タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ

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41 シカゴに向かって①

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 掃除なんてチャチャチャですましたい本音を隠し、それでも今はレッスンあるのみ。

 予科生の中では断トツの美人さん、百合先輩に憧れている同期もすでにいるらしく、隠れファンとかすごいに尽きる。
 まぁ確かに最近の百合先輩は、可憐・美声・華奢・ダンスどれをとっても群を抜いている。
 本科生の中でも「あれは早い、トップ娘役として花がある」と今では話題のトップを飾っている。

 明日は夏休み明けのテストの一日目だ。

 一日目は歌、All that jazz


 女役でも少し低めのキーだからあくまでも宝塚仕様に高めでキー設定されている。

 男役確定な身長なら更に低めのキー設定だ。

【試験会場】

 Come on babe
 Why  don't we paint the town
 And all that jazz
 I’m gonna rouge my knees 
 And roll my stockinngs down
 And all that jazz
 
「誰が歌ってる?」
「さくらだよね」
「この子こんなに歌えた?」

 廊下は静かが鉄則の中で心の中では大声の葛藤が繰り広げられていた。

「歌唱力、こんなに伸びたら……敵わない。この夏さくら……身長も3㎝伸びたって言ってた」
「桜華、まだそうとは限らないよ、このミュージカルはタップが命だよ」
「私達、まだ何も決まってない!」
 明日はダンス
 明後日はタップ

 まだ決まっているわけではない。

 ぞくぞくするさくらの歌声に、鳥肌が止まらない。

 高音も低音もすごい伸びだ。


 さくらが歌なら、桜華はダンスだ。
 桜華はダンスが得意だ!
 クラシックも基礎はきちんとできてるし……でも桜華の凄いところは多分、そこじゃない。
 それをベースにテンポを変える。

 一気にアップテンポに変わる瞬間……周りの人間を引き込む太陽光のような役割。
 それが桜華あんずの力。
 多分リズム感が人よりもいい。
 脚の置き方、瞬間的な跳ね方、ターンの仕方

 そのどれもが線で釣り上げられた様にとっても綺麗。

「明日のダンス、さくらに負けないから」

 【試験二日目】
 
 
 
 
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