達には守らなきゃならない種がある。
「ヨハス?」
俺はゆっくりと息を吐くと顔に笑顔を張り付けた。
「綺麗な国だったんだよ。エルモア国王の頃は、飢える国民も居ない、花が咲乱れる国を公平な国王が司っていたんだ」
ヨハスの拳は固く握られ意思のある目は遥か遠くをみていた。
「こんなうわべだけの糞みたいな国じゃなかったぜ」
【2050年12月25日まだあと3日】
チラリ、ライトの明かりがちらついた。
「やべー、見回りだ!レイ逃げろ。捕まったら殺される」
2人は無我夢中で走った。
途中オレンジが1つ落ちて転がっていった。
「待って、オレンジが……」
レイがオレンジを拾おうと踵を返した。
「バカ、何やってんだ!んなもん良いからさっさと来い」
ヨハスに無理矢理腕を捕まれ引きずられるように地下シェルターに身を隠した。
「ヨハス、折角のオレンジが……」
「オレンジよりテメェの心配しろ」
状況把握の温さはレイの短所だ。最悪だったあの時、まだ3つのコイツには記憶がないせいか、危険察知能力に欠けている。
「お前って普段はそこぬけに明るい、ただの能天気だと思ってたのに、突然びっくりする位俊敏だよな」
レイの台詞に俺は呆れて言葉を失った。
「レイは20年前のことなんか覚えて無いんだよな。幸せなのは良いことだけどよ、こんな時間に出歩いていたら反抗分子扱いだ」
20年前、この国が死んだあの日、まだレイは3歳だった。
「なんで?」
「ベンハムが反抗分子だからだよ。とかく権力のある奴は自分より秀でたものを嫌う性質があってな、ベンハムの頭脳は狂気なんだ。お前は面が割れてないけど、俺は既に札付きだから、見つかりたくはないな」
知らなければばれない。俺達には守らなきゃならない種がある。
「ヨハス?」
俺はゆっくりと息を吐くと顔に笑顔を張り付けた。
「綺麗な国だったんだよ。エルモア国王の頃は、飢える国民も居ない、花が咲乱れる国を公平な国王が司っていたんだ」
ヨハスの拳は固く握られ意思のある目は遥か遠くをみていた。
「こんなうわべだけの糞みたいな国じゃなかったぜ」
【2050年12月25日まだあと3日】
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