タカラジェンヌへの軌跡

赤井ちひろ

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38 夏休み地獄の特訓~シカゴ~

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 夏休みあけテスト
 【シカゴ】
 ダンスが得意でもかなりしんどい。
 今回のシカゴは普通の高校なら文化祭にあたる音楽学校祭でやる舞台だ。
 メインは本科生だけど、予科生にもチャンスはある。

 

「先生いるかなー」
 昔だったらかけあがっていた階段を、今は静かに 早く歩く。

 トントン
 職員室のドアをたたいた。

「はいったらぁ?」
 扉を開けると摩利ちゃんが超ミニスカートで脚を組んで座ってた。
 フレアの可愛い水玉模様のスカートで、真っ白のトップスは肩と背中をガッツリだした可愛いやつだった。

「高校教師には見えない服装、最高すぎでしょー」
 摩利ちゃんには教師としての慎みはないのであーる。
「可愛いでしょぉー。下にスパッツはいてるからぁ足も高くあがるよぉー」
 最高可愛いであーる。
 なんてこんなに可愛い萌男子があんな鬼なんだろう。

 チラッとめくる摩利ちゃんは相変わらず筋肉が綺麗についた脚をしてる。
「相変わらず誰得だよ。摩利」
「人前では雨情先生とお呼び!敦。この変態ダンス講師が……」
 お二人のその特別な距離感は相変わらずだなとさくら達は思ったが、まずは本題だ。
 
「あのですねー、ちょっとお願いが」

「シカゴの特訓でしょう?あつし頑張っ」
「お前も手伝え、摩利!今回はダンス…相当骨が折れるぞ」

「なんで知ってるの?」
「勘」
 勘ってなんだってつい、笑っちゃった。
 だいたい
 フラッシュダンス
 ウェストサイドストーリー
 コーラスライン
 シカゴが繰り返されているんだよ。
 フラッシュダンスは女役が多いとやる感じがするから、今年はそれ以外のかなと思ってな。

「明日からやるか?」
 
 
 翌日から夏休みの間の約1ヶ月、神代かみしろ先生と雨情うじょう先生の鬼のシゴキが始まった。

 体力づくりで朝イチ7時から暑くならないうちにと、ランニング。
 ちょうど相模学園が朝のロードがその時間らしく私達わたしらは全然ついていけないなんて思いもせずにウキウキでロードに参加した。
「待って……待っ……」
 はぁ…はぁ……
 肩で息をする感じに、なかなかのしんどさが伝わってくる。
「毎日……この距……離走ってる……の……?」
 あんずが真っ先に音を上げた。
「ああレギュラーメンバーは必ずいるな」

「最初はなかなかに辛いから、ついていけない人は沢山でるが、そのうち走れるようになる」
 あいつみたいにな。と指差した先にはさくらが相模学園のエースについて走っていた。
「さくら……?」
「あーあいつ受験まえに体力や体幹ができてないって先生に怒られたらしくて、うちに乗り込んできたんだよ」
「最初は俺は女にはついてこれんと断ったのだが……うちの八神やがみが1人で夜に走ったら危ないとかいうから、仕方がなく連れていったんだ」
 今では余裕でついてこれるようになった。

「狙うんだろ?俺あれ好きだよ。頑張れよ!桜華」
「私とさくらはたぶん同じ役を争うことになる。夜の街にジャズが響いてマフィアが暗躍する1920年代、禁酒法時代のアメリカが舞台」
 All That Jazzだよね。

 歩き方ひとつとっても軽快なのに、足ざばきとか切れのあるダンスとか、一種独特なんだよね。

 ふふふふんふふふふんふふ

「なに鼻歌歌ってんだよ。ロードワーク再開するぞ」




 □□□

 
 №はどこだ?
「わかんない」
「当日発表」
 摩利ちゃんは頭を抱えてる。
 なら、スタンダードに行こう。
 Cell Block Tango
 All That Jazz
 後はタップダンスだろ。
 タップはどのくらいできるんだ?試しにやってみろと言われ、タップシューズを借りた。
「でくの坊か!お前ら」
 神代先生が般若に見える。
 摩利ちゃんは頭を掻いてるし……
 
「お前ら、この話基本的にはコミカルだと俺は思ってるんだよ」
「ロキシーのお馬鹿さんぶりもなかなかのものだしな」

 でメインの配役といえば男役なら、ビリーフリンだぞ。

 ……タップは重要だ。
 
 

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